エアコンガスとは
みなさんは、家庭や車で使っているエアコンの仕組みをご存知でしょうか?
そもそも、なぜエアコンから冷たい風が出るのか…、それは気体と液体の関係にあります。
例えば、注射をする時にアルコール消毒をすると冷たく感じますが、これは液体が気体となる時に熱を奪う「潜熱(せんねつ)」という現象で、エアコンが冷たい風を作るのと同じ仕組みです。つまり、注射でいうアルコールの役割を果たしているのがエアコンガスになります。
気体のエアコンガスをコンプレッサーで圧力をかけて液体にし、その液体のエアコンガスを霧状に噴射して潜熱で冷気を作ります。この現象で気体に戻ったエアコンガスを再度コンプレッサーに送り圧力をかける、といった循環がエアコンの仕組みです。
エアコンガスは理論上減らないことが、このことから分かっていただけるかと思います。
このエアコンの仕組みを少しでも理解していることによって、これからエアコンの効きに問題が出た時にも、冷静に対処することができます。
■エアコンガスが漏れるとどうなる?
前述のとおり理論上エアコンガスは減らないのですが、こちらはあくまで理論上の話です。車は走行中に振動をしていますので、その振動によってエアコンガスの機密性を保つことが難しくなり、少しずつ漏れてしまうことがあるのです。
エアコンガスが漏れているか確認する方法は、エアコンの吹き出し口からいつもと違う臭いがしているかどうか。フロンガス自体は無害なのですが、それが火気に触れると化学反応を起こして塩化水素、フッ化水素といった有害な分解生成物が発生する恐れがあります。
エアコンの吹き出し口から臭いがする場合は、漏れたガスが火気に触れて化学反応を起こし、このように塩化水素やフッ化水素といった有害な分解生成物が発生している可能性が考えられます。
これらは有害な生成物なので、人体に影響を及ぼすことは間違いありません。すぐにエアコンのスイッチをオフにして修理工場やガソリンスタンドなどで確認してもらうことをおすすめします。
■なぜエアコンガスは漏れる?
前述のとおり、エアコンガスが漏れるほとんどの原因は、走行中の振動によるものです。家庭用エアコンのガス漏れの話を聞かないのは、振動がほとんど無いからです。
振動以外で車のエアコンガスが漏れる可能性としては、砂利道を走行した際に、路面の石がエアコンのパイプに跳ねて傷がつき、そこからガスが漏れてしまう場合などです。
しかし、こまめにエアコンガスの残量をチェックしたり、荒々しい運転を日常的に繰り返していなければ、ガス漏れの過度な心配は不要ともいえるでしょう。
エアコンガスを使用するエアコンの仕組み
コンプレッサーで圧力をかけて圧縮したエアコンガスをコンデンサー(室外機)に送り、エバポレーター(室内機)に噴射して一気に気化するときに、まわりの熱を奪うことで冷気を発生させ、その冷気をブロワファンで車内に送ります。
この時、車内の空気中の水分はエバポレーターで凝縮されて水滴となるため、除湿されます。
エバポレーターを出た冷媒(エアコンガス)は、再びコンプレッサーに戻って圧縮され、循環することで冷房のサイクルが完成します。
このようなことからエアコン(冷房)は、除湿することにも長けています。
エアコンガスの補充方法・入れ方
それでは、エアコンガスの補充はどのようにして行うのでしょうか?補充方法や費用について、紹介します。
エアコンガス自体は2,000円前後で購入でき、セルフでも補充することができます。
オートバックスなどのカー用品店や、整備工場でエアコンガスのみを補充してもらうのであれば、補充するガスの本数にもよりますが、1本で工賃含めて3,000円~5,000円程度が相場です。
■自分で補充する場合
エアコンガスを自分で補充するには、チャージングホースとガス本体が必要です。チャージングホースは、ガス本体から車にエアコンガスを補充する役割をします。
補充手順
①チャージングホースのバルブがある方を、買ってきたガス缶に繋げます。繋げる前に、バルブのネジを左に回して針を一番上に上げ、缶に穴が開かないようにしておきましょう。
②セットしたら、もう片方のホースを車のエアコン配管の「L」と記載のある低圧側のポートに取り付けます。
③チャージングホース内の空気を抜くために、プシュッと音がする一瞬だけガス缶を緩めます。
④バルブを締め込み、針でガス缶に穴を開けエアコンガスを注入します。締め込んだままだと針で穴が塞がったままの状態なので、バルブは緩めて針は戻します。
⑤ガスの注入量はチャージングホースのゲージで確認しながら、バルブを回してガスの注入量を調整しましょう。ゲージの針の位置が水色の適正値になれば完了です。
なお、エアコンガスの補充時はエアコンを1番低い温度で始動し、風量は最大の状態で行います。また、車に合った指定のエアコンガスを入れましょう。
チャージングホースは市販で約2,000円程度で購入できます。
■オートバックスなどカー用品店で補充する場合
自分でエアコンガスを補充するのが不安な方は、オートバックスなどのカー用品店や整備工場で補充してもらいましょう。
エアコン消臭除菌が約4,000円、エアコンフィルターの交換が約4,000円、エアコンガス補充が1本あたり約3,000円が相場ですが、車種によって金額が異なりますので事前に確認しておきましょう。
なお、エアコンが効かない原因のほとんどはエアコンガス漏れで、コンプレッサーなどの故障は稀です。エアコンの調子が悪いと感じたら、まずエアコンガスの補充を考えましょう。
オートバックス
オートバックスでのエアコンガス補充作業では、全圧を点検してから規定量のガスを補充するといった作業が基本となっています。(一部店舗では全量交換を実施する場合有り)
エアコンガスは、車種によって必要な量が違うのですが、多すぎても少なすぎてもよくないので、残圧に合わせて補充する作業が重要となってきます。
オートバックスのエアコンガス補充料金体系
作業時間目安:30分~
点検作業 | 2,000円 | |
---|---|---|
補充作業(エアコンガス込み) | 2,000円~3,000円/本 | |
ガス使用本数目安 | コンパクトカー:約2本 普通乗用車:約3本 大型SUV、ミニバン:約4本 |
|
オートバックスにてエアコンガス補充作業の料金は、約6,000円〜約14,000円となるでしょう。
上記料金は、店舗によって料金が異なる可能性もありますので、作業予約をする前に、店舗に問い合わせをすることを推奨いたします。
ピットサービス・メニュー一覧|オートバックス公式ブランドサイト
https://www.autobacs.com/static_html/srv/top.htmlオートバックスが提供するピットメニューの一覧。各種点検・整備の内容、目安工賃・時間をご紹介しています。オートバックスは多彩なピットサービス メニューでお客様のカーライフをバックアップいたします。
イエローハット
次にイエローハットにおけるエアコンガス補充作業についてご紹介いたします。
イエローハットでは、エアコンガス補充という名目ではなく「エアコンガスクリーニング」として行われています。
車両から、冷媒ガスをすべて抜き取り、ガスに含まれる不純物(湿気等)を取り除いたあと充填、不足する分をさらに補充する作業となっています。
新たなガスを満充填するのではなく、ご自身の車両に残っているガスをリフレッシュするといったところがポイントです。
イエローハットでのエアコンガスクリーニング料金体系
作業時間目安:40分~
作業工賃:8,000円~(オイル代込み)
(イエローハット公式サイトより)
工賃に関しては、補充したガスにより変動します。車種によっても価格が変わる場合があると思いますので、店舗へお問い合わせください。
普通のエアコンガス充填作業と違い、ガスクリーニングまで実施しての価格を考えるとかなりコスパがいいでしょう。
ガソリンスタンド
近くにカー用品店が見つからない、出先でエアコンが効かなくなった場合など、ガソリンスタンドでもエアコンガス補充ができることを知ってますか?
給油のついでにエアコンガス補充ができるので、わざわざ遠くまで足を運ばなくてもいいというメリットがあります。
こちらも各社によって料金が異なります。
ENEOS | コスモ | 昭和シェル | |
---|---|---|---|
作業工賃 | 700g未満:14,545円 700g以上:16,363円 (補充) |
5,454円 (点検・補充) |
7,272円~ (入れ替え) |
エアコンガス | 上記工賃に組み込み | 1,363円/本 | 3,000円/本 (追加補充は1,000円/本) |
それぞれ、エアコンガス補充または入れ替えでの総額やカー用品店のように、ガス1本あたりの金額と作業工賃といったようにさまざまな料金体系となっています。
ガソリンスタンド店舗によっては割引サービス期間があったりもするので、店舗へ相談してみるのがおすすめです。
ディーラー
ディーラーでのエアコンガス補充は、カー用品店や整備工場に比べ割高の設定です。金額としては、約6,000円〜が相場となっていますが、これも各メーカーおよび車種によって異なる可能性があります。
また、ディーラーでは飛び込みで駆け込んでも、即日対応の難しい場合が多いので調子が悪くなったと感じた段階で早めの相談がいいでしょう。
長い年数をかけてエアコンガスが不足するのはともかく、低年式の車両でこういったトラブルの場合、何かしらの不具合が起こっている可能性が高いので、違和感があった場合はディーラーへ相談するのが重要です。
エアコンガス補充の口コミ
暑くなってきて、エアコンの効きがイマイチな感じがしていたので、車齢13年ということもあり、みんなのガレージジェームスで、エアコンガスクリーニングを実施。以前もR2で実施し、ガスクリーニング+オイル注入+ガス補充もしてくれるので、またお願いしました。それにしても標準400gのガスが90gしか入ってなかったのはびっくり!効きも良くなり安心しました。
7年目ともなるとエアコンもだいぶおつかれのようなのでガス補充してきました。(正確には総入替え真空引き)
ガス補充で冷えるようになりました。
エアコンガストータルで650g入るところ、495gまで減っていました。
イエローハットでの8,800円コースにて洗浄とガス補充とガスオイル補充を実施しました。
施行前は13.3度、施行後は9.8度になりました。
エアコンの効きが悪く、とりあえずフィルター交換してみましたが良くならず、結果ガソリンスタンドでガス真空引きして、新しいガスをもらいました。
4400円で済んだのでヨシです。
エアコンガスが不足してくると、やはり冷えが悪くなるためガス補充を実施することで改善している方が多いです。
近年夏場においては、酷暑と呼ばれる日が多いのでエアコンは家庭においてもカーライフにおいても必需品、命を守るものになりつつあります。
車の不調を感じたら、最寄りのディーラーや整備工場等に相談をし故障に至る前に解決するようにしましょう。
補充が必要かチェックしておこう
エアコンガスは入れ過ぎても効きが悪くなることがあります。エンジンルーム内のエアコンガス量を確認し、補充する前にチャージングホースのゲージが水色の適正値かを確認しましょう。
■サイトグラスで確認する
近年はサイトグラスのついていない車も多くなってきましたが、エンジンルームを開けた比較的見やすい位置にある、小さくて丸い窓ガラスのようなものがサイトグラスです。
まず、アイドリング状態にしてエアコンの風量を最大にし、エンジンルームを開けてサイトグラスを確認します。
この時、白い泡がみられますが、この泡がいつまでも消えないようであれば、冷媒であるエアコンガスが不足している可能性があります。適正な量が入っていれば、透明な液体で泡立たないか、泡立ってもほんの少しです。
■低圧ホースで確認する
エアコンガスを補充する際に使用する低圧ホースでも確認ができます。
アイドリング状態にしてエアコンの風量を最大にし、低圧ホース(Lのほう)に触ってみましょう。冷たいと感じれば、エアコンガスは正常に入っている状態です。
この時、高圧ホースは熱くなるので注意してくださいね。
エアコンガスの寿命について
車のエアコンガスは一般的に7〜8年で補充もしくは交換する目安となっています。ガスは走行時の振動等により、自然と抜けていくので定期的にガス補充をするといいでしょう。
2〜3年でガスが不足するなら、何かしらの不具合により漏れ出している可能性が非常に高いので注意が必要です。
車の車検が初回3年、その後は2年サイクルなので車検時に点検をしてもらうのもガスを切らさないようにする方法です。
定期的な点検、エアコンの効きが悪くなってきたと感じたら、ガス補充を行い快適なカーライフを送ってください。
■故障の場合
エアコンの効きが悪くなった、久しぶりにエアコンを稼働させたら冷風が出てこないといった故障が考えられる原因はさまざまです。
よくあるのは、フィルターの目詰まりやエアコンガス不足が考えられるのですが、それでも改善されない場合はエアコンシステムに異常が起こっている可能性が高いです。
それぞれの事象に対する考えられる原因、修理方法、金額などを一覧でまとめました。
トラブル事象 | 推定要因 | 対処法 | 修理費用の目安 |
---|---|---|---|
におい異音 | エアコンフィルターの詰まり エバポレータ不具合 |
フィルター交換 エバポレータ交換 |
3,000円~ 5~10万円 |
冷風が出ない | エアコンガス不足 コンプレッサー不具合 エバポレータ不具合 |
エアコンガス補充 コンプレッサー交換 エバポレータ洗浄 |
2,000円~ 5~10万円 6,000円~ |
温風が出ない | サーモスタット不具合 冷却水の漏れ、不足 |
サーモスタット交換 冷却水の交換、冷却水経路修理 |
10,000円~ 5,000円~ (ラジエータ取り換えになると10万円近くになる場合あり) |
異音、風が出ない | ブロアファンモーター不具合 | ブロアファンモーター交換 | 20,000円~ |
エアコンが作動しない | リレー、ヒューズ不具合 | リレー、ヒューズの交換 | 1,000円~ (リレー交換になると10000円~が目安) |
エアコンの故障は想定より高額な修理費用がかかるケースが多々あります。そのため、故障を機に車を乗り換える方も一定数いるようです。
とくに外車は部品代も高いうえに、専門の整備士のもとで修理を行うケースが多いためかなり高額な修理になります。
エアコンを故障させないように乗るポイントがいくつかあります。「エアコンフィルターのメンテナンス」、「エンジン始動直後のエアコン稼働を控える」、「停車する少し前にエアコンを切る」、「月に一度以上エアコンを稼働させる」といったことが挙げられます。
とくに、エアコンのトラブルで多く聞くのが、冬場はエアコンをOFFで使用し、汗ばむ時期にエアコンを稼働したら故障したといった事象は聞いたことがあるのではないでしょうか?
エアコンを長期間停止すると、コンプレッサーへオイルが供給されず乾いてしまいます。乾いた状態で急に稼働させると潤滑される前に金属部品同士でこすり合い傷つき、焼き付きを起こしてしまうことで故障してしまうのです。
普段からエアコンを使用しておくことでこうしたトラブルを未然に防ぐことができます。燃費を気にして普段からエアコンをOFFにする方も多いとは思いますが、故障した時の費用も高いので、たまにはエアコンを稼働して走行することをオススメします。
まとめ
走行中の振動で少しずつ漏れてしまうエアコンガスですが、チャージ・補充の目安は7~8年といわれています。
オートバックスなどのカー用品店や整備工場に依頼することもできますが、チャージングホースとガスを購入し、セルフでも意外と簡単に補充することができますので、この機会にぜひチャレンジしてみてください。
よくある質問
■エアコンガスの補充はどこできる?
オートバックスなどのカー用品店や整備工場で補充できますが、チャージングホースとガス本体を購入すればセルフでも補充ができます。
■エアコンガスを補充する目安はどれぐらい?
エアコンガスは車の走行中の振動で少しずつ漏れていきます。補充の目安は7~8年ですが、エアコンの吹き出し口からいつもと違う臭いがする場合、有害な分解生成物が発生している可能性がありますので、すぐにガソリンスタンドや整備工場で確認してもらいましょう。