「TNGA」ってなに?
トヨタの次世代プラットフォーム「TNGA」とは、トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャーの頭文字をとった略称で、プラットフォームの名称そのものを指す訳ではなく、プラットフォームを根幹とした車両作りの開発方針・開発手法です。
2015年12月に発売となった新型(四代目)プリウスにて初適用とされたことや、同年の10月にはトヨタのスペシャルムービーとして、TNGAの誕生秘話を描いたドラマに、佐藤浩市、三浦友和、永作博美、鈴木浩介、黒木華といった豪華俳優陣が出演し、テレビCMでも放映されたことで話題を呼んでいます。
TNGAの名前を聞くようになったのは四代目のプリウスが発売されて以降ではありますが、TNGAを推進するにあたりトヨタではそれよりも前の2011年からTNGAの構築に着手し、2013年から「TNGA企画部」を設置しています。
原価低減、商品力の飛躍的な向上。この双方を同時に達成する為に設定されたトヨタの新しいクルマづくり方針「Toyota New Global Architecture」これがTNGAです。
TNGA企画部が設置された際の具体的な取り組みは5つありそれぞれ下記になります。
【池原照雄の単眼複眼】プラットフォームを進化させるトヨタ流開発改革 | レスポンス(Response.jp)
http://response.jp/article/2012/04/18/173120.htmlトヨタ自動車の新たな車両開発手法である「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ」(TNGA)の概要が公表された。豊田章男社長が就任以来の3年間、一貫して社内に訴えてきた「もっといいクルマづくり」を支える骨格となる。
TNGA 5つの取り組み
■商品力の向上
「商品力の向上」として、顧客の感性に訴えるクルマとなるように、クルマを骨格から変える、低フード化、低重心化を実現し、カッコ良いデザイン、良好な視界確保、運動性能の向上などを掲げ、次期プラットフォームを開発し、2015年に発売する新型車より順次導入する。
まずは「走る」「曲がる」「止まる」に関わる基本部位の性能をレベルアップさせ、「もっといいクルマ」の実現をめざす。
パワートレーンユニットについても、低重心・高性能なユニットを新開発し、順次搭載をする。
■グルーピング開発によるもっといいクルマづくりと開発効率化
「グルーピング開発によるもっといいクルマづくりと開発効率化」については、中長期の商品ラインアップを確定し、搭載するユニットや配置、ドライビングポジションなどをトヨタの「アーキテクチャー」(クルマづくりの設計思想)として規定。
定められた「アーキテクチャー」に基づき、複数車種の同時開発を行う「グルーピング開発」により、部品・ユニットの共用化を進めて、「もっといいクルマづくり」と開発の効率化を推進する。
部品・ユニットにより異なるが、TNGAの導入により、20~30%の開発効率向上をめざし、その結果として得られたリソーセスを、さらに「もっといいクルマづくり」に投入していく。
■ものづくり改革
「ものづくり改革」では、仕入先と調達・生産技術・技術の各部門が四位一体の活動により、よりつくりやすく、よりシンプルな、部品・ユニットの構造を実現。
これにより、シンプルでコンパクトな製造工程づくりができ、これまで以上に一つひとつの部品を創りこみ、より高い品質を確保する。
■グローバル標準への取り組み
「グローバル標準への取り組み」では、従来トヨタ専用規格に準じた部品開発だったものを、今後は多数の自動車メーカーがグローバルに採用している標準部品も採用できるよう、グローバル標準規格に対応する。
■TNGAと連動した調達戦略
「TNGAと連動した調達戦略」については、調達部門では、「グルーピング開発」による部品・ユニットの共用化に対応し、複数の車種をまとめて、グローバルに、車種・地域・時間をまたいだ「まとめ発注」を実施し、さらなる競争力確保を進めていく。
TNGAによる新プラットフォーム
TNGAによる新しいプラットフォーム
先ほど挙げた5つのポイントを踏まえ、トヨタ車の開発は進められています。新規投入するプラットフォーム(車台)の剛性を骨格の見直しなどにより、従来比で30~65%高めると明らかにしています。
骨格の見直しや、高張力鋼板の使用拡大、さらにトヨタの独自技術によるLSW(レーザー・スクリュー溶接)を車体溶接に採用するなどをして、「ねじり剛性」を大幅に高めたという。
ねじり剛性はプラットフォームのサスペンション取り付け部を固定して測定するもので、剛性の高さは走行安定性や衝突安全性能などの向上につながる。
また、これにより剛性の強化だけではなくデザイン自由度も高めている。
2015年末に発売された4代目プリウスも、このプラットフォームで設計され、剛性は65%向上させています。
車体の剛性を高めるための技術としては、短時間で超ハイテン部品を造る「ホットスタンプ」、車体溶接ラインを一変させる「LSW(レーザー・スクリュー溶接)」の2つの技術が取り上げられています。
「ホットスタンプ」は、通常はガス炉による加熱(鋼板の強度を高めるため)を4分から6分を要して加熱していたものを、電気を通して900度ほどに加熱する方式にし、わずか10~20秒に短縮する技術です。
大型設備のガス炉が不要なため、向上のラインの長さは約10分の1で済み、設備費用は3割も低減が可能で、車体剛性を高めると共に大幅に生産性を向上させています。
LSW(レーザー・スクリュー溶接)については簡単に説明すると、レーザー光線によって重ねた鋼板を熱して溶接するもの。
主流となっていた車体の溶接は、2つの電極チップで鋼板を挟み、通電・加圧で接合する「スポット溶接」でしたが、LSWはそれを補完、あるいは代替する新しい溶接技術です。
こちらもホットスタンプ同様、加工時間の短縮が特徴となっており、スポット溶接が1点当たり2~2.5秒を掛かるのに対して、0.3~1秒程度と驚くほどのスピードに。
また、スポットは溶接の間隔を最低25mm程取る必要がありますが、LSWはほぼ任意にでき、溶接箇所を増やすことができ、車体剛性の向上につながっています。
【池原照雄の単眼複眼】“もっといいクルマ”を強力サポート…トヨタの新生産技術群 | レスポンス(Response.jp)
http://response.jp/article/2015/04/15/249023.htmlトヨタ自動車が競争力の源泉である生産現場での変革の取り組みを、このほど内外のメディア関係者らを対象にした取材会で公開した。同社は2013年度からグローバルで工場の新設を凍結してきたので、この間は生産ラインや生産技術での新機軸が公開される機会もなかった。
TNGAによるパワートレインの一新
新型パワートレイン、直列4気筒2.5リットル直噴ガソリンエンジン
トヨタは、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)により、エンジン・トランスミッション・ハイブリッドシステムも一新させ、2017年以降、新型パワートレインの搭載車種を年100万台のペースで増加させ、一気に拡大していくと発表しています。
■ 一新されるエンジン
トヨタの新型パワートレイン、直列4気筒2.5リットル直噴ガソリンエンジン・トランスアクスル
2021年までの5年間で、エンジンは、9機種・17バリエーションを投入。
2016年12月には、2.5リットルガソリン車用・ハイブリッド車(HV)用のエンジンが新開発され、高速燃焼技術、可変制御システムを採用した他、様々なエネルギーロスを少なくして熱効率を向上させると共に、高出力を両立。
ガソリン車用、ハイブリッド車用それぞれ、世界トップレベルの熱効率40%・41%を達成。同時に高レスポンス化と全速度域での高トルク化など、多くの新技術の採用しています。
トヨタでは、新型エンジンを「Dynamic Force Engine(ダイナミック・フォース・エンジン)」と称して、今後もさらに進化させていくとしています。
■一新されるトランスミッション
FR用10速オートマチックトランスミッション
トランスミッションも同5年間で、多段化AT、新機構の無段変速機(CVT)など4機種・10バリエーションを投入。
新型8速・10速ATは、ギヤ歯面の摩擦係数を低くする新たな加工を施してエネルギー伝達のロスを削減させ、クラッチ機構内の摩擦材形状を最適化。
回転時のクラッチの損失トルクを約50%低減(従来型6速AT比)させるなど世界トップレベルの伝達効率を達成させています。
さらに、ギヤをワイド化すると共に、高性能・小型トルクコンバーターを新開発し、ロックアップ領域を拡大。アクセル操作に素早く、滑らかに反応することで、ダイレクト感あふれる走りを追求。
また、10速ATは段数アップでトータルギヤ数を増やしながら、低中速域を中心に、各段の使用領域を最適化するクロスギヤを採用。FRプレミアム車にふさわしいスムースかつ世界最速レベルのクイックな変速を実現させています。
■一新されるハイブリッドシステム
ハイブリッドシステムは、6機種・10バリエーションの投入を予定しており、4代目プリウスに採用された小型・軽量・低損失化技術を継承する2.5リットルエンジン用システムを一新させ、FR用の高性能マルチステージTHS IIを新開発しています。
新開発されたマルチステージTHS II
マルチステージTHS IIは、ハイブリッド車の走りのイメージを一新する高い発進加速性能とダイレクト感溢れる走りを実現し、高速走行時のシステム効率の向上に加え、高車速域でもエンジン間欠運転を可能にすることで高速燃費を向上させています。
また、プラグインハイブリッドシステムも一新。従来のモーター走行に加えて、これまで発電機として使用していたモーターを、走行用としても使用する「デュアルモードドライブシステム」により、力強いEVモード走行を実現させています。
また、大容量のリチウムイオン電池の採用により、「プリウスPHV」のEV走行換算距離(EV走行距離)を60km以上と大幅に延ばしている。
これらの計画通りに投入が進んだ場合、2021年には日米欧と中国で販売するレクサスを含めたトヨタ車の、6割以上が新エンジンなどの搭載車になるとのこと。
また、同年にこれらの地域で販売するトヨタ車のCO2排出量は、燃費性能の向上分だけで2015年の実績に比べて15%以上の削減が可能としています。
まとめ
以上、トヨタの次世代車両技術「TNGA」に関する情報をまとめましたが、いかがでしたでしょうか。
トヨタの人気SUV「C-HR」、2017年夏に発売された8代目の新型「カムリ」にも全面的に採用されています。
安全性能の向上、環境への配慮、燃費の向上、デザイン性の向上と、どれをとっても素晴らしい車両技術ですね。
今後もTNGAについての情報は随時更新していきたいと思います。