日産 ラシーンとは?
《写真提供:response》日産ラシーン
「日産 ラシーン」は、1993年に開かれた東京モーターショー(現:JAPAN MOBILITY SHOW)で初めて出展され、翌年の1994年にリリースされたコンパクトRVで、クロスオーバーSUVの元祖ともいわれています。
当時のRV車やSUVは、堅牢なラダーフレームを持ち、悪路走破性を第一とした車が多かった時代。しかし「日産 ラシーン」は、ボクシー・ラインを特徴とし、全車4WDモデルながら本格的なオフロード走行を目指すのではなく、タフにランナバウトできることを目指した車でした。
実際、先代のサニーをベースにクロスカントリーテイストを盛り込んだ作りになっており、モノコック構造のボディを持つ普通車をベースに開発されることが多い現在のクロスオーバーSUVに通ずるものがあります。
一風変わった「ラシーン」という車名は、未知なる旅の水先案内人をイメージさせる「羅針盤」に由来する造語。同じ1994年に登場した「トヨタ RAV4」とともに、日本のクロスオーバーSUVの歴史を築いてきたという意味で、「ラシーン」のネーミングはピッタリなものになりました。
ボディサイズは、全長4,115mm×全幅1,695mm×全高1,515mmと非常にコンパクト。エンジンは当初、1.5L 直4・4バルブDOHC(GA15DE型)を搭載していましたが、1997年のマイナーチェンジで1.8Lエンジン(SR18DE型)が追加されます。
これらの変更により、一部で非力との声があった1.5Lエンジンへの不満が解消されました。さらに、フロント周りのデザインが変更され、安全装備が充実しています。
1998年には、スポーティーグレードとなる「ラシーン フォルザ」が登場。2.0LのSR20DE型エンジンを搭載し、丸目4灯のフロントマスクと、スラントさせたリアゲートを搭載し、3ナンバーサイズの大型オーバーフェンダーを備えました。
こうしてマイナーチェンジによるバージョンアップを試みたラシーンでしたが、もともとあったラシーンの魅力やキャラクター性を失わせることにもつながったようで、惜しまれつつも2000年8月に生産を終了します。この間、フルモデルチェンジは一度もなく、約6年の販売期間でした。
こうした経緯だけを見ると、ラシーンはかなり不人気な車のように映りますが、およそ6年のモデルライフで総生産台数は7万3千台弱。これは平均年間1万台以上が売れていた計算になり、人気車種のひとつであったといえるでしょう。
とはいえ、ラシーンがもっとも高くなっているのは、現在のほうかもしれません。ラシーンは現在、中古車市場でたいへんな人気で、ラシーンを専門に扱う中古車販売店やカスタムショップがあるほどです。ラシーンが発売開始された約30年前と違い、クロスオーバーSUVが大人気のジャンルとなり、時代がようやくラシーンに追いついたといえるかもしれません。
日産 ラシーンは新型が登場するのか?
《写真提供:response》ぼくらのどこでもドア、新型に道を譲る形で生産中止
中古車市場での根強い人気を受け、Google検索でも「ラシーン」と入力すると、検索候補ワードに「新型」と出てくるほど「日産 ラシーンの新型は登場するのか」は、注目を集めています。
執筆している2023年12月現在、日産からの正式な新型発売は発表されていません。
とはいえ近年、「ダイハツ ロッキー」や「日産 キックス」のように、一度は生産中止になった車が復活を遂げた例はいくつか存在します。
そのため、クロスオーバーSUVの人気の波に押されラシーンの復活も…といった可能性もゼロとはいえません。もし新型ラシーンが気になる方は、日産からの発表をこまめにチェックしておくとよいでしょう。
日産 ラシーンの人気の理由とは?
《写真提供:response》《画像:日産自動車》 日産ラシーン
「日産 ラシーン」が生産終了から20年以上経過した今、人気を集める理由はどこにあるのでしょうか。4つのポイントを取り上げます。
■レトロでポップなフォルム
日産 ラシーンの外観は、角ばったずん胴型が特徴。そのレトロでポップなフォルムは唯一無二のデザインです。
全車4WDで少しオフロード感はありますが、当時のRV車で主流だったラダーフレームを搭載するタイプとは、フォルムから一線を画していました。それはラシーンが最初から悪路走破を念頭に置かず、街乗りを考えたデザインだったためで、いい意味で差別化されました。
フロントグリルや薄型ヘッドランプは直線的かつ平面的で、曲線的なフォルムが多かったあの時代では斬新なデザインでした。カラーも、いわゆるアースカラーが多く採用されたことも、時代を経ても古くならない理由のひとつなのでしょう。
これら優れたデザインは、「日産 パオ」や「日産 Be-1」など、個性あるデザインをいくつも手掛けた坂井直樹氏が関わっているとされています。いずれも斬新なのに、どこかレトロ感が漂うデザインで今なお人気があり、ラシーンのデザイン性にも納得させられます。
■走行性
ラシーンは生産終了から20年以上が経過しており、さすがに現在の最先端の技術が搭載された車とは走行性能に差があります。とはいえ、そのコンパクトなボディサイズは日本の道路事情にフィットするため、優れた走行性を実現させてくれるでしょう。
さらにクロスオーバーSUVの先駆けらしく、全車に4WDシステムが搭載されているので、多少の雪道や悪路でも問題なく走れて、実用性は高いといえるはずです。
■広々とした荷室
日産 ラシーンは、荷室が奥行き650mm×幅1,250mm×高さ750mmで、コンパクトサイズの割には広いスペースを確保しています。また、後部座席を倒すことで、より広い荷室スペースを作り出せます。
ハッチバックドアには、上下分割開閉ハッチが採用されており、狭い場所での積み込みも楽。最低地上高が170mmなのも手伝って、荷物の乗せ降ろしは比較的容易といえそうです。
■カスタムしやすい
現在、ラシーンを専門に扱う中古車販売店やカスタム専門店が全国にいくつもあり、魅力的なパーツが手に入れやすいのもラシーンの魅力です。
長い期間愛されている車種だからこそパーツやアイデアが豊富で、オリジナリティも発揮しやすいでしょう。
日産 ラシーンの価格、内外装、スペックについて
《写真提供:response》《撮影 雪岡直樹》 1997年式 ラシーン(RHNB14)
ここからは、日産 ラシーンの価格や内外装、スペックについてみていきましょう。
価格は、執筆している2023年12月時点で、中古車市場に150台ほどあり、車両本体価格(消費税抜)は24.5万円~208.2万円となっています。(レスポンス中古車調べ)
発売開始から約30年が経過しようとしているとは思えないほど、高額になっています。
■内外装の特徴
ラシーンの内装でまず目につくのはインパネ部分でしょう。直線基調のT字型インパネは、外装デザインとの調和が見られます。着座位置はやや高く設定されており、低車高の車ながら運転しやすい視界を確保しています。
外装は、なんといってもレトロでポップな独特のデザインが特徴。少しのオフロード感を残しつつ、街乗りでもまったく違和感がなく、古さも感じさせません。
カラーバリエーションは全部で15色。グレードも前期・後期あわせて14グレードあり、バラエティ豊かです。
■スペックついて
日産の公式サイトに残るラシーンのスペックは「タイプII」のもので、ボディサイズは全長4,115mm×全幅1,695mm×全高1,515mm。
エンジンは発売当初、1.5L 直4 4バルブ DOHC(GA15DE型)を搭載し、最大出力が77kW(105ps)/6,000rpm、最大トルクは135N・m(13.8kgm)/4,000rpmでしたが、その後1997年のマイナーチェンジして1.8LエンジンのSR18DE型が追加されました。
さらに1998年にスポーティ・グレードの「ラシーン フォルザ」も追加され、2.0LエンジンのSR20DE型がラインアップに加わっています。
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 4,115mm×1,695mm×1,515mm | |
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ホイールベース | 2,430mm | |
最大乗車定員 | 5名 | |
車両重量 | 1,190kg | |
燃費 | 10モード/10・15モード燃費:15.2km/L | |
エンジン種類 | 水冷直列4気筒 1,497cc | |
エンジン最高出力 | 77kW(105ps)/6,000rpm | |
エンジン最大トルク | 135.3N・m(13.8kg・m)/4,000rpm | |
駆動方式 | フルタイム4WD | |
トランスミッション | 5MT | |
新車価格 | 185万5,610円(消費税抜/当時、消費税は3%) |
日産 ラシーンに似た車を紹介!!
日産 ラシーンの新型を欲しいと思っておられるなら、ラシーンに似たライバル車も検討してみるのはいかがでしょうか。
ここでは、ラシーンと比較されることがある人気車種を3つ紹介します。
■ジープ チェロキー
《写真提供:response》ジープ・チェロキー ロンジチュード 4×4
最初に紹介するのは「ジープ チェロキー」です。
1974年に発売された初代、1984年に発売された2代目があまりにも有名で、ヘビーデューティーなイメージの強い「ジープ チェロキー」ですが、2014年5月から日本で販売が開始された5代目(KL型)は、親会社となったフィアットの影響もあり、先進的なスタイルになりました。
ミッドサイズSUVとして初となる9速オートマチックトランスミッションを全グレードに標準装備し、路面状況にも細やかに対応。さらに、モダンで先進的なエアロデザインが個性を主張します。
■ダイハツ タフト
《写真提供:response》《写真提供 ダイハツ工業》 新型ダイハツ・タフト(G/2WD)
次に紹介するのは、ラシーンよりひと回り以上は小さい「ダイハツ タフト」です。
それでも、タフさを感じさせるスクエアボディ、愛着持てる道具感、個性的なかわいらしさが同居する「ダイハツ タフト」は、日産 ラシーンを好きな方にきっと刺さるはず。
ワクワクを大切に、楽しく見えることにこだわっており、低くワイドにしたスタイルも日産 ラシーンに通ずるものがあります。
■ホンダ クロスロード
《写真提供:response》original 【ホンダ クロスロード 発表】ライバルは エクストレイル?
最後に紹介するのは、おそらく紹介する3車種の中で一番知名度が低い「ホンダ クロスロード」です。
2007年に発売を開始し、全長が4,285mmのコンパクトサイズながら室内には3列シートを設け、利便性を特徴としたSUV。フロントマスクとスクエアなボディは、日産 ラシーンに近いといえるかもしれません。
これまでにないジャンルを切り開くという意欲的なコンセプトを持ち、それゆえに直接的なライバルはいないといわれた車でした。ただ残念ながら人気は鳴かず飛ばずで、4年に満たない販売期間を経て、生産終了となりました。
まとめ
《写真提供:response》『日産ラシーンのデザイン開発』
今回は、販売が終了してから20年以上が経過してもなお根強い人気を持つ「日産 ラシーン」についてまとめました。
レトロでポップな独特のデザインと、時代を先取りしたクロスオーバーSUVのコンセプトは、時代を超えて魅力を発揮しています。もし個性的なクロスオーバーSUVをお探しでしたら、検討してみるのはいかがでしょうか。
よくある質問
■ラシーンの販売期間は?
日産 ラシーンの販売期間は1994年~2000年の6年間で、その間にフルモデルチェンジはなく、1代限りの車でした。
■ラシーンは何人乗り?
日産 ラシーンの販売期間は1994年~2000年の6年間で、その間にフルモデルチェンジはなく、1代限りの車でした。