セダン販売終了、英国工場閉鎖… シビックはまた消えてしまうのか
《画像提供:Response 》ホンダ シビックタイプR
日本で、世界で愛されてきたホンダの車の中でも、知名度の高い車名のひとつが「シビック」ではないでしょうか。
1972年に登場した初代から世界戦略車としての役目を負っていたシビックですが、扱いやすいサイズや小粋なデザイン、さらに軽快な運動性能まで持っていた歴代シビックは、たくさんのオーナーを幸せにしてきた車です。
ホンダ 歴代シビックタイプR
そんなシビック、現在は国内では、10代目となるハッチバックモデルと、それをベースにしたタイプRがラインナップされているのですが、そのどちらもがこのままモデル廃止になるのではないかという噂が流れています。
グローバルでは先代にあたる9代目モデルが、日本市場とはマッチしないことから導入が見送られるなど、近年は国内マーケットとの関係があまり芳しくなかったシビック。10代目がせっかくカムバックしたあとで、販売成績の不振でまた国内では選べなくなってしまうのでしょうか。
シビックの魅力と将来、現在の価格帯について、まとめてみました。
現行型シビックをおさらい!久しぶりの通常販売モデル
■セダンとハッチバック、さらにタイプRもラインナップ
10代目にあたる現行シビックは、現在ではハッチバックとタイプRのみのラインナップとなっていますが、2017年の国内デビュー時にはセダンもあわせて3種類で国内市場へカムバックしていました。
このうちセダンは2020年8月を持って販売を終了しており、タイプRも予定販売台数を完売した旨が公式サイトに掲載されています。さらに頼みの綱のハッチバックも「一部カラーがお選びいただけない場合があります。」との記載が見られるなど、先行きが怪しくなっています。
■アグレッシブな内外装デザインが持ち味!
現行シビックは、ハッチバックとそれをベースにしたタイプR、さらにセダンの3種類ともに、大型のフロントグリルと鋭い眼光のLEDヘッドライトで威圧的なフロント部と、ファストバッククーペのように寝かされたリヤウィンドウが流麗なテール部、開口部風の造形が多数並ぶ前後バンパーが特徴的ですね。
過去のシビックでは、落ち着いた大人向けの車種としてイメチェンを図っていた時期もあったのですが、現行モデルでは若々しいスポーティさの直球勝負が潔い印象です。
■1.5リッターターボのみ、ハイブリッドなしの思い切り
《画像提供:Response 》ホンダ シビックハッチバック(改良前モデル) エンジンルーム
潔さはラインナップにも現れており、通常ラインであるハッチバックとセダンでは、ダウンサイジングコンセプトによる1.5リッターターボエンジンのみラインナップするという点も驚きでした。
ホンダのラインナップでも電動化車両がグングン増えていますが、シビックは一切設定なし。2.4リッターの自然吸気エンジンを凌ぐという高トルクを持つ1.5リッターターボエンジンと、CVTだけでなく6速MTも用意するという走り重視のラインナップは、シビックのスポーティな特徴をはっきりと表しています。
ホンダ シビックのスペック
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 4,520mm×1,800mm×1,435mm | |
---|---|---|
ホイールベース | 2,700mm | |
最大乗車定員 | 5名 | |
車両重量 | 1,330kg | |
燃費 | WLTCモード:16.4km/L | |
エンジン種類 | 直列4気筒ガソリンターボ 1,496cc | |
エンジン最高出力 | 134kW(182PS)/5,500rpm | |
エンジン最大トルク | 240N・m(24.5kgf・m)/1,900-5,000rpm | |
駆動方式 | 前輪駆動(FF) | |
トランスミッション | 6速MT | |
新車価格 | 2,680,000円(消費税抜) |
歴史あるホンダ英国工場が2021年で閉鎖! ブレグジットのせい?
ホンダオブザUKマニュファクチャリング スウィンドン工場で生産されるシビック
セダン市場がどんどん小さくなっている国内において、シビックセダンの廃止はデビュー当時から想像がついていたものの、シビックハッチバックは、ライバルであるトヨタ カローラスポーツのスマッシュヒットなどもあって今後の活躍も期待されていた車種です。
それなのにモデル廃止の噂が流れているのは、生産を担当している英・スウィンドンの生産工場が2021年7月で閉鎖されることが決まっていることも大きな理由のひとつです。
10代目シビックは、国内に導入する際に、セダンは国内の工場で生産するものの、ハッチバックとタイプRは英国で生産して日本に輸入するという方法を取りました。ロンドンから車で1時間ほどに位置するスウィンドンでは、欧州向け四輪完成車を集中的に生産してきたからです。
しかし、欧州域におけるホンダの販売シェアの低迷や、厳しくなる電動化への要求に応えるために生産段階からの効率化が必要となっているなどの理由で、1985年から40年近く操業を続けてきたスウィンドンの工場の閉鎖が決まったというわけです。
表向きには英国によるEU離脱「ブレグジット」は関連がなく自動車業界の変化に対応するため、とされてはいますが、欧州域の部品サプライヤーから英国へ部品を輸入する際、また英国から欧州へ完成車の輸出する際に追加のコストがかかることも予想されるなど、関連が全くなかったというわけではないでしょう。
このことが主な理由となって、同拠点で生産され日本に輸入されていたシビックハッチバックとタイプRの今後が不透明になっているというわけです。
日本国内の工場へシビックハッチバックの製造を移管する可能性はゼロではありませんが、国内でシビックがあまりよい販売成績を残せていない点もありますし、何より現行シビックはモデルライフ終盤。これを期に再度のモデル廃止という可能性の方が現実味があるといえそうです。
アメリカでは新型モデルも発売間近!日本投入はあるか?
《画像提供:Response 》ホンダ シビック プロトタイプ
再度のモデル廃止という悲しい予測をお伝えしてきた後ではありますが、明るいニュースもあります。
2020年11月に、米国で11代目となる新型シビックセダンのプロトタイプモデルが公表されており、その完成度の高さは今すぐにでも市販できそうだったほど。実際、2021年春の米国での発売が予定されています。
プロトタイプを見る限り、現行にあたる10代目でも大きくイメージチェンジをしたシビックでしたが、11代目も印象が変わり、よりシンプルなデザインへ回帰したイメージとなっているようです。
《画像提供:Response 》ホンダ シビック プロトタイプ
特に印象的なのは、グッと後ろ寄りに、かつ立てられて配置されたAピラーかもしれません。良好な前方視界の確保に役立つと同時に、ここ数世代のシビックよりも背筋をピンと立てたかのような印象です。後輪駆動車のような高級感があり、ちょっと大人っぽさを感じさせますね。
ヘッドライトやテールライトの造形も、10代目ほどにギラついていないシンプルな造形となっており、水平基調が強調されたボディにもマッチしています。
逆スラント風になっているフロントグリルや、ピラーにクォーターガラスが突き刺さっているようなリヤ部の造形などは、現行型とのつながりも感じさせますね。
《画像提供:Response 》ホンダ シビック プロトタイプ インテリア スケッチ
そんな魅力的な11代目シビック プロトタイプですが、我々日本のユーザーとして注目したい点は、日本国内で同コンセプトカーを公開していない点かもしれませんね。
今年初頭でいえば1月にオンライン開催で開幕した東京オートサロンの「バーチャルオートサロン」などでジャパンプレミアとして公開することもできたはずですが、されませんでした。
もちろん10代目も、北米では2015年から先行販売され、1年少々後の2017年1月、東京オートサロンでやっと日本仕様が公開されたというタイムラグはあったのですが、それは9代目が国内導入されなかったことによる調整期間とも考えられます。
今回、直接の後継モデルにあたる11代目プロトタイプが国内で公開されていないことは、シビックを国内市場で再度廃止することを示唆していると考えてしまっても、不思議ではないでしょう。
思い出のシビックたち、印象的なモデルをピックアップ
■5代目シビック(EG型):「スポーツシビック」はよく走った!
《画像提供:Response 》ホンダ シビック SiR(EG型 1993年型)
丸みを帯びたフォルムが現代でも新鮮な5代目シビック。ボンネット高を低めに設定したスポーティなデザインは、兄貴分のアコードなどとも共通する、当時のホンダ車の特徴的なフォルムでした。
セダンはこの代からフェリオというサブネームが付き、大きめのトランクスペースでファミリーカーにもぴったりでしたが、ハッチバックは元気いっぱいでパーソナルユースにぴったり。
ハッチバックはちょうど現在のフィットと同等の全長と全幅ですが、フィットと比べると全高が150mm以上も低いため、驚異的な室内の広々感や荷室スペースはありませんでした。
しかし、その低く構えた低重心フォルムと、先代から大幅改良されたサスペンションを武器に、軽快かつコントローラブルな走行性能が人気を得ました。
先代モデルから設定が始まったホットグレード「SiR」がこの代でも設定されており、1.6リッターのVTECエンジンの痛快な吹け上がりとシャープな旋回性能は、6代目でいよいよ登場するシビック タイプRのご先祖のような存在ともいえそうですね。
一般的ハッチバックに見えて後部はガラスが上開き、それ以外のテールゲートは下開きと分割式のハッチとなっているなど、ホンダらしい個性的な設計もあって、現在でも高い人気のある世代です。
■8代目シビック(FD型):おじさんセダン化?!タイプRもセダンに
ホンダ シビック ハイブリッド(FD型 2005年型)
7代目シビックのハッチバックは、ハッチバック車ながらインパネシフトやウォークスルーなどミニバン的な使い勝手を実現した挑戦的モデルで、欧州市場では好評だったものの、国内販売では弟分のフィットの登場もあって苦戦してしまいました。
その反動からか8代目では、国内向けシビックはセダンボディのみに集約、さらに3ナンバーサイズにサイズアップさせたことで、車格向上でフィットとの差別化を図りましたが、親しみやすさのある車名と高級感を模索した車両のイメージ的なギャップや、そもそも同クラスのセダン需要があまりなかったこともあって、販売台数はさらなる低空飛行に陥りました。
タイプRもセダンボディで登場し、当初はボディの大型化もあって評判は伸び悩んだものの、ハッチバックよりも開口部が小さいセダンボディがボディ剛性上有利なことや、もはや日常使用は限界ギリギリというほどに硬められたサスペンションなどによる高度なコーナリング性能は好評となり、息の長い人気を得ることに成功しました。
8代目で注目したいのは、国内と違い、海外向けにはクーペやハッチバックなど、魅力的な専用デザインのモデルが多数ラインナップされていたこと。特にハッチバックはあまりに要望が大きかったのか、3ドアのタイプRに限って「タイプRユーロ」として国内へ限定導入したほどでした。
この8代目のセダンの不調によって、9代目シビックは、ついに日本では標準ラインの導入を終了。タイプRを750台限定販売するのみとなってしまいました。
【2021年最新】 ホンダ シビックの新車・中古車価格まとめ
《画像提供:Response 》ホンダ シビックハッチバック
現在ホンダホームページ上では、シビックハッチバックの掲載は続けられていますが、先述の通り「一部カラーがお選びいただけない場合があります」と注意書きがされています。
在庫がある限りは販売が続けられるものと思われますが、もとより在庫数はそれほど多くないことが予想されますので、シビックハッチバックが気になっていた方はすぐにでも販売会社にコンタクトを取ることをおすすめします。
2021年3月現在、シビックハッチバックの税抜新車価格は268.0万円のみと非常にシンプルで、単一グレードのみの設定の上、CVTと6MT車で価格は共通となっています。
《画像提供:Response 》ホンダ シビックハッチバック(改良前モデル)
中古車では、歴代で人気のある車種としては意外と選びにくい程度の中古車在庫しか見受けられないのが現状です。2021年3月現在、ハッチバック系のシビックは全世代まとめておよそ300台程度しか確認できず、別車種扱いのタイプRと在庫台数はあまり差がないほどです。
そのおよそ300台のうち、200台あまりが現行モデルのハッチバックとなっています。
あまり在庫車両が多くないこともあってか相場は高めで推移しており、現行モデルの税込中古車本体価格平均は257.2万円となっています。
まとめ
ホンダ シビックハッチバック(手前)、セダン(奥)
一時期はホンダの象徴的モデルでもあった、シビックの現状と未来についてご紹介してきました。
もちろん現行モデルは魅力的ではありますが、ターゲットである若者に振り向いてもらうには、単一グレードでコミコミ300万円オーバーという価格はやや上級移行しすぎで、ボディサイズも大きすぎるように感じられます。
元々の実用車的なシビックの立ち位置は、現在のフィットがしっかり引き継いでいるので、国内でのシビックはハードコアなタイプRだけに集約されたとしても、あまり影響がないかもしれませんね。
タイプRが今後のシビックに設定されるのか、そして今後のシビックが日本に導入されるのか、引き続き注目していきたいところです。