スタッドレスタイヤの洗浄と点検について
スノーシーズンが終わり、スタッドレスタイヤを長期保管する前には、付着した汚れを落とし、タイヤの状態を点検することがポイントです。
地面に接しているタイヤとホイールは、常に泥や砂、ブレーキダスト等にさらされています。これらの汚れを放置すると、タイヤやホイールの傷みの進行や変色の原因になります。また、積雪が多い地域では、凍結防止のため路面に塩化カルシウムが散布されますが、これは放置するとホイールの錆びを引き起こします。
普段タイヤが車に装着された状態では、ホイールの内側までしっかり洗浄したり点検したりするのはなかなか難しいもの。保管前に車から取り外した時には、ぜひすみずみまでタイヤやホイールをケアしてあげましょう。
■洗浄方法
タイヤは路面から巻き上げた泥や砂、またブレーキをかけたときに発生する削りカス(ブレーキダスト)など、頑固な汚れが付きやすい環境にさらされています。カー用品店ではタイヤを洗浄するためのさまざまなクリーナーや洗剤が販売されていますが、実はタイヤにとってベストな洗浄方法は、ズバリ「水洗い」です。強力な洗剤はたしかに汚れを落とす効果がありますが、タイヤのゴムに含まれる油分を除去しすぎてしまい、タイヤの劣化が早まるというデメリットもあるのです。
水だけではどうしても落ちない汚れには、中性洗剤を使用し、スポンジややわらかいブラシで優しくこすりながら洗浄します。洗浄後は、水で洗剤をしっかり洗い流すことを忘れずに。また、保管前には直射日光の当たらない日陰等で十分に乾燥させましょう。
■異物の除去方法
タイヤの溝には、路面の砂利や小石、釘などが挟まってしまうことがあります。特にスタッドレスタイヤは、サマータイヤと比べてタイヤのトレッド面(路面と接する面)がやわらかく、異物が挟まりやすい傾向があります。異物が挟まると、走行中の異音やパンクの原因になる危険性があるため、もし異物を発見した場合には、早めに除去しましょう。
最も活用できる道具はマイナスドライバーです。挟まった異物をこじるように溝から摘出してください。ただし、力を入れすぎてタイヤを傷つけないように注意が必要です。他にもラジオペンチ、リードペンチといった道具も、深くはまってしまった物を取り除くときに役立ちます。なお、ボルトやねじ、釘などがタイヤに刺さっている場合、むやみに取り除くとパンクにつながる危険があるため、取り除く前にカー用品店やディーラーに相談するとよいでしょう。
■点検方法
車を構成している多くの部品の中で、走る・曲がるといった動作をすべて路面に伝えているのはタイヤです。そのため、車を安全に走らせるためには、タイヤを常に適正な状態に保つことが大切です。
まず、空気圧が適正かを確認しましょう。ホームセンターやカー用品店で販売されているタイヤ空気圧チェッカーのほか、ガソリンスタンドやカー用品店に設置されている無料の空気入れで、簡単に確認できます。あまり頻繁に車に乗らないという方は、知らず知らずのうちに空気が抜けてしまっていることもあるので、久しぶりに車を使用する時には、出発前に空気圧を確認しておきましょう。
また、タイヤは使用するうちに、ひび割れを起こしたり、擦り減ったりといった劣化が進みます。車の乗り方や走行距離、保管状況によって、劣化のスピードは様々です。そのため、車に乗る前にタイヤの状態を目視で確認する習慣をつけておきましょう。特に、タイヤのトレッド面(路面に接する面)に刻まれている溝の深さは、雨の日の安全運転に大きく影響します。溝が浅くなると、タイヤと路面との間の水を排出する機能が落ち、すべりやすくなるためです。スリップサインと呼ばれる、タイヤ側面の三角マークでタイヤの残り溝をチェックし、残り溝が少ない場合には新しいタイヤに交換しましょう。
スタッドレスタイヤの保管方法について
スタッドレスタイヤは冬季のみ使用するタイヤです。一年のうちの大半は車から外し、保管しているため、正しく保管しないとみるみるうちに劣化が進み、気づいたときには使用できなくなってしまうことも。できるだけ長持ちさせるためには、どのようにすればよいのでしょうか。
■保管場所の条件
タイヤの主な原材料であるゴムは、「紫外線」と「オゾン」に弱い性質を持っています。そのため、保管場所には、この2つをできるだけ避けられる場所を選ぶとよいでしょう。
■屋内・屋外での保管方法
タイヤの保管には、屋外より屋内の方が適しています。ゴムの大敵となる紫外線、すなわち直射日光を防ぐことができ、雨風からも守ることができるからです。紫外線を多く浴びたタイヤは、ゴムの劣化が進行し、ひび割れ等が起きてしまいます。
屋内で保管する場合、直射日光が差し込む窓の近くは避け、なるべく湿気の少ない場所を選びましょう。湿度もまた、加水分解によりゴムの構造を弱くし、劣化を早める原因となります。
屋外で保管する場合には、タイヤカバーで覆って直射日光から守るのがおすすめです。その際、エアコン室外機、発電機など、オゾンの発生源となるものの近くにおかないこともポイントです。やむをえず近くに置く場合、タイヤカバーで覆うほか、タイヤを置くスペースを板や段ボールなどで仕切るなど、周りの環境の影響が最小限になるようにしっかりと対策しておきましょう。
■タイヤ保管サービス
自宅がマンション、アパートなどで、タイヤを保管するスペースがないという方は、自動車ディーラーやカー用品店、貸倉庫などのタイヤ保管サービスの利用もおすすめです。
料金設定の相場はタイヤのサイズにより異なりますが、おおむね年間10,000円から15,000円ほど。なお、タイヤをホイールに装着したままの預かりよりも、タイヤのみでの預かりの方が料金が安いようです。
タイヤを取り外して持ちこむところや、タイヤの交換作業まで行ってもらえるところなど、サービス内容は業態により異なります。自分ではタイヤを交換する道具を持っていない場合や、交換作業が負担と考える方には、すべておまかせできる自動車ディーラーやカー用品店のサービスが便利でしょう。一方、貸倉庫はディーラーなどより価格が安い傾向にあり、自分で交換作業ができ、費用をなるべく抑えたい方にはおすすめです。
なお、地域や店舗により料金設定が異なることがあるため、タイヤ保管サービスを検討している方は、利用の前に最寄りの店舗に確認しておくと安心です。
スタッドレスタイヤを保管する際の注意点
スノーシーズンしか使用する機会のないスタッドレスタイヤ。使用しない期間の方が長いため、できるだけ長持ちさせたいですよね。しかし置く場所や置き方に気をつけないと、いざ使用するタイミングで変形やひび割れで使えなくなっているかもしれません。どのようなことに気をつけて保管すればよいのでしょうか。
■収納方法
直射日光やオゾン、湿気に弱いタイヤを長持ちさせるためには、陽が当たらず、湿気の少ない風通しのよい屋内での保管が最適です。
その際、ホコリや汚れを防ぐためのカバーをかけるとより効果的です。カバーにはビニールや不織布などいくつかの材質があり、保管場所の環境によって選ぶとよいでしょう。なお、床とタイヤの接地面には段ボール等を敷いておくと、タイヤの変質や床面の変色を防ぐことができます。
■重ね置き・縦置き
タイヤの保管には重ね置き、縦置きがありますが、どちらが適切なのでしょうか。
実は、適切な保管方法は、ホイールが付いているタイヤと付いていないタイヤで異なります。
ホイールが付いていないタイヤを保管する場合、最適なのは、タイヤを立てて保管する方法です。ホイールから外したタイヤには空気が入っていないため、横にして積んだ場合、サイドウォールに負荷がかかり、変形してしまう恐れがあります。
反対に、ホイールが付いているタイヤを保管する場合には、タイヤを横にして積むのが最適です。立てた状態で長期間放置すると、ホイールの自重によりタイヤのトレッド面に負荷がかかり、変形してしまうことがあります。
とはいえ、場所の制約等もあり、必ずしも望ましい保管方法が選べるとは限りません。そのような場合には、定期的にタイヤの向きや位置を交換することで、タイヤにかかる負担を減らすことができます。
このように、ホイールがついているかどうか、期間保管はどのくらいかによって、保管方法を選択するのがベストです。
■温度や湿気
気温差が激しい場所や湿度が高い場所では、タイヤのゴムが劣化しやすいので注意が必要です。特に温度が高い環境は、ゴムの劣化を加速させてしまいます。直射日光が当たる場所や夏場の倉庫などは要注意です。
また、水分を含んだゴムは構造的に弱くなる性質があるため、湿気もゴムにとっては大敵です。雨風が直接当たる屋外はもちろん、屋内でも風通しが悪く湿気がたまりやすい場所はできるだけ避けましょう。
スタッドレスタイヤの取り付け、取り外しについて
ノーマルタイヤからスタッドレスタイヤへ交換が必要になったとき、自動車ディーラーやカー用品店などへ行けば、30分から1時間程度で作業してもらえます。ただし、その都度費用が発生します。実はタイヤ交換作業は、きちんと正しい手順を踏んで安全を確保すれば、難易度は高くありません。ここからは、DIYでタイヤ交換するときの手順や必要な道具を紹介します。
■必要な工具
タイヤ交換を行うためには、一度車を持ちあげ、タイヤを地面から浮かせる必要があります。そのために必要な工具が、ジャッキ、リジッドラック(ウマ、ジャッキスタンドともいいます)、タイヤストッパーです。これらの工具は「車載工具」といい、車にもともとついている場合があります。ただ車載工具は、出先でタイヤがパンクしたときなど、あくまでも応急処置用として造られたものであるため、工具は整備作業用として売られている物を用意した方が安全です。
また、タイヤはホイールナットという部品で車に固定されています。このナットを着脱するために、クロスレンチがあると便利です。また、ナットを締め付ける強さをきちんと管理するために、トルクレンチがあれば万全です。
なお、このホイールナットは、自動車メーカーによっていくつか形状のバリエーションがあります。スタッドレスタイヤについているホイールとノーマルタイヤのホイールが、両方とも同じメーカー純正ホイールであれば、もともとついていたナットをそのまま使用できます。気をつけなければいけないのが、スタッドレスタイヤかノーマルタイヤのどちらかが社外ホイールである場合です。ホイールの取り付け面の形状に合わないナットを使用すると、車にホイールがきちんと固定されず、走行中に緩んでしまったり、ナットやホイールを壊してしまったりする危険性があります。作業に入る前に、スタッドレスタイヤ用のナットを準備する必要があるか、しっかり確認しておきましょう。
■取り外し方法
まずは現在車についているノーマルタイヤを取り外します。
ジャッキを使って車体を少し持ち上げ、クロスレンチでナットを軽く緩めます。少しだけ持ち上げる理由は、タイヤが完全に地面から浮いてしまうと、ナットを緩めるときにタイヤが空転し、力をかけられないためです。
ナットを少し緩めたら、タイヤが完全に地面から浮くまで車をジャッキアップします。車が持ち上がったら、リジッドラックに車体を乗せます。なお、ジャッキやリジッドラックをあてる場所は、どこでもいいわけではありません。車によって決まった場所があるため、取扱説明書や整備マニュアルで確認してから作業に入りましょう。
車がリジッドラックに乗ったら、ナットを外し、ホイールをボルトから抜きます。タイヤを足に落としてけがをしないよう、慎重に支えながら取り外しましょう。
■取り付け方法
タイヤの取り付けは、取り外しと逆の手順で進めていきます。
まずはスタッドレスタイヤのホイールをボルトにはめ、ナットを仮止めします。まず、ナットが手で回るところまで締め、次にクロスレンチでホイールがガタガタしない程度に軽く締めましょう。
仮止めが終了したら、ジャッキを使って再び車を持ちあげ、リジッドラックを外したら車を完全に下ろします。最後にクロスレンチを使ってナットを締め直して作業は完了です。
このとき、クロスレンチではなくトルクレンチを使うこともあります。ナットを締める強さには適正値があり、強すぎても弱すぎてもいけません。普通車の場合で10~12kg(100~120Nm)、軽自動車の場合で8~10kg(80~100Nm)が適正といわれています。締め付けが強すぎるとナットを留めているハブボルトが折れ、高額な修理が必要になることがあります。また逆に締め付けが弱すぎると、走行中の振動でナットが緩み、タイヤが外れる危険性も。どのくらいの力で締めればよいのか感覚がわからない場合には、安全性の面からも、ぜひトルクレンチを用意することをおすすめします。
まとめ
タイヤは重く運びにくいし、場所をとる上、使えば必ず汚れるものなので、使わないタイヤをついつい庭先やベランダに放置してしまうという方も多いのではないでしょうか。ただ、スタッドレスタイヤは、使用する期間より保管する期間の方が圧倒的に長いものですから、なるべく長持ちさせたいですよね。そのためには、使用したあとにはしっかり汚れを落とし、タイヤの原料であるゴムの劣化を防げる場所で保管することが大切です。
よくある質問
■ホイールのないタイヤの保管方法は?
ホイールの付いていないタイヤは、立てて保管するのが最適です。空気で形が保たれていないため、横にして積み上げてしまうと、サイドウォールが変形してしまうことがあります。やむをえず横積みする場合には、定期的に上下を入れ替えるなど、大きな力がかかり続けないようにしましょう。
■スタッドレスタイヤは何年ぐらいもつのか?
スタッドレスタイヤの標準的な寿命は3~4年といわれています。ただ、寿命は使用環境や保管状況によって大きく異なります。寿命の目安となるのは、タイヤ表面のゴムの硬さです。スタッドレスタイヤは表面の柔軟性で雪道におけるグリップ力を高めているため、溝に余裕があったとしてもゴムの硬化が進んでいる場合は交換が必要となります。