トヨタとスズキが業務提携を正式発表
トヨタ自動車とスズキは2017年2月6日、環境や安全、情報技術、商品・ユニット補完等での業務提携に向けた覚書を締結したと発表しました。
自動車業界では、自動車開発技術にとどまらず、環境や安全、情報等の分野において先進・将来技術の開発が求められるなど、取り巻く環境がこれまでにない速さで大きく変化しています。
また、個別の技術開発に加えて、インフラとの協調や新たなルールづくりを含め、他社との連携の重要性が増してきています。
トヨタ自動車の豊田章男社長(向かって左)とスズキの鈴木修会長
この業務提携はスズキ側からの働きかけで行われ、昨年10月から協力関係構築に向け、両社間で公正かつ自由な競争が行われることを前提として、課題の解決に向けて協業が可能な分野について協議してきました。
業務提携の背景は
■独VWとの提携解除
スズキは独VW(フォルクスワーゲン)は2009年12月に資本業務提携したものの、その後、経営の独自性や環境関連技術を巡って溝が表面化、2015年に業務提携を解消しました。
VWと提携した6年間、スズキは次世代技術への対応戦略という点では時間を浪費したとも言われている。
スズキ鈴木会長とVWヴィンターコルン会長(2009年)
VWとの提携を解消することになった経緯について鈴木会長は、「うまくいかなかった最大の理由は、私どもは契約書に則ってやって頂くということを理解していたが、ひとつは契約書の日本文と英文のニュアンスの違いがあったかと思うが、契約前と契約後の落差が大きかったことに尽きるのではないかと思っている」と説明しています。
■トヨタとスズキの深い関係
豊田家と鈴木家は関係が深く、スズキが困った時にはトヨタが面倒を見るという代々の申し送り事項みたいなものがあるそうです。
これまでにもトヨタはスズキを2度救っており、今回が3回目となります。豊田社長は豊田章一郎名誉会長から「修さんに会ったよ」と一言言われだけで、即座に鈴木会長に会い、提携交渉を進める決断をしました。
トヨタの豊田章男社長は、「自動車業界を取り巻く環境が大きく変わる今、生き抜くために必要なのは『変化に対応する力』。個別の技術開発に加えて、同じ志をもった仲間づくりが重要となってきている。『もっといいクルマ』づくりと自動車産業の発展に役立つ取り組みであれば、我々は常にオープンな姿勢で検討したいと考えている」と語った。
スズキの鈴木修会長は、「トヨタは業界トップの企業であり、また、あらゆる先進技術、将来技術を手がける最も信頼できる会社。今回トヨタとの協業に向けて協議を進められることになり、大変ありがたい。豊田章一郎名誉会長にまず相談させていただき、豊田章男社長にも協業に関心を示してもらい、大変感謝している。スズキの将来のためにもしっかりと協議に臨んでいく」と語った。
業務提携の効果
今回の業務提携で、両社は「環境技術」「安全技術」「情報技術」「商品・ユニット補完」等に関して、協業の実現に向け、検討に入ることを合意しています。
特に、欧州メーカーの製品投入が相次ぐPHVなどの電動化分野で早期にスズキが技術サポートを受けると見られています。
さらに、自動ブレーキによる安全運転支援から高速道路での運転支援へと転じてきた自動運転技術も協業メリットが大きいと言われています、センサーやプロセッサーなどシステムの共用化に踏み込めばコストや将来の展開スピードでも効果が期待できるでしょう。
■軽自動車7割のシェアは資本提携の足かせに
国内では軽自動車でスズキとトヨタの完全子会社であるダイハツ工業が大きなシェアをもつため、トヨタとスズキでは業務提携の内容も慎重にならざるを得ない要素もあります。
2016年1~9月の販売シェアは、両社合計で64%。生産ベースではダイハツはトヨタ、富士重に、スズキはマツダ、日産自動車、三菱自動車にOEM(相手先ブランド生産)供給しており、その分を合わせると2社で70%を超えます。
両社の関係者が「軽自動車の値引き販売を是正しようと思っている」などと会話すれば、独禁法上はクロの容疑になる。