上海モーターショーってどんなモーターショー?
《画像提供:Response》上海モーターショー2023
■今や世界最大級のモータショーに
上海モーターショーは、中国・上海で開催されるモータショー。その初回開催は1985年と長い歴史を持ち、同中国で開催される北京モーターショーと交代で隔年開催されています。
2023年に開催された20回目となる上海モーターショー2023は、新型コロナウイルス蔓延の影響もあり、世界中のビジターを招いた“フルスケール”での開催は2019年以来4年ぶりとなりました。
国内外の出展企業は1,000社を超え、数多くのメーカーがコンセプトカーや新型車を発表。展示面積36万平方メートル超え、13の屋内展示ホールが使用されるなど、諸外国で開催されるほかのモーターショーを圧倒する、まさに“世界最大級”のモーターショーとなりました。
■どんなクルマが登場した?
世界最大級のモーターショーとなった上海モータショー2023ですが、日系メーカーを含め、今や中国の自動車販売台数において4分の1を占める“新エネルギー車(EVなど)”が数多く発表されました。
また、トヨタ「アルファード」などにより、現地で盛り上がりを見せる“高級ミニバン”も中国メーカーから数多く出展され、中国国内においても日本同様“ショーファーカー”として、MPVが注目されている様子が窺えました。
さらに、その“高級ミニバン”のなかでも最高峰ともいえるレクサス「LM」がフルモデルチェンジを遂げ、2代目モデルとなる新型LMも発表され、国内外から大きな注目を集めました。
上海モータショーで発表された注目車種たち
前述の通り、数多くの出展企業により、様々な新型車などが発表された上海モータショー2023。国外のモータショーとはいえ、今や世界最大級の自動車市場となっている中国だけあって、日本市場にも全く無関係とはいえません。
ここからは、上海モーターショー2023で発表された車のなかでも、これだけは押さえておきたい注目車種を紹介していきます。
■レクサス 新型LM
《画像提供:Response》〈Photo by LEXUS〉レクサス LM 新型(プロトタイプ)
4年前の上海モータショーで世界初公開されたレクサス初のミニバン LM。レクサスブランドの中で最上級を表す“L”を冠し、車名には「ラグジュアリームーバー」という意味が込められています。
上海モータショー2023では、そんなLMがフルモデルチェンジを遂げた2代目モデルが世界初公開。近年のラグジュアリーマーケットにおける価値観の変化を受け、全面刷新が図られました。
先代LMでは、中国、タイなど一部アジア市場のみの展開となっていましたが、今回の2代目は日本や欧州などでも展開されるグローバルモデルとなりました。
サイズは、全長5,125mm×全幅1,890mm×全高1,955mmと、先代モデルより拡大。エクステリアは、レクサスの新たなデザインであるスピンドルボディを採用。インテリアは、室内高のあるパッケージを活かした、リビングのようにくつろげる世界観が追求されるなど、“高級感”が一段と高められています。
また先代モデルと同様に、3列シートモデルだけでなく、ショーファー用途を想定した2列4人乗り仕様を用意。4人乗り仕様では、前席と後席の間にパーティションや48インチの大型ワイドディスプレイ、冷蔵庫、巨大な専用の独立シートが搭載され、プライベートジェットのような豪勢な空間が広がっています。
そんな新型LMの日本発売は2023年秋頃に、前述の4人乗り仕様から導入される予定です。
レクサスは、このLM以外にも日本でも発売された電動SUV RZに、アウトドアテイストを加えたRZアウトドア コンセプトも初披露。直近では、このクルマと同様に市販車に“アウトドアテイストを加えた”コンセプトカーが、国内外のイベントで展示される例が多くあります。
■トヨタ 「bZ Sport Crossover Concept」と「bZ FlexSpace Concept」
《画像提供:Response》〈写真提供:トヨタ自動車〉bZ スポーツ クロスオーバー コンセプト(左)とbZ フレックススペース コンセプト(右)
トヨタは、上海モーターショー2023で2台の新型SUV、bZ SPORT Crossover Concept(bZ スポーツ クロスオーバー コンセプト)と、bZ FlexSpace Concept(bZ フレックススペース コンセプト)を世界初公開しました。
これらのクルマは車名の“bZ”が表すように、トヨタの電気自動車専用ブランドbZ シリーズのクルマで、第4〜5弾モデルに当たるクルマです。
bZ シリーズにはすでに、国内でも販売されるSUVのbZ4Xや中国っで販売されるbZ3がすでに市場に投入されています。今回発表された2台も2024年中の販売(中国市場)が目指されているモデルで、“ただのコンセプトカーというわけではありません。
サイズやパワートレインなど、詳細は公開されていませんが、エクステリアとインテリアが公開されています。
これを見ると、2台共トヨタの最新デザインである“ハンマーヘッド”が採用されるほか、インテリアでは異型ハンドルや、湾曲したディスプレイが採用され近未来を感じられるデザインになっています。
■ホンダ 「e:NP2 Prototype」「e:NS2 Prototype」「e:N SUV序」
《画像提供:Response》〈写真撮影:八杉理@現代文化研究所〉ホンダe:NP2プロトタイプ(上海モーターショー2023)
ホンダは、上海モーターショー2023で3台のコンセプトカー、e:NP2 Prototype、e:NS2 Prototype、e:N SUV序を世界初公開しました。
e:Nはホンダが中国で展開するEV(電気自動車)シリーズ。ホンダは中国で、東風汽車および広州汽車の2社と合弁会社を設立していますが、それぞれからこのシリーズの第1弾となるe:NS1、e:NP1を展開しています。
そんなe:Nの第2弾となるのが、e:NP2 Prototype、e:NS2 Prototype。シリーズ共通のコンセプトである「動」「智」「美」を磨き上げ、既存モデルの枠にはまらない新たな価値を持ったEVを目指したというSUVです。この2モデルは2024年初頭に中国で発売される予定だといいます。
《画像提供:Response》〈写真撮影:八杉理@現代文化研究所〉ホンダe:N SUV 序コンセプト(上海モーターショー2023)
そして、この2モデルに続く第3弾として公開されたのが、e:N SUV序。EV専用プラットフォームとなる「e:N Architecture W」を初採用するほか、最新の安全運転支援システムやAI搭載のコネクト技術が搭載されるとのこと。このクルマは、2024年内の投入が目指されています。
このほかにもホンダは、4モデル目として投入する予定「e:N GT Concept」も展示。国内では終了、国外では新型モデルが登場しているセダン アコードのPHEVモデル、アコードe:PHEVも初披露するなど、電動化を本格的に推し進める様子が窺えました。
ホンダは今後、中国で2027年までにEVを10種投入する計画で、さらなるEVの展開が予想されます。
■日産 「アリゾン」と「パスファインダー コンセプト」
《画像提供:Response》〈写真提供:日産自動車〉日産 Arizon(アリゾン)
日産は、2台のコンセプトカー、アリゾンとパスファインダー コンセプトを世界初公開しました。
アリゾンは、日産が培ってきたEVの知見や技術を最大限に活用し、中国のユーザーのニーズにあわせて開発されたSUVのコンセプトカー。
CMF-EVプラットフォームを採用し低重心化されています。また、エクステリアはコンセプトカー感の強い近未来なデザイン、インテリアはハイテク感と温かみのある仕上がりとなっているほか、自動調光できるサンルーフや、ピラーレス構造による開放的で広々とした室内空間が特徴的です。
《画像提供:Response》〈写真撮影:八杉理@現代文化研究所〉日産 パスファインダー コンセプト(上海モーターショー2023)
パスファインダー コンセプトは、日産がすでにグローバルで展開する3列の大型SUV パスファインダーの次期型を思わせるクルマ。
フロントフェイスには、新型セレナやルークスで印象的だった新世代のVモーショングリルを採用するほか、細やかな作り込みが行われており、このまま発売されても違和感のない仕上がり。インテリアでも、現代の日産車に通ずるデザイン、白と黒を基調とし金のアクセントが加えられ高級感が高められています。
パスファインダー コンセプトも、アリゾン同様“中国ユーザーのことを考えて設計した”と日産は説明していますが、同社のプロジェクトデザインディレクターであるYu Lihao氏は、「将来のグローバルモデルにも影響を与えることになるでしょう」とコメントしており、今後このパスファインダー コンセプトが、グローバルで展開されるパスファインダー次期型のデザインとなる可能性は大いにあり得るでしょう。
この2台のほかにも日産は、新型e-POWER エクストレイルや新型キャシュカイを公開しており、予約受注を開始しています。
他社同様日産も、SUV+電動化で中国市場を開拓していくようです。
■マツダ CX-50 ハイブリッド
《画像提供:Response》マツダ CX-50 新型 ※画像はイメージです
マツダは、CX-50 ハイブリッドを上海モーターショーで初公開しました。
CX-50とは、マツダが北米など国外の市場で展開するクロスオーバーSUVで、スキッドプレート風のバンパーや大きめの樹脂パーツなど、最近のマツダ車にはなかった“タフ感”の高いデザインを採用しています。
ボディサイズは全長4,785mm×全幅1,920mm×全高1,638mmとかなり幅広なので、国内での取り回しはやや難しくなりそうですが、SNSなどでは「カッコイイ」「欲しい」といった声が多いものの、日本での展開は予定されていません。
そんなCX-50のハイブリッドモデルが、世界に先駆けて中国で発表されました。中国では、直近、CX-50自体が販売をスタートしたばかりですが、今後ハイブリッドモデルも追加されるようです。
■メルセデス・マイバッハ EQS SUV
《画像提供:Response》〈photo by Mercedes-Benz〉メルセデスマイバッハ EQS SUV(上海モーターショー2023)
メルセデス・ベンツの上級ブランドとも呼ぶべきメルセデス・マイバッハ初のEVとして、上海モータショーで公開されたのが、メルセデス・マイバッハ EQS SUV。
すでに展開済みの、EQシリーズ最上級SUV メルセデス・ベンツ EQS SUVをベースに、内外装を豪華にしたクルマで、システム最高出力658馬力を誇る前後モーターを搭載し、0~100km/h加速が4.4秒とスポーツカー並。最大航続距離は600kmに達します。
ダッシュボード全体がモニターのようになる「MBUXハイパースクリーン」を標準装備するほか、冷蔵庫や銀メッキのシャンパンゴブレットが装備可能と、世界最高級クラスのEV SUVに仕上がっています。
■ボルボ EX90 エクセレンス
《画像提供:Response》〈photo by Volvo Cars〉ボルボ EX90 エクセレンス(上海モーターショー2023)
ボルボの最上級電動SUV EX90に、ショーファードリブンな上位グレードとなるエクセレンスが上海モータショー2023で初公開されました。
通常のEX90は3列シートのSUVですが、エクセレンスは2列4座仕様。エクステリアは、ロールス・ロイスやベントレーのように上品なツートンに塗り分けられるほか、空力性能を高めた22インチの鍛造アルミホイールが装備されます。
インテリアは、枕付きの独立2座のリアシートや、大きなボトルを収納できる冷蔵庫が組み込まれた大型のセンターコンソールが装備され、ファーストクラスに匹敵する快適性が提供されます。
メルセデス・ベンツ同様、豪華な大型電動SUVを投入してきたボルボ。ショーファー需要がセダンからSUV、そしてEVへとシフトしているのかもしれません。
■BMW i7 M70
《画像提供:Response》〈photo by BMW〉BMW i7 の「M70 xDrive」
BMWは上海モーターショー2023で、フラッグシップ電動セダン i7の高性能モデルとなるM70 xDriveを初公開しました。
M70 xDriveでは、通常のi7と比較して前後アクスルに搭載するモーターを強化、システム最大出力は660馬力、システム最大トルクは112.2kg・mを発揮。これによりBMWのEVとしては最速の0~100km/h加速3.7秒を実現、容量101.7kWhのバッテリーが組み合わされ、最大航続距離は560kmです。
他社が豪華なMPVやSUVを展示する中、BMWは“セダン”を発表しました。中国でもSUV市場が盛り上がりを見せ、日本でも低迷傾向のセダン市場ですが、世界的に見ると、まだまだその人気は健在です。
■仰望 U8とU9
《画像提供:Response》〈写真撮影:八杉理@現代文化研究所〉仰望 U8(上海モーターショー2023)
車に興味がある方でも、仰望というブランドを聞いたことがある方は少ないのではないでしょうか。仰望は、中国 BYDが立ち上げたばかりの高級NEVブランドで、今回上海モーターショー2023で初のオフラインイベント出展となり、U8とU9の2台、新型車を初披露しました。
BYDというブランド自体も聞き慣れない方は多いかもしれませんが、中国ブランドでは数少ない日本上陸を果たしている自動車メーカーで、現在日本ではATTO3というSUVやバスなど、様々な車両が展開されています。
そんなBYDが高級ブランドである仰望から、登場させたのがSUVのU8とスーパーカーのU9です。
U8は、本格的なオフロードSUVで、BYDが独自開発した4モーター独立駆動方式の「易四方(e4 platform)」を搭載。そのエクステリアはランドローバー ディフェンダーのようなタフなボディラインを持ちつつ、巨大なフロントグリルや特徴的なカタチのヘッドランプが先進的な印象です。上海モーターショー2023で、予約販売を開始。価格は109万8,000元(約2,165万円※2023年5月現在)となっています。
《画像提供:Response》〈Photo by VCG/VCG via Getty Images/ゲッティイメージズ〉BYD初の高級ブランド「仰望」、2000万円クラスのフラッグシップSUVとスーパーカーを披露…上海モーターショー2023
U9は、コの字型の大きなヘッドランプが特徴的で、ワイド&ローなボディを持つまさに“スーパーカー”といった風体のクルマです。
エクステリのみで詳細はまだ公開されていませんが、一部メディアによれば最高出力は1,100馬力を超え、0~100km/h加速は2秒だといいます。
登場したばかりの仰望が日本で展開されるかどうかについて、公式な発表はありませんが、前述の通りBYDの乗用車は日本展開での展開も行われているので、遠くない将来、日本でも仰望が展開される可能性も否定できません。
■紅旗 新型 L5
紅旗は、中国国営の自動車メーカーである第一汽車の最高級ブランド。L5はそんな紅旗の象徴的な存在のセダンで、反社とのつながりなど身辺調査をされた上で基準をクリアしないと購入できないという、トヨタ「センチュリー」のような存在です。
そんなL5がフルモデルチェンジを遂げ、新型モデルが登場。クラシックカーのようなデザインが特徴的なエクステリアは、どこが変わったのかひと目ではわからないほどのキープコンセプトですが、バンパーやグリルなどの造形に変化が見られます。
また、紅旗は新型L5だけでなく、電動SUVのコンセプトカー E-LSコンセプトも初公開。日本からすると遠い存在のようにも思える紅旗ですが、実は2021年にも日本上陸を果たしており、大阪・なんば駅前にショールームも開設しています。
セダンのH9から、展開を始めており、この新型L5を日本で見る機会も来るかもしれません。
まとめ
《画像提供:Response》上海モーターショー2023
上海モーターショー2023に登場したクルマをピックアップして紹介しましたが、上記以外にも様々なクルマが展示されました。
中でも目立ったのは、BYDとメルセデス・ベンツグループの合弁 デンツァのD9や広州汽車のトランプチ E9、WEYの高山など、トヨタ アルファードのデザインによく似た“高級ミニバン”たちです。
中国でのアルファードの人気を受け、中国では前述の紅旗を含め、様々なメーカー・ブランドが高級ミニバンを投入しています。
これは前回の2019年時には、予兆はありましたがあまり見られなかった光景で、ここ4年で様変わりしました。
上海モーターショーの次回開催は2年後ですが、来年は北京モーターショーが開催されます。北京モーターショーではどのようなクルマが展開されるのか、今から楽しみです。