自転車保険とは?
自転車保険とは、自転車運転中のケガや入院などの自身の補償と、相手にケガを負わせてしまった場合の損害賠償に備える保険です。自転車保険ができた背景には、自転車による死亡やケガなどの事故件数の増加があります。これにより、政府や自治体、保険会社などが自転車保険の必要性を訴えるようになりました。
また、自転車保険は、自転車事故によって生じた損害を補償するだけでなく、自転車の盗難や損害にも対応するなど、自転車の利用者にとっては備えるべき補償内容となっています。
自転車事故でケガをした相手に補償をする自転車保険に注目が集まったのは、2013年の神戸地裁の判決がきっかけでした。
自転車を運転する男子小学生が、60代の女性と正面衝突し、重度の後遺障害を負わせてしまったとして、加害者が小学生だったためその親に対し、約9,500万円という高額の賠償が科された事故がニュースなどで取り上げられ、社会的注目を集めました。このことで自転車保険の重要性も注目されるようになり、普及していきました。
自転車保険は義務化されたのか?
痛ましい自転車事故による被害者救済の観点により、日本では自転車を使用する方に向けて、自転車損害賠償責任保険などへの加入を促進する活動を行っています。
加入促進といっても、国が法律を制定して自転車保険の加入を義務化しているわけではなく、各地方自治体が条例によって義務化しているというのが状況です。条例による自転車保険加入の義務化が増加している理由としては、自転車事故で発生する高額な賠償金があります。自動車と比べて自転車による事故は軽く見られがちですが、被害者が死亡したり、重い障害を負ったりすることもあります。
このような場合、加害者には1億円近い高額な損害賠償責任が発生することも少なくないのです。兵庫県では、前述の約9,500万円の高額賠償となった事故をきっかけに、全国に先駆け2015年に自転車保険への加入を義務化しています。
■自転車保険未加入で事故を起こした場合
自転車保険未加入で自転車事故を起こした場合、賠償金は加害者本人が負担しなければなりません。自転車で事故を起こし加害者になると、被害者に負わせてしまったケガの度合いによっては、個人では支払いきれないほど高額な賠償金を請求されてしまう可能性も。
実際、被害者に重度の障害を負わせた裁判例では、1億円近い額の支払いを命じられたケースもあります。
自転車事故は車やバイクの事故に比べて一般的に運転速度も遅く、賠償額が高額にならないイメージを持つ方もいるかもしれませんが、過去の判例では損害賠償額の算定方法は車やバイクの事故と変わりありません。
もし、被害者が死亡してしまったり、後遺障害を負ってしまったりした場合には、損害賠償額も高額になります。
自転車事故で高額な賠償請求が発生した裁判の例をいくつか紹介します。
<賠償額:9,521万円>
男子小学生が夜間、帰宅途中に坂道を20~30キロで走行中に歩行者の女性と正面衝突。意識不明の重傷を負わせた。
<賠償額:9,266万円>
男子高校生が昼間、自転車横断帯から車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で走行してきた男性会社員と衝突。男性会社員に言語機能の喪失などの後遺障害が残った。
上記の通り、自転車事故であっても一億円近い賠償請求が科せられる事例があります。自転車保険に未加入の場合では、上記のような多額な賠償金を加害者本人が負担することになるので、自転車保険の重要性があらためて認識できたのではないでしょうか。
自転車保険の義務化になっている地域
自転車を使用する場合、自転車損害賠償責任保険などへの加入を条例で義務化する地域が増えています。条例により自転車保険が義務化、または努力義務化された地域は、国土交通省の令和5年4月1日時点での発表によると、義務が32都府県、努力義務が10道県となってます。
条例の種類 | 都道府県 |
---|---|
義務 | 宮城県、秋田県、山形県、福島県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、山梨県、長野県、新潟県、静岡県、岐阜県、愛知県、三重県、石川県、福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、広島県、香川県、愛媛県、福岡県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、神奈川県 以上32都府県 ※上記の他、政令指定都市では、岡山市において県に先行して義務条例を制定済み |
努力義務 | 北海道、青森県、岩手県、茨城県、富山県、鳥取県、徳島県、高知県、佐賀県、和歌山県 以上10道県 |
■義務化対象地域の方は、自転車保険への加入は必須なのか?
義務化の対象地域内にお住まいの方は、必ず自転車保険に加入しなければならないのでしょうか。
ここで注意しなければならないのが、対象地域の住民すべてに加入義務があるのではなく、対象地域で自転車に乗る方に加入の義務があるという点です。
例えば、対象地域にお住まいでなくても、通勤通学、サイクリングや観光等でも、対象地域で自転車に乗る方は加入が義務となります。
さらに、未成年の子供が自転車を使用する場合、保護者である親が自転車保険を契約しなくてはならないとしている地域も多いので、自転車に乗る地域の条例をしっかり確認しておきましょう。
ということで、自転車に乗らない方は加入不要ですが、義務化対象地域にお住まいでなくても、義務化対象地域で自転車に乗る方は加入が必要になります。
■自転車保険に加入しないと罰則はあるのか?
義務化対象地域で自転車に乗る方が自転車保険に加入しなかった場合、罰則はあるのでしょうか?
2023年5月の執筆時点では、罰則規定を設けている地域はなく、自転車保険に加入していなくても罰せられることはありません。
これは、自転車を使用している本人ではなく、自転車を購入した家族などが自転車保険に加入するケースなど、自動車やバイクとは違い、自転車保険の加入状況の具体的な証明が難しいからだといわれています。
しかし、罰則がないからといって自転車保険に入らなくていいわけではありません。自転車保険義務化が進んだ理由は、自転車起因による事故の増加が原因です。自転車保険に未加入の状態で事故を起こせば、莫大な賠償費用が全額自己負担となり、その後の人生に大きな影響を与えかねません。罰則があるなしにかかわらず、義務化でない地域の方も、もしもの自転車事故に対応できるように加入しておくことをおすすめします。
【厳選】おすすめの自転車保険5選!
自転車保険の義務化対象地域が増えていることもあり、注目されている自転車保険ですが、どのように選べばいいのでしょうか。大手保険会社はもちろん、PayPayや楽天などでも自転車保険を取り扱っています。
ここからは、どの商品がおすすめなのか特徴なども含めて紹介します。
■PayPayほけん:「あんしん自転車」
PayPayほけんの「あんしん自転車」は、PayPay残高からの支払いが可能で、加入に関しても最短1分でスピーディーに手続きができます。また、保険加入でPayPayポイントが決済額の1%付与されるのも嬉しいポイントです。
保険料は各プランによって以下になります。お手軽プラン:140円/月
基本プラン:180円/月
安心プラン:250円/月
プランによって、本人のケガの補償金額が違います。
自転車事故に起因した賠償責任は家族全員(配偶者、本人または配偶者の同居の親族、本人またはその配偶者の別居の未婚の子)が補償の対象となり、お手軽プラン・基本プランで1億円、安心プランで3億円まで補償されます。買い物などの支払はPayPayがメインという方におすすめの保険です。
■損保ジャパン:「サイクル安心保険」
損保ジャパンの「サイクル安心保険」プランは3つ。
プランA(基本プラン):自転車事故に起因した賠償責任を補償
プランB(個人向けプラン):自転車事故に起因した賠償責任に加え、加入者の死亡やケガなども補償プランC(家族向けプラン):自転車事故に起因した賠償責任、加入者の死亡やケガなどの補償に加え、加入者家族の死亡やケガなども補償。
全プランにおいて賠償責任の補償は家族も含めて対象となり、さらに賠償責任事故発生時、スムーズな解決のための示談交渉も行ってくれます。
損保ジャパン保険料は、年額支払いで以下になります。
基本プラン:1,670円(WEB申込み)・1,870円(郵送申込み)/年
個人向けプラン:2,690円(WEB申込み)・2,890円(郵送申込み)/年
家族向けプラン:4,370円(WEB申込み)・4,570円(郵送申込み)/年
また、通常プランだと賠償責任に対する補償額が1億円のところ、最大3億まで補償される、交通傷害ワイド補償コース(傷害総合保険)も取り扱っています。
■楽天損害保険:「少額あんしん保険 自転車プラン」
楽天の自転車保険の特徴は貯まった楽天ポイントでも保険料の支払いができること。
相手にケガをさせてしまった場合の賠償補償は加入者の家族も含めて対象で、最大1億まで補償されます。
楽天の自転車保険のプランは3タイプから選択でき、プランによってケガに対する補償の範囲が変わります。
加入者本人のみ対象の「本人型」:150円/月・1,710円/年
加入者と配偶者が対象の「夫婦型」:370円/月・3,980円/年
加入者の家族もケガの補償対象となる「家族型」:500円/月・5,420円/年
どのプランもリーズナブルな金額なので、気軽に始められますね。
加入申込手続きが完了した翌日から補償が開始される手軽さもあり、明日のサイクリングに備えて…という方にも対応可能です。
ただし、この自転車プランに加入するのために楽天銀行の口座開設が必要になります。
楽天経済圏で生活をしている方には特におすすめの自転車保険です。
■東京海上日動:ローソンLoppiで入れる「自転車保険」
東京海上日動の「自転車保険」は、ローソンの店舗にあるLoppiから24時間365日いつでも加入できるのがポイントです。
最大の特徴は、相手への補償が無制限(※)という点。さらに、示談交渉サービスも付帯(※)されています。
※賠償責任なしプランは除きます。
プランは大きく2つ。
お手軽プランと充実プランがあり、それぞれ補償内容や補償金額が違います。さらに各プランの中で、
本人型:自分だけ、子供だけ乗る場合
夫婦型:夫婦2人とも乗る場合
家族型:家族全員乗る場合
によって保険料がかわってきます。
お手軽プラン
本人型:3,320円/年
夫婦型:3,840円/年
家族型:4,660円/年
充実プラン
本人型:5,270円/年
夫婦型:7,080円/年
家族型:9,910円/年
賠償責任が無制限で示談交渉もしてくれるので、より安心感を求める方におすすめです。
■三井住友海上:「ネットde保険@さいくる」
三井住友海上の「ネットde保険@さいくる」は、相手に対する賠償補償が最大3億円、そして安心の事故の示談交渉サービスが付帯しているのが特徴です。
プランは大きく分けて4つ。
・本人型
・夫婦型
・家族型
・配偶者対象外型
保険期間は1年間で、自身のケガに対しての補償額によって3コースから選べます。
本人型は3,090円/年から。補償額や通院や入院に関してもしっかり補償してくれるコースもあり、細かく選択してしっかりと補償を受けたい方におすすめです。
まとめ
保険会社によって、賠償補償にのみ対応できるところもあれば、自身のケガや通院、入院や死亡時まで補償してくれるプランを用意しているところなど、様々なプランから選択ができます。またネットのみでの申込みではなく、コンビニからの申込みもできたりと、それぞれの特徴があります。
自転車保険は、万が一の事故の場合を考えて、加入義務がない地域でも加入しておくことをおすすめします。
よくある質問
■自転車保険は強制ですか?
自転車保険は強制ではありません。しかし、地域によってじゃ自転車に乗る方は加入が義務となっている自治体が多くなっています。万が一の事故で相手へ多額な賠償が必要となった際に困らないためにも、加入がおすすめです。
■自転車保険の更新は何年?
自転車保険の保険期間の多くは1年間ですが、保険会社によっては月ごとで加入が可能なプランもあるので、ライフスタイルにあった保険を選択するといいでしょう。