スパイクタイヤは、スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律にもとづき、環境大臣が指定する「指定地域」内では、舗装された道路の積雪・凍結していない部分での使用が原則禁止されています。指定地域は都道府県・市町村単位で個別に指定されており、全国一律に禁止されているわけではありません。違反すると10万円以下の罰金が科されます。現在、国内で販売されている冬用タイヤの主流はスタッドレスタイヤです。この記事では、根拠となる法律の条文、指定地域の指定の仕組み、罰則の内容、スタッドレスタイヤとの違いを一次情報にもとづいて整理します。
スパイクタイヤとは
スパイクタイヤとは、積雪または凍結の状態にある路面で滑ることを防止するために、金属鋲その他これに類する物をタイヤの接地部に固定したタイヤです。これは「スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律」第二条で定義されています。
同じ第二条では「スパイクタイヤ粉じん」についても定義されています。それによると、スパイクタイヤを装着した自動車を移動させることにともない、タイヤに固定された金属鋲その他これに類する物が舗装された路面を損傷することによって発生する物質を指します。
金属製のスタッド(鋲)が氷や雪の路面に食い込むことで、高いグリップ力を発揮します。一方で、雪や氷のない舗装路を走行すると、スタッドが路面を削り、粉じん(削りカス)を発生させます。この粉じんが健康被害や生活環境の悪化につながるとして問題視され、法律による規制につながりました。指定地域内・指定地域外を問わず、積雪や凍結のない道路を走行する機会は多いため、実際の使用場面では注意が必要な構造だといえます。
スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律とは
スパイクタイヤの使用を規制する根拠となっているのが、平成2年(1990年)6月27日に公布された「スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律」(平成二年法律第五十五号)です。
第一条(目的)では、スパイクタイヤの使用を規制し、スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する対策を実施することなどにより、スパイクタイヤ粉じんの発生を防止し、国民の健康を保護するとともに生活環境を保全することを目的とすると定められています。
この法律にもとづく使用禁止の規定(第七条)は平成3年(1991年)4月1日から、罰則の規定(第八条)は平成4年(1992年)4月1日から施行されています。目的の規定から施行までの間に段階を設けているのは、規制が始まる前にスタッドレスタイヤなどへの切り替えを進める猶予期間としての意味があったと考えられます。
国・地方公共団体・国民、それぞれの役割
この法律は、罰則を定めるだけでなく、国・地方公共団体・国民それぞれの役割も定めています。
第三条(国民の責務)では、何人もスパイクタイヤ粉じんを発生させないように努めるとともに、国または地方公共団体が実施するスパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する施策に協力しなければならないとされています。
第四条(国及び地方公共団体の責務)では、国はスパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する啓発および知識の普及、冬期における道路の環境の整備、スパイクタイヤに代替するタイヤ等の開発の支援、冬期における自動車の安全な運転のための教育など、基本的かつ総合的な施策を推進するように努めるとされています。地方公共団体についても、当該地域の自然的・社会的条件に応じた施策の実施に努めなければならないと定められています。
さらに第六条では、指定地域に係る都道府県は、当該指定地域のスパイクタイヤ粉じんの発生を防止するための対策として、知識の普及、住民の意識の高揚および調査の実施に努めなければならないとされています。
脱スパイクタイヤ推進月間
環境省は、凍結道路で使用されるスパイクタイヤによる粉じん公害を防止するため、毎年12月を「脱スパイクタイヤ推進月間」に定めています。この取り組みは、平成2年に施行された前述の法律を背景に進められているものです。
冬用タイヤへの切り替えを検討するタイミングとしても、この時期を目安にするとよいでしょう。積雪や路面凍結が本格化する前に、タイヤの状態や溝の深さを点検し、必要であればスタッドレスタイヤへの交換を済ませておくことが推奨されています。
「スパイクタイヤの使用」と対象になる道路の範囲
法律第二条では、「スパイクタイヤの使用」とは、スパイクタイヤを装着した自動車をその本来の用い方に従い移動させることをいうと定義されています。単に装着している状態ではなく、実際に走行させる行為が規制の対象になります。
また同条では、この法律における「道路」とは、道路法第二条第一項に規定する道路、および道路運送法第二条第八項に規定する自動車道をいうと定義されています。一般の交通に使われる道路や自動車道が対象とされている定義であり、私有地の敷地内など個別の場所が対象に含まれるかどうかは、この定義に照らして判断されることになります。
なお、この法律における「自動車」は、道路運送車両法第二条第二項に規定する自動車を指すと定義されています。四輪車に限らず、道路運送車両法上の自動車に該当する車両であれば、この法律にいう「自動車」に含まれることになります。
指定地域はどう決まるのか
スパイクタイヤの使用禁止は、全国どこでも一律に適用されるわけではありません。法律第五条により、環境大臣が「住居が集合している地域その他の地域であって、スパイクタイヤ粉じんの発生を防止することにより住民の健康を保護するとともに生活環境を保全することが特に必要であるもの」を指定地域として指定する仕組みになっています。
指定の流れは次のとおりです。
1. 都道府県知事が、指定地域の要件に該当すると認められる地域があるとき、環境大臣に指定の申出をすることができる
2. 環境大臣は指定地域を指定しようとするとき、国家公安委員会その他関係行政機関の長に協議し、関係都道府県知事の意見を聴く
3. 都道府県知事は申出や意見を述べる前に、関係市町村長の意見を聴く
4. 環境大臣は指定地域を指定するとき、その旨と区域を官報で公示し、関係都道府県知事に通知する
5. 通知を受けた都道府県知事は、指定地域をその地域に含む市町村長など関係市町村長にその旨を通知する
なお、指定地域の指定の変更や解除についても、同じ手続きが準用されます。指定地域は都道府県・市町村単位で個別に指定されるため、自分の居住地や走行予定地が指定地域に該当するかどうかは、地域ごとに確認する必要があります。指定状況の詳細は、環境省または該当する都道府県・市町村の窓口で確認してください。
指定地域内での使用禁止の内容
指定地域内でスパイクタイヤの使用が禁止される具体的な範囲は、法律第七条で定められています。
禁止されるのは、指定地域内の道路のうち、セメント・コンクリート舗装またはアスファルト・コンクリート舗装が施されている部分で、かつ積雪または凍結の状態にない部分です。トンネル内の道路など、政令で定める道路の部分は禁止の対象から除かれています。
ただし、消防用自動車、救急用自動車その他政令で定める自動車については、この禁止の対象外とされています。緊急車両は、積雪・凍結していない路面でもスパイクタイヤを使用できる扱いです。
逆にいえば、指定地域内であっても、道路が積雪または凍結している状態であれば、スパイクタイヤの使用そのものが禁止されているわけではありません。禁止されているのは、あくまで積雪・凍結していない舗装路面での使用です。
例えば、指定地域内の自宅から出発して積雪した道路を走行している間は使用禁止の対象にはなりませんが、除雪された乾いた舗装路や、圧雪・凍結が解けた市街地の道路を走行する区間では、使用禁止の対象になり得ます。天候や路面状況によって禁止区間・非禁止区間が切り替わりうる点に注意が必要です。
罰則はどのくらい重いのか
法律第八条では、第七条の使用禁止の規定に違反した者について、10万円以下の罰金に処すると定められています。条文上、罰則として定められているのはこの罰金のみで、違反点数の加算に関する規定は含まれていません。
なお、この法律は道路交通法とは別の法律であり、警察の交通取り締まりとは異なる枠組みで運用されています。指定地域内を走行する際は、装着しているタイヤがスパイクタイヤに該当するかどうかを事前に確認しておくことが重要です。
附則では、第七条本文および第八条の規定について、道路交通法第三条にいう大型自動車その他政令で定める自動車には、公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日までの間は適用しないとする経過措置も設けられていました。規制の対象となる車種によって、適用の開始時期に段階が設けられていたことがわかります。
スタッドレスタイヤとの違い
スパイクタイヤは金属鋲を接地部に固定して氷雪路面をとらえる構造でしたが、スタッドレスタイヤには金属鋲がありません。「スタッド(鋲)がない」タイヤという意味で、スタッドレスタイヤと呼ばれています。
スタッドレスタイヤは、氷点下でも硬くなりにくいゴム素材と、雪や氷の路面に密着させるための細かい溝(サイプ)を組み合わせることで、金属鋲を使わずに雪道・凍結路でのグリップ力を確保する設計になっています。溝の深さやゴムの配合は、新品時から摩耗が進んだ状態まで性能を保てるように各メーカーが工夫を重ねています。
舗装路を傷つけて粉じんを発生させる心配がないため、現在、国内で販売されている冬用タイヤはスタッドレスタイヤが中心です。タイヤメーカー各社は、氷上でのブレーキ性能や燃費性能を高めたスタッドレスタイヤの開発を続けています。冬用タイヤを選ぶ際は、金属鋲による法律上の使用制限を気にする必要がないという点でも、スタッドレスタイヤは扱いやすい選択肢といえます。
スタッドレスタイヤには摩耗の目安として、タイヤの溝の中にプラットフォームと呼ばれる盛り上がりが設けられています。プラットフォームは新品時から溝の中に見えており、トレッド面(接地する部分)がこの高さまで摩耗すると、スタッドレスタイヤとしての性能を保てなくなったことを示すサインになります。
タイヤサイズの確認方法
スタッドレスタイヤへの履き替えを検討する際は、自分の車に合うタイヤサイズを確認する必要があります。確認できる場所は次の2か所です。
・タイヤ側面の表記(例:195/65R15のような数値とアルファベットの組み合わせ)
・運転席ドア付近に貼られているラベル(指定空気圧ラベル)に記載されたタイヤサイズ
車検証にはタイヤサイズの記載はありません。車検証は年式・型式・グレードを確認する手がかりとして使い、実際のタイヤサイズは上記の2か所で確認してください。サイズが分かれば、通販サイトでも車に合うスタッドレスタイヤを選べます。純正サイズから変更している場合は、現在装着しているタイヤの表記を優先して確認しましょう。
スタッドレスタイヤへの乗り換えを検討する
指定地域内でスパイクタイヤの使用が禁止されていることに加え、金属鋲による舗装路の損傷や粉じんの発生という問題があるため、冬用タイヤとしてはスタッドレスタイヤを選ぶのが現実的な選択肢です。
都道府県別の降雪状況やスタッドレスタイヤの装着率をもとに、どのエリアでスタッドレスタイヤが必要とされているかをまとめた記事もあわせて参考にしてください。冬用タイヤ規制やチェーン規制との違いにも触れています。指定地域に該当するかどうかにかかわらず、積雪・凍結路を走行する可能性がある方は、早めの準備をおすすめします。
CARTUNEタイヤでスタッドレスタイヤを探す
CARTUNEタイヤは、レスポンス・カーナリズムと同じ株式会社イードが運営するタイヤ通販サイトです。スタッドレスタイヤを1本から購入でき、購入したタイヤを取付店へ直送することもできます。車種やサイズからスタッドレスタイヤを探して、指定地域かどうかにかかわらず、安全な冬タイヤへの準備を進めましょう。
スパイクタイヤはどこでも使用禁止ですか?
全国一律に禁止されているわけではありません。スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律にもとづき、環境大臣が指定する「指定地域」内の、舗装された道路の積雪・凍結していない部分でのみ使用が禁止されています。指定地域外や、指定地域内でも積雪・凍結している路面では、この禁止の対象にはなりません。指定地域は都道府県・市町村単位で個別に指定されるため、対象地域かどうかは地域ごとに確認が必要です。
指定地域かどうかはどこで確認できますか?
指定地域は環境大臣が官報で公示するとともに、該当する都道府県知事・市町村長に通知される仕組みになっています。走行予定地が指定地域に該当するかどうかは、環境省や該当する都道府県・市町村の窓口に確認するのが確実です。
違反した場合の罰則は何ですか?
スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律第八条により、指定地域内での使用禁止(第七条)に違反すると10万円以下の罰金に処されます。条文上、違反点数の加算に関する規定はありません。罰則の規定は、法律の公布(平成2年)から2年後にあたる平成4年4月1日から施行されています。
緊急車両もスパイクタイヤを使えませんか?
消防用自動車、救急用自動車その他政令で定める自動車については、使用禁止の対象外とされています。指定地域内でも、積雪・凍結していない路面でスパイクタイヤを使用できます。
スタッドレスタイヤとスパイクタイヤは何が違いますか?
スパイクタイヤは金属鋲をタイヤの接地部に固定して氷雪路面をとらえる構造です。スタッドレスタイヤには金属鋲がなく、氷点下でも硬くなりにくいゴム素材と細かい溝(サイプ)の組み合わせでグリップ力を確保します。舗装路を傷つけないため、現在国内で販売されている冬用タイヤはスタッドレスタイヤが中心です。
タイヤサイズはどこで確認すればいいですか?
タイヤ側面の表記か、運転席ドア付近に貼られている指定空気圧ラベルで確認できます。車検証にはタイヤサイズの記載がないため、サイズ確認には使えません。
まとめ
スパイクタイヤは、スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律にもとづき、環境大臣が指定する指定地域内の舗装路の積雪・凍結していない部分で使用が禁止されています。違反すると10万円以下の罰金の対象になります。指定地域は地域ごとに個別指定されるため、走行予定地が対象かどうかは事前に確認しておきましょう。
現在、国内で販売されている冬用タイヤの主流はスタッドレスタイヤです。スパイクタイヤのような金属鋲による使用制限を気にする必要がなく、指定地域の内外を問わず安心して使えます。タイヤ側面の表記か指定空気圧ラベルでサイズを確認したら、CARTUNEタイヤでスタッドレスタイヤを探してみてください。


