トヨタ ヴェルファイアについて知りたい
ヴェルファイアは高級ミニバン屈指の成功作となった『アルファード』が第2世代モデルに切り替わった2008年、その兄弟モデルとしてデビューしました。
現行モデルである2代目は2015年1月に登場した第3世代アルファードと兄弟関係にあります。
大半の部品は両モデル共通ではありますが、フロントとリアのデザインは明瞭に差別化されています。
アルファードが古典的な価値観にもとづく高級感の演出がなされているのに対し、一方ヴェルファイアは相当に“ワル”なイメージでデザインされています。
今回はそんなワルなヴェルファイアの試乗記をお届けします。
トヨタ ヴェルファイア 試乗記
■乗り心地の良さはレクサス以上!?
◆乗り心地の良さ、遮音性はレクサスLSをしのぐ
まずはトータルのインプレッションから。現行ヴェルファイアは、威圧的な外観や豪華さてんこ盛りのインテリアといった見かけこそ成功作となった旧型をリファインした程度の変化だが、シャシーが新設計された効果は絶大で、クルマの中身は長足の進化を遂げていた。全備重量2.2トンという重量級ボディにモノを言わせた圧倒的なクルーズ感、中低速域での驚異的な乗り心地の良さ、遮音性の高さなどは、トヨタの高級車ディビジョン、レクサスのトップモデル『LS600h』をしのぐほどだった。
クルマとしてのバランスは良くなく、ドライビングも退屈だが、クルマの楽しみはドライビングだけで成り立っているわけではない。クルマで友人、客人、家族をもてなしたい、ひたすら安楽な移動を楽しみたい、豪華なクルマを他人に見せびらかしたいといった顧客層にとっては、このクルマを所有、運用すること自体がプレジャーになることだろう。
では、細部についてみていこう。現行ヴェルファイアの最大の美点は“動く応接室”と表現すべき安楽さ。単に内装が豪華というだけでなく、防振、防音が徹底されているうえ、重量級ボディと柔らかめのサスペンションセッティングの組み合わせにより、ローリング、ピッチングとも非常に穏やか。剛性やサスペンションの容量が大幅に引き上げられた効果はてきめんだった。
旧型ヴェルファイアは押しの強い外観や豪華な内装で顧客の心をつかむことに成功したが、実際に運転してみると、静粛性は大したことがなく、乗り心地もちょっと路面が荒れると途端に低質さが顔を出してがっかりさせられたりした。新型ではそのような旧型のネガは全部解消されていた。市街地では道路の補修跡や段差、アンジュレーション(うねり)などの不整をほとんど全部タイヤ、サスペンション、ラバーマウントで吸収するようなイメージ。また、ボディの遮音材やガラスも良いスペックのものを使っているようで、室内はまるで外界と隔絶されたように静かだった。
高速道路やバイパスなど、速度レンジが上がっても基本的には快適そのものだ。現行ヴェルファイアはボディの揺れ方のコントロールがとても上手い。この種の大型ミニバンやSUVのようなロールセンターと乗員の上体の距離が長いクルマの場合、クルマがちょっと揺れただけでも身体の移動量が大きくなる。その条件で乗り心地を良くするカギとなるのは、揺れの加速度を小さくすることだ。
現行ヴェルファイアはアンジュレーションを通過したりワダチを踏んだりしても、ロール方向への車体の揺れも、そこから水平への戻りもゆったりしており、身体へのストレスは非常に小さいものだった。このあたりの味付けのポリシーは、スポーティさを無理矢理出そうとして揺すられ感が強く出てしまっていたレクサスのクロスオーバーSUV『RX』よりよほど優れていた。
■ヴェルファイア、結局のところはどう?
現行ヴェルファイアは操縦性が悪い、運転行為自体は退屈といった欠点もあるものの、オプションてんこ盛りで650万円という価格帯としては限界に近い豪華さ、乗り心地の良さ、静かさを持つクルマであった。内外装のデザインは有体に言えばあらゆる部分が露悪的にすぎるが、そういう仕立てをすることに対する照れがまったくなく、徹底的に露悪を貫いているあたり、いっそすがすがしく感じられる。
現行モデルがデビューしたとき、開発担当者のひとりはセンターコンソールやダッシュボード、シートなど各部をどうデザインすればより力強く感じられるかということを徹底的に考え抜いたと語っていた。が、それは開発陣のこだわりのほんの一部分でしかない。ロングドライブ中、ナイトクルージングの時間帯にはインパネや運転席まわりの透過スイッチ類が都会の夜景を思わせるような表情で光ったり、七色に変わるインテリアイルミネーションが装備されたりと、まさに満艦飾である。
見逃してはならないことは、これらの演出をただ漫然と盛り込むだけでは、顧客の心をつかむものには到底ならないということだ。アルファード/ヴェルファイアの開発陣には、初代アルファードから連綿と関わってきたというスタッフが少なからずいたのだという。長年、こういうクルマが好きな顧客は何を望んでいるのかを懸命に考えているうちに、顧客が皆まで言わずとも彼らを喜ばせることは何かということを考え、顧客の思いを上回るようなクルマを先回りして実現させることができるようになったのであろう。
いかがでしたでしょうか。
ミニバンは兄弟車も含め、多くありますので、迷うこともあるかと思います。
そんなときは試乗記をご参考くださいね。