販売台数トップを維持し続ける「ヤリスシリーズ」
《画像提供:Response 》トヨタ ヤリスクロス(右)、ヤリス(左)
2020年にヤリスシリーズとしてヤリス、ヤリスクロス、GRヤリスの3台が揃ってからというもの、普通車の新車販売台数はヤリスシリーズの独壇場です。
手始めに2020年4月に普通車販売台数首位を獲得してからというもの、2020年暦年と2020年度の両方ともでヤリスシリーズが販売首位であり、2021年に入ってからも7月までヤリスシリーズとして首位を維持し続けています。
そんなヤリスシリーズ、先ほどもご紹介したように販売台数の集計としてはコンパクトハッチバックのヤリスと、コンパクトSUVのヤリスクロス、ホットハッチのGRヤリスの3車種を合計した台数が用いられているのですが、実は販売台数首位の記録を支えているのはヤリスクロスということはご存知でしたか。
■ヤリスとヤリスクロスとGRヤリス、販売台数比率はどうなの?
《画像提供:Response 》トヨタ GRヤリス(左)、ヤリスクロス(中央)、ヤリス(右、すべて海外仕様車)
一般社団法人日本自動車販売協会連合会調べの2021年1〜6月のデータとしては、ヤリスシリーズとしては約11.9万台を売り上げています。この内訳は、日刊自動車新聞調べによるとヤリスが約5.9万台、ヤリスクロスが約5.5万台の販売と拮抗しており、GRヤリスの約0.5万台と合わせて普通車販売台数ランキングの首位を獲得しているというわけです。
この結果は非常に興味深いもので、ヤリス単体やヤリスクロス単体では、同期2位のルーミーが販売した約7.7万台に負けていることになりますし、3位のアルファードの約5.7万台にもギリギリ勝てるかどうかといった印象。ヤリスシリーズの躍進を支えているのは、ブランニューモデルとして登場したヤリスクロスともいえそうですね。
ヤリスシリーズのアクティブ担当「ヤリスクロス」の魅力とは
《画像提供:Response 》トヨタ ヤリスクロス
さて、公開されてから世界的に高い評価を受けるデザインと、ヤリス譲りの高い経済性を備えつつ、そんな販売戦略上非常に重要な重荷を背負っているヤリスクロスは、一体どんな車なのでしょうか?
ヤリスクロスの魅力をおさらいしていきましょう。
■SUVらしい力強さと都会的な洗練感を両立するエクステリア
《画像提供:Response 》トヨタ ヤリスクロス
ヤリスとも共通の滑らかな曲線と筋肉質なフォルムでスポーティさがありながら、SUVらしい力強さも備えたヤリスクロスのエクステリアデザインは、国際的に高い評価を受けています。タイヤが四隅でしっかりと踏ん張る安定感のあるフォルムは、小型なサイズながらも存在感がありますよね。
ヤリスだけでなく、トヨタのSUVファミリーとの共通項をも感じさせる奥深いデザインは、都市部でもアウトドアでも、しっくりとハマる絶妙なさじ加減です。残念ながら全高は1,590mmと、立体駐車場では入庫不可のところも多くなるものの、そのデザインは街中で輝くSUVといえるでしょう。
■ヤリスよりも余裕のあるサイズ、荷室も後席も「使える」
《画像提供:Response 》トヨタ ヤリスクロス 荷室
パッと見てもすぐわかる、ヤリスと比べても余裕のあるサイズの差は、ヤリスクロスの大きな魅力の一つです。5ナンバーサイズに抑えられたヤリスと比べると、全長・全幅・全高で余裕のある3ナンバーボディのヤリスクロスは、主に後席スペースや荷室スペースで少なからぬ使い勝手の差があります。
クラストップレベルという荷室はSUVらしく「使える」広さがありますし、ヤリスでは割り切られた印象だった後席スペースもより広々としていて、4:2:4分割で中央部だけ倒せるなどユーティリティも忘れていません。
■パワーバックドアなど、クラスを超えた豪華装備が多数!
《画像提供:Response 》トヨタ ヤリスクロス 運転席6ウェイパワーシート
ヤリス同様に、シートが車両外側に回転するので乗り降りがしやすい「運転席ターンチルトシート」や、前後スライド位置を覚えておいてくれるので調整の手間が省ける「運転席イージーリターン機能」など、賢い新機能を満載しているヤリスクロスですが、ヤリスよりも上級な装備もズラッと揃う点が見逃せません。
具体的には、運転席8ウェイパワーシートや、トヨタのコンパクトSUVとして初採用という「ハンズフリーパワーバックドア」など、クラスを超えた装備が勢揃い。特にパワーバックドアは、上級SUVの証のような機能ですので、小型なヤリスクロスでも選べるというのは非常にうれしいですよね。
■都会派と侮るなかれ!本格的な4WDシステム
《画像提供:Response 》トヨタ ヤリスクロス E-Four イメージ
近年ではSUVルックでも二輪駆動しか用意されない車も増えてきている中、きちんと四輪駆動が選べるというのもヤリスクロスの良いところです。ハイブリッド車では後輪を独立モーターで制御する「E-Four」、ガソリン車では「ダイナミックトルクコントロール4WD」を搭載し、ちょっとした荒れ場でも不安なく通過できそうです。
ヤリスクロスのハイブリッド車は、ガソリン車世界トップクラスという低燃費のヤリスには届かないものの、最も低燃費なグレードではSUVとしては非常に優れているWLTCモード燃費で30.8km/Lを記録。4WDでも28.7km/Lと燃費低下が抑えられているところもポイントです。
■トヨタ最新鋭の予防安全・運転支援機能が勢揃い
《画像提供:Response 》トヨタ ヤリスクロス レーントレーシングアシスト イメージ
電動パーキングブレーキを全車で標準装備するヤリスクロスは、全車速追従機能付きのレーダークルーズコントロールとレーントレーシングアシストを備えるので、高速道路などでの長距離ドライブも楽々。さらに、面倒な駐車をアクセル・ブレーキ・ハンドル操作まで機械任せにでき、ドライバーはギヤチェンジを担当するだけという「トヨタ チームメイト(アドバンストパーク)」もハイブリッド車にオプション設定されます。
その上、交差点右折シーンでの対向車や対向方向からの歩行横断者の検知にまで対応した、トヨタでも最新鋭のプリクラッシュセーフティ機能を備えるなど、近年進化著しい予防安全や運転支援の機能が非常に充実しているのが、ヤリスクロスです。
トヨタ ヤリスクロスのスペック
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 4,180mm×1,765mm×1,590mm | |
---|---|---|
ホイールベース | 2,560mm | |
最大乗車定員 | 5名 | |
車両重量 | 1,170kg | |
燃費 | WLTCモード:30.2km/L | |
エンジン種類 | 直列3気筒ガソリンハイブリッド 1,490cc | |
エンジン最高出力 | 67kW(91PS)/5,500rpm | |
エンジン最大トルク | 120N・m(12.2kgf・m)/3,800-4,800rpm | |
モーター種類 | 交流同期電動機 | |
モーター最高出力 | 59kW(80PS) | |
モーター最大トルク | 141N・m(14.4kgf・m) | |
駆動方式 | 前輪駆動(FF) | |
トランスミッション | 電気式無段変速機 | |
新車価格 | 2,176,364円(消費税抜) |
競争激しいコンパクトSUVクラス、ヤリスクロスとライバルを比較
■ホンダ ヴェゼル:サイズで優るが豪華装備は拮抗?!
ホンダ ヴェゼル
2021年4月に発売されたばかりのホンダ ヴェゼルは、コンパクトSUVという分類ではヤリスクロスと同様ながら、ヤリスクロスよりもやや長めなボディサイズで、より伸びやかな印象を感じさせます。
そのサイズ差もあってか、ヴェゼルの価格設定はやや強気で、お値段が控えめなガソリン車は1グレードしか設定されないことも特徴的。残りの3グレードは全て「e:HEV」ハイブリッド仕様となっています。
このe:HEVは、ガソリンエンジンによるタイヤの駆動を低中速時に全く行わないことが特徴で、ガソリンエンジンは主に発電用途を担当しているので、普段はエンジンが唸ることも少なくスムーズな加速が可能。それでいて高速域ではエンジン直結の高効率な走行も可能という優れものです。
ヤリスクロスとヴェゼルの装備を見比べると、ブラインドスポットモニターなどの先進装備が廉価グレードではオプション設定となったりする点は共通ですが、ヤリスクロスなら全グレードでディスプレイオーディオが標準装備という強みがあります。
後発のヴェゼルだけに、ハンズフリーアクセスパワーテールゲートを上位グレードで標準装備するなど、ヤリスクロスを意識したような豪華装備も揃います。ヤリスクロスにはサンルーフの設定もないのに対し、大面積のパノラマルーフを最上位グレードに標準装備する点はヴェゼルの強みですね。
ホンダ ヴェゼルのスペック
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 4,330mm×1,790mm×1,580mm | |
---|---|---|
ホイールベース | 2,610mm | |
最大乗車定員 | 5名 | |
車両重量 | 1,350kg | |
燃費 | WLTCモード:25.0km/L | |
エンジン種類 | 直列4気筒ガソリンハイブリッド 1,496cc | |
エンジン最高出力 | 78kW(106PS)/6,000-6,400rpm | |
エンジン最大トルク | 127N・m(13.0kgf・m)/4,500-5,000rpm | |
モーター種類 | 交流同期電動機 | |
モーター最高出力 | 96kW(131PS)/4,000-8,000rpm | |
モーター最大トルク | 253N・m(25.8kgf・m)/0-3,500rpm | |
駆動方式 | 前輪駆動(FF) | |
トランスミッション | 電気式無段変速機 | |
新車価格 | 2,417,000円(消費税抜) |
■日産 キックス:ハイブリッドながら意外と伸び悩む燃費
《画像提供:Response 》日産 キックス
2020年6月に発売と、ヤリスクロスよりも数ヶ月先行して市場に登場した日産 キックス。海外仕様向けではガソリン車も用意されるものの、国内仕様ではe-POWER仕様のみに限定した点が話題を呼びました。
そのe-POWERは、先ほどご紹介したヴェゼルのe:HEVとも似たハイブリッドシステムで、こちらではエンジンは発電に専念。そのため1.2リッターという小さめの排気量のエンジンとなっているのですが、サイズでややヤリスクロスよりも大柄というハンデを除いても、あまり伸びていないカタログ燃費が気になるところです。
運転支援機能などの先進性を強くアピールする日産のSUVだけに、キックスは全車で運転支援技術の「プロパイロット」を標準装備するなど、ヤリスクロスにも劣らない充実の安全装備が魅力的です。
とはいうものの、国内向けに販売しているグレードはベースのXとXツートーンインテリアエディション、上質なカスタムが施されたAUTECHの3グレードにとどまっているほか、4WDの設定がないなど、やや選びにくさも感じられる展開です。ベースとはいえXグレードは装備が充実した上位グレード扱いということもあって、価格もやや高め。
ヤリスクロスと並ぶと、コストパフォーマンスという面でやや厳しさが感じられそうです。
日産 キックスのスペック
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 4,290mm×1,760mm×1,610mm | |
---|---|---|
ホイールベース | 2,620mm | |
最大乗車定員 | 5名 | |
車両重量 | 1,350kg | |
燃費 | WLTCモード:21.6km/L | |
エンジン種類 | 直列3気筒ガソリンハイブリッド 1,198cc | |
エンジン最高出力 | 60kW(82PS)/6,000rpm | |
エンジン最大トルク | 103N・m(10.5kgf・m)/3,600-5,200rpm | |
モーター種類 | 交流同期電動機 | |
モーター最高出力 | 95kW(129PS)/4,000-8,992rpm | |
モーター最大トルク | 260N・m(26.5kgf・m)/500-3,008rpm | |
駆動方式 | 前輪駆動(FF) | |
トランスミッション | - | |
新車価格 | 2,509,000円(消費税抜) |
■マツダ CX-3:クラスレスな高級感、そろそろ古さも見え隠れ?
マツダ CX-3(2015年モデル)
コンパクトSUVながら、ファーストカーとしてもしっくりくるような作り込みの良さと高級感で一躍人気を得たマツダ CX-3ですが、実は登場は2015年とかなり古参なモデル。それにしては古びないデザインが魅力的で、エクステリア・インテリアともに第一線級の存在感が感じられますね。
CX-3の最も大きな特徴は、国産コンパクトSUVクラスでは現在唯一の設定となるクリーンディーゼルエンジンが選択できることかもしれません。デビュー当初1.5リッターだったディーゼルエンジンは現在1.8リッターに大型化されており、最大トルクは270N・mと、ガソリン車であれば3.0リッター級に迫るような分厚いトルク感でロングツーリングも難なくこなす余裕があります。
なんと発売当初はディーゼル専売車種だったのですが、現在では2.0リッターと1.5リッターのガソリンエンジンもラインナップされており、そのリーズナブルな価格と、特に2.0リッターではこちらもコンパクトSUVらしからぬ余裕の動力性能が魅力的です。
しかし、デビュー年度が古いということは、ヤリスクロスなどと比べると装備内容の差に現れてきてしまいます。度重なる細やかな改良で、自動ブレーキなどの予防安全機能は充実しているものの、ヤリスクロスでは最廉価のX“Bパッケージ”以外で全車標準装備となる全車速追従機能付きのクルーズコントロールがCX-3では上位グレードのみの装備に留まったりと、やや古さを感じさせる点も見られます。
とはいえ、ディーゼルエンジン車では6速MTが選択できるなど、こだわり派がしっかり満足できる商品性の高さは健在。都会派コンパクトSUVとして、現在でもヤリスクロスの大きなライバルの1台でしょう。
マツダ CX-3のスペック
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 4,275mm×1,765mm×1,550mm | |
---|---|---|
ホイールベース | 2,570mm | |
最大乗車定員 | 5名 | |
車両重量 | 1,300kg | |
燃費 | WLTCモード:20.0km/L | |
エンジン種類 | 直列4気筒ディーゼルターボ 1,756cc | |
エンジン最高出力 | 85kW(116PS)/4,000rpm | |
エンジン最大トルク | 270N・m(27.5kgf・m)/1,600-2,600rpm | |
駆動方式 | 前輪駆動(FF) | |
トランスミッション | 6速AT | |
新車価格 | 2,266,000円(消費税抜) |
結局、まだヤリスクロスは「買い」なのか?
《画像提供:Response 》トヨタ ヤリスクロス
ライバル車種と見比べてきても、まだまだヤリスクロスの際立つ魅力が多数あり、今買っても後悔することなく充実したSUVライフが送れそうな点がわかってきました。
そろそろ世代交代が噂されるマツダ CX-3や、ホンダからもヴェゼルよりも小型のSUVの登場が噂されるなど、ヤリスクロスの独走を止めるべく、このクラスは今後さらに盛り上がっていきそうな印象もあります。
上質なデザインと充実の装備、それでいて低く抑えられた価格設定というヤリスクロスの布陣を破ることができるライバルがこれから登場するかどうか、注目していきたいところです。
まとめ
《画像提供:Response 》トヨタ ヤリスクロス
トヨタ ヤリスクロスの魅力についてご紹介してきました。発売から販売が非常に好調で、街中で見かける頻度もどんどん高まってきているヤリスクロス、多くの人が選ぶ理由がきっとお分かりいただけたのではないでしょうか。
トヨタ車の常で、これからも市場の要望に応じたきめ細やかな改良によって商品力を維持していくことが予想されますので、現状のヤリスクロスで不満のある方はちょっと待ってみるのも手かもしれません。ライバルとしっかり比較しながら、ご自身にぴったりの最高のコンパクトSUVをぜひ探してみてくださいね。
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よくある質問
■ヤリスクロスはいつ発売されたの?
トヨタ ヤリスクロスは、2020年4月に世界初公開され、日本市場では同年8月31日に発売されました。ヤリスシリーズとしては、2020年7月から継続して普通車新車販売台数ランキングの首位を獲得しています。
■ヤリスクロスってヤリスとはどう違うの?
よりオーソドックスな5ドアハッチバック車であるヤリスと比べ、ヤリスクロスは最低地上高を高めに取ったSUVスタイルが特徴的。ヤリスクロスはプラットフォームにヤリス同様のGA-Bプラットフォームを採用しますが、ヤリスの車高を高めただけのなんちゃってSUVではなく、それぞれ並行して開発され、ヤリスクロスは開発をヨーロッパ拠点が担当するなどしっかりと差別化が図られています。