クーラントとは?

クーラントとはエンジンを冷却するために使用する冷却水で、主な成分はエチレングリコール、防錆剤、水、染料です。
クーラントの働きは、主に以下の4つです。
■①冷却
エンジンやトランスミッションなどの熱を吸収し、それを排熱器で冷却します。これにより、エンジンの適切な動作温度を維持し、過度な熱からエンジンを保護します。
■②防錆
金属部品を錆や腐食から守ります。エンジン内で水が直接使用されると、金属部品が腐食し、システムに損傷を与える可能性が高まりますが、クーラントはこの問題を防ぐ役割を果たします。
■③凍結防止
クーラントには凍結防止剤も含まれており、エンジン内での凍結を防ぎます。
■④圧力維持
クーラントは冷却システム内で一定の圧力を維持する役割も果たします。圧力を上げて沸点を上げ、熱をより効果的に排熱器に伝えます。
クーラント不足や漏れによるトラブル

クーラントが不足して起こるトラブルの代表が、オーバーヒートです。
クーラントの不足によって、エンジン内部の熱を冷却できずにエンジン内の温度が上昇し、本来の性能を出せないなどの症状や、過剰に温度上昇した状態が続くとエンジン自体が損傷してしまいます。
オーバーヒートが原因で、エンジンヘッドの歪みやシリンダーヘットガスケットの損傷などからエンジン内部にクーラントが入ってしまい、エンジンオイルと混ざることによって故障する可能性もあります。これにより、ヒーターやクーラーなどのエアコンの性能も低下します。
そのほかにも、クーラントが劣化することによる冷却部品の腐食や、その部分からクーラントが漏れてクーラント不足もおこります。
■オーバーヒート
オーバーヒートは、その兆候を察知し早めに対処することが、エンジンへの損傷を少しでも抑えるカギになります。オーバーヒートの兆候は、水温計の表示がHに近づくことや、水温のチェックランプの点灯、エンジン出力の低下です。
オーバーヒートは、冷却システムの問題やクーラントの不足、サーモスタットの故障、ラジエターファンの停止による冷却不良、電気系統の故障によるクーラントの循環不良、または熱交換効率の低下などが原因です。
オーバーヒートが発生すると、エンジンが過度に熱くなり、それに伴いさまざまな問題が発生する可能性があります。例えば、エンジンヘッドの歪みやシリンダーヘットガスケットの損傷などからエンジン内部にクーラントが入ってしまい、エンジンオイルと混ざることによって故障する可能性もあります。
■オーバーヒート時の対処
オーバーヒートと疑わしい症状がでた際には、まず安全な場所に車を停車させます。
エンジンは停止せずにボンネットを開け、高温になったエンジンを少しでも外気に触れさせて冷却を促します。同時に室内のエアコンをヒーター全開の最大風量にしてエンジン内部の熱を室内に逃します。
エンジンを停止させた方がいいと思いがちですが、オーバーヒート状態で急にエンジンを停止させてしまうとクーラントの循環も止まってしまうので、一気にエンジン内部の温度が上昇してエンジン自体が焼き付き、エンジン再始動不能となる可能性があります。
ただし、明らかにクーラントが漏れており、タンク内のクーラントが空っぽの場合や、ラジエターのファンが回っていない場合には、ただちにエンジン停止をし自然冷却させましょう。
エンジンがまだ熱い場合、クーラントが噴出し、やけどの危険があるので、エンジンが十分に冷却されるまで、ラジエターキャップを開けてはいけません。
警告灯の消灯や水温計の数値が通常に戻ったことを確認できたら、エンジンを停止させます。
十分に外気に触れさせ、エンジンを冷却させます。その間にクーラントの量と冷却ファンが正常に動作しているかどうかを確認します。ファンが動かない場合、ファンモーターやセンサーの故障が考えられます。
クーラントが不足している場合にはエンジン冷却後、ラジエターキャップが高温でないことを確認し、タオル等を添えながらゆっくりとラジエターキャップを開け、クーラントを補充します。クーラントがない場合には応急処置として水での代用も可能です。その際にクーラントがまだ高温で火傷をする場合があるので一気に開けず、少しずつキャップを緩めていく必要があります。水が十分にある場合には、ラジエター付近にも水をかけて冷却を促します。
オーバーヒートの原因を特定するために、クーラント系統や冷却ファンに関する視覚的な点検を行います。漏れ、損傷、破損部品を見つけた場合、修理が必要です。
オーバーヒートの原因によっては冷却後のエンジン再始動が可能です。しかし、オーバーヒートは原因によっては再発する可能性が高く、何度もオーバーヒートを繰り返すと、エンジン自体の交換が必要になります。そのため、オーバーヒートの原因が特定できない場合や、修理が必要な場合は、ロードサービスを呼び、専門家による診断と修理を検討しましょう。
オーバーヒートは、エンジンに重大な損傷を与える可能性があるため、適切な対処が必要です。安全に留意し、専門家のアドバイスを受けることが重要です。
クーラント交換方法について

クーラントは時間とともに劣化し、冷却性能が低下していき、これにより、エンジンのオーバーヒートのリスクが高まります。また、クーラントに含まれる防錆剤も時間とともに劣化し、冷却系統内の金属部品に腐食や、堆積物(不純物)を形成する可能性があります。
クーラント内の不純物や堆積物は冷却ファンやサーモスタットの動作を妨げることがあり、配管内の流れが悪くなったり、冷却部品の中でつまりを起こすことにより、エンジンの冷却が十分にできず、オーバーヒートの原因となります。そのため、定期的なクーラントの交換が必要なのです。
また、劣化のないクーラントは、冷却ファンやサーモスタットの動作を妨げないため、冷却効果も高くなります。
■準備
クーラント交換をする際の準備として、その車両に適したクーラントを使用する必要があります。
クーラントにも、LLC(ロングライフクーラント)やSLLC(スーパーロングライフクーラント)等の種類があります。見た目の色(緑・赤・青・ピンク)で判断することもできますが、クーラントやクーラントが入っているリザーブタンクの劣化により色が濁って見えることもあるため、取扱説明書を確認し、その車に適したクーラントを準備しましょう。
準備するものは、新しいクーラント、大量の水、排出するクーラントを受けるためのバケツです。
また、エンジンが十分に冷却されていること、ラジエターキャップの温度が高くないこと、ラジエターにつながるホースに圧力がかかっていないことも確認しておきましょう。
■バケツを置いて古いクーラント液を抜く
ラジエーターの下にあるドレインコック、またはドレインプラグを見つけて、クーラントをバケツに排出します。
■ラジエターキャップを外す
クーラントが抜け始めたら、ゆっくりとラジエターについてるキャップを外します。ラジエターキャップが高温の場合、冷却システム内部の圧力がかかっており、高温のクーラントが吹き出し、火傷の危険性があるので、注意が必要です。
ラジエターキャップを外すことにより、冷却システム内の圧力を開放し、古いクーラントを確実に排出できます。
■タンクや冷却回路の洗浄
クーラントがすべて排出されたら、すぐに新しいクーラントを補充せず、冷却回路の洗浄フラッシングを行います。劣化したクーラントに不純物や堆積物が発生している場合、冷却回路に残っている場合があります。そのため、洗浄フラッシングを行わないと、せっかく新しいクーラントを補充しても冷却回路の流れを阻害してしまったり、サーモスタットの働きを阻害してしまい、十分な冷却効果を発揮できません。
水道水でリザーブタンクを満たし、エンジンを始動します。3~5分ほどエンジンをかけて循環させたら、再びラジエターのドレンコックやドレンプラグからバケツに水道水を排出させます。この作業を2、3回繰り返せば洗浄フラッシングは完了です。
■新しいクーラント液の注入
リザーブタンクに新しいクーラントを入れます。ミニマムとマックスの目安線が引いてあるので、マックスまで補充します。
■エア抜き
冷却システム内にエアが含まれると、エアバブルがクーラント液の通り道を塞ぎ、効率的な冷却が妨げられます。これにより、エンジンがオーバーヒートしやすくなります。
冷却ファンは、クーラント温度に応じて制御されます。エアが含まれることによってクーラントの温度上昇が正確に検出されないと、ファンが適切に動作しない可能性があります。
新しいクーラントをリザーブキャップに補充したら、エア抜きを行います。
ラジエターキャップを外したままエンジンを始動します。ヒーターの系統のエア抜きを同時に行う場合には、エアコンを最大温度、最大風量、外気循環に設定します。
エンジンをアイドリングさせたまま、サーモスタットのバルブが開くまでクーラントの温度を上昇させます。
クーラントの温度が上昇すると、注水口からクーラントが沸騰したように気泡が出ます。気泡が出ている=エアが抜けている状態です。
気泡が出ている間はリザーブタンクのクーラントの水位が下がります。水位が下がったらクーラントを継ぎ足し補充します。繰り返しながら徐々にエンジン回転数を上げていき、3,000回転ほどを維持させます。徐々に気泡が小さくなり、気泡が出なくなったらエア抜き完了です。
■ラジエターキャップを閉める
ラジエターキャップは2段ロックを気にせず右回転で閉めます。ラジエターキャップを閉めてから、エア抜きの際に周囲に飛び散ったクーラントの水洗いや拭き取りを行います。
ラジエターキャップの締め忘れがあると、冷却システム内部の圧力が掛からず、クーラントがうまく循環しなかったり、エンジンルーム内でクーラントが吹き出してこぼれたりし、クーラント不足を引き起こすので、必ず閉めましょう。
■作業の終了確認
・ラジエターのドレンコックやドレンプラグが閉まっていること。
・ラジエターキャップがしまっていること。
・エンジンを始動し、漏れがないこと。
・リザーブタンクの水位が正常値であること。
の確認を行い、作業を終了します。
クーラント交換時期について

通常のロングライフクーラントの場合、初回交換は3年、2回目以降は2年ごとの交換が推奨されています。不具合等がない場合には、車検のタイミングごとに行うのがよいでしょう。
また、スーパーロングライフクーラントの場合、初回7年または16万キロどちらか早い方、2回目以降は4年または8万キロのどちらか早い方で交換することが推奨されています。スーパーロングライフクーラントにおいてはメーカーごとに交換推奨年数、交換推奨距離が違うため、取り扱い説明書を確認しましょう。
クーラント点検方法

クーラントの点検方法は、基本的に目視です。
・リザーブタンクを確認し、水位がミニマムとマックスの範囲内か確認します。
・リザーブタンクの蓋を開け、不純物や堆積物の有無を確認します。
・リザーブタンク内のクーラントの色と透明度を確認します。汚れている場合には冷却システム内での詰まりの兆候ですので交換を推奨します。
クーラント交換費用について

クーラントの交換は、特殊な工具は必要なく、適切な手順を踏めば自身での交換も可能です。しかし、エア抜きが不十分だったり、交換量が適切ではない場合には、車にとってかえって悪い状況を作ってしまいます。
クーラント自体は、カー用品店やホームセンターなどでも簡単に手に入ります。交換工賃を節約したい場合や、自身で交換に挑戦してみたい方には比較的簡単なメンテナンスですので、チャレンジしてみるのもおすすめです。
ここでは、それぞれのリスクや費用の違いについて紹介します。交換の例としてクーラントが2リッター必要なカローラ ツーリングの場合で比較します。
■ディーラー
ディーラーの整備士が作業してくれるので安心感があります。ただし、取り扱っているクーラントが限られていることが多く、自分好みのクーラントを入れたい方には不向きです。
カローラ ツーリングの場合、リッターあたり1,500〜2,000円、工賃が2,500円程度なので、合計5,500〜6,500円ほどで交換可能です。
1時間ほどで交換可能ですが、予約がない場合には、待ち時間が長くなることも考えられます。
■カー用品店
カー用品店の場合も、整備士に任せられるので安心です。カー用品店の場合、クーラントの種類も豊富で、選ぶクーラントによっても費用が変わってきます。
クーラントの値段は、1リッターあたり1,000〜2,000円ほど。
イエローハットの場合、工賃が2,200円〜。カローラ ツーリングで計算すると、費用は4,200〜6,200円ほど。予約がない場合、待ち時間が長くなることも考えられますが、1時間程度で交換できるでしょう。
■ガソリンスタンド
すべてのガソリンスタンドで、クーラントの交換を行っているわけではありませんが、給油のついでに交換ができるため、その手軽さが魅力です。
クーラントはリッターあたり1,200円ほどで、工賃は店舗によって違いますが2,000円〜というところが多いようです。カローラ ツーリングの場合4,400円ほどで交換できます。作業時間はこちらも1時間程度です。
■自分で交換する
自分で交換する場合にかかる費用は、基本的にクーラント代金のみです。カー用品店やホームセンター、通販等で購入して作業を行います。費用はリッターあたり500円〜なので、カローラ ツーリングの場合、1,000円ほどで交換可能です。自分で交換する時の注意点は、適合のクーラントの判断を自身で行うこと、エア抜きや交換量の管理を自身で行う必要がある点です。
また、排出した古いクーラントや洗浄フラッシングで使用した液体の廃棄処理も自身で行う必要があります。作業時間は2時間程度をみておきましょう。
まとめ

クーラント交換は、日頃からDIYでのメンテナンス等を行っている方にとっては、作業ハードルの低いメンテナンスです。しかし、クーラントは車を安全・正常に維持するために重要で、間違った方法や容量の場合、エンジン載せ換え等、莫大な費用のかかる修理につながるリスクもあります。心配な方は、迷わずプロに任せましょう。
よくある質問
■クーラント交換は必要ですか?
クーラント交換は定期的に行う必要があります。クーラントは時間とともに劣化して冷却性能が低下し、エンジンのオーバーヒートのリスクが高まります。また、クーラント内に含まれている防錆剤も時間とともに劣化するため、冷却系統内の金属部品の腐食や、堆積物(不純物)を形成する可能性があります。
■クーラントの交換年数は?
ロングライフクーラントの場合、初回交換は3年、2回目以降は2年ごとの交換が推奨されています。スーパーロングライフクーラントの場合は初回7〜11年。2回目以降は4〜8年に一回の交換が必要です。