「モビー・ディック」の低いノーズを再解釈。ニュル50周を含む徹底テストも実施
《画像提供:Response》〈Photo by Porsche〉ポルシェ『フラッハバウRS』
ポルシェは、世界に1台だけの「フラッハバウRS」を発表しました。顧客の要望を形にする特別注文プログラム「ゾンダーヴンシュ」によるファクトリーワンオフで、約3年にわたる開発を経て完成したモデルです。
ベースとなったのは、ヴァイザッハパッケージを装着した2018年式「911 GT2 RS」(タイプ991.2)。ポルシェのデザイン部門やモータースポーツ部門、マンタイなどの専門家が参加し、最高出力700psを発揮するパワートレインはそのままに、車体と空力性能を徹底的に作り込みました。
「フラッハバウ」はドイツ語で“平らな構造”を意味し、英語ではフラットノーズやスラントノーズと呼ばれます。1980年代には「911ターボ」(タイプ930)をベースとする特別仕様として948台が製作され、その姿は耐久レースで活躍したポルシェ「935」に由来します。
新たなフラッハバウRSでは、935/78「モビー・ディック」を思わせる低いフロントフェンダーを採用。911の象徴である丸型ヘッドランプに代わり、ハイビーム、ロービーム、デイタイムランニングライトを細いLEDユニットで3段に配置しました。グランプリホワイトのボディーに、マットブラックとカーボンのコントラストを組み合わせたカラーリングも、往年のレーシングカーを思わせます。
リアには「911 GT3 R レンシュポルト」をモチーフとする大型ウイングを装着しました。S字形のマウントを備え、角度は3段階で調整可能。ハイダウンフォース設定では、約340km/h走行時にリアアクスルで554kgのダウンフォースを発生します。
《画像提供:Response》〈Photo by Porsche〉ポルシェ『フラッハバウRS』
室内はオーディオやPCM、遮音材、フロアカーペットなどを取り外し、ベース車から31.6kgの軽量化。露出した配線やグランプリホワイトで塗装された金属面が、レーシングカーさながらの緊張感を生み出しています。一方で、警告三角板など公道走行に必要な装備は着脱式ボックスに収められました。
大胆な外観変更でありながら、安全性や公道認可に妥協はありません。衝突シミュレーションや風洞試験に加え、ニュルブルクリンク北コースを50周。リアウイングには約15万kmの使用に相当する耐久検証も行われています。
フラッハバウRSは顧客のために製作された1台限りのモデルで、一般販売は予定されていません。歴史的なデザインを単に再現するのではなく、現代の空力性能と安全基準まで織り込んだところに、ポルシェのワンオフ製作の奥深さが表れています。


