まずはおさらい、ETCとは
ETCは、高速道路の料金所ゲートのアンテナと、車両に装着したETC車載器との間の無線通信により、通行料金を支払うシステムです。
ITSサービス高度化機構によると、2001年春にETCサービスの本格運用が開始されて以来、セットアップ累計件数は昨年11月末までに6400万件を突破しており、高速料金所を通過する車両の9割がETCを利用しているそうです。
ETC専用レーン
ETCが普及する前、高速道路の料金所は渋滞を発生させるボトルネックとして存在していました。ところが、ETCが普及したことにより料金所で渋滞している光景はほとんどみられなくなっています。
ETCは5.8GHzの周波数帯を使うDSRC(Dedicated Short Range Communication:専用狭域通信)と呼ばれる通信方式を採用しています。
この通信を使って料金所に設置されたアンテナとETC車載機が交信することで料金決済を行っています。
また、ETCによりきめ細やかな料金設定や割引、マイレージなどのサービスが可能となり、時間短縮以外にもドライバーにとって大きなメリットが生まれました。
進化した「ETC2.0」とはいったい何なのか
■あまり普及しなかったETCの拡張サービス「ITSスポット」
ETCが普及後、その拡張サービスとして料金支払いのために利用していた通信方式を拡張し、ETC車載機を通じて様々なデータをやり取りすることができる「DSRC車載器」が登場しました。
高速道路側はこれを活用し、全国の高速道路約1600個所にアンテナを設置し安全運転支援として道路上に発生した様々な事象を伝えたり、交通情報の提供を行う「ITSスポットサービス」を2011年にスタートしました。
「ITSスポット」では道路上の様々な事象を事前に告知する
この交通情報はを活かせば、渋滞を回避した効率の良いルート選択や、危険を回避したより安全な運転が可能になり、将来的には、駐車場やガソリンスタンド、ドライブスルーなどでの自動支払いなども視野にいれられていました。
しかし、この便利さを備えているにもかかわらず、「ITSスポット」の存在を知っている人は想像以上に少なく、鳴り物入りで登場した「DSRC車載器」もあまり普及しませんでした。
■装いも新たに「ETC2.0」として再デビュー
国土交通省はこの現状を踏まえ「道路を賢く使う」ことをテーマにユーザーへのアプローチを転換、さらに、今までのわかりにくい「DSRC」とか「ITSスポット」という呼び方を「ETC2.0」と統一させ、“ETCの進化系”との考えに基づく「ETC2.0」構想として再スタートをさせることにしました。
■国土交通省の狙い
日本の高速道路は海外の先進諸国に比べて車線数が少なく、そのためもあってか都市間連絡速度も依然として低い水準にあります。しかし、道路そのものを整備することは非常に難しいという状況にあります。
そこで、国土交通省はこれまで整備した全国1600個所の「ITSスポット」のインフラを「ETC2.0」として活用ことで既存の道路を“賢く”活用することで効率的な交通状況を作り出すことを狙っていると考えられています。
たとえば、交通需要を均一化することで、渋滞の抑制や、スムーズな交通の流れが作り出すことなどが可能ですが、ETC2.0を活用すればそれらを実現することができ、効率的な道路活用が進むという事です。
「ETC2.0」はどうやったら使うことができるのか
基本的にETC2.0のサービスを使うために「ETC2.0対応車載機」と「ETC2.0対応カーナビ」が必要になります。
GPSを搭載し情報を音声で流すことでカーナビを使わずに車載機だけでETC2.0のサービスを受ける製品も発売されていますが、ETC2.0対応カーナビとETC2.0対応車載機の組み合わせで利用する事が一般的です。
ちなみに2016年4月の時点でETC2.0は、新車の標準装備を中心に40万台に装着されているだけで、現行のETC車載器は5220万台に比べると、まだ十分とは言えない普及状況のようです。
ETC2.0で受けられる優遇制度(2016年から開始)
■圏央道の割引
圏央道利用分について料金水準を役2割引で利用する事ができます。
将来的には、混雑状況に応じた料金の変更なども計画されています。
■ETC2.0搭載の特殊車両「特車通行許可」の簡素化
特殊車両通行許可を簡素化する「特車ゴールド」制度
自動車運搬用トレーラーや海上コンテナ車など大型特殊車輌は事前に通行許可の申請が義務付けられているが。これまでは、渋滞や災害発生時の迂回も考慮した経路一本一本の申請が物流業者にとって大きな負担となっていた。
「特車ゴールド」制度では、業務支援用ETC2.0車載器を装着し、利用規約等に同意してあらかじめ登録した車両は、大型車誘導区間における経路選択を可能とする許可を行う制度です。
この制度を利用することで、大型車誘導区間内であれば渋滞や事故、災害等による通行障害発生時の迂回ができ、輸送を効率化が可能です。
併せて、許可更新時の手続きを自動化する事で、手続きが従来に比べ簡素化を行います。
計画されている優遇制度
■「賢い料金」制度
「賢い料金」では、混雑状況に応じた高速道路料金の導入や、事故などで渋滞している個所を避けるためいったん高速道路から降りて、一般道で迂回した後、再び高速道路に戻った場合の料金を、そのまま高速を使ったのと同じ料金にする。
混雑状況に応じた高速道路料金の導入に関しては、例えば神奈川県の厚木インターから埼玉県の久喜インターに行くには圏央道のみのルートと、東名高速~首都高~東北道を使うルートがあるが、実は圏央道ルートの方が1.3km短いにも関わらず料金が590円高くなっている。そこで、2つのルートの料金をまず同一にした上で、混雑状況に応じて料金差をつけることで、渋滞緩和につなげるというもの。これは大都市圏でのシームレス料金の影響を検証した上で、順次導入されるという。