ブースト計とは?
ブースト計とは、車のエンジンの過給圧力を視覚化するための装置です。
過給圧力とは、過給機(空気を圧縮してエンジンに送り込むための装置)を通る空気の圧力のことで、大気と比べたときの圧力の高低を示しています。
車のエンジンは 吸気、圧縮、燃焼、排気の4つのサイクルを繰り返して動いており、ブースト計はこのサイクルのうち吸気の段階の空気圧を測ります。
ガソリンエンジンは外から取り入れた空気とガソリンを混合させて燃焼させているため、もしも吸気がうまくいかなければエンジンはうまくパワーを出せません。
人間に例えれば息を止めて陸上競技に臨むようなもので、パフォーマンスは確実に落ちてしまいます。それどころか、最悪の場合体を壊してしまいます。
車も人間と同じで、アスリートにとって呼吸が重要であるように吸気というサイクルはエンジンにとっても非常に重要です。
過給が適切に行われているかブースト計を使用して確認する作業を行えば、より効率的かつ安全に走行を行えます。
なお、ブースト計は過給圧力を見るための装置なので、ターボ車以外にはつけても意味はありません。ちなみに、ターボ装置を装着していない普通の車は「NA(Normal Aspiration、自然吸気の意)車」と呼んで区別されます。
ターボ車の中にはブースト計を最初から装備している車もありますが、ターボ仕様の軽自動車やスタンダードグレードのターボ車の中には、ブースト計を装備していない車もあります。
また、ブースト計が装備されているターボ車でも、物足りなさを覚えてより精度の高い計器が欲しくなることもあるでしょう。そのような場合もブースト計を取り付けるカスタマイズ作業を行ってください。
ブースト計はブースト計という呼称が一般的ですが、英語の通り「ブーストメーター」と呼ばれたり、「ターボ計」や「ターボメーター」といった名称が使われることもありますが、これらの名前は全て同じブースト計を指す言葉となっています。
なお、ブースト計に似た計器として「バキューム計」というものがあります。バキュームとは「真空」を意味する英単語で、これはエンジン内の負の圧力だけを計測するための装置です。
ブースト計は負の圧力と正の圧力の両方を計測できますが、バキューム計は前者しか測れません。バキューム計とブースト計を間違えないためには、計器の「0」の数値の両側に数字があるかどうかで判別しましょう。
ブースト計には大きく分けて、機械式ブースト計、電気式ブースト計の2種類があります。それぞれの違いは以下の通りです。
■機械式ブースト計
機械式ブースト計とは、電子技術を使わずに過給気圧を測定する装置です。インテークマニホールド(エンジンにつながっている配管)付近にホースを接続してブースト計につなぎ、直接過給気圧を測定します。
機械式ブースト計を利用する長所は、コストが安めであることと反応が早いという2点です。
機械式ブースト計は電子技術が使用されていないため複雑な制御が必要ないため、コストを安く抑え安価な品物が多くなっています。
また、電子的な制御が必要ないため、ラグが発生せずにエンジンの状況を迅速に知ることができます。
一方、取り付け方法に電気式とは違う複雑さがある点が短所として挙げられます。
過給気圧を測定するためのホースを車内のブースト計まで伸ばすためには、ホースをエンジンルームの外側に出さなければいけません。車内構造を的確に把握し、時にはタイヤを外したりしながら工作を行う必要があります。
■電気式ブースト計
電子式ブースト計とは、機械式ブースト計と異なり電子制御だけでブースト計の機能を実現させた装置です。
機械式ブースト計と同じく気圧を伝えるホースを使用しますが、車内までホースを伸ばさないという点が異なります。
電子式ブースト計はエンジンルームの中に過給気圧を測定するセンサーを設置し、車内にセンサーから電気配線を伸ばし計測を行います。
電子式ブースト計を利用するメリットとして、まず多彩な機能を持つ製品が存在する点が挙げられます。ピークホールド機能(内部メモリーによって、走行中に計測した値の最高値を参照する機能)やワーニング機能(設定値以上の数値を計測すると警告音が出る機能)といった機能を活用できる点が強みです。
その他のメリットとしては、機械式に比べ、ホースを車内に引き込む必要がない点が挙げられます。
車内には電気配線だけを引き込むため、手間も少なく済みスマートなレイアウトを実現できますが、その反面、デメリットとしてはやや反応が遅いという点があります。
これは、エンジン内の過給気圧の状況をセンサーが拾い電子制御する中でラグが発生するためです。
また、近年ではコストも安くなってきていますが、機械式と比べるとそれでもまだ価格が高めという点もデメリットとして挙げられます。
電子式ブースト計のバリエーションとしては「過給圧表示灯」、「デジタルブーストメーター」、「競技用装備のブースト計」、「経済走行用装備のブースト計」といったものが存在します。
過給圧表示灯とはブースト計の数値計測機能を省き、圧力検知をランプで示すだけのもので、エンジン内の気圧が負から正の圧力に転じた時に装置のランプが点灯しドライバーに知らせます。
デジタルブーストメーターとはブースト計の表示部分をデジタル式に変更したものです。一般的なブースト計は針を使用したアナログ表示ですが、デジタルブーストメーターは数字で細かい計測結果を伝えます。
アナログ表示とデジタル表示のどちらが良いかはドライバーの好みによりますが、一般的にアナログ表示の方が一目で結果を掴みやすく便利です。
競技用装備のブースト計はその名の通り、モータースポーツに使用するためのブースト計です。モータースポーツに使用するためには、数値を正確に表示できること、細かく数字を表せることなどが性能として要求されます。
経済走行用装備のブースト計とは、良好な燃費を保つために使われるブースト計。ブースト計の針が動く時とはターボ装置が働いている時であり、その際には燃費が悪くなります。
すなわち、ブースト計の針を動かさない運転を心がければ燃費は良くなります。市販されているブースト計でも経済走行用装備のブースト計として活用できます。
■ブースト計の必要性は?
ブースト計は運転に際して絶対に必要な装備ではありません。
しかし、確実に便利なカー用品です。
その最も大きな理由として、車の特性を把握できる点が挙げられます。
ブースト計を設置していると、どれくらい速度を出せばターボ機能が働き始めるかよくわかり、ターボのかかるタイミングを客観的に把握できるため、より効率的な運転に役立ちます。
前述したように、ターボのかかる速度にわざと踏み込まないことで燃費の良い運転を心がけることもできます。
また、 最初からブースト計が備え付けられているターボ車の場合でもより正確な数値を知りたくなった場合は外付けのブースト計が役立ちます。
次に、ブースト計を設置しているとエンジントラブルの発見に役立つという点が挙げられます。
普段からブースト計を使用し過給気圧のかかり具合を把握しておけば、エンジントラブルが起きた時に数値の異常が見られるため早めに気付くことも可能です。
以上の点から、ブースト計は非常に有用な装備であると言えます。
ブースト計の使い方とメーターの見方
ブースト計の見方は簡単で、針が左側にいけばエンジン内に負の圧力が、右側に行けば正の圧力がかかっていることを示します。
この時注意しなければならない点は、ブースト計の針が示す値は通常の大気圧と比べての気圧の高低を表している点です。
つまり、ブースト計のゼロの値は1気圧を表しており、正負の数値は1気圧よりどれだけ異なっているかを表しています。
ブースト計の針はエンジンがかかっていない状態では、0を示します。安価なブースト計の場合、針が0からずれていることがありますが、なるべくなら0を正確に示せる製品を求めてください。
走行時には、アクセルを踏めば針が正圧に動き、アイドリング時に負圧方向に針が動くようなら正常に機能しています。
正圧方向に動く時には、車種によっては一般道路程度の速度ではターボ装置が働かないことがあるかもしれません。例えば、スポーツカーでは高速域でしかターボが働かないことがあるため、一般道ではブースト計の針がほとんど動かない場合もあります。
アイドリング時に負圧方向に針が動くのは、エンジンのシリンダーが下がった結果、エンジン内の空気が引っ張られ負の圧力が発生しているためです。
もしもエンジン内に異常がある時は、ブースト計に現れる数値も通常とは異なってきます。
例えば、加速しても普段よりもブースト計の数値が上がらない場合は、どこかで過給された空気が漏れている事態が考えられます。
ブースト計の配管が抜けていたり、損傷しているせいかもしれませんし、その他のエンジン部品に亀裂が入っている可能性も考えられます。
また、アイドリング時に針が負の方向に振れない場合はエンジン内の機密が保たれていないことを表します。
その原因としてまず疑われることはエンジンオイルの劣化です。エンジンオイルが古くなるとうまくエンジン内の機密を保てなくなります。そのまま放置しておくと、エンジン部品の劣化や損傷を招くかもしれません。
いずれにせよ、異常な点に気付いたら深刻な事態になる前にディーラーなどに相談してみましょう。ブースト計を注意深く見ておけば異常事態にもいち早く気づけます。
ブースト計に使われる一般的な単位は「kPa(キロパスカル)」で、天気予報などで「hPa(ヘクトパスカル)」という単位が使われますが、 Pa(パスカル)とは圧力を表す時に使用される単位です。
ちなみに、1Paは「1平方メートルに1ニュートン(1kgの物体を秒速1mで動かす力)の力が働いている圧力」を表しており、1kPaは1Paの1,000倍です。
もしも昔の車を運転する機会があれば、ブースト計の単位がkPaの可能性もあります。
1999年以前の車では「kgf/cm2(キログラムフォースパー立方センチメートル)」という単位が使われていました。kgf/cm2は1立方センチメートルの広さに何kgの力がかかっているかを表す単位です。
1kgf/cm2は約98.06kPaなので、両者の数値を換算しなければいけない時には100倍または1/100にすれば大まかな数値が分かります。
その他、ブースト計では「bar(バール)」、「psi(プサイ)」といった単位が使われることがあります。1barは1hPaに等しいため、barの値を10倍すればkPaに換算した数値を得られます。
psiは「ポンド毎平方インチ」という意味で、1平方インチ(約2.54cm四方)に何ポンド(1ポンドは453g)の力がかかっているかを表す単位です。psiは外国車などで使われる少々複雑な単位で、1psiは約6.89kPaとして換算できます。
ブースト計の取り付け方法
ブースト計には大きく分けて機械式と電気式の2種類がありますが、どちらも取り付けの流れはそれほど変わりません。
まず、機械式の場合は、吸入圧力(空気を取り入れる時の圧力)を測定できる場所のホースをカットし、新たにブースト計に空気を届ける経路を作ります。
ホースをカットする場所はエンジンルームにあるサージタンク(エンジンに空気を供給するための空間)とプレッシャーレギュレータ(燃料の噴射圧力を調整する部品)の間、またはサージタンクから圧力センサの間が代表的です。
該当する箇所のホースを切断したら、そこに三又の金具の両端を接続します。
三又になった金具は機械式ブースト計の製品に付属するものを使えば間違いありません。
金具の残り一端には製品に付属するホースを接続し、エンジンルームから車内へと繋げます。
エンジンルームからホースを出した後ジャッキアップして右前輪を外し、インナーフェンダーを外した後にゴムキャップに穴を開けて車内にホースを通します。これはほんの一例で、車によってはエンジンルームから車内への別の経路が使えることもあります。
次に、右Aピラーカバー(車体最前方のピラーのカバー)を外し、根元からホースを車内に導きます。後はブースト型本体にこのホースを取り付ければ、ひとまずも完了です。
もしも機械式ブースト計にイルミネーション機能がついている場合は、さらに電源を確保する必要があります。 イルミネーション機能のための動力は「イルミネーション電源」から取りましょう。
イルミネーション電源とはスモールライトの点灯に従って光る車内スイッチに使われている電源のことで、ブースト計の照明をここに取り付ければフロントライトと連動させられます。
ブースト計の電源をイルミネーション電源につなぐためには、まず、イルミネーション電源の位置を探りましょう。イルミネーション電源の位置は車種によって異なっていますが、ハンドル横のスイッチの裏、カーナビゲーションの裏、ヒューズボックスなどの位置が挙げられます。
ハンドル横のスイッチの裏から電源を取るためには、カバーを外す必要があり、カーナビの裏から電源を得るためには内張りはがしなどを用いてカーナビを取り外さなくてはいけません。
ヒューズボックスの使用は最も簡便ですが、端子の種類に注意する必要があります。いずれの方法でも、スモールライトがオンの時に働く電源を探すためには検電テスターがあると便利です。
ヒューズボックスを使用してイルミネーション電源を取るためには、車の説明書を参照してイルミネーション電源の位置を探してください。
ヒューズボックスに使用する端子の種類には平型、ミニ平型、低背型の3種類が存在するため正しく選びましょう。
ヒューズボックスに接続した端子とブースト計の電源ケーブルはゴム被覆を外して銅線どうしを絡ませた後、圧着端子などで固定します。これで電源ケーブルの接続は完了です。
最後に、ブースト計のアース線を接続しましょう。
アース線は車体の金属部分に触れさせる必要があります。車体の金属部分に触れているように見えても、プラスチック部品などで絶縁されている場合もあるので注意しましょう。
アース線の接続には、クワ型端子とアース線を繋げた上で車体に使われているネジにクワ型端子をかませると便利です。
電子式ブースト計の場合は、機械式ブースト計のようにホースを車内まで持ってくる必要はありませんが、電気コードの接続が少々複雑です。
まず、電子式ブースト計で過給気圧を計測するために、センサーをエンジンルーム内に取り付けます。機械式ブースト計のようにサージタンクとプレッシャーレギュレータの間のホースをいったん切断し、三又の金具で接続した後に残る一端から伸ばしたホースをセンサーにつなげます。
センサーからはセンサーケーブルが伸びており、これはエンジンルームから車内に通した後にブースト計本体に接続します。
エンジンルームから車内に通す方法としてはエンジンルーム中央下側のゴムカバーをくぐらせる方法などがあります。
電気式ブースト計にはアース線の他、常時電源とアクセサリー電源、イルミネーション電源につなぐ配線があり4本全て接続させる方法が一般的です。
このうちアース線以外は全てヒューズボックスから取る方法が最も手軽です。すでに他の機器でヒューズボックスを使用している場合などはスイッチ裏などから電源を取りましょう。
ヒューズボックスを使用する場合は車の説明書を参照し、平型、ミニ平型、低背型の3種類の金具を間違えないようにします。アース線はクワ型端子などを用いて、車体本体に締められているネジに接続しましょう。
なお、電気式ブースト計の中にはOBD接続する形式のものもあり、これは車内のOBDコネクタにケーブルを接続するだけなので、簡単に取り付けられますが、OBD接続する機種の場合でも照明用のケーブルをイルミネーション電源につなぐ工程が必要になります。
■店舗での取り付け 費用や時間
ここまで自分でブースト計を取り付ける方法について述べてきましたが、もしも面倒に思うならカーショップに依頼する方法もあります。
だいたいのカーショップでは持ち込みのブースト計の取り付け作業を請け負っており、工賃は1万円弱程度の店舗が多いです。
作業の所要時間は1時間~2時間ほどなので、時間の取れない方は依頼してみましょう。
ブースト計の人気・おすすめ商品5選
■オートゲージ ブースト計 60SMBOW
オートゲージが提供している電気式ブースト計で、白の文字盤に黒の印字とスタンダードなデザインの万人受けする製品です。直径60φ(60mm)と大きく見やすい作りも人気の秘訣で、何かと忙しい運転時にも必要な情報をしっかり読み取れます。ワーニング機能もついているなど、様々なドライビングスタイルに合わせた幅広い使い方が可能です。値段が控えめな点も親しみやすいブースト計です。
参考価格:5,460円
メーカー:オートゲージ
■CNSPEED ブースト計 YC101172
求め安い値段にもかかわらず、満足な性能を備えた電気式ブースト計です。ワーニング機能とダイヤル照明機能を持ちながらこの値段であるのはかなり破格ではないでしょうか。黒地に白文字、赤い針と視認性の高いデザインに特徴があり、手早く情報を読み取れます。安くて使いやすい品物探しているなら、このブースト計が1つの答えになるでしょう。
参考価格:3,850円
メーカー:CNSPEED
■日本精機 Defi (デフィ) メーター Racer Gauge DF06506
ブースト計のメーカーではの中でも特に人気が高い日本精機が提供する製品です。電気式ブースト計ですが、ワーニング機能などの余分な機能をあえて除いています。気圧を測る点だけに注力した計測性能は確かなもので、電気式にもかかわらずラグをほとんど感じさせない点がユーザーから広く愛されています。少々高価ですが、品質の高い品物を長く使いたい方には非常におすすめです。
参考価格:15,241円
メーカー:日本精機
■オートメーター ブースト計 機械式 Pro-Comp ULTRA-LITE
AUTOMETERから販売されているこのブースト計は機械式ならではのレスポンスの速さが大きな特徴です。ワーニング機能など電気式ならではの機能に魅力を覚えないなら、機械式を選んでみてはいかがでしょうか。この商品は白を基調としたシックなデザインで仕上げられているため、どのような車にも似合います。クラシックな機械式ブースト計を取り付ければ、愛車も一段とおしゃれです。
参考価格:7,450円
メーカー:AUTOMETER
■オートゲージ 52mm ブースト計 548BO52
ブースト計にかっこよさを求める人にはAUTOGAUGEが提供する548シリーズはいかがでしょうか。この商品は地の色と文字のバランスが良く、引き締まった印象を与えるブースト計です。
さらに、照明の色に白と赤を採用して強いアピール力を持たせています。もちろん、この商品の良いところは見た目だけではありません。使い続けても狂いの出ない頑丈さも持ち合わせています。
参考価格:7,660円
メーカー:オートゲージ
まとめ
ブースト計は絶対に必要な計器ということではありませんが、備えておくと非常に便利です。
見方が分かっていれば愛車の調子を知ることができる他、トラブルの回避にも役立ちます。
これまでブースト計を意識していなかった方はぜひ活用してみてください。きっとドライビングに新たな楽しみが加わることでしょう。
ブースト計は見た目からもドレスアップアイテムとして利用されているので、ターボ車に乗っていてドレスアップをしたいという方も是非チェックしてみてください。