鳴きの原因の前にブレーキの構造
ショックアブソーバー『KONI』
自動車には走る、止まる、曲がるという基本的な動きがありますが、どれか一つにでも問題があるならば、安全に乗ることは出来ません。それぞれの機能が十分に働いている必要があります。
特にブレーキは安全に乗るうえで大切な動きと言えます。そうでないと、誰かをケガさせてしまうことも起こりえるからです。
ブレーキの構造を簡単にイメージするには自転車がわかりやすいので、自転車のブレーキを例にして説明したいと思います。
自転車は、タイヤのフレームを挟むように四角のゴムが付いています。自転車のブレーキはブレーキを握ると、そのゴムがフレームを挟んで摩擦を生じさせて、自転車を止めることが可能です。自動車のブレーキの構造も自転車と同じ原理で、摩擦熱を利用します。
ブレーキの種類
ブレンボ製ベンチレーテッドディスクブレーキ
ブレーキの種類には二つありますが一つはディスクブレーキで、もう一つのブレーキはドラムブレーキと呼ばれるものです。
■ディスクブレーキの特徴
ディスクブレーキは、タイヤやホイールと一緒に回転する「ブレーキローター」を挟むように配置された「ブレーキパッド」と呼ばれる摩擦材を「ブレーキキャリパー」と呼ばれる部品で挟み込むことで車を止めたり減速させたりする方法です。
外部にさらされているので錆びやすいですが、放熱性に優れているので効果が高く、ほとんどの車種で採用されています。効果的に車を停止させることができるので安全です。
■ドラムブレーキの特徴
ドラムブレーキはタイヤやホイールと一緒に回転する「ブレーキドラム」の内側に「ブレーキライニング」と呼ばれる摩擦材を押し付けることで、車を減速させる方法です。
摩擦材を押し付ける面がドラムの中に入っているので錆びにくいですが、放熱性が悪いという問題があります。放熱性が悪いと効きが悪くなりますので、四輪すべてでドラムブレーキを使っている自動車は少数になっています。
ディスクブレーキの鳴きの原因
サビが進行している軽トラック
ブレーキを踏んだ時に異音がするのは、ディスクやキャリパーなどのブレーキを構成する部品に構造上の問題が生じているからです。一番の原因はパッドの摩耗で鳴きは交換の合図になっています。二つ目はローターとの接触不良で研磨や交換が必要です。
三つめは寒くてパッドが固くなっており鳴きが生じます。このように原因はいろいろありますが、止まったり減速するときに影響が出ている場合は、すぐに修理や部品の交換が必要になります。
■原因1. ブレーキパッドの減り
ブレーキパッドは消耗品でどんどん減っていきます。減っていくと交換の合図として音が出るようになっているのです。
そのため、ブレーキパッドが減ったのが原因で異音が聞こえはじめても、慌てる必要はありません。なるべく早期に修理屋さんでパッドを交換すれば鳴きの問題は解決します。
■原因2. ブレーキローターの劣化
パッドを交換しても異音がする場合はローターの劣化が原因と言えます。ローターが劣化すると摩擦面で振動が生じてしまい、それが増幅して異音として聞こえてきます。
研磨で治ることもありますが、あまりひどいと部品の交換が必要です。劣化には錆などが含まれますが、ローターが中古でパッドが新品などの場合も生じことがあるので、その場合は面取りをすれば異音が収まることもあります。
■原因3. その他のブレーキ部品の劣化・故障
寒冷地などでは寒さゆえにパッドが固くなり、異音を発生させることもあります。その場合は暖まってくると音がしなくなります。
パッドの交換合図を無視して乗っていると最後は金属と金属が接触するので、音の種類が変わってきます。そうなると研磨や金属部分の交換が必要になるので、早急に修理が必要です。
また、踏んでいないのに異音がする場合は、パーツが正常な位置に戻っていないことが考えられます。
パッドの減りでもなくローターの劣化もない場合は、他の部品の劣化や故障が考えられますので、修理専門業者に早めに見てもらう必要があります。
ドラムブレーキの鳴きの原因
ホンダ N-BOXスラッシュ
ドラムブレーキではディスクブレーキのような交換合図の音は出ません。鳴きの原因として考えられるのは、削れたカスが溜まっていることが多いです。
すぐに修理店に持って行って、分解して中をきれいにしてもらう必要があります。一番いいのは5万kmに一回修理業者にチェックしてもらうことです。
削れカスを除去すれば、問題を減らすことは可能です。また、タイヤ交換の時に掃除することも出来ます。
ただし、削れカスだけが原因ではなく、なんらかの構成部品が故障して異音を発する場合もありますので、清掃するだけなら先延ばしでいいや、と考えずに、早めに整備のプロに確認してもらうことが大事です。
ブレーキの鳴きへの対策
電動パーキングブレーキ機構付きドラムブレーキ
ブレーキの鳴きの原因は主に三つありました。一つはパッドなどの消耗品を交換する必要があることです。二つ目は接触面の振動により生じることがあります。三つめは冬場の寒さが原因で生じるものです。原因を知ると対処は簡単ですので、一つ一つ考えてみます。
■振動原因になっている部品を修理・交換する
鳴きが聞こえたら、迷わずにパッドを交換します。その時に必要ならローターの研磨なども行うことが出来ます。ドラムブレーキのように削りカスが鳴きの原因なら取り除くことで問題は解決です。ブレーキは大事なパーツなので早めに対処することが大切です。
■ブレーキ鳴き止め剤って何?使っても大丈夫?
パッドを新品に交換しても、止まる時に音がすることがあります。そのような時にブレーキ鳴き止め剤を使用することが可能です。
適切に塗布している限りは使ってもブレーキに影響は出ませんが、効果はあまり長く続かないので、気になるようであればマメに使う必要があります。
劣化した部品を修復することはできません!
ブレーキ鳴き止め剤、という商品名を見ると、これだけを塗布すれば異音が収まり、すべて解決するのか!とお思いかもしれませんが、鳴き止め剤では劣化した部品を元に戻すことはできません。
そのため、例えばブレーキパッドが消耗しているから異音が発生している車に鳴き止め剤を施工したところで、根本問題の解決にならないどころか、かえってブレーキが効かずに事故を起こしてしまう危険性が高まるかもしれません。
ブレーキの各構成部品に不具合がないことが明確にわかっていて、特定の部品の共振などによる異音を抑えたいという目的のある場合にのみ、ブレーキ鳴き止め剤を使用するべきといえます。
ブレーキの異常振動や効きムラを抑える効果
ブレーキ鳴き止め剤は、塗布された面の振動特性を微妙に変化させることで、部品の共振による異音を低減させる効果が期待されるほか、ブレーキパッドとブレーキローターの間での摩擦をより一定化する効果が期待されます。
ブレーキ整備は専門知識が必要で、あまり日常的にユーザーが整備を行う部分ではないため、一般向けに販売されている商品は限りがありますが、その車の特性として特に問題がなくてもブレーキが鳴きやすい車もあり、そのような車のオーナーでは重宝している人もいます。
パッド交換からローター交換まで色々試したけどダメだった、という場合に、かなり最終的な手段として取られることが多いようです。
適切に塗布しないとブレーキが効かなくなるかも?!
ブレーキ鳴き止め剤は、記載の塗布指示をきちんと守って塗布する必要があります。間違ってもブレーキローターや、ブレーキパッドのローター接触面に塗布してはいけません。この場合、ブレーキが正常に効かなくなり、事故の可能性があります。
ブレーキパッドのローター接触面以外などの、異常振動が疑われる面に適量塗布し、垂れたり別の場所に飛び散ったりすることのないように注意して施工する必要があります。
そもそもブレーキは、専門知識のない人はメンテナンス調整を行うべきではありません。整備のプロにおまかせすることが一番確実と言えるでしょう。
まとめ
テスラ・モデルS用のブレーキディスク
ブレーキの鳴きは、原因がわかっていると対処は比較的簡単なのですが、原因がわかっていないと慌てたり無視してしまい、問題が大きくなってしまいがちです。
ブレーキの鳴きは車からのメンテナンスの合図です。そのため、その声を無視するなら事故の原因になり得ますし、結果として修理費やメンテナンス代が高くなってしまいます。忙しくても早めに対処することが大切です。
鳴き止め剤は気になる時だけ使うことが出来ます。但し、効果が長続きしないので覚えておきましょう。正しくメンテナンスをすれば最近の車はかなり長く乗ることが出来ます。
ちょっと知識が増えるだけでも車の運転が安全で楽しいものとなります。では、車から音が聞こえたら速やかに修理店に行って交換して、安全に乗るように意識しましょう。