マツダ3セダンって、どんなクルマ?
■今や貴重なジャストサイズセダン
《撮影 中野英幸》新型 マツダ3 セダン 20S L Package(ソウルレッドクリスタルメタリック)
セダンが絶滅危惧種と言われ始めてかなりの時間が経ちました。特に、日本の道路状況で使いやすい大きさのセダンがどんどんなくなりつつあります。
かつては、カローラ、スプリンター、サニー、シビック、ファミリア、インプレッサ、ランサー等々、小型セダンは日本の自動車の看板車種でした。
しかし現在ではSUV人気に押され、1.5〜2Lクラスでセダンの販売を継続しているのはカローラ、マツダ3セダン、インサイト、インプレッサG4等の限られたモデルになってしまいました。中には日産のように2020年にシルフィの国内仕様車の生産を停止し、国内販売車種のランナップから小型セダンが無くなってしまうメーカーも出てきています。
そんな国産セダン受難の時代のなかで、マツダは「マツダ3セダン」を販売し続けています。マツダ3は、従来アクセラと言う名前で国内販売されていた小型車ですが、2019年のフルモデルチェンジと同時に、海外販売名の「マツダ3」に車名変更されました。
《撮影 中野英幸》新型 マツダ3 セダン 20S L Package(ソウルレッドクリスタルメタリック)
ボディサイズは、全長4,660mm × 全幅1,795mm × 全高1,445mmと、日本の路上で使うにはジャストサイズ。ホイールベースはファストバックと共通の2,725mmとなっています。
マツダ3セダンはスタイリングにこだわるマツダのクルマらしく、非常に「凛とした」奇を衒わない丹精なデザインに仕上げられています。最近のマツダデザインの特徴は、キャラクターラインを廃した「面」の変化でサイドラインを構築する特徴的なスタイリング。マツダ3セダンのサイドラインは抑揚を持つボディパネルで構築され、複雑なリフレインが強い印象を与えます。
先代のアクセラに比べて80mm延長された全長を活かしよりトランク部分を強調したセダンらしいフォルムとなっており、凝縮感を強調したファストバックに対し、セダンは伸びやかさを印象づけるデザインとなっています。
《撮影 中野英幸》マツダ3新型、セダン
■クラスの水準を超えた上質なインテリア
《撮影 中野英幸》新型 マツダ3 セダン 20S L Package(白革仕様)
マツダがこだわるのはボディのデザインだけではありません。インテリアのデザインや質感にも非常にこだわっています。マツダ3セダンのインテリアは、目につくあらゆるパネルがコストのかかるソフトタッチなパッドになっていて、さらに、非常に精緻なステッチも入っていたりなど、とても1.5〜2Lセグメントのクルマとは思えない高級感があります。
マツダ3のインテリアの特徴は、一番安い1.5Lガソリンモデルでも最高級の2.0LスカイアクティブX搭載モデルでも、シート表皮がクロスになるかレザーになるかの違いだけで、それ以外は基本的に何も変わらない事。
グレードで差別するのではなく、同一の装備・ボディデザイン・インテリアのなかでユーザーは自分のニーズに最適なエンジンを選べば良い、というマツダの姿勢は、高く評価されていいと思います。
「L パッケージ」グレードではシート表皮がレザーになり、ピュアホワイトのカラーも選択できます。シートカラーでピュアホワイトを選択すると、インスツルメントパネルのソフトパッド部分もホワイトとなり、インテリアの雰囲気が一気に華やぎます。
このような演出があるのに、マツダ3セダンは「実用車」と呼ばれる1.5〜2Lセグメントのクルマなんですから、ビックリですよね。
《撮影 中野英幸》新型 マツダ3 セダン 20S L Package(白革仕様)
エンジンの排気量やグレードで差別をしないと言うマツダのコンセプトは徹底していて、なんと全グレードに「マツダ・ハーモニック・アコースティックス」と呼ばれる8個もスピーカーの付いたオーディオを標準装備しています。
通常、このクラスの標準装備のオーディオはせいぜい4個スピーカーが付いているぐらいが相場なので、マツダの気合の入れようが感じられます。オプションで、BOSEの12スピーカーサウンドシステムも用意されていますが、純正がこれだけ充実してるんだったらBOSEいらなくね?と思わせてしまうハイレベルぶりです。
また、同じく全グレードにマルチインフォメーションディスプレイと呼ばれる8.8インチ液晶ディスプレイを標準装備。マツダコネクトと呼ばれる統合型のインフォティメントシステムも全グレードに標準装備なので、カーナビを追加する際は5万円ちょっとの地図データが格納されたSDカードを買うだけでOK。
他社の純正ナビが30万円以上したりするのに比べて、圧倒的にお得です。また、Android AutoやApple CarPlayにも対応していますので、スマホの地図アプリをナビゲーション用として利用する事もできます。
近所を走るだけだから、カーナビはスマホのアプリで十分と思う人は、5万円ちょっとの地図データを買う必要もないので、ますますお得ですね!
《撮影 中野英幸》新型 マツダ3 セダン 20S L Package(白革仕様)
■先進安全装備は全車標準装備でてんこ盛り!
マツダ公式HPより。サポカー ロゴマーク
安全装備でも、マツダはグレードで差を付けません。
全車標準装備の安全装備だけで、前方も後方も側方も監視する自動ブレーキ(SBS・SBS-R・SBS-RC)、レーンキープアシスト(LAS)、車線逸脱警報システム(LDWS)、ブラインド・スポット・モニタリング(BSM)、後側方接近車両検知(RCTA)、AT誤発進抑制制御、レーダークルーズコントロール(MRCC)等々てんこ盛り!
1.5Lモデルなんていわゆる「ベーシックカー」と呼ばれるようなセグメントに位置するのに、これだけの先進安全装備を標準装備しているところに、マツダの安全性へのこだわりを強く感じます。
マツダは同じ車種のグレード間で安全装備に差を付ける事をしませんし、マツダ2のようなコンパクトカーとCX-8のような高額で大型なSUVの間でも差を付けません。
他社からのOEMである軽自動車を除く、マツダが製造販売しているクルマでは、価格の高低は関係なく同じ安全性能を持たせたいという思想は徹底していると言っていいでしょう。
結果的に、マツダ3セダンは全グレードが国土交通省・経済産業省認定から、予防安全性能の高い「サポカーSワイド」の認定を受けたクルマとなっています。
サポカーSワイドに認定されているため、65歳以上のドライバーが新車でマツダ3セダンを購入する場合、全グレードで国の購入補助を受けられるようになっています。
■エンジンラインナップは4種類
エンジンは、1.5L直列4気筒ガソリン、2.0L直列4気筒ガソリン、1.8Lガソリン直列4気筒ターボディーゼル、2.0L直列4気筒スカイアクティブXガソリンエンジンの4種類がラインナップされています。
スカイアクティブX 2Lガソリンエンジン
《画像 マツダ》SKYACTIV-X
SKYACTIV-Xエンジンは世界初の「火花点火制御圧縮着火方式(SPCCI)」と呼ばれる画期的な燃焼方式を持つガソリンエンジンです。世界中の自動車メーカーが「究極のガソリンエンジン」として開発に取り組んできましたが、マツダが世界で初めて実用化に成功しました。
SKYACTIV-Xエンジンは、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンのいいとこ取りをしたようなエンジン。気化したガソリンと空気が混ざった混合気をスパークプラグで着火するのではなく、高温高圧に圧縮したシリンダー内の空気にガソリンを噴射して、高温の空気でガソリンに火が付く「圧縮着火」を実現しているのが最大のポイントです。
圧縮着火はディーゼルエンジンの燃焼方式と同じなので、ガソリンを燃料としてディーゼルエンジンと同じ燃焼方式を実現したのが、スカイアクティブXエンジンとなります。
ガソリンを圧縮着火させる制御が難しく世界中の自動車メーカーが開発に苦労していた中で、マツダはスパークプラグで火球を作って、その火球が膨張する圧力でガソリンを圧縮着火させる「火花点火制御圧縮着火方式(SPCCI)」を開発し、技術的なブレークスルーを果たしました。
スカイアクティブXエンジンは、従来のガソリンエンジンよりも少ない燃料でより大きな出力が取り出せます。
マツダ3セダンには2つの2Lガソリンエンジンがラインナップされていますが、従来型のスカイアクティブG 2Lガソリンエンジンは、出力が156ps/199NmでWLTC燃費:15.8km/L、スカイアクティブX 2Lガソリンエンジンは、出力が190ps/240NmでWLTC燃費:17.2km/Lと、スカイアクティブXの方が高出力で燃費も良くなっています。
スカイアクティブXエンジンは高出力で低燃費という「夢のエンジン」ではあるんですが、難点は値段が高いこと。スカイアクティブG 2Lガソリンモデルが251万円なのに対し、スカイアクティブX 2Lガソリンモデルは319万円と68万円の価格差があります。残念ながら、その価格差はガソリン代の差額で取り戻す事は難しい状況です。
なので、スカイアクティブXエンジンについては「お好きならどうぞ」というリコメンドになります。なんと言っても、世界初のガソリン圧縮着火エンジンですから、クルマが好きな人や最先端の技術が好きな人にとってはお金に代えがたい価値があります。
また、スカイアクティブXはまだまだ進化の途上で、先日、マツダはエンジンの制御系ソフトウェアのアップデートを無償で実施し、最高出力と最大トルクをアップさせました。スカイアクティブXは「初物」の技術なので、発売当初はそうとう安全マージンをとってエンジンを制御していたのですが、市販から1年経っていろいろなデータが取れた結果、もう少し出力方向に制御を振っても大丈夫!と言う事になったのでしょう。
ソフトウェアのアップデートでエンジン性能が向上するなんて、スマホみたいで面白いですよね。そんな所に面白みを感じられるアーリーアダプター属性の人には、スカイアクティブXエンジンはピッタリのエンジンだと思います。
スカイアクティブG 2Lガソリンエンジン
マツダ3セダンに設定されている2種類の2Lガソリンエンジンのうち、従来型の点火プラグで着火させるタイプのエンジンとなり、出力が156ps/199NmでWLTC燃費:15.8km/Lとなっています。
マツダ3に設定されている4種類のエンジンのうち、最もバランスの取れたエンジンと言っていいでしょう。スカイアクティブG 2Lガソリンエンジンを選択すれば、パワーが盛り盛り!と言う訳ではありませんが、普段使いでパワー不足を感じる事は無いでしょう。街中から高速道路、郊外路とあらゆる場面で必要なパワーを発揮してくれるエンジンです。
人も荷物も乗せるのでパワーに余裕が欲しい人、いろんな走行パターンが考えられる人は、スカイアクティブG 2Lガソリンエンジンを選択される事をオススメします。
スカイアクティブD 1.8Lターボディーゼル
1.8Lターボディーゼルエンジンは、それなりの距離を走る人にオススメです。
出力は130ps/270Nm、WLTC燃費は20km/Lとなっています。ディーゼルエンジンの特性上、高速道路での走行や、郊外の流れのいい道路等ではかなり良好な燃費を記録する事ができます。なので、年間走行距離が長い人にとっては1.8Lターボディーゼルが最良の選択となるでしょう。
街中でもターボディーゼルの太い低速トルクは魅力的ですが、ほんのちょっとの距離しか走らない事がほとんど、と言う方にはオススメできません。ディーゼルエンジンは、燃焼で発生するススをDPIのという装置で吸収して、排気ガスをクリーンにしています。そのDPIは、装置内に溜まったススを燃やして処理するのですが、ある程度の距離を走らないとススを燃やすことができない、という構造になっています。
そのため、毎日ちょい乗りしかしない方がディーゼルエンジンを選択してしまうと、DPIがうまく作動せずにススがたまってトラブルの原因になってしまう事もあります。ちょい乗りがほとんどの方には、ガソリンエンジンモデルを強くオススメします。
スカイアクティブG 1.5Lガソリンエンジン
あまり人や荷物を沢山載せる事はないし高速道路とかもめったに走らないと言う人にとっては、1.5Lガソリンエンジン搭載モデルも十分検討に値します。
出力は111ps/146Nm、WLTC燃費は16.6km/Lと余裕綽々ではありませんが、必要なパワーは発揮してくれます。ちょっと出足が遅かったり、高速道路でもう少しパワーが欲しいなぁ、と感じる事があるかもしれませんが、我慢できないほど遅い訳ではありません。
1.5Lガソリンモデルのセールスポイントは、車両価格が安いこと。最廉価グレードの15Sの車両本体価格は222万円。2Lガソリンエンジン搭載グレードになると、最低でも251万円となり約30万円の価格差があります。200万円台前半の価格のクルマでは30万円の差は大きいですよね。
マツダ3セダンは最廉価の15Sとより高価なグレードの間での装備差が極めて少ないクルマになっています。オーディオは15Sでも最初から8スピーカー搭載ですし、マルチインフォメーションディスプレイも付いています。安全装置も標準装備でてんこ盛りなので安心です。グレード間で安全装備に差をつけない、というマツダのポリシーの恩恵を最も享受できるのは、実は1.5Lガソリンエンジンモデルだったりします。
1.5Lガソリンエンジンモデルには、15Sと15S Turingという2つのグレードが設定されています。2つのグレードの価格差は10万円。装備差は、フルオートエアコンとCD/DVDプレーヤー+地デジチューナー、18インチタイヤとなっています。
エアコンなんてマニュアルで操作すればいいしクルマでテレビなんて見ない、と言う人は15Sでも十分満足出来ると思います。そして15Sは16インチタイヤが装着されているので、18インチタイヤを履いている15S Turingに比べて、より穏やかな乗り心地を楽しむことが出来ます。
ライバルと比較してどうか?
■強敵!カローラ 燃費の良さは圧倒的!
《写真提供:response》トヨタ・カローラセダン
マツダ3セダンのガチなライバルは、カローラとなります。
カローラの凄まじいポイントは、ハイブリッドモデルの燃費性能が圧倒的に良い事。WETCモードでの燃費は、なんと29km/Lでマツダ3セダンのターボディーゼルの20km/Lをカタログデータ上では圧倒的にぶっちぎっています。トヨタハイブリッドシステムの燃費って、スゴいんですね!
燃費性能的にライバルとなるカローラハイブリッドのSグレードの価格は257万円で、マツダ3セダンのXD Proactiv ターボディーゼルは279万円。
一見、マツダ3セダンの方が22万円高いように見えますが、マツダ3セダンXD Proactivに装備を合わせてオプションを積んでいくとだんだん価格差が無くなってしまう、という価格設定になっています。マツダ3セダンのほうが最初から何でも付いている、という事ですね。
燃費レポート等を読むと、カローラハイブリッドは高速道路の実燃費で30km/L近い数字を記録しています。マツダ3の1.5Lターボディーゼルは、ファストバックモデルが高速道路巡航で25〜6km/Lと言うデータがありますので、ガソリンと軽油の価格差を考えるとランニングコストはほぼ互角と言えます。
とは言え、カローラハイブリッドはガソリンモデルに比べて40万円以上高価、マツダ3セダンのターボディーゼルは、2Lガソリンモデルに比べて30万円弱高価となっていますので、年間にかなりの距離を走る人でなければその価格差を燃料代の差額で取り戻すのは難しいと言う状況ではあります。
ボディサイズはマツダ3セダンのほうがカローラセダンに比べて、全長+165mm、全幅+50mmとなっていて、一回り大きくなっています。カローラは取り回し性向上のために日本仕様のホイールベースを短縮しているので、後席の居住性はマツダ3セダンの方が良好です。
最小回転半径は両車とも5.3mとなっているので、実際の取り回し性に大きな差があるのか、となると微妙なところでしょう。
《撮影 雪岡直樹》トヨタ・カローラ(セダン)ハイブリッド
ハードウェア的にはお互いいい勝負なので、あとはスタイリングとかインテリアのデザイン・質感等の差をどう考えるのか、というところが選択のポイントとなってきます。
そして、インテリアの質感やデザインに関しては、マツダ3セダンがカローラを引き離しています。
カローラにオプションで装着できる9インチディスプレイはたしかに見やすいんですけど、インパネ上に屏風のように垂直に突っ立っていて、違和感があります。もう少し、インテリア全体のバランスを考えて取り付け位置を考えられなかったのかなと思ってしまいます。
マツダ3セダンのインテリアには、そんな気になるような部分は見受けられないので、インテリアデザインではマツダ3セダンのほうがバランスが取れていると言っていいでしょう。
最近のマツダは、そういったデザインや質感といった人の感性に訴える部分にめちゃくちゃこだわったクルマ作りをしています。なので、そんなところが気になる人はマツダ3セダン一択となりますし、気にしない人はカローラでもOKという事になります。好き嫌いがはっきり出るのがマツダのクルマ、とも言えますね。
まとめ
《撮影 中野英幸》新型 マツダ3 セダン 20S L Package(マシーングレープレミアムメタリック)
マツダ3セダン、いががでしたか?
国産車のセダンが貴重な今の時代に、こんなにカッコよくてメカニズム的にもしっかりしたクルマが販売されているのは、日本のドライバーにとっては素晴らしい事ですね!
ジャストサイズなセダンをご検討中のあなた、ぜひマツダ3セダンを見に行って下さい!