運転中の「ながらスマホ」は超危険!厳罰化も進む
街中を歩いていて、「歩きスマホ」をしている人とぶつかりそうになって「危ないな」と思う体験をしたことがある方も多いことでしょう。また、立ち止まってスマートフォンを操作するべきなのは分かっていても、急いでいたりしてつい歩きスマホをしてしまう、なんて方もいらっしゃるかもしれません。
近年、歩きながらのスマートフォンを操作するといったような「ながらスマホ」が社会問題と化しており、自動車の運転中にも、スマホを操作しているドライバーを見かけることがあります。
歩きスマホで人にぶつかるだけでも、自分や相手にケガをさせてしまう可能性があります。まして自動車は、車重が数トンに達するものもあり、時速40kmでも1秒間に11mも車は進むので、ほんの一瞬スマホを見るだけでも命取りになりかねません。
これまでも、走行中にカーナビゲーションなどの車内機器を注視した結果や、携帯電話を片手に持って通話しながら走行した結果起きた交通事故件数の増加が問題となっていましたが、最近のスマートフォンの普及率向上に伴う「ながらスマホ」による交通事故の多発は、交通安全に対する重大な課題点として広く認識されるようになりました。
「ながらスマホ」によって運転中の注意力が散漫になっていると、大事故を引き起こしかねません。そんなこともあり、2019年からは運転中の「ながらスマホ」に対する罰則内容が大幅に強化されているなど、取り締まりが進んでいます。
■道路交通法で「ながらスマホ」への罰則はどう規定されているのか?
JAF 「ながらスマホ」危険性の検証の様子
2019年12月1日に施行された改正道路交通法によって、「運転中にスマートフォンなどの携帯電話などを手に持っての通話の禁止」「運転中にスマートフォンなどの携帯電話やカーナビなどの画像の注視の禁止」に違反した場合の罰則が大きく強化されています。
具体的には、スマートフォンなどを手に持って通話したり画像を注視したりしていたことで「携帯電話の使用等(保持)」に相当した場合、これまでは5万円以下の罰金だったものが、6ヶ月以下の懲役又は10万円以下の罰金になっているほか、反則金は普通車の場合6,000円だったものが18,000円、違反点数も1点だったものが3点と、改正によってより重い処分が下されるようになっています。
さらに、ながらスマホなどの結果事故を起こすなど交通の危険を生じさせたことで「携帯電話の使用等(交通の危険)」に相当した場合は、罰則が1年以下の懲役又は30万円以下の罰金、違反点数は6点と、それだけで免許停止処分の対象となるように強化されています。
運転中に「手をふさがない」ハンズフリー通話が浸透
《画像提供:Response 》セイワ Bluetoothモノラルハンズフリー ME2UD
スマートフォンや携帯電話などを手に取っての通話が法律で規制されているとはいえ、運転中にどうしても取らなくてはならない通話がかかってくることもあるでしょう。
そんな場合のために、スマートフォンに触れることなく、通話を取ったり開始したりすることが可能な「ハンズフリー通話」を多くの方が活用しています。
■ハンズフリー通話はどのように行う?必要な機器は
《画像提供:Response 》スバル レヴォーグのステアリングホイール 赤丸部は音声認識機能のボタン
ハンズフリー通話機能は、最近の車では標準装備されていることもしばしばです。ハンズフリー通話機能が標準装備された車では、車載のオーディオシステムなどとスマートフォンをBluetooth接続することで、車に搭載されたマイクとスピーカーで通話ができるようになっています。
この場合、通話の開始や切断は車両のボタンを操作して行うので、一切スマートフォンに触れることなく通話が可能。改正道路交通法で規制されている「スマートフォンを手に持っての操作」には該当しません。
また、車両にハンズフリー通話機能が備わっていない場合でも、Bluetoothヘッドセットなどの通話機器を用いることでもハンズフリー通話をすることができます。こちらもスマートフォンなどとBluetooth接続を行い、通話の開始や切断はヘッドセットなどのボタンを操作して行うことができます。
近年ではスマートフォンや自動車の音声認識機能も充実しており、車両やハンズフリー通話機器の操作でスマートフォンの音声アシスタントを呼び出して、音声で発信先を指定することで電話をかけることも可能となっているなど、ますます使い勝手が向上しています。
■ハンズフリー通話、道路交通法では違反にならないの?
《画像提供:Response 》アイ・オー・データ機器 PDI-B903/HSK
ながらスマホには厳罰が設定されている道路交通法ですが、ハンズフリー通話に関しては規制がされていません。
ハンズフリー通話は、スマートフォンを手に持って操作したり、注視したりしないので、ながらスマホにはあたらないとされます。
ただし、車両備え付けのハンズフリー通話機能を活用してハンズフリー通話をする際、車両のディスプレイなどに発信元などが表示される場合がほとんどです。ヘッドセットなどのハンズフリー機器を活用している場合でも、見える位置に設置したスマホホルダーにスマートフォンを収納している方も多く、その場合はスマートフォンの画面に発信元などが表示されるでしょう。
ハンズフリー通話のためとはいえ、これらの情報を注視することは、「ながら運転」の違反対象となるので注意が必要です。
ただし、道路交通法では「注視」という言葉が実際に何秒以上見つめることを指すのかという定義はされていません。目安は2秒程度とされますが、先述した通り走行中の車はたった1秒でも数十m進みますので、できるだけ短時間の確認に留めておくことが原則でしょう。
ハンズフリー通話に関して、気をつけたいポイントはここ!
■地域ごとに異なる条例などには要注意
《画像提供:Response 》(イメージ)警視庁と国土交通省による不正改造車取締まり
道路交通法ではハンズフリー通話が規制されていないとはいえ、自動車を運転する際に注意が必要なのは道路交通法だけではありません。例えば、道路交通法第七十一条第六号には、各都道府県の公安委員会が定めた事項の遵守も定められています。
第七十一条 車両等の運転者は、次に掲げる事項を守らなければならない。
(中略)
六 前各号に掲げるもののほか、道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項
このため、車両を運転する際は、その地域の公安委員会が定めたルールにも気を配っておく必要があります。
日本国内の多くの都道府県公安委員会では、ハンズフリー通話を禁止してはいないものの、車両のスピーカーやイヤホン・ヘッドホンなどを使って大きな音量で音楽などを聞き、安全運転に必要な周囲の音が聞こえない状態で車両を運転することを禁止しています。
各都道府県警察によっては、両耳を塞いでしまうイヤホンやヘッドホンの装着だけでなく、片耳タイプのハンズフリー機器に関しても、使用を推奨しないとしているところもあるようです。
これらの地域であっても、車両に装備されたハンズフリー機能を活用したハンズフリー通話や、片耳タイプのハンズフリー機器を活用したハンズフリー通話が一概に違反となるとは考えにくいものの、あまりに大きな音量で利用するなどして安全な運転ができない状況になってしまうと、違反していると捉えられてしまう可能性もあります。
緊急車両のサイレンなど重要な音がしっかり聞こえるような音量に留めるなど、安全な利用を心がけたいところですね。
お住まいの地域でハンズフリー通話が違反の対象になるかどうか心配な場合は、各都道府県警に判断を仰げばより安心でしょう。
各都道府県公安委員会が定める道路交通法施行細則または道路交通規則において、安全な運転に必要な音が聞こえない状態での車両の運転を禁止している都道府県
北海道、宮城県、秋田県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県
(44都道府県 2021年9月調べ)
各都道府県公安委員会が定める道路交通法施行細則または道路交通規則において、安全な運転に必要な音が聞こえない状態での自転車の運転を禁止している都道府県
青森県、岩手県、山形県
(3県 2021年9月調べ)
■ハンズフリー通話でも、安全運転義務違反の対象となることも
ハンズフリー通話とはいえ、会話に夢中になって運転操作がおろそかになったり、前方不注意といった状況を生み出してしまった場合には、安全運転義務違反にあたる場合もあることでしょう。
安全運転の義務は、道路交通法第七十条に定められている、すべてのドライバーの義務です。
第七十条 車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
両手がふさがっていない、スマホを操作してもいないとはいえ、運転に集中できない状況を生み出してしまうようでは、交通事故の危険性が高まっている状況です。
警察庁交通局調べによる平成29年の交通事故発生状況の統計によると、安全運転義務違反にあたるケースが法令違反別交通事故件数の70%以上を占めているという結果もあります。ハンズフリー通話自体に違法性がない場合でも、運転に集中できないと思ったら、安全な場所に停車してからかけ直すなど、自己管理が求められます。
違反ではなくても、安全な場所に停めてからの通話が安心
専用の機器を用いて適切に行えば、ハンズフリー通話は違反にはならないということをご紹介してきましたが、とはいえ運転中はできるだけ運転だけに集中しておきたいものです。
ハンズフリー通話だけでなく、同乗者との会話などでも同様ですが、ついつい話に夢中になってしまって、目的地を通り過ぎてしまった、なんて経験がある方もいらっしゃることでしょう。
自動車の運転は、慣れてくると緊張感なく行ってしまいがちですし、通話に夢中になっていると周囲の確認なども疎かになってしまう場合もあるかもしれません。瞬時の判断ができない状況での運転では、交通事故の発生確率も高まります。
便利なハンズフリー機能に頼りすぎず、運転中は早めに通話を切り上げ、続きは目的地に到着してからかけ直すなどすると、より安心でしょう。
また、運転中は電話を取らないとルール付けしてしまうことも有効です。車に乗り込んだらスマートフォンはマナーモードにして、カバンにしまうなど見えない位置に収納すると、運転にしっかりと集中できることでしょう。
まとめ
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ハンズフリー通話に関する法律などの情報をご紹介してきました。
道路交通法で規制されていないからといって、ハンズフリー通話が事故の原因となってしまわないよう、ドライバーには適切な使用が求められます。電話をかける側も、相手がハンズフリー通話を使用しているなら後でかけ直す、などと気遣いができるとより安心かもしれませんね。
よくある質問
■ハンズフリー通話ってどういうもの?
「ハンズフリー通話」とは、一般的には、Bluetoothヘッドセットなどの通話機器や自動車に備え付けのマイクとスピーカーを用いて、スマートフォンや携帯電話などの通話機器に触れることなく、通話を受けたり開始したりできる通話方法のことです。
■スマホを操作して通話を始めて、通話中はスマホに触らなかった。これもハンズフリー?
この場合、通話中の状態としては手が塞がっていないことからハンズフリーと呼べるかもしれませんが、自動車の運転中であるとすると、一度スマートフォンを操作している時点で道路交通法で禁止されている「ながらスマホ」に該当します。「ながらスマホ」違反の場合、2019年からは違反点数が3倍になっているなど、罰則が強化されています。
現在、国内における個人のモバイル端末の普及率は高く、総務省の2017年の「通信利用動向調査」をみると、モバイル端末の普及率が84.0%に達している
運転中の「ながらスマホ」が厳罰化!違反点数が3倍、反則金も高額に!一発免停も! | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201707/2.html近年、運転中の「ながらスマホ」による交通事故が増加しています。「ちらっと画面を見るくらいなら大丈夫」と思うかもしれませんが、その一瞬の油断が悲惨な交通事故を招いています。こうした中、道路交通法が改正され、令和元年12月1日から、運転中の「ながらスマホ」に対する罰則が厳しくなりました。運転中にスマホ等を使用しなければならないときは、必ず安全な場所に停車してからにしましょう。
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