自動車保険は、比較検討することが大切!
《写真提供:photoAC》自動車保険を計算するイメージ
自動車保険とは、自動車に関連して発生した損害を補償する保険のことです。
損害保険では、備えをする万が一の事故に応じて、その名前が付けられています。火災をはじめとして、落雷・風災などに備える「火災保険」、地震や噴火に備える「地震保険」、日常生活の事故におけるケガに備える「傷害保険」といったパターンです。
しかし、ひと口に自動車保険といっても、大きく分けて2つの種類があります。加入義務がある「自賠責保険(強制保険)」と、自賠責保険の不足部分を補償する「任意保険」です。この違いを理解していないと、万が一事故に遭ったとき、期待していた補償が得られない可能性もあります。
では、自賠責保険と任意保険は、どんな違いがあるのでしょうか?
自賠責保険(強制保険)
《写真提供:photoAC》自動車の自賠責保険証書
自賠責保険(正式には「自動車賠償責任保険」)は、自動車損害賠償保障法という法律によって、自動車や原動機付自転車を使用する際、すべての所有者に加入が義務づけられており「強制保険」と呼ばれることもあります。
もし自賠責保険に加入しないで運行すると、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科され、免許停止処分になります。とはいえ多くの方は、自分で自賠責保険の更新手続きをする必要はなく、車検を受ける際に自動的に更新されます。
■自賠責保険の補償範囲
自賠責保険は、対人事故の場合にのみ、一定金額の範囲内で保険金が支払われます。ですから、運転者自身のケガや対物賠償といった補償はありません。補償範囲や限度額は、次のようになっています。
ケガによる損害(限度額120万円)
自動車事故により、ケガを負った際の治療費をはじめとする諸費用を補償します。
後遺障害(限度額4,000万円)
ケガによる労働能力の低下や精神的苦痛に対する補償で、後遺症の程度により75万円~4,000万円の範囲で支払われます。
死亡による損害(限度額3,000万円)
自動車事故により、死亡した際の逸失利益や葬儀費、慰謝料などを補償します。
■自賠責保険だけでは補償が足りない!
このように、自賠責保険の支払限度額はかなり限られたものです。そして、損害額が支払限度額を上回ってしまった場合、あとはすべて自己負担になります。死亡事故などの場合、被害者への認定損害額が1億円を超えるケースは決して珍しいものではなく、心もとない補償額です。
また、自賠責保険は対人賠償に限られますので、補償内容も十分ではありません。自動車同士の事故の場合を考えると、ほかにも運転者自身のケガ、相手の自動車の損傷、自分自身の自動車の損傷も想定されます。これらはいずれも自賠責保険ではカバーしていないため、補償が足りていないと言えるでしょう。
そのため、自賠責保険の不足分をカバーする「任意保険」が重要になります。
任意保険
《写真提供:photoAC》保険のイメージ
任意保険はその名のとおり、任意で加入するかどうかを決められる保険です。自賠責保険とは異なり、加入していなくても罰則などはありません。それでも、万一の事故に備えて、多くの人は加入しています。
■任意保険の補償範囲
任意保険は、さまざまな補償内容を組み合わせることによって構築されます。
ですから、多くの保険会社では自動車保険をカスタマイズできるようにしており、車両保険を担保しないように設定したり、人身傷害の補償額を手厚くしたり、といったことが可能です。ここでは、一般的な自動車保険に含まれる補償内容を解説します。
対人賠償保険
対人賠償は、自動車事故において、他人を死傷させてしまった場合の補償です。
前述のとおり、自賠責保険でも相手のケガや死亡を補償していますので、自賠責保険などの支払額を超える部分を、任意保険の対人賠償で補償します。
対人賠償の限度額を自由に設定できる保険商品もありますが、保険会社や商品によっては無制限の選択肢しかない場合もあります。可能なら、「無制限」にすることをおすすめします。
対物賠償保険
自動車事故において、相手の自動車やガードレール、信号機、電柱、塀など、物を壊してしまった際の補償です。
対人賠償保険と同様、もし可能なら「無制限」に設定することをおすすめします。というのも、対物賠償でも、1億円を超える高額賠償が認められるケースも少なくありません。踏切における電車との接触事故や、店舗を壊し休業させたなどの場合には、かなりの高額になり得ます。
人身傷害保険
自動車事故で、運転者自身が死傷したときの補償です。自賠責保険では、運転者自身のケガや死亡は補償対象外ですが、任意保険ではその部分をカバーできます。
人身傷害の特徴は、事故の過失割合にかかわらず、設定した保険金額を限度に、実際の損害額が保険金として支払われることです。
搭乗者傷害保険
契約の自動車に搭乗中の方が、自動車事故によって死傷したときの補償です。
人身傷害保険とは異なり、実際の損額額ではなく、契約時点で決めた金額が、入通院日数や後遺障害などに応じて支払われます。
車両保険
事故で契約自動車に損害が発生した場合に補償されます。
多くの保険会社では、2種類の車両保険を販売しており、「一般型」と呼ばれる補償範囲の広いタイプと、「エコノミー型(限定タイプ、車対車+限定危険など、保険会社によっていろいろな呼び名がある)」と呼ばれる補償範囲を限定したタイプがあります。エコノミー型の場合、あて逃げや単独事故(電柱に衝突など)は補償対象外となってしまうので、ご注意ください。
任意の自動車保険会社も、大きく分けると2タイプある
《写真提供:photoAC》自動車保険と保険会社
自動車保険を取り扱う損害保険会社は、大きく分けて2タイプがあります。「代理店型」と呼ばれるタイプと、「通販型(ダイレクト型)」と呼ばれるタイプです。それぞれ保険に入るときや保険料の特徴、メリット・デメリットを解説します。
■代理店型の特徴
代理店型は文字通り、代理店を通して契約するタイプの自動車保険です。
保険に入るとき
代理店型は、代理店担当者と対面で手続き可能です。自動車保険にあまり詳しくなくても、寄り添って手続きをサポートしてくれるので、安心して契約が進められます。
保険料
一般的に、保険料は通販型と比べて高くなります。これは、保険料に代理店手数料が加算されているためです。
補償内容の決めるとき
代理店担当者と相談しながら決定できます。相談しながら決められるので、いざ事故に遭ったとき、「期待していた補償が付帯されていなかった」といったことを避けられます。
事故のとき
保険会社に直接事故報告するか、代理店担当者に事故報告するか、どちらかを選べます。もしかしたら、顔見知りで普段接している人のほうが、事故の説明はしやすいかもしれません。
事故現場への駆けつけサービス
誤解されがちですが、一般的に、保険会社の担当者が事故直後に、現場に駆けつけることはありません。駆けつけているとしたら、それは代理店の担当者です。
厳密に言うと、事故対応は保険会社の業務になるので、事故現場に駆けつけてくれるかどうかは、代理店によって異なります。
代理店型自動車保険の代表的な会社
代理店型自動車保険の主な会社として、東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン(損保ジャパン)、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険、共栄火災海上保険、日新火災海上保険、AIG損害保険などがあげられます。
■通販型の特徴
通販型はダイレクト型とも呼ばれ、インターネットなどを通して、契約者と保険会社が直接契約するタイプの自動車保険です。
保険に入るとき
各保険会社の公式ホームページにある、見積り・申込欄から進むか、カスタマーセンターなどに電話してサポートを受けながら契約します。
保険料
一般的に、保険料は代理店型と比べて安くなります。これは、代理店手数料が不要なためです。ただし、事故リスクが高い若い世代は、保険料が高くなってしまうこともあります。
補償内容の決めるとき
基本的に、自分が調べて補償内容やその金額を設定する必要があります。
もちろん、分からないことがある場合は電話で尋ねることもできますし、各社ホームページには丁寧な説明もあります。さらに、ソニー損害保険、セゾン自動車火災保険、イーデザイン損害保険などは、契約申込ページに、不明点を気軽に質問できる「チャットサービス」が用意されています。
事故のとき
保険会社に直接連絡して、事故報告します。多くの保険会社では、24時間365日対応の「事故受付センター」が用意されています。
事故現場への駆けつけサービス
事故直後、保険会社の担当者が事故現場に駆けつけることはありません。
代わりに、ソニー損害保険、イーデザイン損害保険などの保険会社は、警備会社が事故現場に急行する「事故現場急行サービス」を用意しており、事故現場の記録や救急車・レッカーなどの手配をサポートしてくれます。
通販型自動車保険の代表的な会社
通販型型自動車保険の主な会社として、ソニー損害保険、セゾン自動車火災保険(おとなの自動車保険)、アクサ損害保険(アクサダイレクト)、イーデザイン損害保険、三井ダイレクト損害保険、チューリッヒ保険、SBI損害保険などがあげられます。
■事故対応は、代理店型と通販型で違うのか?
通販型自動車保険を契約する際の不安として、「万が一事故に遭った場合、通販型だと事故解決がうまくいかないのでは?」といった意見もあります。
結論からいうと、保険会社の規模や、代理店型か通販型かで、事故解決の示談交渉が有利になったり不利になったりすることはありません。事故解決は、過去の判例に基づいて話し合いが進められるからです。また、多くの保険会社では、対人賠償や対物賠償に「示談交渉サービス」をつけているので、保険のプロ同士で話し合えます。
保険料を決める重要ポイント、割引部分!
《写真提供:photoAC》自動車保険の保険料は?
保険料を決める重要な部分は、保険会社選びだけではありません。自動車保険には各種の割引・割増制度があります。ここでは、ノンフリート等級、事故あり係数、年齢条件、運転者限定について解説します。
■ノンフリート等級
ノンフリート等級とは、過去の保険金請求歴に応じて、保険料の割引・割増を適用する制度のことです。事故を起こす(保険金を請求する)リスクが少ない人ほど保険料を安くなり、そうではない人ほど保険料は高くなります。
ノンフリート等級は、1等級から20等級までの20段階で、等級の数字が大きいほど割引率が高くなります。この制度は、多くの自動車保険会社で、共通して利用されています。
初めて自動車保険に加入した場合、基本は6等級からスタートです。1年間、保険金請求しなかった場合(ノーカウント事故は除く)、翌年1つ等級が上がり、「7等級」となります。反対に、ノーカウント事故を除いた他の事故で保険を使用した場合、1等級ダウンもしくは3等級ダウンになります。
なお、自動車保険を乗り換える際にはほぼすべての保険会社で等級を引き継げます。もし高い割引率になっているなら、現在の保険は解約せず、そのまま引き継ぐようにしましょう。
■事故あり係数
事故を起こして保険を使用すると、等級ダウンのほかに、「事故あり係数」がつきます。事故あり係数がついていると、事故を起こす(保険金を請求する)リスクの高い人とみなされ、保険料が高くなります。
事故あり係数の適用期間は、1等級ダウン事故の場合に1年、3等級ダウン事故の場合に3年です。すでに事故あり係数がある状態で、さらに事故を起こしてしまうと、最大で6年まで適用期間が伸びてしまいます。
■年齢条件
年齢条件とは、契約する際にあらかじめ運転する人の年齢を制限することで、保険料を安くする仕組みのことです。
制限する年齢を引き上げれば上げるほど、保険料は安くなります。保険会社によって年齢の線引きは異なりますが、どんな年齢の人でも運転できる「条件なし(全年齢)」のほか、「21歳以上」、「26歳以上」、「30歳以上」などと区切られています。
■運転者限定
運転者を限定することによって、保険料を安くできる仕組みです。一般には「運転者限定特約」と呼ばれます。
「本人限定」、「本人・配偶者限定」、「家族限定」などの区分があり、限定すればするほど、保険料は安くなります。
保険料がお得なおすすめ保険会社!
《写真提供:photoAC》ネット保険
保険料を安くすることが第一希望であれば、通販型自動車保険を選ぶことをおすすめします。代理店を通して契約しない分、代理店手数料や営業コストを抑えられており、保険料は安くなります。
特におすすめなのは、「ソニー損害保険」、「楽天損保」、「イーデザイン損害保険」です。価格.com自動車保険満足度ランキング2021(総合)で、これらの会社がトップ3となりました。いずれも、通販型自動車保険の販売を行っています。自動車保険は加入してみないと、特徴や良さが分かりにくいものですから、こうした口コミやランキングは、判断するのに役立つでしょう。
それでも、大手損害保険会社の安心感も捨てがたいかもしれません。そうであれば、大手損害保険グループの、通販型自動車保険と契約するのもよいかもしれません。例えば、イーデザイン損害保険は東京海上グループ、セゾン自動車火災保険(おとなの自動車保険)は損害保険ジャパン、三井ダイレクト損害保険は三井住友海上やあいおいニッセイ同和損害保険などと同じMS&ADインシュアランスグループホールディングスと同じグループの会社です。大手保険会社の安心感と、通販型の魅力を合わせ持った保険会社とも言えそうです。
ここでいう「保険会社を選ぶ」とは、任意保険の保険会社のことです。自賠責保険は、自賠責保険の損害調査を行う損害保険料率算出機構が、保険金支払額の状況や交通事故の発生状況などを考慮して算出する「自動車損害賠償責任保険基準料率」に基づいて設定されています。沖縄県、離島など、地域差はありますが、基本的にどの保険会社で加入しても保険料は同じなので、工夫の余地がありません。
まとめ
《写真提供:photoAC》事故の備えは大切!
今回は、自動車保険の基本をまとめると共に、通販型自動車保険をおすすめしました。万が一への備えが万全であれば、楽しいカーライフになります。ぜひ参考になさってください。