クルマの仮ナンバーとは何か?
《写真提供:response》《撮影 井元康一郎》48Vマイルドハイブリッドシステムを組み込んだフォーカス。バイワイヤークラッチ、6MTを組み合わせる
仮ナンバーとは、市区町村などが臨時に貸し出すナンバープレートのことで、ナンバーの上に太い赤の斜線が引かれており自治体名が入っているのが特徴です。
正式には「自動車臨時運行許可番号標」と言い、車検切れなどの理由で本来は公道を走れない自動車に取り付け、合わせて貸し出される臨時運行許可証を表示することで、公道を走る一時的な運行許可を受けられます。
■車検切れのクルマで公道を走ると、どんな罰則があるか?
本来、車検切れになったクルマは、公道を走ることが法律によって禁止されており、これに違反した場合は罰則の対象になります。
もし、車検が切れた状態で運行(無車検運行)した場合、「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」と「違反点数6点」、そして行政処分として「免許停止」が科されます。
なお、車検が切れた状態では、車検時に一緒に更新する自賠責保険が切れている場合がほとんどですが、自賠責保険が切れた状態で運行(無保険運行)した場合、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」と「違反点数6点」、そして行政処分として「免許停止」になります。
車検切れ(無車検運行)と自賠責保険切れ(無保険運行)の両方の違反となると、「1年6カ月以下の懲役または80万円以下の罰金」と「違反点数6点」、そして行政処分として「免許停止」が科されることになります。
違反点数については、道路交通法施行令で、同時に違反した行為の点数のうち、最も高い点数が適用されると決められており、同点数の場合にはその点数が科されるため、加重はされず「違反点数6点」となりますが、このようにとても重い罰則や行政処分が規定されています。
少しの走行距離でも、このくらいとは思わずに、仮ナンバーを取得するようにしましょう。
仮ナンバーの対象となる自動車や取得方法
《写真提供:photoAC》クルマのナンバープレートは大切
■仮ナンバーはどんな車種で申請できる?
仮ナンバーの対象となる自動車は、以下の通りです。
・普通自動車
・小型自動車
・軽自動車
・大型特殊自動車(ブルドーザー・ショベルカー・大型除雪車など)
・二輪の小型自動車(排気量250cc超)
共通点は、いずれも車検を必要とするという点です。
対して、車検の対象とならない排気量125cc超で250cc以下の「軽二輪」、小型特殊自動車、原動機付自転車などは仮ナンバーの対象にならない車両となります。
■仮ナンバーには、目的についての条件もある!
仮ナンバーの対象となる自動車であっても、目的が条件から外れると、運行許可を受けられません。
許可される主な目的には、「車検切れのクルマが継続検査を受ける」「未登録自動車の新規検査・新規登録」「ナンバープレートの盗難による再登録」などがあります。
一方、「廃車目的で、廃車場へ移動させるだけ」「販売目的の試乗での申請」「サーキットや競技場、またはイベント会場などへ自走するため」などの理由では、仮ナンバーが許可されません。あくまでも、未登録自動車や車検切れの自動車が検査を受けるために運行する特例的な許可ということです。
こうした仮ナンバーとは別に、自動車関連の業者が新車を陸送するなどの際に取得する「回送運行ナンバー」というものがありますが、こちらは業者向けの仮ナンバーであるため一般の方が利用する機会はありません。この記事では、一般の方を対象にした仮ナンバーについてまとめます。
■仮ナンバーの取得方法
仮ナンバーの申請は、その自動車の運行経路が含まれている市区町村の役場窓口で行い、仮ナンバーの使用日当日と前日に受付が可能です。
必要となる書類は以下の通りです。
・自動車臨時運行許可申請書
・自動車損害賠償責任保険証明書(今回の使用に有効なもの)
・自動車を確認するための書類(有効期限の切れた自動車検査証や一時抹消登録証明書など)
・身分証明書(運転免許証など、申請者の現住所と氏名が確認できるもの)
「自動車臨時運行許可申請書」には、住所や氏名などのほか、運行の目的や運行の経路、運行期間などの記載が必要で、申請窓口などで入手できます。
「自動車損害賠償責任保険証明書」は、必ず原本が必要で、コピーや写真、画像などでは貸出許可を受けられません。
自動車損害賠償責任保険つまり自賠責保険は、車検切れ=自賠責保険切れの場合が多いため、事前に確認しましょう。なお、自賠責保険は最短1カ月から加入できますが、車検時に加入する24カ月タイプや36カ月タイプと比べると、加入期間に対してかなり割高な設定です。
「自動車を確認するための書類」では、自動車検査証や一時抹消登録証明書のほか、限定自動車検査証、自動車検査証返納証明書、登録識別情報等通知書、完成検査終了証、製作証明書、譲渡証明書などでも有効です。
これら必要書類を提出して不備がなければ、「1車両について750円」の申請手数料(※2021年12月現在)を支払い、その場で仮ナンバーが発行されます。
仮ナンバーの注意点とは?
《写真提供:photoAC》仮ナンバーの注意点とは?
■申請ルート以外を走行できない
通常のナンバープレートとは違い、仮ナンバーでは申請手続きの際に記入した経路以外は走行できず、もし別ルートを走行した場合は違反となります。
こちらは仮ナンバーの主な目的が、未登録自動車の新規検査や登録、車検切れの自動車が継続検査を受けるための運行許可だということが理由です。
また、運行経路は目的地までの最短経路で、出発地・経由地・目的地のいずれかに仮ナンバーを申請する市区町村が含まれている必要があります。
■貸出期間は最長で5日間だけ
仮ナンバーの有効期限は、最長で5日間となります。
これは「道路運送車両法35条3」で、やむを得ない場合を除いて「有効期間は、五日をこえてはならない」と定められているためです。
あくまで、車検切れなどのためのものとして短い期間に設定されていますので、もし何かの不備があって車検が通らず、再度車検の必要が生じた場合にはその日に合わせてもう一度仮ナンバーを申請する必要があります。
なお、貸出期間には土・日・祝日も含まれます。ですから、仮ナンバーを取得して車検を受ける場合には、車検の日時などをしっかり計画して行わないと、最長の5日間でも足りなくなることもありますので注意が必要です。
■返却期限を過ぎてしまうと、罰則が科せられることもある
仮ナンバーは有効期限満了後、臨時運行許可証と共に、必ず市区町村の役場に返却しなければなりません。
原則として失効から5日以内で、これに違反してしまうと、道路運送車両法第35条第6項、および同第108条の規定により、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金刑に処される場合があります。
なお、万一紛失してしまうと、盗難で警察に届出してある場合を除き、弁償金がかかるケースがありますので、紛失にも十分注意しましょう。
仮ナンバーの自動車保険は?
《写真提供:photoAC》仮ナンバー中の事故はどうする?自動車保険は?
前述のとおり、仮ナンバーを申請するためには、その期間に有効な「自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)」に加入する必要があります。
しかし自賠責保険でカバーできるのは、ケガ120万円、死亡3,000万円、重度後遺障害4,000万円が限度です。しかも対人賠償事故に限られており、対物賠償や人身傷害など、通常は任意保険がカバーしている部分は補償されません。
ですから、可能であれば仮ナンバー中にも任意保険に加入したほうが安心でしょう。仮ナンバーで任意保険に加入できるかは、各損害保険会社によって対応が異なりますので、詳しくは各損害保険会社や代理店にお尋ねください。
なお、最近よく見られるようになった1日限りの自動車保険が利用できるのではと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、仮ナンバー中では利用が難しいということを覚えておきましょう。
例として東京海上日動の「ちょいのり保険(1日自動車保険)」では、補償されない車に「車検切れになっている自動車や、登録を抹消されている自動車」と記されています。
また、三井住友海上の「1DAY保険」では、仮ナンバー(臨時運行許可証)の申込みが不可と記載されていますし、損保ジャパンの「乗るピタ!(時間単位型自動車保険)」でも、仮ナンバー(臨時運行許可証)では「契約することはできません」とされています。
まとめ
《写真提供:photoAC》もし車検切れなら、仮ナンバーを必ず取得しよう!
今回は、仮ナンバーを取得する際のポイントについてまとめました。
主な目的は、車検切れの車が継続検査を受けるためのもので、決められたルート、最長5日のみ許可されるものです。そして、自賠責保険の加入が必要でした。
万が一の時には無理をせず、仮ナンバーを取得して走行するようにしましょう。