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BMW、メルセデスベンツ、テスラなど...高級外車ブランドのマーケティング戦略を分析

BMW、メルセデスベンツ、テスラなど...高級外車ブランドのマーケティング戦略を分析

日本は国内にさまざまな自動車メーカーのある自動車大国ではありますが、欧米諸国の車も人気を博しています。今回は、高級外車ブランド5社(メルセデスベンツ、アウディ、フォルクスワーゲン、BMW、テスラ)にフォーカスし、日本におけるユーザー像、集客戦略を分析しました。

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メルセデスベンツ・テスラは訪問者の熱量が高い

それでは、「メルセデスベンツ」「アウディ」「フォルクスワーゲン」「BMW」「テスラ」の5つの高級外車ブランドについて、各公式サイトに訪問した人のデータをもとに、集客状況を調査していきましょう。

今回の調査は、毎月更新される行動データを用いて、手元のブラウザで競合サイト分析やトレンド調査を行えるヴァリューズのWeb行動ログ分析ツール「Dockpit(ドックピット)」を用いて行っています。

「メルセデスベンツ」「アウディ」「フォルクスワーゲン」「BMW」「テスラ」基本指標
集計期間:2022年5月~2023年4月
デバイス:PC・スマートフォン

上記は各ブランドの公式サイトに訪問した人について、各指標を示した表です。この表から、メルセデスベンツ、アウディ、フォルクスワーゲン、BMWの欧州4ブランドの訪問者数が200万人後半から300万人前半の間でせめぎ合っていることがわかります。4ブランドとも100年〜120年ほどの歴史があり、もともと一定のファンがいることが関係しているのかもしれません。

特にメルセデスベンツは1人あたりのページビュー数が11.1、平均滞在時間が3分9秒となっており、欧州4ブランドの中ではサイト訪問者が最も多くのページを閲覧し、最も長く公式サイトに滞在していることがわかりました。直帰率も39.1%と低いことから、複数ページを回遊する熱量の高い訪問者が多いと考えられます。

一方のテスラは比較的新しいブランドであり、EV車に特化しているという独自性があります。そのためか、テスラは訪問者数が110万人と、欧州4ブランドと比較すると約3分の1となっています。しかしテスラは、一人当たりのページビュー数が14.3と5ブランドの中では最も高く、直帰率は38.6%と最も低いことから、質の高い訪問者が集まっていると言えそうです。

女性へのアプローチが進むアウディ

次に、各ブランドの公式サイトを訪問する人の性別を見ていきます。男性比率が高いのは、自動車ブランドに共通する特徴です。

「メルセデスベンツ」「アウディ」「フォルクスワーゲン」「BMW」「テスラ」公式サイト訪問者の性別の割合
集計期間:2022年5月~2023年4月
デバイス:PC・スマートフォン

アウディは女性割合が最も高くおよそ27%を占めており、対してテスラは男性割合が約84%と最も高くなっています。

アウディでは、女性に焦点を当てた商品紹介や女性ユーザーの声などのコンテンツを配信したり、女性限定のイベントを開催したりするなど、女性にアプローチするマーケティングを行っています。その効果があらわれているのかもしれません。

出典:https://www.audi-sales.co.jp/campaign/a1_cpn/
出典:https://www.audi.co.jp/jp/web/ja/brand/brand_experience/ade.html
出典:https://www.audi-sales.co.jp/special_content/womens_session/

欧州ブランドは40代以降、テスラは若年層から支持

続いて、各公式サイトを訪問する人の年代を見ていきます。多少の差はありますが、欧州4ブランドはいずれも20代の割合が低く、40代、50代、60代の割合が高くなっています。

「メルセデスベンツ」「アウディ」「フォルクスワーゲン」「BMW」「テスラ」公式サイト訪問者の年代の割合
集計期間:2022年5月~2023年4月
デバイス:PC・スマートフォン

他4ブランドと比べて、違いが見られるがテスラです。40代の割合が高い点は他ブランドと同じですが、20代、30代の若年層の割合が他ブランドに比べて高くなっており、50代以降は割合が低いことがわかります。

テスラは、購入や試乗の申し込みがオンラインで可能です。ディーラーなどに行かなくても手軽に購入までのプロセスを踏める点も、若年層の関心を得ているのかもしれません。

「EV」と検索した人の年代
集計期間:2022年5月~2023年4月
デバイス:PC・スマートフォン

一方、「EV」と検索した人の年代を調べたところ、ボリュームゾーンは40代以降の層でした。必ずしも若年層の方が環境保全の意識が高く、その文脈でテスラを検討している、というわけではなさそうです。「テスラ」というブランド自体が若年層の興味を引いているのかもしれません。

続いて、公式サイト訪問者の、未婚・既婚や子供の有無の割合を見ていきます。

「メルセデスベンツ」「アウディ」「フォルクスワーゲン」「BMW」「テスラ」公式サイト訪問者の未婚・既婚の割合
集計期間:2022年5月~2023年4月
デバイス:PC・スマートフォン

いずれのブランドも、未婚よりも既婚の訪問者の割合が高い傾向にあります。その中でテスラのみ、未婚の訪問者の割合が40%台で、他の4ブランドよりも割合が高くなっています。

「メルセデスベンツ」「アウディ」「フォルクスワーゲン」「BMW」「テスラ」公式サイト訪問者の子供の有無の割合
集計期間:2022年5月~2023年4月
デバイス:PC・スマートフォン

大きく差が出たのが子供の有無。テスラのみ、子供なしの訪問者の割合が高くなっています。

理由としては、テスラには若年層の訪問者が多いこと、ワゴンタイプのようなファミリー車がないことなどが考えられます。子供がいる世帯では、テスラは選択肢に入りにくいのかもしれません。

世帯年収400万円未満層を集客するブランドも

続いて、世帯年収を見ていきます。

「メルセデスベンツ」「アウディ」「フォルクスワーゲン」「BMW」「テスラ」公式サイト訪問者の世帯年収
集計期間:2022年5月~2023年4月
デバイス:PC・スマートフォン

全体的に、ネット利用者全体と比べると、世帯年収が高めの層からの関心が高い傾向にあります。その中でも、「アウディ」「フォルクスワーゲン」「BMW」は、世帯年収400万円以下世帯からの関心が高くなっています。

外車=高級というイメージがあるかもしれませんが、この3ブランドでは250万円~400万円程度の、お手頃な価格帯の車も販売しています。

例:
・アウディAudi A1 Sportback:304万円〜
・フォルクスワーゲン TSI Active Basic:257万円〜
・BMW 1シリーズ:398万円〜

この3ブランドと比較すると、世帯年収1000万以上のユーザー割合が高いメルセデスベンツ・テスラは、お得なモデルでも約500万円と高めの価格帯です。

例:
・ベンツ The new A-Class:498万円〜
・テスラ Model 3:540万円〜

この約100万円の差が、年収別の関心差となってあらわれているのかもしれません。

テスラ訪問者は若年層がボリュームゾーンであり、一般的には若年層は年配層と比べると可処分所得が低い傾向にありますが、テスラの場合は反対に、他ブランドと比べても世帯年収が高い結果となっています。
テスラ訪問者を20代・30代に絞って再度集計しても、世帯年収高めのユーザー割合が高いことがわかります。

テスラ公式サイト20代、30代訪問者の世帯年収
集計期間:2022年5月~2023年4月
デバイス:PC・スマートフォン

消費者が気になっている各ブランドの人気車種は?

続いて、各ブランドの公式サイト訪問時に検索されるキーワード(サイトへの流入キーワード)から、どの商品やカテゴリが人気なのかを探ります。まず、どのブランドも上位に来るのはそれぞれのブランド名(指名検索)でした。

「メルセデスベンツ」公式サイトの流入キーワード
集計期間:2022年5月~2023年4月
デバイス:PC・スマートフォン

メルセデスベンツは、SUVの「GLC」や「GLB」、ラグジュアリーモデルの「マイバッハ」、メルセデス・ベンツ・グループの子会社でスポーツ・レース系のブランドの「AMG(メルセデスAMG)」など、車種やモデル名の検索が多く見受けられます。

「アウディ」公式サイトの流入キーワード
集計期間:2022年5月~2023年4月
デバイス:PC・スマートフォン

アウディはSUVモデルの「Q3」や「SQ5」といった車種名のほか、「認定中古車」の検索もありました。アウディを検索する人は、新車のみならず中古車にも関心が高いことが伺えます。

「フォルクスワーゲン」公式サイトの流入キーワード
集計期間:2022年5月~2023年4月
デバイス:PC・スマートフォン

フォルクスワーゲンは、「ゴルフR」「フォルクスワーゲン ゴルフ」「ゴルフ フォルクスワーゲン」というように、フォルクスワーゲンのフラッグシップモデルと言える「ゴルフ」シリーズの検索が多いことが特徴です。

「BMW」公式サイトの流入キーワード
集計期間:2022年5月~2023年4月
デバイス:PC・スマートフォン

BMWでは「3シリーズ」、SUVの「X3(Xシリーズ)」、走りに特化した「M3(Mシリーズ)」など、メルセデスベンツと同じように車種名やシリーズ名での検索が多くなっています。

「テスラ」公式サイトの流入キーワード
集計期間:2022年5月~2023年4月
デバイス:PC・スマートフォン

テスラの検索が多いのは、同社の中でもエントリーモデルと言える「モデルY」と「モデル3」。
車種以外にも、EV車を急速充電できる設備「スーパーチャージャー」の検索があります。テスラでは、各国・各地の主要ルート沿いなどにある施設にスーパーチャージャーを設置しています。テスラを検索する人は、購入した後の充電についても興味があるようです。

集客方法は各ブランドごとに特色が見える

次にブランドごとの集客構造を見てみます。下記のグラフでは、自然検索やディスプレイ広告など、どのチャネルから公式サイトへの流入が多いのか、ブランドごとに割合で示しています。

「メルセデスベンツ」「アウディ」「フォルクスワーゲン」「BMW」「テスラ」公式サイトの集客構造
集計期間:2022年5月~2023年4月
デバイス:PC・スマートフォン

※Dockpitにおける「ソーシャル」では、公式アカウントや一般ユーザーアカウントの投稿内で貼り付けてあるリンクからの流入などを計測しています。SNS内のディスプレイ広告経由の流入は、「ソーシャル」ではなく「ディスプレイ広告」に含まれます。

アウディがディスプレイ広告に注力。テスラは自然検索が80%近くを占める

特筆すべきはアウディとテスラです。

アウディはディスプレイ広告の集客比率が50%近くあることから、ディスプレイ広告に注力して新規顧客を集めようとしていることがわかります。

アウディとは大きく異なる集客構造になっているのがテスラ。自然検索が80%近くを占めています。

「テスラ」公式サイトの集客構造
集計期間:2022年5月~2023年4月
デバイス:PC・スマートフォン

一方で、リスティング広告、ディスプレイ広告などの広告は0%となっていました。テスラではスターバックス同様、広告に頼らない独自の集客をしているということがわかります。

ただ、2023年5月中旬の会見で、テスラのCEOイーロンマスク氏が株主総会で、「広告に挑戦する」と発言しました。もしかしたら、今後テスラの集客構造が変わっていくかもしれません。

まとめ

今回はメルセデスベンツ、BMW、フォルクスワーゲン、アウディ、テスラの5つの高級外車ブランドについて分析しました。

分析の結果、各ブランドごとに独自のユーザー像や集客戦略があることがわかりました。特に新しいブランドのテスラはどの分野でも独自の戦略をとっているようです。

歴史のある欧州ブランドがどのように他社との差別化を図っていくのか、自然検索に強いテスラがどのような戦略でユーザー数を伸ばしていくのか、引き続き注目していきましょう。

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「マナミナ」とは


マナミナ by VALUES

「マナミナ」は“まなべるみんなのデータマーケティング・マガジン”をコンセプトに、 市場動向や消費者インサイトを調査して発信。 インターネット行動ログ分析によるマーケティング調査・コンサルティングを提供している 株式会社ヴァリューズが運営しています。

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