グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードとは
《写真提供:response》無人の完全自動運転車によるレース「ロボレース」のロボットカー
「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」は、毎年イギリス ウェスト・サセックスにあるグッドウッドで開催される、イギリス最大級のモータースポーツイベントです。「所有する素晴らしいカーコレクションをしっかり走らせて楽しめるイベントがあると良い」という個人の想いからこのイベントが始まりました。
主催者は第11代リッチモンド公爵で、ロンドンから南西に約100km、南イングランドのサセックス州チチェスターの丘陵地に11,000エーカー、東京ドームに換算すると950個分を超える広大な敷地を所有しています。この敷地には公爵の生活拠点となるセンターハウスのほか、モータースポーツ用サーキット、ゴルフコース、競馬場、自然公園、リゾートホテルなどがあり、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードはその「私有地」の一部を開放して開催しています。
イベントを始めた理念やイベント名が示すとおり、世界中から集められた普段はなかなかお目にかかれないレーシングカーやレーシングサイクル、過去の名車たちが、展示されるだけでなく実際にヒルクライムレースを繰り広げるところが大きな特徴です。F1マシンからクラシックレーシングカー、ラリーカー、ヴィンテージカーなど、博物館でしか出合えないような車たちが疾走します。
メインイベントとなるヒルクライムレースには、最新のスポーツカーだけでなく、レトロなクラシックカーなど、展示されているほとんどのマシンが参加。全長1.9kmほどのショートコースを、参加車1台ずつが走行してタイム計測します。
ハンドルを握るのは往年の名ドライバーや現役ドライバーたち。ただしこのレースに勝敗はなく、本気のタイムアタックから往年の雄姿まで、さまざまな想いを包み込むカーカルチャーが観客と会場を盛り上げます。
ちなみに、コース脇にはスポンジ製のクラッシュバリアではなく、昔ながらの藁で作られたストローバリアが並べられており、より間近でマシンを体感できるよう工夫されています。スピードとエンジンサウンドが共有され、スピードマシンを愛する人たちと感動を分かち合える貴重な空間です。
グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2023の開催概要
《写真提供:response》《撮影 吉田瑶子》 グッドウッド・フェスティバルオブスピード2019
ここでは、今年開催される「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2023」の開催概要を解説します。
会場
チチェスター郊外 ウエスト・サセックスのグッドウッドハウス周辺
日時
2023年7月13日(木)~7月16日(日)
入場料
入場料60ポンド~
※観覧席パッケージ、高級レストランでの食事やヘリコプター飛行などのオプションチケットがあり、60ポンド~数百ポンドまで、さまざま用意されています。
駐車場
あり(無料)
※毎朝6:30からオープン。草地にあり、夜間駐車やキャンプは禁止されています。
主催
リッチモンド公爵家
内容
グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでは、毎年、ホストとなる自動車メーカーがあらかじめ決められ、メイン会場となる広場を飾ります。今年は「ポルシェ」がホストに選ばれました。ポルシェ初のスポーツカーである「ポルシェ356」が生産を開始してから75年という節目を迎えた同社は、1998年、2013年、2018年に続いて、4度目のホストとなります。
このため、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2023のメイン会場前には、ポルシェの大型モニュメントが展示されるほか、グッドウッドヒルにそって、数多くのポルシェが約2キロにわたって展示される予定です。
イベント
自動車やバイクの展示、ヒルクライムレース、各自動車メーカーによる新車発表など
グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2023出展車両をピックアップ
執筆時点で、「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2023」への展示が分かっている車両をいくつかピックアックします。
《写真提供:response》《撮影 吉田瑶子》 グッドウッド・フェスティバルオブスピード2019
■アルピーヌA110
《写真提供:response》《photo by ALPINE》 アルピーヌ A110 E-TERNITE
フランスの自動車メーカー アルピーヌ(Alpine)は、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2023にて、A110をベースとしたEVプロトタイプ「A110 E-TERNITE」を出展します。
初代アルピーヌA110は1963年に誕生し、1973年に始まったWRC(世界ラリー選手権)では初代チャンピオンを獲得した名車であり、1978年にはル・マン24時間レースでも総合優勝を果たすなど、アルピーヌブランドを確立させました。そのアルピーヌが「A110」のネーミングを復活させて2017年12月に公開したのが新アルピーヌA110です。
シンプルで美しいデザインが特徴で、曲線美を生かした軽量化ボディに、ダブルウィッシュボーンを前後に採用。これらサスペンションにもアルミを多用し、ライトウェイトスポーツカーとして、多くの自動車ファンから高い評価を受けています。
今回出展の「A110 E-TERNITE」は、アルピーヌがルノーグループであるメリットを活かし、ルノー・日産・三菱アライアンスのノウハウを活用。採用されたモーターは、最大出力242hp、最大トルク30.6kgmで、0~100km/hの加速は4.5秒、最高速は250km/hという高スペックを実現させました。車両重量は1,378kgで、バッテリーとモーターを積んでも、内燃エンジン搭載車から260kg程度の増加に抑えています。
■ルノー5(サンク)プロトタイプ
《写真提供:response》《photo by Renault》 ルノー 5 ディアマン
フランスの自動車メーカー ルノーが今回出展するのは、往年の名車ルノー5(サンク)のコンセプトEV「ルノー5 ディアマン」(Renault 5 Diamant)です。
初代ルノー5(サンク)は1972年に登場した小型ハッチバック車で、車名の「サンク」はフランス語で「5」を意味します。実はルノーには、「ルノー4(キャトル)」や「ルノー6(シス)」といった車もあり、1960年代から1980年代まで「3」から「30」までの数字を車名にしていました。
ルノー5(サンク)の2代目は1984年に登場し、フランスでは1990年にその座をクリオに譲ったあとは姿を消していましたが、今回、フランス語でダイヤモンドを意味する「ディアマン」というモデル名を引っ提げ、EV車として再び姿を見せることになりました。
フランス人デザイナーのピエール・ゴナロン氏と協力し、ルノー5のデザインの特徴を取り入れながらも斬新なデザインになっています。エクステリアは、初代ルノー5を思わせるシンプルさながら、ヘッドランプとテールライトは宝石のような雰囲気。インテリアは、ドアハンドル、シフトレバーなどが球体デザインで、ステアリングホイールは2周回する独特な形状になっています。
■ルノー オーストラル
《写真提供:response》《photo by Renault》 ルノー・オーストラル
「ルノー5 ディアマン」に続きルノーが出展するのは、ルノー カジャーの後継という位置づけのCセグメントSUV「ルノー オーストラル」(Renault Austral)です。
パワートレインは、ガソリンハイブリッドのみのラインアップ。パワートレインは3種類で構成され、最新世代「E-TECH」ハイブリッド、12Vマイルドハイブリッドの直噴1.3L直列4気筒ガソリンターボ「TCe」エンジン、48Vマイルドハイブリッドを備えた1.2L直列3気筒ガソリンターボ「TCe」エンジンです。
このうち最新世代「E-TECH」ハイブリッドは、1.2L直列3気筒ガソリンターボエンジンと電気モーターの組み合わせ。バッテリーは蓄電容量2kWhのリチウムイオンで、発進時は常にモーターのみを使うため、欧州仕様車の参考値ながら燃費は21.7km/Lを達成しています。
ダッシュボードには、2つのスクリーンで構成される合計24.3インチのL字型のデジタルディスプレイ「OpenR」をレイアウト。メーター類はドライバーの正面にある12.3インチのディスプレイに反映され、近未来感漂うものになっています。
■BMW XM レーベル・レッド
《写真提供:response》《photo by BMW》 BMW XM レーベル・レッド
ドイツの自動車メーカー BMWは、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2023にて、スポーツモデルMブランド専用の電動SUV「XM」の高性能グレード「BMW XM レーベル・レッド」を出展します。
「BMW XM レーベル・レッド」は、XMの中でも最高性能を持つハイパフォーマンスモデルで、PHEVシステム「Mハイブリッド」は4.4L V型8気筒ガソリンツインターボエンジンを搭載し、最大出力585hp/5,600rpm、最大トルクは76.5kgm/1,800~5,400rpm。加えて、電気モーターの最大出力197hp、最大トルクは28.6kgmで、システム全体では748hpのパワーと102kgmのトルクを発揮します。
トランスミッションは、8速Mステップトロニックを採用し0~100km/hの加速が3.8秒、最高速250km/hでリミッターが作動。さらにオプションのMドライバーズパッケージでは、最高速が290km/hまで発揮できる仕様になっています。
エクステリアは、BMWらしい上品さと同時に、荒々しくどう猛で野性的なイメージも。フロントのキドニーグリル周りとディフューザーインサートはトロントレッドで仕上げられており、遠くからでも「BMW XM レーベル・レッド」と視認できます。内装はブラック/レッドで配色され、車名を裏切らないスタイリッシュなデザインです。
■BMW i5 「M60 xDrive」
《写真提供:response》《photo by BMW》 BMW i5の 「M60 xDrive」
「BMW XM レーベル・レッド」以外に、BMWはグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2023にて、ミドルクラスセダン 5シリーズの新型EV「i5」の高性能グレード「BMW M60 xDrive」を出展します。
1回の充電で最大516km(WLTPサイクル)の航続走行を実現させるバッテリーが高性能モーターと組み合わされ、システム全体で最大出力517hpと最大トルク81.1kgmを発揮。さらに「マイモード・スポーツ」を選択することで最大出力は601hp、MスポーツブーストもしくはMローンチコントロール作動時に、最大トルクは83.6kgmにまでアップします。
BMWらしい乗り心地を実現させるため、「アダプティブ・サスペンション・プロフェッショナル」を搭載。平坦で真っすぐな道を走っているときでも、急カーブと急勾配が連続するような山道でも快適性が損なわないよう、電子制御アクティブ・スタビライザーを装備し、静粛性が高く、滑らかな乗り心地を実現させています。
コックピットはデジタル化を進め、フルデジタルディスプレイの「BMWカーブド・ディスプレイ」を搭載して、操作スイッチを減らし、スッキリとしたものに。さらに「BMWインタラクション・バー」が搭載され、クリスタルサーフェス構造を採用したバックライト付きのバーが、ダッシュボードからドアパネルまで広がって一体感を生み出しています。
■ポールスター2「BSTエディション230」
《写真提供:response》《photo by Polestar》 ポールスター2 の「BSTエディション230」
スウェーデンの自動車ブランド ポールスターはEVセダン「ポールスター2」(Polestar 2)の高性能モデルとなる「ポールスター2 BSTエディション230」を出展します。
ポールスターはボルボ・カーズ傘下で、もともとはボルボ公認のレースチームでしたが、EVとハイブリッドカーを手掛ける独立ブランドとして発展しました。
「BSTエディション230」の「BST」は野獣を意味するビーストから来ており、その名のとおり、「ロングレンジ・デュアルモーター」グレードのEVパワートレインを強化しています。前後それぞれに配置されたモーターは合計すると、最大出力476hp、最大トルク69.3kgmの高パフォーマンスです。
さらに、シャシーが強化された恩恵もあって、車高は25mmのダウンに成功。調整可能なダンパーにも専用チューンが施されています。加えて、マットブラックの21インチアルミホイール、245/35R21サイズのピレリ「P Zero」により、足回りはすっきりとしたイメージです。
時代を反映して、スマートフォンがキー代わりになる「ポールスター・デジタルキー」が導入されており、複数のユーザーによるカーシェアリングなどにも便利な機能です。Googleの「Android」がインフォテインメントシステムに組み込まれ、「Googleアシスタント」、「Googleマップ」、「Google Playストア」などのサービスを車内で利用できます。
■ポールスター3
《写真提供:response》《photo by Polestar》ポールスター3
スウェーデンの自動車ブランド ポールスターは「ポールスター2 BSTエディション230」に続き、ブランド初の電動SUVとなる「ポールスター3」(Polestar 3)を出展します。
2つのモーターは最大出力489hp、最大トルク85.6kgmを発揮し、0~100km/hの加速は5.0秒、最高速は210km/hを実現させています。ただし、これはあくまで通常スペックでのこと。オプションで「パフォーマンスパック」の設定があり、その場合、2つのモーターは最大出力が517hp、最大トルクが92.8kgmまでパワーアップし、0~100km/h加速は4.7秒を実現します。
また、ポールスターとGoogleの共同開発により、Google「Android」を搭載した新世代のHMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)が搭載されているのも特徴です。この新システムにより、アンドロイド・オートモーティブOS(Android Automotive OS)を車載化し、「Googleマップ」や「Googleアシスタント」、自動車用アプリといったサービスのリアルタイム更新が可能になりました。
さらに、ダッシュボード中央に設置された14.5インチのセンターディスプレイは、無線(OTA)によるアップデートを実現し、メーカーのサービス拠点に行かなくてもソフトウェアの改善や新機能の導入が可能になっています。
ポールスター3のエクステリアは、近未来的なエアロデザイン。ボンネットにはフロントエアロウィング、リアスポイラーにはエアロウィングが搭載され、SUVながらも空力性能を追求したこだわりが伺えます。
■MINI コンセプト・エースマン
《写真提供:response》《photo by MINI》 MINI コンセプト・エースマン
BMWの小型車ブランドを担うMINIは、次世代クロスオーバーEVのスタディモデル「コンセプト・エースマン」(MINI CONCEPT ACEMAN)を出展します。
コンセプト・エースマンは、MINIにとって初のクロスオーバーEVで、ボディサイズは全長4,050mm、全幅1,990mm、全高1,590mm。これは「MINIハッチバック」と「MINIクロスオーバー」の間の位置づけです。
MINIらしい外観ながら、クロスオーバーデザインと電動パワートレインであることを意識させるエクステリアで、フロントグリルは八角形の光るものに。コンセプト・エースマンには数多くのLEDが採用されており、ライトグリーンのLEDコンターライトは新しい自動車のカタチを予感させます。
グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2022を動画でチェック!
YouTubeチャンネル「Goodwood Road & Racing」には、伝説級のマシンの展示、輝かしい栄光を持つレジェンドレーシングドライバーの参加など、「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2022」4日間のベストシーンがまとめられています。ぜひご覧ください。
まとめ
《写真提供:response》《photo by Goodwood》 グッドウッドフェスティバルオブスピード2022
今回は「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2023」について、開催概要や予定されているイベント、出展される車たちをまとめました。
世界中の車好きが集まるユニークなモーターイベントです。日本からの参加は少しハードルが高いかもしれませんが、オークションに出されれば数十億円の値がつく名車たちの、スピードとエンジンサウンドを体験しに出かけてみませんか?