1965年から続くスバル独自の安全技術
「てんとう虫」の愛称で知られる「スバル360」
スバル360は、1958年に誕生。現在の軽自動車枠に収まる小さな車体に、4名乗車を可能にした優れたパッケージを備え、その愛らしいルックスから「てんとう虫」の呼び名で親しまれた日本の国民車的存在です。
スバル360のクラッシュテストの様子
その当時、まだ衝突安全という考えが浸透していませんでしたが、スバルは独自に全面衝突実験を開始し安全技術を開発していきました。
軽量かつ高剛性のボディ、そしてフロントにエンジンのないRR(リアエンジン・リア駆動)という構造は衝突安全性にも優れていたのでした。
スバルが注力する「総合安全」とは
現在スバルは独自の安全思想によって
・0次安全(視界・運転のしやすさ)
・走行安全(AWD、低重心)
・衝突安全(乗員・歩行者保護)
・予防安全(アイサイト、自動運転)
という4つの安全分野に取り組んでいます。
■0次安全(視界・運転のしやすさ)
0次安全は、あとから付け加えるのではなく、カタチや操作系といった基本的な設計を工夫することで、走り出す前からクルマの安全性を高めようとする考え方です。
中島飛行機から受け継ぐDNAをデザインに
スバルの安全性能として特徴的なものとして「視界」へのこだわりがあります。
スバルは前身である中島飛行機の時代から視界の広さにはこだわりを持っていた歴史もあり、視界要件にはたいへん厳しい社内規定を持っているそうです。
後方1mの位置にある円柱が見えなければいけないなど。スバルでは360度全方位しっかり見えることを重視しています。
他にも運転しやすいドライビングポジションや疲れにくいシート、自然に操作できるスイッチ類など、気が付きにくい部分にこそ、スバルの0次安全を高めるノウハウが詰まっています。
■走行安全(AWD、低重心)
走行安全はスバル独自の基幹技術である「水平対向エンジン」「シンメトリカルAWD」などにより、もしもの時に思い通りコントロールし、危険回避や事故を未然に防ぐという考え方です。
路面状況や天候に左右されず、いつでも安心して走りを愉しめる。走りを極めることは安全にも繋がると考えています。
スバルのシンメトリカル AWD
スバル独自の4輪駆動システムに「シンメトリカルAWD」があります。その最大の特徴は、水平対向エンジンを核としたパワートレーンが、左右対称・一直線にレイアウトされているということです。この基本レイアウトは4輪にバランスよく荷重がかかるため、タイヤの接地性をしっかりと確保できます。
■衝突安全(乗員・歩行者保護)
スバルの衝突安全性はスバル360の時代から受け継がれ、「JNCAP(日本自動車アセスメント)」、アメリカの「NHTSA」「IIHS」、ヨーロッパの「EURO NCAP」といった世界各国の自動車アセスメントで、高い評価を受けています。
レガシイのオフセット前面衝突試験
スバルではぶつかった衝撃から乗員を守る「パッシブセイフティ」だけではなく、対歩行者の保護性能も高めるためのクルマ作りを進めています。
■予防安全(アイサイト・自動運転)
スバルの安全技術として、まず思い出されるのが「アイサイト(Eyesight)」です。
アイサイトは「ぶつからないクルマ」の先駆けとして登場し、その後も高い評価を受け続けているステレオカメラの画像認識による自動ブレーキシステムです
アイサイト
人の目と同じように、左右2つのカメラで立体的に環境を把握し、クルマだけでなく歩行者や自転車なども識別し、対象との距離や形状、移動速度を正確に認識することができます。
2008年に登場して以来高解像度化や広角化、カラー画像化などの改良を重ねて現在はバージョン3まで進化しています。
アイサイトの歴史
アイサイトの歴史
■1999年:第1世代ADA(アクティブ・ドライビング・アシスト)
アイサイトの前身となる『ADA(アクティブ・ドライビング・アシスト)』初めて市販車に搭載されたのは1999年のことで、3代目レガシィ(1998 - 2003年)の「ランカスター ADA」がその第一弾となりました。
前走車との車間距離や車線を認識。前走車に近づきすぎた時や車線を逸脱しそうになった時には警告音でドライバーに知らせるほか、クルーズコントロール時の車間距離制御いますが、この第1世代と次の第2世代では、油圧ブレーキによる減速制御はまだ備えていませんでした。
■2001年:第2世代ADA(アクティブ・ドライビング・アシスト)
第2世代のADAは、2001年5月に行われた3代目レガシィのマイナーチェンジと共に登場。搭載車は3リッター水平対向6気筒エンジンの「ランカスター6 ADA」に変更されました。
第2世代では各種情報から車両が障害物回避動作に入ると判断した場合、VDCの制御特性を安定性向上モードに変更する「VDCプレビュー制御」や、細かい性能の向上が行われました。
■2003年:第3世代ADA(アクティブ・ドライビング・アシスト)
この第3世代だけに見られる特徴は、従来のステレオカメラに加えて、ミリ波レーダーをフロントバンパー内に搭載し、障害物の検知性能を強化したこと。
この世代からブレーキによる車間距離制御も加わり、機能は大幅に強化されているが、レーダを活用したこのシステムはステレオカメラにこだわってきたADA、アイサイトの歴史の中では過渡期にあったシステムとも言える。
■2008年:アイサイトVer.1(カメラのみでプリクラッシュブレーキ)
名称は従来のADAからアイサイトへ変更された。第3世代にあったミリ波レーダーは廃止され、ステレオカメラに一本化。新開発3D画像処理エンジンの採用により、ミリ波レーダーで補ってきた悪天候下での検知性能もカメラのみで確保できるようになり、大幅なコスト削減や小型化を実現した。
歩行者も検知するようになった第4世代のADA「アイサイト」
世界で初めてステレオカメラのみで「プリクラッシュブレーキ」を実現、衝突するとシステムが判断した場合には、警報とあわせてブレーキ制御を行い、ドライバーの衝突回避操作をアシストします。
レーダーを使わない画像認識というシステムの特性を活かし、対象とする物体が前走車のみならず、歩行者や自転車、車両近くの障害物までいち早く対応しています。
また、同時に「全車速追従機能付クルーズコントロール」「AT誤発進抑制制御」も加えられました。
■2010年:アイサイトVer.2(自動停止「ぶつからないクルマ」へ)
5代目レガシィ(2010年発売)に搭載された『アイサイト(Ver.2)』は基本的なシステム構成は第4世代(Ver.1)とほぼ同じだが、ついにクルマが停止するまでブレーキ制御を行うことができるようになりました。
第4世代(Ver.1)ではドライバーがシステムに頼り過ぎないように、速度は落ちても最終的には止まらない、という制御でしたが、アイサイトVer.2ではクルマが30km/h以下での走行中、「このままだと衝突」とシステムが判断すると、急制動によって車両を停止させるようになりました。
■2014年:アイサイトVer.3(自動運転を見据えた改良)
2014年に登場した最新のアイサイトVer.3では、ステレオカメラの視野角と視認距離をともに40%拡大させるとともに画像をカラー化し、センシング機能を大きく向上させ、自動ブレーキによる衝突回避の相対速度も約50km/hに引き上げています。
ステアリング制御も可能に
アイサイトVer.3では、ステアリング制御も可能になっており、クルーズコントロールを作動中に走行車線の中央部を維持するよう自動操舵する「レーンキープアシスト」などの新機能も追加している。
スバルではこのVer.3を「自動運転技術への第一歩」と位置付けているそうです。