自動運転のレベルとは
自動運転の「レベル」って?
自動運転はレベル0~5の6段階に分類することが可能で、レベルは「その車がどの程度自動で運転できるのか」を表す目安となります。
一般的に思い浮かべる「ドライバーが何もしなくても全ての運転操作を行ってくれる」自動運転はレベルは3以降であり、レベル2まではサポート機能としての側面が強いです。
レベル別 | 自動運転で何ができるのかを解説
ここからは、自動運転のレベル別に何ができるかについて解説します。
■レベル0
レベル0は「自動運転機能が搭載されていない」状態を表し、ドライバーが運転に関する全ての操作を担います。アクセルやブレーキの判断は全てドライバーに委ねられるため、事故が起きた際の責任もドライバーにあるものとみなされます。
車種によってはセンサーで危険を検知すると警告を発するものもありますが、あくまでも予防を目指した仕組みであり、警告を受けて運転を制御する主体がドライバーである点については変わりないため、レベル0と判断されます。
■レベル1
レベル1は「運転自動化システムが動的運転タスクの縦方向又は横方向のいずれか(両方同時ではない)の車両運動制御のサブタスクを特定の限定領域において持続的に実行。この際、運転者は残りの動的運転タスクを実行する事が期待される」と定義されます。
アクセルやブレーキを用いた加速と減速のコントロールや、ステアリング操作による位置調整のどちらか一方をカバーできているのがレベル1となります。
■レベル2
レベル2になると、加速と減速のコントロール及びステアリング操作による位置調整の両方をシステムが判断して行えるようになります。レベル2まではドライバーが主体となって運転を行うため、事故などが起きた際の責任の所在は明確にドライバーが負わなければなりません。
国内メーカーでは、トヨタの「Toyota Safety Sense」や、日産の「プロパイロット」、ホンダの「Honda SENSING」などがレベル2に該当します。
■レベル3
レベル3以降は、自動運転を行う主体がドライバーからシステムに移ります。「特定の条件を満たしている場合、全ての運転操作をシステムが実行する」という状態であり、ドライバーが運転するのは何らかの事情でシステムが自動運転を続行できなくなった場合に限られます。
原則としてドライバーに運転の責任はないものの、全自動運転が解除されている時に事故が起こる場合もあるため、有事の場合に完全にお咎めを受けないとは限らないとされています。
現行では海外メーカー「アウディ」のAudi AIトラフィックジャムパイロットなどがレベル3に相当するとされていますが、販売には至っていません。国内では2020年度内にホンダがレベル3対応車を発売する予定となっています。
■レベル4
レベル4は緊急時の対応も全てシステムの責任において実施するため、ドライバーは運転操作に一切関わりません。ただし、定められた領域内で走行することを前提としているため、領域外を走行する際に対応できるようにアクセルやハンドルが搭載されている車もあります。
自家用車よりも自動運転バスやタクシーなどの商用サービスが中心で、世界ではすでに実用化されている国もあります。
■レベル5
レベル5になると、どんな道路でもドライバーを必要とせず自動運転で走行できる状態に到達します。操作の必要がないためアクセルやブレーキ、ハンドルなどの機能も不要となり、車内をひとつの部屋のように見立てて自由に設計できます。
レベル4やレベル5は必要な法整備が整っていないため、現段階では技術的に確立したとしても社会的な実用化は難しい状況にありますが、メーカー各社が完全自動化の実現に向けて日夜努力を続けています。
日本国内では自動運転「レベル3」まで走行可能に
ドライバーが一時的操縦不要?
日本国内ではこれまでレベル2までの走行しか認められていませんでしたが、2020年4月に「道路交通法」と「道路運送車両法」が改正され、レベル3の自動運転車が走行可能になりました。2020年11月現在では、レベル3の自動運転技術を搭載した車は発売されていないのが現状です。
しかし、ホンダが2020年度内に他社メーカーに先駆けて発売を予定しており、国内初のレベル3搭載車が市場に出回る予定となっています。
レベル3は「限定された条件のもとでシステムが全ての運転タスクを実施するが、緊急時などシステムからの要請があれば運転者が操作を行う必要がある」と定義されており、基本的にはシステムを中心とした運転が行われます。
何らかの原因でシステムの自動運転が困難となった場合は、ドライバーに交代要請を出し、運転を交代する仕組みです。
海外における自動運転の動向
海外の動きはどう?
海外においては、日本国内よりも自動運転技術が進んでいる地域もあります。アメリカ、欧州、中国の自動運転に対する方針についてご紹介しましょう。
■アメリカ
アメリカでは各州が州法で自動運転の規制を定めているため、実用化や普及の度合いにはばらつきがあります。それでもアメリカ連邦政府が指針を示そうと継続的な動きを見せており、2017年9月に「車両の進化における生命の安全確保と将来的な導入および調査に関する法律(SELF DRIVE Act)」という自動運転に利用する車の安全確保について言及した法案が米国下院で可決されました。
また、同じ時期にNHTSAによる製造者向けのガイドラインを改定した「自動運転システム2.0」、2018年10月には自動運転政策を含めた内容を記載した「3.0」が発表されました。
■欧州
EUでは2030年代までに完全自動運転社会を実現する方針を打ち出しており、2018年5月に欧州委員会がロードマップの公表に踏み切りました。2016年4月の「アムステルダム宣言」によってEU内で自動運転実用化に対する共通課題を連携して解決していくことを確認しており、国境の垣根を意識せずに実証実験などを積極的に行う姿勢を示しています。
フランスなどではNavya(ナビヤ)が2020年に自動運転シャトルバスの試験導入を開始しており、将来的な実用化が期待されています。
■中国
中国では一般市民を対象に自動運転タクシーの実証実験が行われており、レベル4の社会実装に限りなく近い段階にある状況です。導入の主体となっているのはIT企業などをはじめとした自動車メーカー以外の企業も多く、中国企業全体の関心事であることが窺えます。
IT大手の百度は自動運転連合の「アポロ計画」を立ち上げており、日本のトヨタ自動車も参画しています。
自動運転の今後の展開
今後はどうなる?
ここからは、自動運転の今後の展開について解説します。
■各種運転サービスの自動運転化
自動運転技術がレベル4に到達すれば、タクシーやバスをはじめとした交通サービスの無人化を実現できます。アメリカのウェイモはレベル3に先立って2018年から自動運転タクシーを商用化して提供しており、現在ではセーフティードライバーも不要の完全なレベル4を達成しました。
日本国内では日産とDeNAが「イージーライド」という名称の自動運転タクシーの開発を進めており、2020年代にできるだけ早い段階で実用化したい考えを示しています。
自動運転バスは2020年11月26日から茨城県境町市が自治体で初めて自動運転バスの定常運行を開始しており、今後も自動化の波は広がっていくものとみられています。
■配送・警備の実用化
自動運転技術の活用は、乗用車だけにはとどまりません。配送業務に特化したロボットや警備用のロボットなどは、アメリカや中国をはじめとした海外ですでに実用化されている地域もあり、今後の生活に取り入れられていくことが期待されています。
日本国内でも日本郵便が配送ロボットの実証実験を行うなど、無人配送の動きが少しずつ進んでいます。
■レベル4実用化への実証実験
現在では世界中の自動車メーカーが自動運転技術の開発を競っており、さまざまな企業が出資、共同開発などの形でレベル4実用化に向けた実証実験を行っています。
トヨタ社ではアメリカ国内の公道で試験走行に取り組んでおり、日本でも一般人を対象に自動運転レベル4の実験車への試乗体験を実施する意向で、日程の発表が待たれる状況です。
まとめ
自動運転の今後に期待!
6段階のレベルに分けられる自動運転ですが、現状ではレベル3及びレベル4の開発に国内外のメーカーがしのぎを削っている状況です。中には自動運転バスやタクシーの実用化に至っているケースもあり、自動運転技術は格段に進歩していると言えるでしょう。
日本国内では2020年にレベル3の実用化が解禁されたばかりですが、現状では実証実験段階のレベル4の商用車などが、今後一般向けに登場する可能性もあります。法整備を進めなければならないなどの課題も残されているものの、自動運転技術はますます発展していくとみられています。