金融車とは
金融車って何?
車は、ディーラーや販売店での購入がメインですが、近年ではネットオークションや個人売買などでも購入できます。
いずれにしても、車を購入する際の選択肢は新車か中古車が一般的。しかし、より安く車を購入する手段として一部で注目を集めているのが「金融車」です。
いきなり金融車といわれてもピンと来ない方も多いかもしれません。しかし、一般的な中古車よりもかなり安く購入できる可能性があるため、限られた予算の中で車の購入を検討されている方はチェックしてみる価値があるでしょう。
金融車とは、一般的に担保として差し押さえられた後、市場に出回った車のことを指します。ここでは、なぜ金融車が生じるのか、そしてどうして市場に出回るのかといった点を紹介します。
■金融車が生じる理由
車を購入する際に、自動車ローンを利用するという方は少なくありません。新車、中古車を問わず決して安い買い物ではありませんので、一括購入できない人はローンを利用して分割で支払いをすることになります。
このように、一般的な自動車ローンによって購入された場合、自動車ローン完済まで車の名義はローン会社となります。購入者はあくまで「使用者」で、名義はローン会社です。
そのままローンを支払いながら車に乗り続けるのであれば何の問題もありませんし、自動車ローンの支払いが終われば名義は購入者本人のものとなります。
しかし、自動車ローンの返済期間中に、なんらかの理由で車を担保にしてお金を借りたり、新たなローンを組まなければならなくなる状況に陥ることもあります。
通常、自動車ローン返済中の車を担保にすることはできませんが、金融業者によってはこういった車を担保にお金を借りられるケースもあるのです。それはローンがある車でも資産的な価値は認められるためです。
こういった形でお金を借りたとしても、しっかり返済できれば問題はありません。しかし、なんらかの事情で返済ができなくなってしまうと、車を担保としている金融業者は担保権の実行を行い、車の引き上げを行います。つまり借金のカタとして車を取られるということです。
こうして車が引き上げられたとしても、車の名義は最初に契約したローン会社のままです。もちろん残りの自動車ローンを支払えば名義は車の購入者になりますが、完済前の車を担保にしてお金を借りて、その返済もできない状態で自動車ローンのみを返済できるとは考えにくいでしょう。
結果として、名義は自動車ローン会社にあるのに、車は新たな金融業者のもとに行くという形になってしまうのです。このような状態の車が市場に出回り、金融車として売りに出されます。
他にも、借り主の意向に反した担保処分が実行されるケースも考えられます。
通常、担保にした車を処分する時には借り主に連絡が行きますが、そうした連絡や確認がないまま、担保処分が実行されることもあるようです。このケースの金融車は、借り主が担保権が実行されたことを認識していないので、後から法的トラブルに発展することが多く、注意が必要です。
反対に、借り主の意思によって金融車になるケースもあります。
住宅の任意売却に似ており、返済できないので借り主の意思のもと金融車になります。このケースは借り主の意向や権利が比較的整理されているので、後から法的トラブルに発展することは少ない傾向にあります。
このように、ひと言で金融車といっても、金融車になった理由によって、抱えるリスクの度合いが異なります。
■金融車が市場に出る理由
車を売却する場合、当然名義者の同意が必要となります。
しかし、金融車の場合は名義者と使用者が異なります。そのため、一般市場で販売することができないので、実際に、通常の中古車を取り扱う販売店などで金融車が販売されているのを目にする機会はほとんどないでしょう。
そこで、気になるのが金融車が市場に出る理由です。
金融車が市場に出る理由にはさまざまなケースがあります。担保として車を引き上げた業者が直接誰かに販売するケースもありますし、さまざまな理由から名義変更ができない場合、名義関係の書類のない車を取り扱う業者などを経由して市場に出ることもあります。
金融業者側からすると、担保として車を引き上げても換金できなければ意味がありません。そのため、なんらかの形で売ることになります。
つまり、ローン中の車で借り入れが可能な金融業者が存在する以上は、金融車が市場に出る可能性があるということになります。
■金融車の価格は?
金融車は前述の通り、いわゆる「訳あり」の車ということもあり、さまざまなデメリットがあります。そのため、価格は一般的な中古車より安くなる傾向にあります。
金融車は、表立って市場に出回るわけではないので、はっきりとした相場はありませんが、中古市場価格の3〜5割程度が多いようです。
金融車の中には外車や高級車なども多いことから、通常の中古車では手が届かなくても、金融車であれば無理なく買えるというケースもあります。
■金融車を購入できる場所
前述の通り、金融車は通常の中古車販売店などで目にする機会はほとんどありません。以前はネットオークションなどに出品されていましたが、現在は、多くのサイトで名義変更ができない車の出品は禁止となっているため姿を消しているようです。
表立った宣伝はされていませんが、金融車を専門に取り扱う業者などは存在しています。金融車を購入したいのであれば、まずは近くに専門業者がないかをネットなどで探してみましょう。
■リスクの高い金融車の特徴
金融車でも前オーナーが自動車ローンを完済してくれれば、通常の中古車と同じになり、金融車特有のリスクはほとんどなくなります。逆に、前オーナーが自動車ローンを完済してくれる可能性が低ければ低いほど、リスクの高い金融車といえます。
そのため一般的にリスクが高いといえるのは、組まれているローンの額が大きいと考えられるベンツ、レクサス、BMW、アウディなどの高級車です。
また、こうした高級車は会社や事業者がローンを組んでいることも多いのですが、その会社や事業者自体が存在しなくなっているケースも多く、その場合、完済はまったく見込めません。
さらに事業者の高級車の場合、違法な金融業者が介在して金融車を販売しているケースもあり、その場合は法的トラブルのリスクが高まります。
金融車のメリットとデメリット
知識をしっかり身につけよう
実際に金融車を購入する上で重要となるのは、やはりメリットとデメリットです。メリットばかりを見ていると、購入してからデメリットに気付いて後悔することになる可能性もあります。
続いては、金融車のメリットとデメリットについて紹介します。
■金融車のメリット
金融車のメリットは価格が安いという点です。前述の通り、金融車になるのは基本的に担保となる「価値のある車」のみ。金融車となる背景から考えると、安価な中古車ばかりをイメージしてしまいがちですが、実際には高年式の高級車も決して少なくないようです。
中古車市場でも人気が高く、価格が下がりにくい高級外車などが金融車として市場に出回るケースもあります。そのため、高級車をできるだけ安く購入したいという方にとっては大きなメリットといえるでしょう。
■金融車のデメリット
車を相場よりもかなり安く購入できる一方で、金融車にはデメリットも少なくありません。最大のデメリットは「名義変更ができない」という点です。前述の通り、金融車は名義がローン会社になったままのケースがほとんどです。
自動車ローンの支払いが完了していない以上、ローン会社が名義変更に必要な書類を提供してくれることはほとんどありません。そのため、購入したとしても実質的に名義を自分のものにできないのです。
名義が異なれば当然、自動車税の支払いもできなくなります。そうなると当然、継続検査(車検)も受けられません。
というのも、継続検査(車検)を受けるためには、自動車税を納付して納付証明書の発行を受ける必要があります。しかし、納付証明書は納税義務者である元のオーナーに送られるため、払いたくても入手が困難です。
前使用者が手元にない車の自動車税を代わりに支払ってくれるのは稀でしょう。さらに前使用者ーが車の税止め手続きをしていれば、納税証明書は発行されませんので車検が受けられません。
この車検については第三者納付という方法をとれば車検自体は受けられますが、税制上の問題から車両差し押さえといったリスクがあるという点は頭に入れておきましょう。
自動車税が滞納されているという理由以外にも、前使用者が交通違反や放置駐車の違反金を滞納している、税止め手続きもしくは強制抹消しているといった場合には、車検を受けられません。金融車として手放した背景を考えると、こうした可能性は非常に高いでしょう。
さらに、金融車が手元にあっても名義変更ができなければ所有者になれないので、一時抹消登録や永久抹消手続きが行えず、廃車や解体も容易ではありません。
さらに、任意保険に加入できないこともデメリットとしてあげられます。
任意保険は契約できる車の所有者が限られており、一般的に「契約者本人」「契約者の配偶者」「契約者またはその配偶者の親族」です。つまり金融車に乗るということは、任意保険に加入していない車に乗るということと同じであり、日常の運転にもかなりのリスクが伴います。
もっとも大きなデメリットは、ローン会社などの名義者から盗難届が出されたり、車の返還要求を受ける可能性があるという点です。
所有者はあくまでローン会社などなので、これは当然の権利となります。最悪の場合、所有者によって登録を抹消されてしまうケースもあります。この場合、気付かないうちに無車検車に乗っていることになるので、注意が必要です。
■金融車の購入は違法?合法?
金融車を購入すること自体は違法ではありません。しかし、所有を続けることにより違法となる可能性があります。
通常、車を購入したら15日以内に名義変更を行い、警察に車庫証明の届け出を出す必要がありますが、金融車の場合は前述の通り名義変更ができないので、そのまま乗り続けることは違法にあたります。
加えて、購入自体は違法ではありませんが、無効になる可能性はあります。
金融車の場合、車の所有者が同意せずに売買契約が結ばれたことになります。この点に関してはいくつかの法解釈があり断言はできませんが、購入そのものが無効となる可能性があるという点は頭に入れておくべきでしょう。
金融車を維持するためのコツ
どうやって維持する?
前述の通り、金融車には多くのデメリットやリスクがあります。それでもメリットがあると考えるのであれば、選択肢に入れてもいいでしょう。
そこで、最後に金融車を購入して維持するためのポイントをいくつか紹介します。
■信用できる修理工場などを見つける
金融車の場合、名義が異なることから正規ディーラーでの整備などを受けられない可能性があります。しかし、車を維持するためには定期的なメンテナンスは欠かせません。加えて、故障してしまった場合などには修理も必要です。
そういった場合に備えて、金融車でも整備や修理などを受けられる修理工場を見つけておきましょう。とくに外車の場合、一般的な整備工場などでは整備や修理などができないケースがありますので注意が必要です。
金融車はどうしてディーラーのサポートを受けられないの?
ディーラーの場合は、規約などによって名義と使用者が一致しない時は整備や修理などを断られてしまう可能性があります。
もちろんすべてのメーカーやディーラーがそうというわけではありませんが、できるだけディーラーで整備して乗り続けたいと考えているのであれば、金融車は避けるべきでしょう。
■金融車のデメリットを正しく理解する
前述の通り、金融車には多くのデメリットがあります。それぞれ決して小さなものではありませんので、これらをしっかり理解して納得した上で購入することが重要です。
最悪の場合、どんなに気に入った車であっても名義変更ができない時点で長く乗り続けられない可能性があります。
できるだけ長く乗り続けたいと考えているのであれば、金融車はおすすめできません。
■手放す際のことも考える
金融車は名義変更ができないことから、手放す際にも問題が生じます。売却はできませんし、廃車や登録抹消も自分の意思で行うことはできません。
通常の買取り業者や廃車専門業者では売却に対応してもらえません。ですから手放したいのであれば、金融車を購入した業者に相談するしかないでしょう。それも難しいのであれば、金融車を専門に扱う業者に相談してみるとよいかもしれません。
金融車は、こちらがもっとも大きなリスクといえるでしょう。
まとめ
メリット・デメリットを見極めよう
金融車は「可能な限り安く購入したい」という方にとっては、魅力的な選択肢であると思えるかもしれません。しかし、金融車にはさまざまなデメリットがあります。
このことを理解せずに、安いからといって飛びついてしまうと後悔することになるかもしれませんので、今回紹介したデメリットをしっかりと頭に入れておくようにしましょう。