もらい事故とは
もらい事故って何?
もらい事故は「被害者側に過失がなく、完全に加害者に非がある交通事故」を指しています。被害者が避けられない状態で事故をもらってしまったことを指すため「もらい事故」と呼ばれています。
被害者側にはまったく落ち度がないため「0:10」の過失割合となり、加害者側が一方的に損失を補償する必要があります。たとえ片方の過失が強かったとしても、お互いに何らかの過失があって起こる事故はもらい事故とは呼ばれないため注意しましょう。
もらい事故の具体的な例
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もらい事故の具体的な例としては、次のようなものが代表的です。
・一時停止中に後ろから車が衝突してきた
・赤信号で停車中、後ろから追突された
もらい事故で非常によくある例は追突事故です。信号待ちで停車しているにも関わらず後ろからぶつかってくる車両は避ける方法がないため、明確なもらい事故といえるでしょう。渋滞している道路で停車していたら後ろの車に追突されたり、停車中にカーブを曲がるのに失敗した対向車に衝突された場合も同様です。
基本的に「自分は停車しているのに相手が追突してきた」というケースはもらい事故に相当します。例えば駐車場で停車している最中に、隣に駐車しようとした車にぶつかられた場合ももらい事故にあたります。
もらい事故は加害者側に一方的に非があるため、示談交渉の際に被害者側が圧倒的に有利になる傾向にあります。
■もらい事故に遭っても減点にはならない
一般的に、交通事故が起こると道路交通法に基づいて規定の点数が減点されます。内容によって減点される点数は異なりますが、一定の点数が積み重なると免許停止や取り消し処分などが行われる仕組みです。あおり運転など、悪質な違反の場合は一度の違反で免許停止処分になるものもあります。
ただし、もらい事故は被害者側に一切の過失が認められないことから、行政処分による減点の対象にはなりません。「事故に巻き込まれてしまったから減点されるかもしれない」と不安になる必要はないので、もし当事者になってしまった場合でも安心して対処しましょう。
もらい事故に遭うと保険会社が示談交渉できない
示談交渉できないってほんと?
何らかの交通事故が起きて示談交渉を行わなければならなくなった時、一般的には保険会社が交渉を代理で進めてくれます。しかし、もらい事故の場合は保険会社が交渉することは許可されていない点には注意が必要です。
もらい事故において被害者側の保険会社が示談交渉に参加すると弁護士法に違反するため、被害者は自ら交渉を行わなければなりません。加害者側の保険会社が参加しても弁護士法には触れないので、プロの交渉術を持った相手に一人で対応することに不安を覚えるケースは多いといえます。
自分ひとりで交渉を円滑に進めるのが難しいと感じた時は、弁護士にサポートを依頼するなどを検討するのも手段のひとつです。
もらい事故に遭ってしまったらどうする?
事故に遭ったらまず何をする?
もらい事故の被害者になってしまったときにどのように対応しなければならないのか、具体的な流れを紹介します。
■1. ケガ人の救護などをしてから警察へ通報する
もらい事故に遭ったらまずはケガをしている人がいれば早急に救護し、救急車を呼ぶなどの対応も迅速に進めましょう。車が動かせるなら安全な場所に移動させてから、警察に事故の発生を通報しましょう。
警察へ事故を報告することは交通事故に巻き込まれたすべてのドライバーと同乗者に義務付けられているため、必ず通報することが重要です。警察が介入しなければ事故とは認められずに加害者へ損害賠償請求ができない可能性もあるため注意しましょう。
また、通報せずに放置すると道路交通法違反で「懲役3ヶ月もしくは5万円以下の罰金」が課されます。
加害者とは示談交渉などを行う必要があるため、個人情報や必要事項などをお互いに確認しておきます。相手の住所や氏名、連絡の取れる電話番号は最低限の連絡先として押さえておくことが大切です。また、加害者側が加入している保険会社や自賠責保険の契約番号を確認しておき、保険会社からの連絡に備えましょう。
■2. 保険会社へ連絡する
現場対応が終わったら、自身が加入している保険会社にも連絡を入れます。被害者側の保険会社は示談交渉には参加できませんが、事故があった事実を報告し、弁護士費用特約が適用されるかを確認する必要があるからです。
被害者は該当のもらい事故で受けたすべての損害を明確にして、その額に応じた賠償請求を行う示談交渉に臨むことになります。
もし事故が原因でケガを負った場合は、「症状固定」と診断されるまで通院を続けて治療を受けましょう。これ以上状態が改善しないと判断される症状固定の段階になったら後遺障害等級認定を申請し、認められれば後遺症についても損害賠償請求の対象となります。
さらに、車両を修理する必要がある場合は、警察の事故に関わる聴取が終了した後で速やかに修理の手配を始めます。移動できない状態であればレッカーなどで移送し、修理先を決定したら加害者側の保険会社に連絡しましょう。その段階で損害を調査するための担当者が修理工場に赴き、修理が必要な箇所の確認や修理費用を確認した上で修理が開始されます。
日常生活に支障が出るなどの理由で代車を必要とする場合はレンタルし、その間のレンタル費用やもらい事故の影響による評価のマイナス分などを加味して示談交渉を行い、合意した内容で賠償金が支払われます。
相手の保険会社への連絡をせずに修理を開始すると自費になるため、くれぐれも事前に連絡を入れることを忘れないようにしましょう。
■3. 病院を受診する
事故に関わる現場対応が完了したら、当日中の早い段階で病院を受診することが大切です。治療の必要がある場合は医師の指示に基づいて通院治療します。
たとえ軽傷であったとしても、ケガがみられるときは「人身事故」として届け出ましょう。
■4. 損害をまとめる
物損事故扱いになってしまうと慰謝料や治療費の請求に支障が出るケースがあります。医師に書いてもらった診断書を警察に提出することで人身事故としての届け出が可能です。
もし物損事故として届け出てしまっていても、1週間から10日以内程度の早めのタイミングであれば人身事故に変更できます。過ぎてしまうと対応できなくなるため、できる限り早急に判断することが大切です。
また、加害者側からお見舞い金を渡したいと申し出られた場合も、受け取ってしまうと賠償金の一部とみなされる可能性があるため拒否しましょう。
相手が非を認めない場合でも冷静に
冷静に対処しよう
明らかなもらい事故であっても、中には加害者側が非を認めないケースもあります。その際でも追い詰めるような言動をするのではなく、あくまでも冷静に対処することが重要です。悪意がなくても事故当時の状態を正しく認識していなかったり、相手が冷静な精神状態になく混乱していたりする可能性があるからです。
基本的には相手と直接話すのではなく、相手の保険会社を通じてコミュニケーションを取るのが望ましいでしょう。感情的になってしまうリスクを避けて、落ち着いて会話を進められます。
もし十分な時間を置いても加害者側が事実と反する主張を続けるのであれば、防犯カメラやドライブレコーダーの記録、現場に居合わせた目撃者の証言などの証拠を揃えて提示する必要があります。単独での対処が難しい状況であれば、弁護士などの専門家の力を借りることも検討しましょう。
交通事故予防、加害者にならないためのポイント
ポイントを押さえておこう
被害者側としては避けることができない事故な上、事故発生から解決まで多大な負担を被ってしまうものです。
もらい事故を含む交通事故の加害者となってしまわないためにも、普段の運転で気をつけておきたいポイントをご紹介します
■体調不良時に運転しない
体調不良の日に運転すると的確な判断が難しくなり、安全運転できない可能性があります。風邪を引いていたり薬を飲んでいたりする場合は、できるだけ運転を避けることが大切です。
また、疲れている時は自分でも予想していないような行動を取る危険があります。目的地まで急がずに、いつもより少し時間をかけて到着できるような計画で運転するのも手段のひとつです。
■視野を広くとる
交差点などを走る際は、安全速度を守った走行や、信号や他の車の動きだけでなく、死角部分や歩行者・自転車などにも注意しておきましょう。
周囲に自転車に乗った人や高齢者、幼い子どもなどがいる場合は、転倒や飛び出しで事故が起きる可能性があります。視野を広くとり、どのような事態が起こってもスムーズに対応できるような体制を整えておくことが大切です。
■十分に車間距離を空ける
先行車との車間距離が十分に空いていないと、突然停車した時に追突する危険があります。後続車が車間距離を空けずにぴったりと張り付いていないかどうかは十分に意識しておきましょう。
後続車が何らかの要因で急加速したり、停車位置ですぐに止まれなかったりした場合でも追突される危険を避けられます。
■悪天候時は特に注意する
雨の日や雪の日など、悪天候は想定外のトラブルが起こりやすい状況であるといえます。必要最低限の運転に留めて、できるだけ運転を避けることが事故防止につながります。
■夜間はハイビームを活用する
陽が落ちてきたらヘッドライトを少し早めに付けたり、夜間は先行車や対向車がいない場面では積極的にハイビームで走行したりするのも有効です。
障害物や通行人をいち早く発見し、事故を防ぐことにつながります。
■基本的な安全確認を徹底する
最も基本的かつ重要なポイントとして、安全確認を徹底することが挙げられます。発進前には死角になっている場所に障害物がないか、歩いている人がいないかどうかなどを慎重に確かめましょう。
バックの際はバックモニターに頼りがちになりますが、目視確認も行うと安全性が高まります。
まとめ
安全運転を心がけよう
もらい事故は被害者側に過失が一切ない事故であり、不運にも巻き込まれてしまった場合は自ら示談交渉を行う必要があります。場合によっては加入中の保険会社の弁護士特約なども利用して、示談交渉に臨むことをおすすめします。
基本的には避けることが難しいものではありますが、安全確認や車間距離を徹底して、万が一の事故に備えましょう。