そもそも「コンパウンド」とは?意味は?
コンパウンドとは、複合物、化合物を意味する言葉で、一般的にカー用品のコンパウンドとは「研磨剤」のことを意味します。
身近な例をあげるとキッチン用のクレンザーや歯磨き粉などと同じようなものです。
紙やすり(サンドペーパー)の表面についているザラザラした部分も研磨剤で
コンパウンドは粉状の研磨剤を薬剤と合わせているため、紙やすり(サンドペーパ)の液体版になります。
紙やすり(サンドペーパー)同様に様々なサイズの粒子のコンパウンドが販売されていますが、主にコンパウンドが利用されるのは細かなキズや浅いキズの研磨です。
やわかいスポンジや布を使用してコンパウンドを使いキズを研磨していく方法や、
コンパウンド用のポリッシャーという機械を装着し回転させることで研磨する方法が用いられます。
プロは傷の状態やコンパウンドを使用する箇所や状況に応じて、数種類を混ぜ合わせて
研磨力を調整するため、カー用品店で販売されているコンパウンドでは対応できない傷にも対応することができます。

車の塗装面の構造とコンパウンドの相性
「どんな傷でもコンパウンドを使えば綺麗になる」と思っている方もいますが、実はコンパウンドにも対応できる傷と対応できない傷があります。
まず、その説明をする前に車のボディ上の塗装面を知ることが重要になります。
そもそも、車の塗装はいくつかの層でできおりキズの深さによってはコンパウンドを使用できない場合があるので、まずは車の塗装を外側から説明します。
車の塗装は基本的に4層構造となっています。
■車もボディを保護してツヤを出す透明な「クリア層」
塗膜を保護して深みのある色を作りだし、高級感を演出します。
クリア層が無ければ塗装が綺麗に色づかないので非常に大切な役割があります。
■ボディカラーを決める「カラー層」
各メーカーそれぞれのノウハウがギッシリ詰まっているカラー層は、高い抗酸化性がある樹脂に顔料を入れ色が作られています。
■サビ止めなどの役割を担う「下地層」
ボディカラーが綺麗になめらかに色づくための役割があります。
下地層が無ければ、ボディカラーが均等に綺麗な色にならないため、非常に重要な役割があります。
■その下が鉄板や樹脂の「ボディ」
塗料がまんべんなくボディの隙間に入るようになっており、錆から守る役割があります。
一概に車のボディといってもこのように何層にも重なってできています。

コンパウンドでキズを目立たなくできる境目の層は“クリア層”です。
クリア層を超えない程度のキズであれば、コンパウンドを利用してキズを目立たなくすることができます。
また、カラー層まで達した傷であっても場合によってはコンパウンドで目立たなくすることは可能ですがある程度の技術と経験が必要となるので素人では難しいでしょう。
そして、下地層やボディまで達するほどの深い傷がついてしまった場合は、残念ながらコンパウンドを使い、自身で傷を直すことはできません。
使い分けが重要!コンパウンドのタイプ&おすすめ商品
コンパウンドは、ペーストタイプとリキッド(液体)タイプが存在します。
■リキッド(液体)タイプ

やや粘度のある液体状で、シャンプーのようなイメージです。
液状なので均等に伸ばしやすい特徴があります。
とても小さいキズなどにコンパウンドを使用したい場合など、少量ずつ出せるので扱いやすいです。
さらに、伸びが良いため、広範囲のボンネットやドアなどの研磨に向いています。
また、価格もグレードが高いものからお手頃価格までバリエーションが豊富です。
リキッド(液体)タイプのデメリットとして2点あげられます。
■とても乾燥しやすい
真夏など暑い日は、リキッド(液体)タイプのコンパウンドを塗ると、すぐに乾いてしまうため手早く作業しなくてはなりません。
そのため、リキッド(液体)タイプのコンパウンドの扱いに慣れていない方は、真夏や日中、気温の高い日の作業は避けた方がベストです。
■飛び散りやすい
また、粘度が低いためポリッシャーで使用したときに飛び散りやすいデメリットがあります。
■ペーストタイプ
やや研磨剤の粒子が大きめの場合が多く、コンパウンドが流れ落ちることがないのでボディサイドや下側の部分を手作業で行う場合に適しています。
粘度が高いのでポリッシャーで使用しても飛び散りにくい特徴があります。また、内容量が少ないものが多いので1点あたりの価格が安いのがメリットとして上げられます。
ペーストタイプのデメリットは下記の2点。
■伸びが悪い
ペーストタイプは伸びが悪いため、広範囲に傷には向いていません。
粘度が高いため均一に伸ばすのが難しく、ペーストタイプのコンパウンドの扱いに慣れていないと磨きムラができてしまうこともあります。
■開封後の長期保存ができない
比較的に固まりやすいため、封を開けてしまうと長期保存がききません。
■コンパウンドの粒子の粗さ
そして、紙やすりにも目の粗さがあるように、コンパウンドにも粒子の大きさが違う種類が多く存在します。
目が粗いものほど削る力は高く、細かい目ほど削る力は弱くなります。
■中目
非常に研磨力が強いため、研磨というよりも塗装舗装に近いコンパウンドです。
磨き傷が残りやすいので素人で使うのは難しい種類と言えます。
よほど、大きな傷があるときのみ使用をし、使用する際には磨き過ぎないよう十分な注意が必要です。
■細目
深い洗車キズやウォータースポットなど、比較的荒い傷を研磨したいときに利用します。粒子が荒い分、磨き傷が入りやすいので注意が必要です。
また、鳥のフンによる塗装のシミの除去にも適しています。
■極細目~微粒子
白、シルバー、ライトブルー、ライトブラウン、イエロー、ライトグリーンなど淡色カラーの仕上げとして多く利用されます。
比較的浅い洗車キズの研磨や、水垢などの除去などに使用されます。
コンパウンドは様々な種類がありますが、もっとも商品ラインアップが多いのは細目コンパウンドになります。
車両の傷や状態、作業内容によって使用するコンパウンドの種類は違うので車の状態をしっかりと把握してなにを使うかを判断しましょう。
■水性・水溶性・油溶性コンパウンド

コンパウンドの種類は、水性・水溶性・油溶性に分けられます。
水性と水溶性のコンパウンドは削る力が高いため、作業効率が良いのが特徴ですが、その分研磨カスがでやすいデメリットがあります。
油溶性は削る力は弱いため、塗装を傷つけずに作業することが可能です。
また、油溶性のコンパウンドはシリコンやワックスなどツヤ出し剤や保護剤が配合されているものもあるため、キズの周辺を削ってなめらかにするコンパウンドの成分と、キズの凹んだ部分を埋める成分が含まれているので「削る作業」と「埋める作業」の2つの作業が同時に行うことができます。
艶だしでキズを埋めた部分は、根本的な傷の研磨になっていないので、時間が経過するとキズがまた出てきてしまいます。
【事前準備】コンパウンド以外にもこれが必要!
コンパウンド作業をする前に必ず行ってほしい作業が「洗車」です。
車には、目に見えないチリやゴミなどがたくさん付着しています。
この汚れは泥などの水性の汚れや、オイルなどの油性の汚れ、微粒な石やほこりなど色々な種類の汚れがたくさん付いています。
このような汚れが付いたまま、コンパウンドで磨いてしまうと、車に付着した汚れと一緒に磨くことになるため新たなキズが付いてしまう原因にもつながります。
そのため、コンパウンドを使用する前にしっかり洗車を行いましょう。
洗車機でもOKですが、その場合はシャンプー洗車を選択してください。
手洗い洗車を行う場合は、曇りの日か太陽の出ていない早朝・夕方に行うのがベストです。
洗う順番は上から、
天井→窓ガラス→ボンネット→トランク→サイド→バンパー→タイヤ
この順番で洗車するようにしましょう。
■保水性の高いスポンジを用意する
コンパウンドを粒子の大きさなどで使いわけても、磨く際に使用するスポンジが合っていないと効果が発揮されません。
基本的に、コンパウンドを使用する際には柔らかく保湿性が高いスポンジを利用することでムダなキズを付けずに済むと言われています。
多く使用さあれているのが、天然パルプなどを原材料にした“セルロース系”や、ソフトタッチで多孔質体の“PVAファーム”など保水性の高いものを選ぶのがベスト。
ただし、セルロース系のスポンジは乾燥してしまうと、非常に固くなってしまうので使用する際は、十分な水に浸してから使いましょう。

■コンパウンドが使える傷かチェックする
コンパウンドが使える傷は「クリア層」にできてしまったキズのみです。
クリア層のキズの目安は
爪で塗装面をなぞってもほとんど爪が引っかからない
水をかけるとキズが消えてみえる
他の車や物にこすった相手方の塗装が付着している
ワックスがけ洗車でのこまかいキズ
また、もともとの塗装の色が薄くなったキズも、カラー層でとどまっているため、綺麗に消すことは難しくてもコンパウンドで目立たなくなる可能性が高いです。
コンパウンドが使えない傷は、凹みがないすり傷でも、白やグレーなど元々の塗装の色と違う色が出ているキズはコンパウンドで直すことはできません。
コンパウンドで研磨すればするほど、悪化してしまうので注意が必要です。
カラー層よりも深い下地層まで達してしまった場合はタッチペンや板金塗装で色を加える必要があるため専門業者へ板金修理を依頼するようにしましょう。
コンパウンドの使い方
コンパウンドは研磨する作業のため、熱は大敵です。コンパウンドを使用する場合は、日陰or屋内で行うのがベストです。
また、コンパウンド前に車のボディに熱をもっているようであれば冷ましてから作業を始めましょう。
■1. スポンジを水で濡らし絞る
コンパウンドの最大の敵“摩擦熱”を防ぐための大切な作業です。
熱をもってしまったコンパウンドは乾いて切削性が高くなるのを防ぐため十分な水を含めたスポンジを使用します。
セルロース系のスポンジは乾くと固くなってしまうので、しっかりと水に浸してから、水が流れてこない程度に固く絞ります。
■2. コンパウンドをスポンジに取る
キズを落とす目的でコンパウンドを使用する場合は、できるだけ粒子の細かいコンパウンドを使用するようにしましょう。
最初に使用するのは“極細
”や“鏡面仕上げ用”などがオススメです。
粒子が細かいコンパウンドを試してみて様子を見ながら荒い粒子のコンパウンドへ変えていきます。
塗るコンパウンドの量は小指の先ほど。多すぎると塗装にシミが残る可能性があるので、コンパウンドに慣れていない方ほど少量ずつ使うようにしてください。
■3. コンパウンドを傷のあるポイントにならす
スポンジに付着させたコンパウンドをキズのあるポイントに軽く押し付けます。そのまま、数回ポンポンと叩いて均等にならしていきます。
この作業を行うことでコンパウンドが均等に付着します。
■4. コンパウンドで車体を磨いていく
コンパウンドを塗布した箇所を磨いていきますが、このときキズと平行に磨いていきます。
コンパウンドによるキズが一方向に集中してしまうと逆に目立ちやすくなるため、時おり横や縦などの動きを混ぜることも大切です。
このときに、円を描くように磨いてしまうとキズを付けてしまったり仕上げにムラができてしまうので、キズ周辺を優しく擦りながらキズ部分を強めにこするようにしましょう。
■5. コンパウンドを拭き取る
キズが見えないなった段階でウエスなど柔らかい布でコンパウンドを優しくふき取っていきます。
この時もキズに対して平行にふき取るようにしましょう

まとめ
車のすり傷に、自分でボディ補修をすることができるコンパウンドをご紹介しました。
板金塗装を頼むと数十万もする、キズの補修がコンパウンドを使用すれば数千円で済むので、コストパフォーマンスが良いのも魅力的ですよね。
愛車をコンパウンドで補修する場合は“コンパウンドの「選び方:が非常に重要なポイントとなりますので、車のキズの深さをしっかりとチェックしてコンパウンドを選ぶようにしましょう。