ディアマンテとは? 流れゆく時を見つめながら
ディアマンテという車の意味をご存知でしょうか? ディアマンテとはスペイン語で「ダイヤモンド」という意味があります。
当初のキャッチコピー「あの車とは違う。ファーストミディアムカー宣言」「この車がミディアムカーを変えた」からも分かるように、いままでにないリッチでワイドな車が誕生しました。
ディアマンテは発売開始から半年で3万台の売上を記録し、5年間で13万台以上の売上を記録する大ヒット作となり、1990年~1991年のカーオブザイヤーを受賞しています。
■庶民が手にできる高級車「ディアマンテ」
好景気の時代(1990年)において、2000年への期待などの盛り上がりもあり、人々の意識がハイテンションになっている時代がありました。そんな時代に高級車の中でも手が届きやすい「庶民でも手の届く高級車」が登場したのです。
それが三菱の「ディアマンテ」です。ディアマンテの登場前夜の時期には、税制の改正があり、3ナンバー車が身近なものとなったところにディアマンテは登場しました。3ナンバーサイズのボディに快適装備で、尚且つクラウンよりもお手頃な価格は魅力的に見えたことでしょう。
このようにディアマンテが登場したのは、1990年のバブル景気の真っ只中だったため、高級志向の人々の要求に応える形で景気にうまく乗った形で大ヒットしたのです。
ディアマンテ登場の前年(1989年)には消費税が導入されたことで自動車税も改定されました。これにより、2,500㏄未満の3ナンバーの自動車税が激減(81,500円から45,000円)したことと、3,000㏄未満の自動車税も激減(81,500円から51,000円)にそれぞれなったため、3ナンバー車の売れ行きが急上昇したのです。
3ナンバー車でも排気量によっては税金が安く抑えられる時代に突入したことと、バブル景気という3ナンバー車にとって強烈な追い風が吹いた結果といえるでしょう。
ディアマンテにとって幸運であったのは、ライバル車(トヨタ マークⅡ、日産 ローレル)が3ナンバーサイズとして売り出されたのが遅かったことです。
それ以前にもマークⅡやローレルは、2.5Lや3.0Lのグレード車を販売していましたが、本格的にはマークⅡが1992年、ローレルが1993年になっての発売だったことを考えると、ディアマンテがライバルに先駆けてワイドボディ化に舵を切ったことは、三菱の先手必勝の一手だったといえるかも知れません。
三菱の車がすごい勢いで売れることは珍しかったため、当事の三菱も驚いたはずです。
■ディアマンテの血統と兄弟車
三菱 ギャランGTO
ディアマンテはBMWのコピーといわれることも多くありました。しかし、BMWというよりも顔つきを見ると、ギャランの血統を受け継ぎながらもより、引き締まった表情になったということが分かるはずです。
ディアマンテには、あまり知られていませんが「シグマ」という兄弟がいます。当時は正統派のセダンとして登場していたのですが、ディアマンテの勢いがありすぎて脚光を浴びることがなかったのです。
■時代とともに客層が変わる
ディアマンテが登場してから5年後、モデルチェンジ後には勢いはなくなっていました。庶民が手の届く高級車としての位置づけは相変わらずあったのですが、世の中が変化したからです。
バブル経済のハイテンションの人々の高揚した雰囲気が収まってしまうと、いくら割安とはいえ高級車であることに変わりはない「高嶺の花」に手が届かなくなってしまったのです。
初代のディアマンテが充分に人々の心を掴み、役割を果たしてきただけに、ディアマンテ2代目の仕事は残されていなかったというべきかも知れません。
■ディアマンテと三菱自動車の信頼問題
三菱自動車は、2000年にリコール隠しが発覚し、本社が強制捜査を受けることに発展しました。その後に、リコール隠しが原因といえる死亡事故も発生して三菱自動車の信頼がなくなってしまったことがあります。
さらに2005年には本社の赤字幅が拡大し、資本提携していたダイムラーにも提携を打ち切られたことで三菱自動車の販売台数は激変し、ディアマンテも2005年に15年の歴史に幕を閉じることになります。
確かに時代の流れがハイブリッドやミニバンへと移り変わった影響もあるのですが、庶民が手にできる高級車ディアマンテの幕切れには 哀しい気持ちになる方も多くいたはずです。
2016年には、長年にわたる三菱自動車の燃費不正問題が発覚しました。1991年頃から燃費データを高く設定する偽装をしていたことが発表されたのです。ディアマンテが大ヒットした時期にも燃費偽装がされていたことになります。
現在では街中で三菱自動車のディアマンテを見かける機会が少なくなりましたが、日本のミディアムカーを変えたことは事実です。この魅力的なカッコイイ車が三菱自動車に存在していたことを記憶に残しておきたいものです。
■ディアマンテのボディサイズと車内の魅力
ディアマンテのボディサイズは、全長4,740㎜×全幅1,775㎜×全高1,420㎜で、排気量は2972㏄となっています。現在からすれば、全幅が1,800㎜を超えるものもあるため控えめに感じますが、当時としては大柄な車でした。
ディアマンテのワイドボディによる車内の広さはFFの恩恵と言えます。また、ドライバーに合わせてさまざまなポジションを自動調整してくれる「三菱インテリジェントコクピットシステム」を採用していることは魅力的でした。
三菱インテリジェントコクピットシステムとは、シート位置やステアリングの位置、ルームミラーやドアミラーの角度を自動調節する世界初の技術です。
それ以外にもテレビやナビゲーションなどをセンターコンソールのCRTに表示する「三菱マルチコミュニケーションシステム」なども採用された傑作がディアマンテだったのです。
ディアマンテの中古車情報 ~評価・燃費と価格相場~
ディアマンテの中古車情報(全国)を見ていくと、2018年3月現在の価格相場は平均24.7万円(価格帯24万円~46.2万円)となっています。
◎ディアマンテの評価は?
ディアマンテの良い点をあげると、乗り心地やデザイン性、特に他の3ナンバーに比べてコストパフォーマンスが高いことがあげられます。
ディアマンテの評価は、下記のように比較的高くなっています。
・デザイン:5
・走行性:4
・居住性:5
・積載性:5
・運転のしやすさ:4
・維持費:4
■デザイン
デザインはBMWを彷彿とさせる端正なフロントマスクで批判もあったのですが、顔つきが気に入っている人も多くいます。しなやかで伸びのあるスタイリッシュなフォルムが高級車が欲しいと願っている人々の心を掴んだといえるでしょう。
■走行性
比較的車重が軽いことから加速が良く、高速走行時の安定性が高いといえます。試乗してみると分かるのですが、静かで乗り心地がよく加速がスムーズである事には驚くことでしょう。
■居住性
ディアマンテは、車室内が広いため圧迫感を感じることがなく、視界もよく快適な居住性があります。乗り降りもしやすく不便を感じることはないといえます。FFのため後部座席も広いところも利点の1つです。
■積載性
トランクは内部のでっぱり部分が小さく、ゴルフバックを4個入れることができるため、大きな荷物を載せやすい特徴があります。
■運転のしやすさ
運転のしやすさで気になるところは「小回りが利きづらい」という点です。また、ドレスアップなどをする方には、アフターパーツが比較的少ない事が気になる点といえます。
■維持費
自家用自動車税額(年間)において、2.5L~3.0L以下は51,000円となっています。また、ディアマンテの車検費用の総額予想では76,530円となっており、場合によってはそれ以上のコストが掛かることがあります。
■ディアマンテの燃費は?
ディアマンテは、比較的大きなセダンにも関わらず都心の利用でもリッター9km程、走ります。高速道路ではリッター14km程度まで燃費が伸びることもあります。
しかし、混んでいる道路を日常的に走ると燃費が悪いという評価もあります。
■ディアマンテだけではない「ワゴンタイプのモデル」とは?
1993年3月にマグナワゴンの後継とし誕生したディアマンテワゴンは、豪州アデレードのオーストラリア三菱で製造され、日本に輸入されているラージサイズのステーションワゴンです。
日本向けにフロントフェイスを上級セダン(ディアマンテ)に変更し、リアサスペンションはカーゴスペースと荷重を考慮し、5リンク式を採用しています。エンジンは、マグナワゴンの上級仕様であるV6・3L SOHCを搭載し、最高165馬力を発揮しています。
ディアマンテワゴンの標準装備は、
・ABS
・前席エアバッグ
・シートベルトプリテンショナー
・アルミホイール
となっており、1997年10月~2001年12月生産モデルは、ボディが大きくなりラゲージスペースが拡大しています。
ディアマンテとディアマンテワゴン ~カタログ情報~
■ディアマンテは、電子デバイス満載のセダン
ディアマンテ セダンは三菱初の3ナンバーボディを採用したものです。2代目からは希薄燃焼方式を採用し、新開発2.5LのV6リーンバーンMVVエンジンを搭載しています。その他、無鉛プレミアムガソリン仕様の2.5LのV6と3LのV6 MIVECを用意されていました。
・エンジン内の点火システム
・燃焼噴射システム
・可変吸気システム
などの装備も電子制御され、
・電子制御4速AT
・電子制御サスペンション
・4WS
など、最新のテクノロジーを搭載し、スタイリッシュなだけではなく、走りを充分に楽しめる車となっています。
ミッションは下記二種類があります。
・4AT
・5AT
駆動方式は、3LのMIVECがFFのみなのですが、他のグレードは4WD(アクティブ・フォー・システム)が選べます。また、クルーズコントロール(先行者と距離をレーダーで計測するもの)を行うプレビューディスタンスコントロールも採用されています。
1993年にはマイナーチェンジして、廃価グレードのEシリーズをベースに「エスパーダ」シリーズを発売しています。
まとめ
大ヒットした初代ディアマンテは、時代の流れとともに同種の車が各社から出たことで個性的な車とは言えなくなってきました。現在ではSUVやハイブリッド、ミニバンなどのブームの中でいつしか忘れられた存在になっています。しかし、時代の強烈な流れ「面白い時代」の変化があったタイミングで登場した初代ディアマンテの大ヒットは間違いなく事実です。初代ディアマンテこそ「バブル時代を象徴している愛された車」だったと言えるでしょう。