マツダの画期的エンジン・スカイアクティブXとは?
スカイアクティブ Xというのは、マツダが開発しているガソリンエンジンの名称の事です。スカイアクティブテクノロジーの一環として、新しい技術として開発されています。世界で初めて、予混合圧縮着火を実用化したガソリンエンジンとなります。
そもそもスカイアクティブテクノロジーというのは、2010年にマツダが発表した新世代技術のことで、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、オートマチックトランスミッション、マニュアルトランスミッション、ボディ、シャシーと車に関する多くの部分を新開発しています。
従来の自動車開発では、それぞれのコンポーネントの設計時期が異なるので、理想的な構造や設計をすることが難しかったのです。しかし包括的に開発を進めることで、新技術をより開発しやすくなります。
簡単に説明をすると、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンのメリットを組み合わせたのがスカイアクティブ Xという技術です。ガソリンエンジンのパワーと環境性能、さらにディーゼルエンジンの低燃費と高トルクを実現する技術です。詳しい点を次で見ていきます。
■スカイアクティブ Xの技術とは?
これまでのスカイアクティブテクノロジーでは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンシリーズもありましたが、スカイアクティブ Xでもマツダらしいマツダの技術を体現しています。
スカイアクティブ XではHCCI(Homogeneous-Charge Compression Ignition:予混合圧縮着火)という構造を持ちます。これはガソリンエンジンでありながらも、ディーゼルエンジンの点火機構を持っているエンジンです。
ディーゼルエンジンとガソリンエンジンは、自動車用のエンジンとして19世紀に開発されてから世界で使われています。しかし基本的な着火原理は、ガソリンエンジンは火花で着火し、ディーゼルエンジンは圧縮時の自己着火という違いがあります。
2つのエンジンの特徴を活かすこの方法は、実は長年研究されてきたのですが、制御が難しく実用化まではいたっていませんでした。ガソリンで自己着火をするのが難しいという特性をコントロールする必要がある上に、ノッキングが起こるという課題も克服する必要がありました。
マツダは2つの課題をクリアして、実用化するに至りました。スカイアクティブ Xという技術は、ガソリンエンジンでありながらも、ガソリンエンジンの弱点をカバーできる期待の技術です。
マツダ SKYACTIV-X はこれまでのエンジンと何が違うのか…「HCCI」実用化、なぜできた? | レスポンス(Response.jp)
https://response.jp/article/2017/10/11/300894.htmlマツダの「SKYACTIV-X」の発表は、世界の自動車メーカーを驚かせたに違いない。エンジン技術者たちの永年の夢であった、ガソリンエンジンでの予混合圧縮着火(HCCI)を、実用化の水準へ持ち込んだからである。
■マツダのスカイアクティブ Xで改善される点とは
ガソリンを燃料としているので、排気ガス浄化もしやすいというメリットもあるのです。
スカイアクティブ Xでは、これまでのガソリンエンジンとディーゼルエンジンのデメリットをカバーできるエンジンとなります。ガソリンエンジンでは、燃費の面でディーゼルエンジンに劣るというデメリットがありました。熱効率の面で、高い爆発パワーを持つディーゼルエンジンの方が良いので、車の燃費もディーゼルエンジンの方が良いという特性があります。
また低速トルクも、爆発時のパワーの大きさからディーゼルエンジンの方が良いという特徴があります。ガソリンエンジンもディーゼルエンジンもレシプロエンジンで、シリンダー内のピストンで空気と燃料を混合し圧縮することで、爆発を起こし出力を得ます。
この時のパワーがディーゼルエンジンの方が大きいので、燃費が良いという仕組みだったのですが、スカイアクティブ Xの場合には、ディーゼルエンジンの様に着火するので、燃費の向上が期待できます。
またディーゼルエンジンの場合には、排気ガス浄化を徹底する必要がありますが、ガソリンを燃料としているので、排気ガス浄化もしやすいというメリットもあるのです。まさにガソリンエンジンのデメリットを、ディーゼルエンジンの着火方式でカバーしている技術です。
■通常の着火との違い
通常の着火方式との違いを理解するのに、ガソリンエンジンの通常の着火方式を見てみましょう。
ガソリンエンジンの場合は、シリンダーに空気が入る前に、燃料と空気を混合させます。混合気がシリンダーに入ってから、点火プラグによって爆発が起こります。すでに混合気の状態でシリンダーに入ってきているので、火種があるといつでも発火する状態になっています。
最近では、混合気を取り込むほかにも、直噴エンジンというものも採用されているモデルも。直噴エンジンの場合は、ディーゼルエンジンの様にシリンダーに直接燃料を噴射します。吸気から圧縮をするタイミングで、霧状の燃料を噴射し、点火プラグによって点火をするのです。
いずれにしても、ガソリンエンジンの場合には、点火プラグによって着火するという点がありました。しかしスカイアクティブ Xの場合には、ベースとなっているのが自然着火ということになります。
スカイアクティブ Xでは完全に自然着火ではないものの、ディーゼルエンジンと同じように自然着火による燃焼が可能となっています。ガソリンエンジンの場合には、スパークプラグで点火した火種によって、燃え広がるという燃焼方式です。
しかしスカイアクティブ Xは、SPCCIという方式を採用し、スパークプラグで点火タイミングをコントロールしながらも、混合気が自己着火するという仕組みです。スパークプラグを使っているのですが、燃え広がっていく通常の燃焼方式と、混合気全体が自己着火する方式という違いがあります。
ディーゼル並みの燃費が魅力
従来のガソリンエンジンと比較をすると、ディーゼルエンジン並みの燃費を期待することができるのがスカイアクティブ Xの技術です。従来のエンジンと比較をすると、低燃費率域が広くなるので、効率の良い運転が可能になります。
低燃費になる域が広くなることは、効率の良いギア比選択が可能となり、10年前のエンジンと比較をすると35%から45%ほどの燃費改善となっています。近年のスカイアクティブ Gのエンジンと比較をしても、20%から30%の改善が見込まれているので、やはり実燃費はディーゼルエンジンと変わらないでしょう。
■実用化に向けて苦労した点
スカイアクティブ X
ガソリンエンジンの場合には、圧縮比を高くするのが難しくなっていました。内燃機関の場合には、ピストンでガスを圧縮する比率を高くすると効率が高くなるという傾向があります。しかしガソリンエンジンの場合には、圧縮比を高くすると、ノッキングという異常燃焼が起こります。
ディーゼルエンジンの場合には、軽油を燃料とするので、発火のタイミングをコントロールしやすいのです。しかしガソリンエンジンは、圧縮比を高くするとノッキングを起こします。自然着火をするためには、圧縮比を高くする必要があるという矛盾が存在していました。
スカイアクティブ Xはノッキングをコントロールするために、高負荷時には点火を行うことにしました。これにより、ノッキングを防ぎ、かつ自然着火の時のメリットを活かすことができるようになります。
スカイアクティブ X搭載 マツダ3誕生
マツダ3 スカイアクティブ
マツダは2019年5月24日に日本国内で販売開始されたマツダ3に、11月、スカイアクティブ X搭載車を追加設定しました。
スカイアクティブ Xには、マイルドハイブリッドを活用し、アイドリングストップからのエンジン再始動と、シフトアップの変速時にエンジンを素早く適切な回転数へ下げる回生の活用が行われることにより、滑らかな速度の伸びを体験することができます。
■マツダ3のおすすめポイントは?
・新型のシャシー
マツダが掲げている人間中心の発想を実現するために、バランス保持能力を発揮できる状態が理想になると定義しています。それで新型MAZDA3では、シャシーやシートを最適化しています。
開発を進めることにより、バケットシート並みのホールド感を与え、運転時も歩行時と同じ自然な姿勢を維持することができるようになっているのが特徴です。
・i-ACTIV AWDの進化
新型MAZDA3では、FFの他にも四輪駆動のモデルもラインアップしています。四輪駆動で採用されるのは、i-ACTIVと呼ばれる電子制御4WDシステムです。
・G-ベクタリングコントロールプラス
エンジン制御によって、車体の姿勢を安定させるG-ベクタリングコントロールはマツダ独自の技術です。コーナリングの際にリアが滑る確率を抑えてくれる技術です。
まとめ
マツダが掲げている新技術のスカイアクティブ Xは、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの良い部分をミックスさせられる期待の技術です。新型MAZDA3に搭載されることが決定されていますし、今後のモデルにも搭載され、主力エンジンになっていくことが予想されます。
ハイブリッドやEVの自動車も多数販売されていますが、内燃機関のエンジンも開発されています。マツダが開発したクリーンディーゼルの技術を活かしたより環境に優しいエンジンとして、新しい時代を作るエンジンになることでしょう。MAZDA3を含め、これからのマツダの新型モデルに注目していきましょう。