ロータリーエンジンとは
マツダ コスモスポーツ
ロータリーエンジンの起源は、ドイツのNSU社という自動車会社で、従来のレシプロエンジンと違い、回転運動の容積変化によってエネルギーを生み出すエンジンです。
ロータリーエンジン自体の開発は1950年代頃から欧州で進められていて、フランスのシトロエン社やロシアのアフトヴァース社もロータリーエンジン搭載車を販売していましたが、いずれも経営がうまくいかず、量産には至りませんでした。
1960年代初頭、当時マツダの前身となる東洋工業の松田恒次社長が「会社が生き残るためには、他社が真似のできないオンリーワンの独自技術が必要だ」と、数多あるロータリーエンジンの方式の中から、「バンケル・ロータリーエンジン」を選択しました。
世界の名だたる自動車メーカーが成し得なかったロータリーエンジンを実現させ、世に送り出したのがマツダです。これにより、世界に再びロータリーエンジン旋風を起こしました。
その独特の回転フィールやパワー感などで今でも多くのファンを魅了し続けるロータリーエンジン。残念ながら現在では2012年にマツダ RX-8の生産終了と共に、市販車からロータリーエンジン搭載車は消滅してしまっています。
しかし、マツダは今でもロータリーエンジンの研究開発を継続をアナウンスしており、復活の日を待ち望む人も少なくありません。
■ロータリーエンジンとレシプロエンジンの違い
ロータリーエンジンとレシプロエンジンの一番の違いは、レシプロエンジンが往復動機構による容積変化でエネルギーを生み出すのエンジンなのに対し、ロータリーエンジンは回転動機構による容積変化を利用するエンジンであるということ。また、吸排気バルブや、これを開閉するカムシャフトの役割をローター自体が担うことにより、高効率なおかつ部品数が少ないという点も挙げられます。
生産が中止になった理由
走行性能的には魅力の多いロータリーエンジンではありますが、レシプロエンジンに比べて燃費の悪さや排出ガスの面から自動車税が高く、現行のエコカーブームに逆行する部分が多く販売数が低迷していしまったことが理由のひとつといえるでしょう。
また、エンジンのメンテナンスが難しく、しっかりメンテナンスをしないとすぐにトラブルが出てしまうという理由もあります。メンテナンスフリーの車を求める方が多い現代では、熱狂的なファン以外にはなかなか取扱いづらい車になってしまったのが原因なもしれません。
ロータリーエンジンの仕組み
ロータリーエンジンは、エキセントリックシャフトと呼ばれる、中心に三角形の形をしたローターを組み合わせて出来ています。
ロータリーエンジンはレシプロエンジンに比べ圧倒的に排気量が少なく、燃焼効率がいいといわれています。
これは、レシプロエンジンが「吸気・圧縮・爆発膨張・排気」のサイクルを順にこなしていくのに対して、ロータリーエンジンはローターによって区切られた3つの空間で一連のサイクルを同時並行で効率よく一気にこなしているためです。つまり、ロータリーエンジンが1回転で得られる爆発によるエネルギーは、同排気量のレシプロエンジンの理論上3倍あるということになります。
しかし、この3つの空間を密閉しているアペックスシールという部分が回転するたびに異常に磨耗してしまい、すぐに使い物にならなくなってしまったのです。
この悪魔の爪痕と呼ばれる問題も、技術者達の尽力によって、特に日本カーボンによる高強度カーボン材のパラグラファイトによって、解決されるに至りました。
ロータリーエンジンのメリット・デメリット
実際に運転した人にしかわからない独特の気持ちよさが車好きたちを虜にしているロータリーエンジン。メリットとデメリットはどんなものがあるのでしょう。
■メリット
多くありますが、メリットをまとめると以下のようになります。
・ピストン燃焼と比べてと燃焼効率が2倍なので、高出力
・出力の割に部品の数が少なく、コンパクト
・トルク変動が小さく、エンジン回転が非常に滑らか
・アクセルレスポンスの良さ
・エンジンに振動がないため、搭乗者が振動を感じない(低振動、低騒音)
レシプロエンジンでは、ピストンの上下運動を回転運動へと変換しているので、どうしても上下の振動が出やすくなりますが、そもそもが回転運動であるロータリーエンジンでは振動が極めて小さいので、結果乗り心地よくなります。
■デメリット
大きく二つのデメリットが存在します。
・燃費が悪い
・排ガス問題
低回転域での燃焼が安定しないので、トルクがなく、排出ガスに未燃ガス(HC)が多く含まれてしまう。
他にも
・低速トルクで走行した際の効率の悪さ
・燃焼室の面積が大きいので、それに応じた大型の冷却装置が必要になる
エンジン音が静かで最高速が出やすいのは魅力的ですが、買い物程度の街乗りにのみという方にはそんなにメリットがないように感じるかもしれません。
ロータリーエンジンは燃費が悪い
ロータリーエンジンのユーザーとしての最大のデメリットは燃費の悪さと言われています。
これは、低回転のトルクがないので、燃焼室が回転しながら位置を変えるため点火プラグと混合気の距離が離れ、ガソリンの点火が上手くいかなくなってしまうため。これにより、低速域や加速時の燃費が悪くなってしまいます。
今後、ロータリーエンジンは復活するのか?
ロータリーエンジン搭載のEV
2015年、第44回東京モーターショーに出展されたコンセプトカーが「RX-VISION」。マツダファンのみならず大いに盛り上がりました。「RX-VISION」はその名の通り、ロータリーエンジン搭載を想定したスポーツカーで、ロータリーエンジンなしでは成立しないことが窺える、現代のモデルとしては異様なほど低いフロントノーズに期待も高まりました。
NSUを傘下に持つVWグループのアウディは、2010年のジュネーブモーターショーでロータリーエンジンを発電用エンジンとして搭載した「A1 e-tron」をコンセプトカーとして出展していることから、現時点で一番復活の可能性が高いのは、スポーツカーユニットではなく、レンジエクステンダー用の発電エンジンとしての採用と言われています。
ロータリーエンジンは低速域や加速時の燃費こそ悪いですが、一定の回転数で回り続けるシチュエーションは得意であり、騒音や振動が少なくコンパクトで軽量なロータリーエンジンこそ、発電用のエンジンとしては最適といえるのかもしれません。
そして、マツダとトヨタの協業が発表されたことも追い風に。すでに日産のエンジンで発電しモーターで走る「e-POWER」がヒットしていることから、トヨタが今後同様のハイブリッドシステムをリリースする可能性もおおいにあり得るでしょう。
2016年3月24日には、マツダが一気にロータリーエンジンに関する特許を出願しました。
この特許の内容は、主に燃焼室の形状を変えることによって、燃焼効率を上げ、燃費を向上させようというもの。
ここで注目すべきなのは、ロータリーエンジン関係の特許の中に気体燃料、つまり水素燃料に関する特許も出願されているということ!
これはRX-8の排ガス規制の件を考慮して、この規制をパスするために水素ロータリーエンジンの開発も視野に入っていることを表しているといえるでしょう。
マツダは以前から水素ロータリーエンジンにも力を入れており、すでに「MIRAI」を販売しているトヨタと組めば、水素インフラの拡充が加速する可能性も十分ありそうです。
まとめ
新しい情報としては、マツダは水素を使ったエンジンの開発を凍結。新たにロータリーエンジンで発電するEV開発に重点を置くようです。やはりマツダはロータリーエンジンを再び表舞台に立たせるようですね。