水平対向エンジンとは?
水平対向エンジンは数ある自動車用のエンジン形式のなかでは珍しい構造を持つエンジンで、現在では日本のスバルやドイツのポルシェしか生産していません。
スバルは、水平対向エンジンこそが最も合理的かつ理想的なエンジンと考え、長年こだわり、技術を磨き続けています。
水平対向エンジンの構造・仕組み
通称:ボクサーエンジン
水平対向エンジンとは、簡単に説明すると左右に向かい合ったピストンが水平方向に打ち合うように往復するエンジンの事です。
その様子を、ボクシングのボクサーが互いにパンチを打ち合う姿に見立てて、「ボクサー(BOXER)エンジン」と呼んでいます。
エンジンの外観形状を見るだけでは、いまいち水平対向エンジンなのか180°までバンク角度を広げたV型エンジンなのかは判別できません。
しかし内部のクランクシャフト構造が全く違い、そのエンジン特性なども大きく異なります。
V型エンジンのクランクシャフト
V型エンジンのクランクシャフトは直列式と大きく違っており、例えばV6エンジンだとシャフトに設けられた3箇所のクランクピンに2気筒ずつのコンロッドが一緒に接続されます。
Vバンクの角度によっては性能を優先するためにズラすこともありますが、基本的にはクランクピンを共用する構造がV型エンジンの特徴です。
水平対向エンジンのクランクシャフト
それに対して水平対向エンジンのクランクシャフトのクランクピンは気筒ごとに互い違いに配置されており、1気筒ずつ独立したクランクピンを持ちます。
この構造だとクランクピン同士を繋ぐジャーナルを設けないといけない関係上、クランクシャフト全長がV型エンジンのものより長く、エンジン全長が長くなります。
ですがピストンの動きが全く違うことが水平対向と180°V型のエンジン特性を決める要素であり、少し全長が延びても水平対向のほうが大きなメリットを持っています。
6気筒エンジンで考えますが、180°V型の場合は2気筒ずつのピストンが同じクランクピンに接続されますので、2つのピストンは必ず同じ方向に運動します。
3箇所でそういった動きをしますので180°V型は大きな横振動が発生することになり、擬似的な直列3気筒エンジンのようになっています。
水平対向エンジンの特徴
自動車用のピストンエンジンでは、直列型、V型、水平対向が主な形です。もっとも多い直列は、ピストンを縦一列(クランク軸方向)に並べる方法です。
V型は、1本のクランク軸に対して、シリンダをV字型に並べる方法です。こうすることで、シリンダの数が増えても、縦方向に短くすることができるので、同じだけの容積なら直列エンジンよりも多くのシリンダを詰め込むことが出来ます。
また、クランクの上死点/下死点をずらすことで回転ムラを少なく出来ます。
欠点は、ヘッドが二つに分かれるので、カム等が2セット必要になることからくるコストアップしてしまうことでしょう。
水平対向は、V型エンジンのVの角度をどんどん広げて言って、180度にしたようなものです。
■水平対向エンジンのメリット
①振動が少ない
左右のピストンが水平方向に往復する事で互いの力を打ち消しあい、通常のエンジンと比較して、振動が少なくて済みます。
通常のエンジンはピストンの運動による慣性力を軽減するため、バランスウェイトと呼ばれる重りがつけられています。
水平対向エンジンはバランスウェイトが無くても(あるいは最小限で)低振動が可能となり、低振動と低重量を両立します。
②低重心
重心が高くなりやすい傾向の他のエンジンに対して、水平対向エンジンは横に平べったい形状のため、重心が低くなります。
軽量、低重心のエンジンにより、コーナリングでの振幅を抑え、軽快で安定した走行がしやすくなります。
また、エンジンの全高が低い事により、バラエティに富んだ車体デザインが実現可能になるという強みがあります。
③衝突安全性
②で説明した通り、横に平べったい形状のため、エンジンの全高が低いので、前面衝突した際、エンジンがフロアの下に潜り込み、乗員へのダメージが軽減でき、安全性に優れています。
④高剛性
エンジン自体の長さが短いのでクランクシャフトも短く、またクランクシャフトは左右クランクケースによって、両サイドから頑丈に挟み込む構造なので、クランクケース全体の剛性が高くなります。この高い剛性が振動の少なさと耐久信頼性の向上につながっています。
⑤高出力
パッケージングのために、エンジン全幅には制限があり、ショートストロークになってしまいます。しかし、ショートストロークゆえに本来持つバランスの良さが相まって、高回転化と高出力を実現します。
■水平対向エンジンのデメリット
生産コストが高く、かつ搭載にエンジンルームの面積が必要であることがデメリットになるでしょう。
水平対向エンジンは前述した優位性を持つ一方で、部品の数が多く、排気の取り回しが複雑にならざるをえないため、生産コストが高くなるという致命的な問題があります。また、薄っぺらくて低重心であるがゆえ、横幅が広くなるので、小型車ではエンジンルームに収めるのに苦労します。
5ナンバークラスのサイズだと、排気量を拡大したり、ロングストローク化することが難しくなり、横方向に空間的な余裕がなさすぎて整備性も悪くなります。
初代や2代目レオーネなどの古い世代のスバル車のエンジンルームは、パワステやエアコンなどの補器類を収める場所の確保に苦労しています。ターボでもタービンの置き場に苦労していました。水平対向エンジンはボディにマウントするのも難しいといわれています。
水平対抗エンジン搭載のおすすめ車種3選
■BRZ
■フォレスター
■レヴォーグ
まとめ
水平対向エンジンは低重心となって車が安定します。そのためドライブ好きな方には嬉しいエンジンではないでしょうか。今後、車を選ぶ際はぜひ水平対向エンジンかどうかも考慮して選んでみてください。