自動運転のレベル分けを復習しよう
日産 スカイライン プロパイロット 2.0作動中の様子
特に日本の自動車メーカーで顕著なのですが、現状の機能で「自動運転」と謳ってしまうと、その限定的な機能を過信したドライバーによる事故があっては困るためか、積極的に宣伝されていないような印象もある自動運転。
しかし、現状の「前走車との車間距離を保つ」アダプティブクルーズコントロールや、「車線はみ出しを防ぐ」レーンキープアシストなどの機能はすでに、自動運転に該当していることはご存知でしたか?
世界的に、自動運転に関しては6段階でのレベル分けが一般的となっています。それぞれのクラス分けについて見ていきましょう。
■レベル0:警告のみ、もはや少数派?
ダイハツ ミライース 車線逸脱警報機能
ドライバーが全ての運転操作を常に実行する、基本的な自動車が分類されるのがレベル0。
車線逸脱しそうな場面や、障害物へ衝突しそうな場面を車が検知して警告をする場合でも、ハンドル操作アシストやブレーキ制御などでそれらを防がない場合はレベル0に分類されます。
自動運転機能を一切備えていないか、予防安全装備としてもかなり基本的な機能のみ備えている車がレベル0にあたり、現在では段々ラインナップが減ってきている段階ですね。
■レベル1:アシストはするが常に手はハンドルへ、前方も注視が必要!
日産 キックス インテリジェントLI/LDW
レベル0に対して、限定的な場面・条件のもとで車がアクセル/ブレーキ操作アシストやハンドル操作アシストを行う場合はレベル1に該当します。具体的には、前走車との車間距離を維持しながらついていくアダプティブクルーズコントロールや、車線逸脱を防止するレーンキープアシストなどが該当します。
近年軽自動車などでも採用が進んでいるアダプティブクルーズコントロールなどの機能は既にレベル1相当に分類されるということで、まだまだレベル分けとしては低い段階が始まったばかりではありますが、すでに自動運転時代には突入しているということになりますね。
無論、車が操作に介入できるのは、前走車を認識していたり、車線を認識していたりといった限定的場面に限られるので、ドライバーは常に車両周辺に気を配って、ハンドルを握り続けている必要があります。
たとえレベル1の自動運転技術でも、ロングドライブなどでの疲労軽減につながることは多くの方が実感していらっしゃることですよね。軽自動車など廉価な車でも標準装備が増えてきているのは、喜ばしいことです。
■レベル2:「ハンズオフ」が実現、でもドライバーは前方注視が必要
スバル 新型レヴォーグ アイサイトX ハンズオフアシスト
レベル1でご紹介したアダプティブクルーズコントロールに、連続的に車線維持を支援するアシスト機能などを同時に組み合わせて実行できる車や、そこから一歩進んで特定の条件下では車任せにできるようになったものが、レベル2に相当します。
常にハンドルを握っていなければいけないレベル1から、より高機能化が進んだもので、まだまだドライバーによる安全確認は常時必要ですが、最近よく耳にする「ハンズオフ」機能も実現し始められています。
ハンズオフとは、主に高速道路などの特定の条件を満たした場面では、ハンドルから手を離し、ペダル操作もハンドル操作も車に任せられることで、国産車では日産 スカイラインのプロパイロット 2.0が発売されているほか、スバル 新型レヴォーグのアイサイトXでも実現されます。
しかし、このハンズオフという言葉も厄介なもので、ドライバーはハンドルから手を離すことはできるものの、即座にハンドル操作ができる位置に保っておくことが求められています。これは、不意にシステムが運転支援を中止してしまう可能性が十分にあるため。
レベル2相当の自動運転システムでは、薄れた車線や強烈に差し込む夕日など、様々な外的要因によって運転支援が中断してしまうことも十分にあり得ますので、機械任せで走り続けられる確率はあまり高くありません。
そのため、例えば車線や前走車を車が見失ってしまった場合には大きめの警告音でドライバーに注意を促すほか、ハンズオフ運転が可能な車種では、ドライバーが前方を注視しているかを確認するカメラが備えられており、よそ見や居眠りをしてしまうとシステムが解除される仕組みがあります。
■レベル3:前方から目を離してOK、いざというときは介入が必要
アウディ A8 アウディAIトラフィックジャムパイロット
レベル3がレベル2までと大きく異なるのは、車を運転する主体が、ドライバーからついに車側に移行することです。
レベル2と同じように高速道路などの一定の条件下において、レベル3の自動運転なら運転に関する全ての操作を車が行います。
レベル4以上と異なる点は、システムが自動運転の継続が難しいと判断した場合に、ドライバーに運転操作の引き継ぎを求める点です。そのため、ドライバーは運転席に座っている必要がありますし、車側から引き継ぎを求められた際にはハンドルを握ってアクセル/ブレーキ操作をするなど対応する必要があります。
このことは、レベル3の実用性・実現性に疑問が持たれている部分で、一度操作を車任せにできるのなら、その後で急に運転操作を求められても、とっさに判断ができるかと言われると難しそうですよね。
一定の猶予を残した上でドライバーに操作を引き継ぐように設計されるものと思われますが、不意の故障や障害物などに対してどれだけ事前から予見ができるかという点で、自動車メーカー側には難しい開発が求められています。
2020年4月からは道路交通法の改正で、公道上でのレベル3自動運転車の走行が可能となってはいますが、メーカーによってはこのレベル3の自動運転の曖昧さを嫌い、現状市販されているレベル2相当の機能から、一気にレベル4の実現を目指しているところもあります。
■レベル4:もはや「運転手」が寝てもOK!特定箇所で完全自動運転
フォルクスワーゲン レベル4自動運転 公道テストカー(独・ハンブルク)
比較的まだ現実味があり、現に公道走行が始まろうとしているレベル3からさらにジャンプアップして、特定の条件下に限られるとはいえ、緊急時の対応まで車任せにできてしまうというレベル4は、まだまだ先の技術となりそうです。
レベル3自動運転車が公道を走れるようになった現時点では、たとえ自動運転車を運転中であっても車側から操作の引き継ぎを求められる場合もあることから、飲酒や居眠りなど、運転手が運転できなくなるような行動は固く禁じられていますが、レベル4の自動運転車が現実的に走り回るようになれば、レベル4自動運転が実現した条件下においてはそのような行動も可能になるよう、法律が整備されるものと思われます。
緊急時の対応だけでなく、自動運転が可能な特定条件、たとえば自動運転特区の都市などから外へ出てしまう際にはドライバーへ運転操作を引き継ぐ、ドライバーが何らかの理由で運転操作を引き継がない場合にはどこか安全な場所に駐車するなど、かなり高度な制御と判断力が求められる、レベル4の自動運転。
もはや車側だけの問題ではなく、インフラ側の整備も協調して進められて初めて実現する、高度な技術でしょう。
■レベル5:常時完全自動運転、もはやハンドルは装備不要?
アウディ AICON コンセプト(フランクフルトモーターショー2017 出展車両)
これまで登場した「特定条件下」という文言が取り外され、どんな場面、どんな状況、どんな道でも完全に車任せで自動運転が可能なのがレベル5。
もはやハンドルやペダルを乗員が操作する必要がなくなりますし、シートだって前方を向いている必要がなくなるなど、自動車の室内設計的には現在の発想を飛び越えたものが登場してくることでしょう。
自動車という移動手段の使い方自体も変革してしまいそうなインパクトがあります。
しかし、その実現のハードルはかなり高め。あらゆる場面に対応するということは、人間の運転手ですら操作の難しい凍結路面や積雪路面などの極端な気象条件に対応できなければならないだけでなく、歩行者や自転車など、道路を共有するあらゆるものや人に完璧に対応できなければなりませんし、緊急事態が発生した際の判断を車が行う必要もあります。
技術面だけでなく、法律面や倫理面での整備も全く追いついていないのが現状ですので、実現までの道のりは長く険しいものだと言えるでしょう。
なかなか実現しない自動運転・・・現状は?
キャデラック CT6 スーパークルーズ作動中の様子
ここまでご紹介してきたレベル分けでは、現在実用化されているのはレベル2相当のものとなっており、レベル3相当の機能を搭載した車の登場が待たれているのが現状でしょう。
日本での法整備が進んでいることからもわかるとおり、世界で最初にレベル3自動運転を実現しそうなのは日本の自動車メーカーというのが最新の見込みとなっており、本来であれば2020年夏の東京五輪に合わせて自動運転車のデモンストレーションが行われる予想となっていました。
アウディなど、ドイツの自動車メーカーでもレベル3相当の自動運転を実現済みと発表しているところはあるのですが、ドイツ国内での自動運転関連の法整備に手間取っており、少なくとも今年中のレベル3対応車登場が見込まれている日本メーカーが、実用化・量産化では先行するものと思われます。
具体的には、ホンダ レジェンドの改良モデルが、レベル3自動運転を実現して今年後半登場することが見込まれていますが、コロナ禍の影響もあって開発が遅れているとの観測もあり、今後に注目したいところです。
テスラ モデルX
現状での問題点は、この自動運転のレベル分けがしっかりユーザーに伝わっていない点ではないかと思われます。
ドライバーによる周辺監視と操作が求められるレベル2相当の機能しか有していない車を、より高度な自動運転と信じ込み注意不足に陥ったと思われるドライバーによる交通事故や乗員の死亡などの痛ましい事故も海外では複数例報告されているなど、ユーザーの過信もしばしば見られます。
現時点では法整備とユーザー側の意識育成が技術の発展に追いついていないのではと思えるほどに、自動運転技術は日進月歩で進化が続いていますので、たとえ自動運転技術を搭載していても、メーカー側の求める通りに、安全に車を運転することが我々ユーザーには求められていそうです。
■果たして本当にレベル5自動運転は実現するのか?
ボッシュ 自動運転車イメージ
常に自動車まかせの自動運転でどこまでも行けるレベル5自動運転の開始は、技術的には2030年代での実現が見込まれていますが、法整備、インフラ整備、実際に市販できるようにコストダウンを重ねる必要などから、2050年代以降の実現と見るのが現実的な予測かもしれません。
その頃にはもはや自動車という存在自体を切り替えるような別の交通手段が登場している可能性も考えられますが、21世紀になっても空飛ぶ車が実現しなかったように、案外現在と似たような車の形は維持されるのかもしれませんね。
現時点の技術としては運転手に緊急時の操作を求めるレベル3の実用化間近ではありますが、技術的にはレベル4もすでに実現可能で、乗員に不安を与えない制御という次の段階の開発にシフトしているとする報道も見られるなど、希望的な観測も見られますが、自動車メーカーやサプライヤーの技術レベルが進むだけでは実現ができない部分となっていますので、官民一体となっての取り組みが求められます。
まとめ
コンチネンタル 自動運転車向けデジタルコックピット イメージ
自動運転のレベル分けについてご説明してきました。現状でもひと昔前では考えられないような便利機能が実現されていますが、この先の自動車の進化が待ち遠しくなってしまいますね。
日々高度化していく自動車の進化から、これからも目が離せません。