車のエンジンがかからない原因と対処法
《画像提供:Response》
車のエンジンがかからない原因はさまざまですが、大きく分けると「操作ミス」「バッテリー関連」「燃料関連」「電気系統のトラブル」「その他の機械的な故障」の5つに分類できます。多くの場合、焦らずに原因を特定し、適切な対応を取ることで、すぐに解決できるケースもあります。
ここでは、車のエンジンがかからない主な原因と、その対処法について詳しく解説します。まずは簡単なチェックから順番に試してみることで、不必要な修理費用や時間の浪費を防ぐことができます。
■エンジンをかける手順が誤っている
エンジンがかからない原因として、意外と見落としがちなのが「基本的な操作ミス」です。特に、普段と異なる車を運転するときや、長期間運転していなかった場合などには、正しい手順を忘れてしまうことがあります。
例えば、スマートキーの車ではブレーキペダルをしっかり踏んだ状態でスタートボタンを押さないとエンジンがかからないことがあります。また、旧式の車では、キーをひねる際に一度ACC(アクセサリー)モードにしてから、ONの位置に回す必要があります。この操作を誤ると、エンジンがかからない原因になることがあります。
さらに、エンジンを始動する際には、クラッチ(MT車)やブレーキ(AT車)をしっかり踏んでいるかも確認しましょう。特にMT車では、クラッチを完全に踏み込まないとエンジンがかからない仕様になっていることが多いです。
対処法
・スマートキーの場合、ブレーキペダルをしっかり踏んでからスタートボタンを押す
・キー式の場合は、ACCモード→ON→スターターの順で回す
・AT車ならブレーキを、MT車ならクラッチをしっかり踏み込んでいるか確認する
・一度キーを抜いて、再度正しい手順でエンジンをかける
これらの基本的な操作を確認するだけで、エンジンがかかるケースも少なくありません。
■シフト操作を誤っている
AT車の場合、シフトレバーが「P(パーキング)」または「N(ニュートラル)」の位置にないとエンジンがかからない仕組みになっています。これは、安全装置として意図的に設定されているため、シフトが適切な位置にあるかどうかを確認することが重要です。
特に、急いでいるときや慣れない車を運転するときに、シフトが「D(ドライブ)」や「R(リバース)」の位置になっていると、いくらキーを回してもエンジンは始動しません。また、シフトレバーの故障や誤作動によって、実際には「P」や「N」に入っているのにセンサーが検知できない場合もあります。
対処法
・シフトが「P」または「N」に確実に入っているか確認する
・シフトレバーを一度別の位置に動かしてから、再度「P」または「N」に戻す
・シフトロック解除ボタンを押してみる(車種による)
・それでもエンジンがかからない場合は、シフトセンサーの異常を疑う
シフトの位置を確認し、正しく操作することで、エンジンがかかるケースもあります。
■ハンドルロックがかかっている
ハンドルロックとは、車の盗難防止機能の一つで、エンジンを切った状態でハンドルを強く回すとロックがかかり、キーが回らなくなる現象です。これにより、エンジンが始動できなくなることがあります。
特に、駐車時にハンドルを回しながらエンジンを切った場合や、駐車ブレーキを強くかけた後などに起こりやすいです。この場合、無理にキーを回そうとすると、キーシリンダーを壊してしまう可能性があるため注意が必要です。
対処法
・キーを差し込んだ状態で、ハンドルを左右どちらかに少し回しながらキーを回してみる
・スマートキーの場合、ブレーキを踏みながらスタートボタンを押すと解除できることがある
・ハンドルが完全にロックされている場合は、少し強めにハンドルを回しながらキーを回す
ハンドルロックが原因の場合、これらの方法で解除できることが多いので、試してみましょう
■スマートキーの電池が切れている
スマートキーを搭載した車では、キーの電池切れが原因でエンジンがかからないことがあります。スマートキーは電波を送受信して車両を制御しているため、電池が切れると認識されなくなり、エンジンが始動できなくなるのです。
スマートキーの電池は、一般的に1〜2年程度で交換が推奨されますが、使用頻度や環境によってはそれよりも早く消耗することがあります。また、電池が完全に切れる前には、反応が鈍くなったり、車がキーを認識しにくくなったりすることがあります。
対処法
・スマートキーの電池を交換する(専門店でなくコンビニなどでも入手可能)
・一部の車種では、スマートキーをエンジンスタートボタンに直接かざすことでエンジンを始動できる
・予備のスマートキーを使用してエンジンをかける
・緊急時は、メカニカルキー(物理キー)を使ってドアを開け、エンジンを始動する方法を試す
スマートキーの電池切れは、事前に予備電池を車内に備えておくことで防ぐことができます。
■燃料が切れている
燃料切れは単純な問題のように思えますが、意外と見落としやすい原因の一つです。特に燃費が良い車は、長距離運転でも頻繁に給油する必要がないため、ガソリンの残量を意識しないまま走行してしまうことがあります。
また、燃料計のセンサーが故障していて、本当は空になっているのにメーター上ではまだ残っているように表示されることもあります。
燃料切れが原因でエンジンがかからない場合、セルモーターは回るもののエンジンが始動しない状態になります。ガソリン車の場合は燃料が供給されず、ディーゼル車ではエアが噛んでしまいエンジンがかかりにくくなります。
また、寒冷地では燃料タンク内の結露が原因で燃料フィルターが凍結し、燃料供給が妨げられるケースもあります。
対処法
燃料計を確認する
普段よりメーターの減りが早いと感じた場合は燃料計の故障の可能性もあるため、給油を試してみましょう。
予備燃料を携帯する
途中給油が難しい状況になる場合には、事前に緊急用のガソリン缶の携帯を検討する。
燃料ポンプの異常を疑う
燃料が十分にあるのにエンジンがかからない場合は、燃料ポンプの故障の可能性があります。
ディーゼル車の場合はエア抜きを試す
燃料切れ後にエンジンをかける際、エア抜きをしないと始動できないことがあります。
燃料切れによるトラブルは、日ごろの給油管理や、燃料計の異常を早めに察知することで未然に防ぐことができます。
■エンジンやバッテリーの温度が冷えている
特に冬の寒い朝や寒冷地では、エンジンやバッテリーの温度が低すぎてエンジンがかかりにくくなることがあります。寒冷地仕様でないバッテリーは気温が0度以下になると性能が低下し、電圧が足りずにエンジン始動が困難になるケースも。
特にディーゼル車の場合は、燃料が凍結しやすく、燃料供給がうまくいかないことがあります
対処法
エンジンを温める
寒冷地ではエンジンブロックヒーターを使用するか、エンジンスターターを活用して事前にエンジンを温めるようにしましょう。
バッテリーの状態を確認
気温が低いとバッテリーの電圧が下がるため、バッテリーの寿命が近い場合は交換を検討しましょう。
燃料が凍結しないようにする
ディーゼル車の場合は、冬用の軽油(寒冷地仕様の燃料)を使用し、燃料添加剤を活用することで凍結が防げます。
オイルの粘度を確認
寒冷地ではエンジンオイルが固まりやすいため、低温時でもスムーズに動作する粘度の低いオイルの使用がおすすめです。
冬場のエンジン始動トラブルは、事前の準備で回避できるケースが多いため、早めに対策しておきましょう。
■バッテリー上がり・バッテリー劣化が起きている
バッテリー上がりは、車のエンジンがかからない最も一般的な原因の一つで、その原因の多くは、ライトの消し忘れや長期間の放置による放電です。
また、バッテリーの寿命は3〜5年程度とされており、劣化が進んでいると、正常な電圧を維持できず、エンジンがかかりにくくなります。
対処法
ブースターケーブルを使ってジャンプスタート
他の車のバッテリーを利用してエンジンを始動させます。
ジャンプスターターを使用する
ジャンプスターターがあれば、一人でもバッテリー上がりを解決できるため、非常時に備えて車に常備しておくのがおすすめです。
バッテリー液の確認
メンテナンスフリーのバッテリーには不用ですが、そうでない場合にバッテリー液が減っている場合は補充しましょう。
定期的にエンジンをかける
バッテリーを長持ちさせるため、長期間乗らない場合でも、週に1度はエンジンをかけるようにしましょう。
■セルモーターや電気系統が故障している
セルモーター(スターターモーター)は、エンジンを始動するために必要な部品の一つで、バッテリーから電力を受けてエンジンを回す役割を持っています。
セルモーターが故障すると、バッテリーが正常であってもエンジンがかからなくなります。また、ヒューズが切れている場合も、エンジンが動作しないことがあります。
対処法
セルモーターを軽く叩いてみる
接触不良の場合、セルモーターを軽く叩くことで一時的に動作することがあります。ただし、一時的な対処になりますので、動作したあとには整備工場やカー用品店でプロの整備士に診てもらうのがよいでしょう。
ヒューズボックスを確認する
ヒューズが切れている場合は交換しましょう。
リレーの交換を試す
スターターリレーが故障していると、セルモーターに電力が供給されないため、交換することで復旧する可能性があります。
専門業者に依頼する
セルモーター自体が故障している場合は、修理または交換が必要になるため、整備工場やオートバックスなどのカー用品店で診断を受けましょう。
セルモーターの故障は、前兆として「カチカチ音がするがエンジンがかからない」といった症状が現れることがあります。早めに異常を察知し、対策を取ることが大切です。
それでもエンジンがかからないときは
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ここまでで紹介した対処法を試してもエンジンがかからない場合、車のトラブルがより深刻な可能性があります。
セルモーターが動かない、バッテリーを交換しても改善しない、電装系がまったく反応しないなどの場合は、自力での解決が難しくなります。無理にエンジンをかけようとすると、さらに状態が悪化する恐れもあるため、適切な対応を取ることが大切です。
このような場合、JAFなどのロードサービスを呼ぶ、加入している任意保険のロードアシスタンスを利用する、最寄りのガソリンスタンドや整備工場に持ち込むなど、専門のサポートを活用しましょう。
■JAFなどロードサービスを呼ぶ
エンジンがどうしてもかからない場合、まず頼れるのがJAF(日本自動車連盟)などのロードサービスです。JAFは会員でなくても利用できますが、会員の場合は無料対応の範囲が広がるため、年会費を支払ってもメリットが大きいサービスです。
■加入している任意保険のサービス窓口に連絡する
JAF以外にも、自動車保険に加入している場合、契約している保険会社のロードサービスを利用できる可能性があります。多くの任意保険には無料のロードアシスタンスが付帯しているため、確認してみましょう。
■最寄りのガソリンスタンドや整備工場に持ち込む
JAFや保険会社のロードサービスを利用する以外に、近くのガソリンスタンドや整備工場に持ち込むのも一つの方法です。
特に、セルモーターの故障やバッテリーの交換が必要な場合は、プロの整備士に診てもらうことで確実に解決できます。より専門的な診断ができるため、自己解決できない場合は早めにプロに依頼するのが賢明です。
エンジンがかかりにくいときにやってはいけないこと
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エンジンがかからないと焦ってしまいがちですが、間違った対処をすると車にダメージを与えてしまう可能性があります。特に、エンジンがかかりにくい状況で無理な操作を続けると、バッテリーやセルモーターに負担がかかり、さらに状態が悪化することも。
ここでは、エンジンがかかりにくいときに避けるべき行動について詳しく解説します。誤った対処法を防ぐことで、修理費用の増加やさらなるトラブルを未然に防ぐことができます
■連続してセルモーターを回してしまう
エンジンがかからないとき、多くの人が繰り返しキーを回したり、スタートボタンを押したりしてしまいがちです。しかし、セルモーターを連続して動かし続けると、バッテリーの電力を急激に消費し、バッテリー上がりの原因になります。
さらに、セルモーターには耐久性の限界があり、過度に使用すると内部の部品が摩耗し、最終的に故障する恐れがあります。特に、寒冷地や冬場はバッテリーの性能が低下しやすいため、何度もセルを回すと完全に電力がなくなり、救援が必要になるケースもあります。
エンジンがかからないときには、まずは落ち着いたうえで、連続でセルを回さず、1回の操作は最大5秒程度にし、10〜15秒ほど待ってから再度試すようにしましょう。バッテリーが弱っていると感じたら外部電源を利用したり、ブースターケーブルやジャンプスターターを使うことで、バッテリーの負担を軽減できます。
セルモーターの故障を防ぐためにも、冷静に対応し、無理なエンジン始動は避けましょう。
■エンジンがかかった後に短距離で走行をやめる
エンジンがかかった後、短時間でエンジンを切ってしまうのはバッテリーにとってよくありません。特に、バッテリーが弱っている状態で短距離しか走行しないと、充電が十分に行われず、次回エンジンをかけるときにバッテリー上がりを起こすリスクが高まります。
例えば、冬の寒い朝にエンジンをかけた後、近くのコンビニに寄ってすぐにエンジンを切ってしまうと、バッテリーは充電されないまま放電されるだけになり、次回の始動時にトラブルを引き起こすことがあります。
エンジン始動後は最低でも10分以上の走行を心がけ、ある程度の距離を走行し、オルタネーター(発電機)でバッテリーを充電しましょう。どうしても短距離で走行をやめる場合には、少しアイドリングを続けるのも効果的です。
バッテリーを長持ちさせるためには、適切な充電が必要なので、できるだけ長めに走行することを心がけましょう。
■エンジンがかかった後に急発進する
エンジンがようやくかかったとき、安心してすぐにアクセルを踏み込んでしまうことも。しかし、エンジンがかかってすぐの状態では、オイルが十分に循環しておらず、急激なエンジン回転数の上昇は内部の摩耗を引き起こす可能性があります。
特に、寒い朝や気温が低い日はエンジンオイルが硬くなっており、適切に循環するまでに時間がかかります。エンジンが温まる前に急加速をすると、エンジン内部の摩擦が増え、エンジンの寿命を縮めることになります。
エンジン始動後は30秒〜1分ほどアイドリングするようにしましょう。エンジンオイルが十分に循環するまで待つことで、摩擦を軽減できます。
発進後はゆっくり加速し、エンジンが温まるまでは、急発進や急加速を控え、負荷を減らすことが重要です。
冬場はエンジンブロックヒーターを活用するなど、適切なウォームアップを行い、無理な負担をかけないことが大切です。
エンジントラブルに備えて準備しておきたいこと
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エンジンがかからないトラブルは突然発生するため、事前の備えが非常に重要です。特に、冬場や長距離移動の際は、バッテリー上がりや燃料切れなどのリスクが高まるため、しっかりと対策をしておくことで安心して運転できます。
ここでは、エンジントラブルに備えて準備しておくべきアイテムや、事前に契約しておくと便利なロードサービスについて詳しく解説します。トラブルが発生したときに落ち着いて対処できるよう、万全の準備を整えておきましょう。
■ロードサービスを契約しておく
エンジンがかからないときに最も頼れるのがロードサービスです。JAF(日本自動車連盟)や任意保険に付帯するロードアシスタンスを利用すれば、バッテリー上がりや燃料切れなどのトラブルに迅速に対応してもらえます。
ロードサービスを契約するメリット
24時間対応
夜間や休日でも救援を受けられます。
バッテリー上がりや燃料切れに対応
特に冬場はバッテリーのトラブルが多発するため、事前に加入しておくと安心です。
レッカー移動も可能
万が一の故障や事故時にも、整備工場まで車を運んでもらえます。
JAFと保険会社のサービスを併用することで、より充実したサポートを受けられます。万が一に備えて、ロードサービスの加入を検討しましょう。
■ブースターケーブルやジャンプスターターを常備する
バッテリー上がりは、エンジンがかからないトラブルの中でも特に多い原因の一つです。そのため、ブースターケーブルやジャンプスターターを車内に常備しておけば、万が一のときにもすぐ対応できます。