寒冷地仕様と標準仕様の装備の違いは?
車を購入する時に「寒冷地仕様」がオプション欄にあるのを見かけたことがある方も多いのではないでしょうか?寒冷地仕様の車と言うのは、寒い地域で車を使用するために、パーツを強化したり、オプションを装備した特別仕様車の1種です。
暖かい地域に住んでいる人が、寒冷地で車を購入する場合には聞きなれないフレーズでもありますので、どこが違うのか詳しく説明していきます。
■寒冷地仕様専用の装備が付く
標準車との違いとしては、以下の内容が挙げられます。これはどのメーカー、車種にも付いているものではなく、一般的な寒冷地仕様車の装備品です。
■スターターモーターの強化:低温で流動性の低下したエンジンオイルによる抵抗増加への対応
■コンピュータの設定変更:寒い地域では、冷間時に始動性が落ちるため、それらを向上させるための設定変更
■ワイパーモーターの強化:フロントガラスに積もった雪を退けるために、モーターを強化して雪の重みがあっても動作するようにする
■ウインドウォッシャー液の成分割合変更:ウォッシャー液の凍結防止のため
■タンクの大容量化:積雪がある地域、気温が低い地域では、フロントガラスの凍結がおこるため、ウォッシャー液を使用する機会の増加に対応
■エンジンオイルの低粘度化:低温時でもエンジンへのオイルがしっかりと循環するため
■バッテリーの大容量化:低温条件下ではバッテリー性能が低下するため、容量をアップ
■オルタネーターの大容量化:バッテリー容量増加に伴い充電量確保のため
■寒冷地用ロングライフクーラントの使用:凍結対策として-30℃対応のものに変更
■リアデフォッガーの強化:後方視認性の確保のため
■防錆性の強化:雪などの付着に起因する腐食対策
■車内暖房の強化:後席用ヒーターダクト、またはリアヒーターの追加など
寒冷地でも走れるように、それに伴って装備が異なります。フロントガラスに乗った雪を除去するためには、ワイパーを動かさなくてはなりませんが、雪が乗っていると通常の車は思うようにワイパーが動きません。
寒冷地使用の車はワイパーを動かすためのモーターが強化されており、特殊合成ゴムで作られたワイパー、ウィンターブレードを使用しています。
何よりヒーター類の装備が充実していて、フロントウィンドウに積もった雪を溶かすための熱線の装備や、ステアリングヒーター、シートヒーター、ミラーヒーターなど必要な多くの場所にヒーターが搭載されています。
■始動性向上のため、バッテリーとオルタネーターの容量が大きい
バッテリー類は寒さに弱く、状況下によっては著しく機能が低下します。それは車のバッテリーも例外ではありません。車の場合バッテリー残量が0になると、発進出来なくなるため、寒冷地仕様の車は、通常の車よりバッテリー容量が多くなっているのです。
バッテリー容量だけが増加すると、バッテリーに電気を供給するための発電が追いつかなくなるため、充電量確保のために、オルタネーターも強化されています。
■凍結や曇りを防ぐため、様々なヒーターを追加
寒冷地でなくても、冬場は車内のガラスが曇って前が見えないと言った経験をしたことがある方も多いと思います。それに加えて寒冷地では、窓ガラスが凍ったりサイドミラーが凍ったりすることが多くあるため、ドアミラーにヒーターを内蔵して凍結を防止するという機能がついているものもあります。
凍結する部分はそれだけではありません。エンジンの冷却水も通常の車であればマイナス15度で凍結してしまいますが、寒冷地仕様の車は冷却水濃度を高め、マイナス35度まで耐えられるようになります。
ドアが凍結することもあるため、ドア開閉部分にはスポンジを挟んで凍結を防止しています。
エンジンが温まるまで、車のヒーターは使用出来ないため、フロントに電気式補助ヒーターを追加して乗り込んだと同時にヒーターを起動できる機能がついているものもあります。
寒冷地仕様のメリット・デメリットについて
良いことが多いように思える寒冷地仕様ですが、どのようなメリット・デメリットがあるのか、詳しく説明していきます。
■寒冷地仕様のメリット
寒い地域(氷点下20度以下)でも、快適に車に乗ることができる工夫がなされている点です。通勤や車を使用する業務の場合は、支障をきたすため特に車のトラブルを避けたいところです。そう言った問題を解決してくれます。
また、防錆性の強化がされており、雪の付着による腐食対策がなされています。その他には先ほど説明した、雪でも視界の確保が出来る点や、ヒーター類の充実などがメリットとして挙げられます。
■寒冷地仕様のデメリット
寒冷地仕様のデメリットは、車両本体価格が高くなることです。通常の装備に比べてオプションを追加したり、強化したりするので、当然と言えば当然ですが、標準車と比べて数万円の価格差があります。
また、ディーゼル車の寒冷地仕様は始動性向上のために、バッテリーを追加して合計2個搭載する場合があります。そのようなクルマは、バッテリー交換の際には2個同時に交換する事になるので、その分、部品代がかかる事になり、ランニングコストが増える事になります。
それ以外のデメリットは特にありません。寒冷地仕様なので、「暑い日もしくは暑い地域で使用するとオーバーヒートするのでは?」などと言った意見も見かけることがありますが、そんなことはありません。日本国内で寒冷地仕様の車を所有していれば、どの季節、どの地域でも対応することが出来ます。
■温暖地仕様はある?
温暖地対策仕様の車はなく、日本国内であれば、通常車で十分対応が可能です。それよりも暑い地域であれば、寒冷地仕様と同じく、バッテリー・ラジエーターの強化でクーラーを長時間最大でつけられるような仕様にしている車もあります。
トヨタ ランドクルーザープラドを例に装備の違いを説明
トヨタの人気車種であるランドクルーザープラド(ガソリン車,グレードTX)を例に標準車と寒冷地仕様の違いを説明していきます。
【寒冷地仕様 装備】
■冷却水(LCC):50%(約-35℃まで耐えれる)
■バッテリー容量:85D26Lへ容量アップ
■ウィンドシールドデアイサー:雪だまりや 凍結によりワイパーが動かなくなることの防止を目的にフロントガラスに熱線を配した物
■ウィンドーシールドワイパー:ワイパーモーターが寒冷地用で強力になります。
■リヤフォグランプ:霧・雪・雨などにより視界が悪い時に車の存在を後続 車に知らせるための赤色灯です。
■ウォッシャー液レベルフォーニング:ウォッシャー液が残りわずかになった時、マルチインフォ メーションディスプレイに「ウォッシャー液不足」と、警告 メッセージが表示されます。
■フロントヒーター: エンジン始動直後からエンジンが暖まるまでの間、通常 のヒーターに加え、暖房を補う補助ヒーターが標準で設定されています。
【標準車 装備】
■冷却水(LCC):30%(約-15℃で凍結)
■バッテリー容量:55D23Lから
■ウィンドシールドデアイサー:なし
■ウィンドーシールドワイパー:標準
■リヤフォグランプ:なし
■ウォッシャー液レベルフォーニング:なし
■フロントヒーター: エンジン始動直後からエンジンが暖まるまでの間、通常 のヒーターに加え、暖房を補う補助ヒーターが標準で設定されています。
上記の項目を見て分かる通り、標準車と寒冷地仕様の車には、ほとんどの項目で違いがあります。
価格を見てみると、標準仕様の車両価格3,476,364円(税抜)に対し、上記装備がなされた寒冷地仕様の場合は車両価格3,486,364円(税抜)になります。
標準車と寒冷地仕様の価格差は税抜で1万円となりますので、この価格差で装備を考えると、かなりお得な仕様となります。少しでも悩む場合は、寒冷地仕様を選択した方が良いのは間違いありません。
【まとめ】寒冷地仕様、価格は上がるけど実はお得!
以上、寒冷地仕様の車に関して詳しく説明しました。寒冷地仕様の車両価格は数万円のプラスになりますが、基本的に後付けできない物も多く、北海道・東北・北陸地方など、積雪が多く寒い地域ではあった方が良い機能ばかりです。
実際ランドクルーザープラド(ガソリン車,グレードTX)では1万円の違いであるため、寒冷地に住んでいなくとも、冬場にスキーやアウトドアを楽しむ方なら、選んでおいて損のない仕様となります。
寒冷地仕様に関するFAQ
■寒冷地仕様と標準仕様の違いは何?
寒冷地仕様は、標準仕様と比較してエンジンの始動性を向上するために、電装系と呼ばれるバッテリーや発電機が強化されていたり、凍結防止のために様々なヒーターが追加されていたりします。これは、寒い環境でも確実にクルマを使えるようにするために加えられた装備となります。
■寒冷地仕様ってお得なの?
寒冷地仕様と標準仕様の価格差が少ない場合は、お得と言えます。寒冷地仕様には標準仕様に比べて様々な装備が追加されています。寒冷地仕様として様々な装備が追加されているのに、標準仕様との価格差が1万円程度、というモデルもあります。寒冷地仕様を選択する場合は、標準仕様との価格差と追加さた装備のバランスを良く比較される事をオススメします。