発売から3年、まだC-HRに競争力はあるか?!

トヨタ C-HR GRスポーツ
1年先行したプリウスとともに、TNGAプラットフォームの先陣だけでなく、トヨタの「もっといい車作り」の先陣を切ったC-HRは、2016年末の登場から爆発的な人気を誇りました。
その人気は、車名別月間販売台数ランキングで、SUVとして初めて1位を獲得したほど。現在まで続く、SUV人気の牽引役だったとも言えるかもしれませんね。
しかし、時は流れて2020年。SUVクラスは豊作に次ぐ豊作で、ラインナップ数はさらに増加、それぞれの車種の競争力も格段に高まっています。
果たして、C-HRには現在でも競争力があるのか? 詳しく見ていきましょう。
■対決前にC-HRを復習!スペック、価格帯まとめ

トヨタ C-HR(欧州仕様)
なんといってもC-HRで特徴的なのは、SUVらしい力強さを持つ下半身と、クーペと見紛うようなスポーティな上半身の組み合わせでしょう。
ヘッドランプ・テールランプの大胆な造形も含めて、SUVラインナップの中でもズバ抜けた存在感のあるデザインは、3年が経ったとは思えないほどに今でも新鮮さを感じさせます。

トヨタ C-HR(欧州仕様)
後席頭上から大胆に絞り込んだキャビンはスポーティそのもの。リヤドアハンドルが隠されているデザインも相まって、もはやC-HRはスポーティなSUVなのではなく、背の高いクーペなのではと思わせるほどです。
内外装でダイヤモンド形状をモチーフにしたデザインテーマは、抑揚の効いたボディでもしっかり見てとれますね。
世界戦略車という、たくさんのマーケットで受け入れられなければならない難しい使命を抱えた車を、大胆極まりないデザインで登場させるのは勇気がいること。
新しいトヨタだからこそできたことでしょう。

トヨタ C-HR GRスポーツ インテリア
無論、デザインをかなり優先したフォルムは、後席空間や荷室容量ではやや見劣りがするもの。
後席では、膝前空間は標準的ですが、頭上空間、及びサイドウィンドウの面積の小ささがやや気になる点。閉塞感と見るか、心地いい秘密基地感と見るかは乗員次第ですが、SUVといえば余裕ある室内!とお思いの方は目を疑うほどの割り切りかもしれません。
荷室空間でも、VDA法による容量ではリヤシートを立てた状態で318L、最大でも1,112Lに留まるなど、クラス平均よりは小さめの容量がネック。
使いやすいフラットな形状ではあるのですが、荷物をガッツリ運びたい時には、やや頼りなく感じられるかもしれません。

トヨタ C-HR GRスポーツ 荷室
室内や荷室の余裕に割り切りが見られることに加えて、デザインと同様に走りにも相当にこだわって開発した点も、SUVの常識からは外れるところですね。
なんとその厳しさで知られる独・ニュルブルクリンクでの走り込みや、欧州全域で10万キロ以上にもなる走行テストを実施。
見た目のスポーティさに違わない、ドライバーの意のままの走りを実現したC-HRの走行性能は、SUVだけでなく乗用車全体で見てもかなりの実力派で、レースカーとしても活躍できたほどです。
見てカッコいい、乗って楽しいSUVとして、現在でも魅力は衰えていません。
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 4,385mm×1,795mm×1,550mm | |
---|---|---|
ホイールベース | 2,640mm | |
最大乗車定員 | 5名 | |
車両重量 | 1,390kg | |
燃費 | WLTCモード:15.4km/L | |
エンジン種類 | 直列4気筒ターボ 1,196cc | |
エンジン最高出力 | 85kW(116PS)/5,200-5,600rpm | |
エンジン最大トルク | 185N・m(18.9kgf・m)/1,500-4,000rpm | |
駆動方式 | 前輪駆動(FF) | |
トランスミッション | 6速MT | |
新車価格 | 2,438,182円(消費税抜き) |
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 4,385mm×1,795mm×1,550mm | |
---|---|---|
ホイールベース | 2,640mm | |
最大乗車定員 | 5名 | |
車両重量 | 1,440kg | |
燃費 | WLTCモード:25.8km/L | |
エンジン種類 | 直列4気筒ハイブリッド 1,797cc | |
エンジン最高出力 | 72kW(98PS)/5,200rpm | |
エンジン最大トルク | 142N・m(14.5kgf・m)/3,600rpm | |
モーター種類 | 交流同期電動機 | |
モーター最高出力 | 53kW(72PS) | |
モーター最大トルク | 163N・m(16.6kgf・m) | |
駆動方式 | 前輪駆動(FF) | |
トランスミッション | 電気式無段変速機 | |
新車価格 | 2,768,182円(消費税抜き) |
C-HRとライバルで徹底比較!使い勝手、性能、価格
■【C-HR vs キックス】小型SUVの新星はe-POWER搭載だ

日産 キックス
日産から極めて久しぶりに登場した新型車が、売れ筋のコンパクトSUV「キックス」です。
なんと海外で先行して販売していた純ガソリンエンジン仕様は導入せず、キックス日本仕様のパワートレインはe-POWERのみ。日本国内市場で初めてのe-POWER専用車になりました。
C-HR比で、キックスの全長は95mmほど短くはあるのですが、コンパクトSUVクラスにおけるライバルとして、細かく比較していきましょう。
使い勝手編

日産 キックス インテリア
キックスのエクステリアは、日産車らしいディテールやLEDヘッドライトなどの現代的装備も目立ちますが、C-HRと並んでしまうと、コンサバとも取れるデザインが特徴。
事実上、ジュークの後継車として登場したキックスは、スタイル重視だったジュークよりもかなり実用的な角張ったSUVらしいボディで登場。
その分キックスのキャビンは絞り込みがキツくなく、後席の頭上空間、肩周りの空間において余裕があるようです。大きめの窓もあって、C-HRよりも開放感がありますね。

日産 キックス 荷室
また、荷室容量は423Lと、日産調べでコンパクトSUVクラストップの広さとのこと。確かにトノボードより下の高さがかなりあり、便利に使えそうですね。
キックスの荷室と見比べてしまうと、C-HRの荷室は高さがあまりなく見えます。
C-HRの場合は荷室床面の下にはデッキアンダートレイという収納スペースがあり、後席を可倒させると床面がほぼフラットになるなどの利点はあるのですが、使い勝手では外形寸法の小さいキックスに軍配が上がりそうです。
性能編

日産 キックス エンジンルーム
キックスのパワートレインは、搭載したエンジンは発電専用に用い、タイヤの駆動にはモーターだけを使う「e-POWER」のみ。日産 ノート e-POWERのユニットを、出力を向上させて搭載しています。
e-POWERのポイントは、低回転からパンチのある豊かなトルク。ターボの活用でガソリンエンジンとしては低回転の1,500rpmから185N・mを発揮するC-HR 1.2リッターターボ仕様を軽々と超えた、260N・mというトルクを500rpmから発揮させるモーターがキックスの自慢です。
この点から、ストップ&ゴーが多く、低速域をよく使用する街中でキビキビ走るにはキックスの方が活発に走れそうです。逆に、モーターの効率が落ちる高速域での伸びは、C-HRのハイブリッドや、ターボ仕様が優る部分でしょう。
また、カタログ燃費としてはキックスは意外と伸びておらず、C-HRのハイブリッドとターボの中間付近といった印象。トヨタのハイブリッドは実燃費も良好ですので、後発のキックスとしては、せめてカタログ燃費では超えておいてほしかったところです。

日産 キックス メーターパネル
キックスは日産自慢の運転支援技術である「プロパイロット」を標準装備。高速道路などでの単調な運転でも車速・車間距離維持とハンドル操作をアシストしてくれるので、ボディは小柄ながら遠出もラクラクこなせそうです。
実はC-HRも、プロパイロットのような洒落た名称はついていませんが、「全車速追從機能付レーダークルーズコントロール」と、車線だけでなく前走車の軌跡までハンドル操作アシストに利用する「レーントレーシングアシスト」が装備されており、プロパイロット同等の機能を実現しています。
この点は、両者ともにコンパクトクラスながら奢った装備となっている部分で、両者ともに勝ちといった印象ですね。
価格編

日産 キックス ダッシュボード
2020年10月現在の税抜き新車価格では、キックスが2,509,000〜2,609,000円、C-HRが2,165,455円〜2,859,091円となっており、実質「X」のモノグレード展開となるキックスのシンプルさと、C-HRの廉価仕様から高級仕様まで揃えた豊富なグレード展開が見てとれます。
ポイントとなるのは、C-HRでは1.2リッターターボで選べる4WDが、キックスには設定されていないこと。もちろん上記のC-HRの価格帯は4WD仕様も含んだものですので、直接対決すると、キックスはやや割高感がありますね。
C-HRはハイブリッド仕様でも4WDが設定されれば敵なしなのですが、積雪地方にお住まいの方などは、この点からもC-HR ガソリン仕様の一択となってしまう場合もありそうです。
■【C-HR vs キックス】まとめ

日産 キックス
激戦区に現れた新入りとして、十分な戦闘力を持つキックス。e-POWERの先進性や優れたユーティリティ性はあるのですが、イマイチ飛び抜けた魅力には欠けるような印象もあるほか、やや価格には割高感があります。
C-HRは、ユーティリティ性ではキックスに譲りますが、そのスタイリングと走行性能はキャラクターが立っていて、デビューから3年が経過しても「指名買い」されそうな魅力があります。
どちらも優れた車なのですが、先発というハンデも含めて、C-HRの勝ちとさせていただきます。
日産 キックスのスペック
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 4,290mm×1,760mm×1,610mm | |
---|---|---|
ホイールベース | 2,620mm | |
最大乗車定員 | 5名 | |
車両重量 | 1,350kg | |
燃費 | WLTCモード:21.6km/L | |
エンジン種類 | 直列3気筒ハイブリッド 1,198cc | |
エンジン最高出力 | 60kW(82PS)/6,000rpm | |
エンジン最大トルク | 103N・m(10.5kgf・m)/3,600-5,200rpm | |
モーター種類 | 交流同期電動機 | |
モーター最高出力 | 95kW(129PS)/4,000-8,992rpm | |
モーター最大トルク | 260N・m(26.5kgf・m)/500-3,008rpm | |
駆動方式 | 前輪駆動(FF) | |
トランスミッション | ー | |
新車価格 | 2,508,182円(消費税抜き) |
■【C-HR vs ヤリスクロス】同門に最強のライバル現る!

トヨタ ヤリスクロス
トヨタの大きすぎる新車開発キャパシティの凄みを感じさせるのが、颯爽登場の「ヤリスクロス」です。
既にC-HR、ライズが存在するコンパクトSUVクラスにさらに新型車を投入、しかもヤリス譲りの高い走行性能と洗練のエクステリアを備えているのですから、凄すぎます。
キックスよりさらに小型で、C-HR比で全長は約200mm短いヤリスクロスですが、実はC-HRの販売が鈍っている最大要因のひとつと目されているのです。詳しく比較していきましょう。
使い勝手編

トヨタ ヤリスクロス インテリア
先ほどご紹介した通り、ヤリスクロスはC-HRよりも約200mm全長が短いのですが、室内ユーティリティではなんとヤリスクロスのほうが優る部分もあるのが驚きです。
カタログ値で比較すると、ボディサイズの大きいC-HRは、室内幅で25mmヤリスクロスに優るのですが、室内長ではなんと45mm劣るという結果に。
前席ではどちらも余裕たっぷりな印象ですが、なんとC-HRに設定のない運転席パワーシートや、ヤリスで好評の運転席ターンチルトシートや運転席イージーリターン機能の設定があるヤリスクロスは、装備の充実感では一歩上を行きます。

トヨタ ヤリスクロス 荷室
室内だけでなく、荷室もヤリスクロスは負けていません。荷室床面は、リヤシートバックからテールゲートまでの距離ではなんと全長の長いC-HRの770mmを超える820mmが確保されています。
C-HRが2WD/4WD、ガソリンターボ/ハイブリッドで荷室容量に差をつけていないのに対し、ヤリスクロスではスペースをより隅々まで活用しており、最大となる2WDの仕様では、VDA法による容量で390Lと、C-HRの318Lを軽々上回っています。
ヤリスクロスは、4WDやE-Four仕様のではC-HR以下の荷室容量となるほか、リヤシートを格納した際の容量は最大仕様でも1,083Lに留まり、C-HRの1,112Lには劣るのですが、ボディサイズを考えれば大健闘でしょう。
コンパクトSUVクラスでは異例のハンズフリーパワーバックドアなどの便利さも相まって、後発のヤリスクロスは、使い勝手ではかなりのアドバンテージを有していると言えるでしょう。
性能編

トヨタ ヤリスクロス エンジンルーム
ヤリスクロスは、C-HRのGA-Cプラットフォームよりもひと回り小さいGA-Bプラットフォームを採用していますが、どちらもTNGAらしく低重心・軽量・高剛性が特徴。
そしてどちらも街乗りから高速道路まで、さまざまな利用シーンにおける満足度が非常に高くなっているのですが、違いのポイントとなるのはリヤサスペンション形式。
全車でダブルウィッシュボーン式リヤサスペンションを採用するC-HRに対し、ヤリスクロスも4WD仕様ではダブルウィッシュボーン式を採用しますが、2WD仕様では路面追従性で劣るトーションビーム式を採用しています。
近年ではトーションビーム式のデメリットを感じさせない性能を実現している車もありますが、荒れた路面での乗り心地や、コーナリングの気持ちよさで、C-HRが一歩先を行きそうです。

トヨタ ヤリスクロス メーターパネル
ハイブリッド仕様ではエンジンの排気量差があり、ガソリンターボ仕様では小排気量ながらターボ搭載と、上級車らしくパワーに余裕がある点や、ガソリンターボ仕様で6速iMTが選べるユニークさがC-HRのポイントですが、4WDシステムの本気度ではヤリスクロスが優ります。
ガソリン車のダイナミックトルクコントロール4WDとハイブリッド車のE-Fourともに、路面状況に応じた走行モードの選択ができるモードダイヤルを有し、急な下り坂でも自動で車速を維持してくれるダウンヒルアシストコントロールを標準装備するなど、C-HRよりもオフロード性能を重視した装備を持つヤリスクロス。
また、燃費性能でも、軽量ボディと高効率エンジンを有するヤリスクロスの圧勝。WLTCモード燃費では、ハイブリッド仕様で最高30.8km/L、ガソリン仕様で最大20.2km/Lと、それぞれ25.8km/L、15.4km/LのC-HRを軽く突き放しています。
価格編

トヨタ ヤリスクロス プロトタイプ ダッシュボード
ここはサイズの小さいヤリスクロスの独壇場。2020年9月現在の税込新車価格では、ヤリスクロスが179.8〜281.5万円と、C-HRの238.2〜314.5万円よりも数十万円安くなっています。
室内ユーティリティは同等または優る部分もあり、ハンズフリーパワーバックドアやパワーシートなど、C-HRには設定のない豪華装備が用意されている点も含めて考えれば、ヤリスクロスの価格はまさに大バーゲン。
どちらもトヨタ最新鋭の予防安全・運転支援機能が装備されている点も、廉価なヤリスクロスのコストパフォーマンスをさらに上げています。
よほど譲れないポイントがC-HRに無い限り、現時点ではヤリスクロスの圧勝でしょう。
■【C-HR vs ヤリスクロス】まとめ

トヨタ ヤリスクロス
ここでご紹介した部分だけでもヤリスクロスの強さは相当なもの。魅力が多すぎて全てをご紹介しきれていませんが、C-HRの弱点をもうまく解消した、後発とはいえ驚きの完成度の高さです。
とびきりスポーティな外観のC-HRと、コンパクトながらマッチョさも感じさせるヤリスクロス、どちらのスタイリングが好みかは別として、装備内容や使い勝手ではヤリスクロスがかなり優位。
C-HRに設定のあるスポーツグレード「GRスポーツ」は現在ヤリスクロスには設定されていませんし、6速MTも選べるなどオンロードでの走行性能ではC-HRが優れた部分もあるものの、トータルで考えれば、コストパフォーマンスに優れるヤリスクロスのほうがおすすめとなってしまいます。
トヨタ ヤリス クロスのスペック
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 4,180mm×1,765mm×1,590mm | |
---|---|---|
ホイールベース | 2,560mm | |
最大乗車定員 | 5名 | |
車両重量 | 1,190kg | |
燃費 | WLTCモード:27.8km/L | |
エンジン種類 | 直列3気筒ハイブリッド 1,490cc | |
エンジン最高出力 | 67kW(91PS)/5,500rpm | |
エンジン最大トルク | 120N・m(12.2kgf・m)/3,800-4,800rpm | |
モーター種類 | 交流同期電動機 | |
モーター最高出力 | 59kW(80PS) | |
モーター最大トルク | 141N・m(14.4kgf・m) | |
駆動方式 | 前輪駆動(FF) | |
トランスミッション | 電気式無段変速機 | |
新車価格 | 2,349,091円(消費税抜き) |
■【C-HR vs ロッキー】弟分とガチンコ対決は意外と苦戦?!

ダイハツ ロッキー
トヨタからも「ライズ」としてOEM車が登場しているダイハツ「ロッキー」は、なんと4mを切る全長で、C-HR比では約400mmも短いかなりのコンパクトSUV。
実際、搭載しているエンジンも1.0リッターガソリンターボとなっており、排気量的にも普通車最小クラスのSUVとなっています。
C-HRは、価格では譲りながらも、その大柄なボディと余裕の動力性能でロッキーを圧倒… と思いきや、意外や意外、小型のロッキーにかなり苦戦するエリアも見られます。
詳しく比較していきましょう。
使い勝手編

ダイハツ ロッキー インテリア
見るからにコンパクトなボディは、SUVらしい力強い造形ながら、ややコロッとしたフォルムもあって、キュートさも持ち合わせていますよね。
そんなコンパクトさですから、室内の使い勝手はC-HR圧勝、と思いきや、C-HRが大苦戦してしまうほど、ロッキーのユーティリティ性はかなり高度なものとなっています。
小型車作りに秀でたダイハツのマジックなのか、ロッキーの前後席の余裕はかなりのもの。特に後席は、形状としてはC-HRに比べて平板に近いとはいえ、足元の余裕では引けを取らず、肩周りの開放感ではC-HRを上回りそうなほどです。
これは、C-HRに比べてキャビンの絞り込みが少ないためで、ドアガラスの天地幅もしっかり取られており、SUVらしいキャビンが実現されていますね。

ダイハツ ロッキー 荷室