セダンからSUV、ついにミニバン!拡大するレクサスラインナップ
レクサス 上海モーターショー2019
フォーマルな印象のあるセダンの高級車が苦戦する一方、室内スペースの広さや押し出しの強さからか、高級ブランドであってもSUVは大人気。
一昔前では、あのロールスロイスがSUVを販売するだなんてバカバカしいと思われていましたが、現在ではカリナンは大人気車種となっています。
これは、レクサスでも同様。むしろ、高級クロスオーバーSUVの先鞭をつけたRXを生み出したブランドであることもあり、今やセダンが3車種しかないのに対してSUVラインナップは4車種と、もはやSUVが大黒柱となっています。
レクサス LM
そして、その拡大路線はついにミニバンにも到達しました。
ミニバンの起源はアメリカと言われますが、ファミリー向けの実用ミニバンが多い北米、商用バンをベースに乗用仕様としたミニバンが数多い欧州とは違って、日本のミニバン文化は独特な嗜好がありますよね。
トヨタの人気ミニバン、アルファード/ヴェルファイアに代表されるような、ギラギラした迫力のあるデザインや、レザーシートやキャプテンシートなどの豪華装備が好まれる市場性は、もはや高級セダンのそれと同様。
実際、近年では要人や社用車として高級ミニバンが利用されるケースも増えてきています。
この流れに着目したのがレクサス初のミニバン、LMなのです。魅力を詳しく見ていきましょう。
レクサス LM、まずは概要を見ていこう
レクサス LM300h(中国仕様)
もはや国内のアルファード/ヴェルファイアの強烈な顔つきで慣らされてしまったせいか、むしろスッキリした顔つきにも見えるこちらが、レクサス初のミニバン「LM」です。
ポイントごとに特徴をご紹介していきます。
■LMの秘密:ベースは(もちろん)アルファード!
レクサス LM300h(海外仕様)
一目で分かる通り、LMのベースはアルファード/ヴェルファイアとなっています。
顔つきやディテール部分では細かく差異化されていますが、ミニバンにしては躍動感のあるフロントフェンダーからドアに続く造形や、サメの背ビレを思わせるBピラーの造形は、もはや国内の道路では見慣れた感もある、アルファード/ヴェルファイアそのままとなっています。
トヨタ アルファード
こうして並べて見比べると、アルファードの鼻先は比較的ストンと切れているのに対し、LMはフロントオーバーハング部が立体的で長めに取られているように見え、よりスムーズなボディラインとなっていますね。
レクサスらしい細スポークのホイールや、L字がより際立つウィンドウメッキモールも相まって、ベースがアルファード/ヴェルファイアであることはわかるものの、意外とうまく上級感が演出できているのではないでしょうか。
■LMの秘密:隅々までレクサス化されたエクステリアデザイン
レクサス LM300h(中国仕様)
無論、レクサスバッジをつける上、フラッグシップ級であることを示す「L」シリーズの車名をつけているのですから、ボディシェイプが同じとはいえ、細かな部分でレクサスデザインが反映されています。
先述した精密なホイールデザインはレクサスらしさを感じさせる部分ですし、何よりフロントフェイスで存在感を放って止まない「スピンドルグリル」は、従来比で1.5倍という大きさ。
LSのものほど繊細な印象ではありませんが、複雑に入り組んだデザインのグリルは、車両のフォルムにうまく融合しており、アルファード/ヴェルファイアよりも高級感がありますよね。
レクサス LM300h(中国仕様)
ヘッドランプやテールランプも、レクサスらしいL字モチーフを用いながら、シャープで先進的な造形。
三眼LEDが用いられたヘッドランプは目力がありますし、車両幅いっぱいに広げられたテールランプは、レクサスの最新デザイントレンドを活かしつつ、アルファード/ヴェルファイアよりもワイド感のあるリヤの表情を実現しています。
テールランプ下部で下向きに切り返されるメッキモールなどは、LSの表情そのまま。四方どこから見ても、レクサスのミニバンであることが一目で伝わるでしょう。
■LMの秘密:「L」の名に恥じないファーストクラス・インテリア
レクサス LM300h(中国仕様) インテリア
なんといってもミニバンボディによる余裕ある室内空間を活かしきった室内は、セダンタイプでは実現しようのないほどの余裕。フラッグシップ級を示す「L」の車名に恥じない、特別な空間が広がっています。
3列シート7人乗り仕様では、国内のアルファード/ヴェルファイアのエグゼクティブラウンジ車と同様の2列目キャプテンシートが配置されるのですが、圧巻は2列4人乗り仕様。
もはやミニバンとは到底思えない大型で包み込むような形状のシートが装備されるほか、なんと前後席の間にはストレッチリムジンさながらのパーテーションが設けられ、26インチの大型ディスプレイに冷蔵庫まで装備されるハイエンドっぷりは、もしかするとLSすらも超えてしまった部分かもしれません。
レクサス LM300h(中国仕様) インテリア
もちろんシート表皮はセミアニリン本革で、2列目席はシートヒーター/ベンチレーションが標準装備な上、4人乗り仕様ではマッサージ機能まで備わるなど、高級車としての基本も網羅しているほか、インパネ中央にはアルファード/ヴェルファイアの9インチディスプレイではなく12.3インチの大型ワイドディスプレイが装着されるなど先進性も忘れません。
なんでも、LMの主要顧客として見込まれているアジア圏のトップエグゼクティブからは、このフルパーテーションが非常に好評とのことです。
お客様をお迎えしても恥ずかしくない豪華な後席空間で、会議をしたりプライベートな会話をしても、運転手には会話内容を聞かれずに済むためだとか。もはやこれが現代的リムジンの新しい形なのかもしれませんね。
■LMの秘密:現在販売しているのはアジア圏の国 ※日本は除く
レクサス LM300h(中国仕様)
世界初披露が上海モーターショーであったことからも分かる通り、現在のところLMはアジア圏でしか販売されていません。
公式ホームページ上で確認すると、中国の他に、タイ、フィリピン、インドネシアなどで販売が確認できるほか、ハイブリッド仕様のみを導入している他市場と異なり、レクサス香港では3.5リッター V6ガソリンのLM350を独自展開しているなど、これからのラインナップ拡充にも期待がかかっています。
…のですが、日本は蚊帳の外。LMの生産は全車日本国内で行われているのに、もどかしい部分です。
ベース車のアルファード/ヴェルファイアが日本で大ヒットしていることはもちろん考慮が必要ですが、たとえばタイでは現地トヨタからアルファード、レクサスからLMが併売されているほか、現地でのアルファード V6仕様とLM300hはほぼ同等の価格が設定されている模様ですので、もっと複雑な事情がありそうですね。
日本に導入した際に、レクサス車としてLMが受け入れられるかどうかはややリスキーな部分もあり、やや二の足を踏んでいるのかもしれません。
レクサス LMのスペック
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 5,040mm×1,850mm×1,890mm | |
---|---|---|
ホイールベース | 3,000mm | |
最大乗車定員 | 4名 | |
車両重量 | 2,290kg | |
燃費 | ー | |
エンジン種類 | 直列4気筒ハイブリッド 2,494cc | |
エンジン最高出力 | 117PS/4,700rpm | |
エンジン最大トルク | 20.2kg・m/2,800-4,000rpm | |
モーター種類 | 交流同期電動機 | |
ハイブリッドシステム出力 | 120kW(163PS) | |
駆動方式 | 電気式全輪駆動(E-Four) | |
トランスミッション | 電気式無段変速機 | |
台湾仕様希望小売価格 | 5,000,000新台湾ドル | |
台湾仕様希望小売価格・日本円換算 | 約1670000円(税抜き) |
レクサス LM、トヨタ アルファード/ヴェルファイアと比べると?
トヨタ アルファード
国内における現行ミニバンにおいて頂点となるのが、トヨタのアルファード/ヴェルファイアでしょう。
押し出しの効いたフロントフェイスはLMにも負けない迫力がありますし、室内の高級感もミニバン最高クラス。予防安全装備などの先進装備も充実しており、人気が出るのも当然ですよね。
そんなアル/ヴェルですが、最上級仕様「エグゼクティブラウンジ」を選べば、前述の通りLM 7人乗り仕様と同等のシートアレンジを得ることができます。しかし、LM 4人乗り仕様のような究極のVIP空間は、現在アル/ヴェルでは選ぶことができません。
エグゼクティブラウンジは、2列目に左右独立のエグゼクティブラウンジシートを備え、オットマンやシートヒーター/ベンチレーションを備えるなど十分に豪華な仕立てとなっており、リムジン的に使用することも可能とはいえ、要人や役員の移動車として用いられることもしばしばなアル/ヴェルで4人乗り仕様が選べないのは、やや不思議に感じる部分ですよね。
トヨタ アルファード エグゼクティブラウンジ インテリア
走行性能としては、パワートレインはLM300hがアル/ヴェル ハイブリッドと、LM350がアル/ヴェル V6仕様と同一のものを流用しており、乗り心地面での改善が謳われてはいますが大きくは変わらない模様。
細かな差異としてはナビ画面の大きさがLMの方が大きいなどの違いはありますが、大きく違う部分は、レクサス化されたエクステリアと、4人乗り仕様のインテリアとなっています。
■実は日本でも同等のインテリアで売ってました!「ロイヤルラウンジ」
トヨタ アルファード/ヴェルファイア ロイヤルラウンジ
LMが日本導入されていないことはお伝えした通りですが、なんとLM同様の超絶ファーストクラスインテリアを実現していたアルファード/ヴェルファイアが日本国内でも販売されていたのです。
現在ではラインナップ落ちしてしまいましたが、モデリスタによるコンプリート車として用意されていた「ロイヤルラウンジ」では、まるでLMの4人乗り仕様を思わせる独立2座の後席を装備。
細かな形状や仕立てがLMとは異なるようですが、3列目を廃してグッと後ろ寄りに設置された2列目シートには、シートヒーター/ベンチレーションやオットマンはもちろん、モデリスタがフジ医療器と共同開発したエアープレス機能によるリラクゼーションプログラムまで備わるなど、後席最優先の仕立てはまさにLMそのもの。
トヨタ アルファード/ヴェルファイア ロイヤルラウンジ
ご紹介している画像ではパーテーションなしとなっていますが、最上級グレードの「ロイヤルラウンジSP」では前後席間のフルパーテーションが装備されていた点もLMそっくりです。
パーテーションには、LMでは幅広のガラスが装着されますが、ロイヤルラウンジのガラスは昇降可能とするためか中央寄せの小さめサイズと違いはあれど、どちらも液晶によってすりガラス状に変化させることもできるなど、機能性としては大きな差はありません。
また、設置されるディスプレイはサイズが異なるほか、ロイヤルラウンジではこちらも昇降可能な格納式と、むしろLMよりもコストがかかっていそうな印象ですね。
もちろん、LM300h同等のハイブリッドモデルのロイヤルラウンジで約1,440万円、フルパーテーションが追加装備されるロイヤルラウンジSPでは約1,550万円と、装備内容だけでなく価格もアル/ヴェルの常識を超えたものとなっていたのですが、VIPをお迎えする車としては最上級のおもてなし能力が備わっていました。
レクサス LM、日本へ導入はあるのか? いつ? 価格は?
レクサス LM300h(中国仕様)
LMの高い完成度、それにアルファード/ヴェルファイアの「ロイヤルラウンジ」がひっそりとカタログ落ちしている現状から、日本導入も間近か?!と思いきや、現行モデルが日本に導入される見込みはかなり薄そうです。
見た目やパワートレインからもアルファードなどとの近似性がかなり強く、日本人がレクサスに対して持っているイメージとはそぐわないのでは、と予想される点がまず大きな理由でしょう。
4人乗り仕様の豪華な後席は今やLM独自のもので、魅力的な部分ではありますが、ここまでリムジン級の空間を必要とする顧客は一部に限られそうですので、販売台数としても多くは見込めないでしょう。
また7人乗り仕様では、パッと分かるアルファード/ヴェルファイアとの違いはエクステリアのみになってしまい、トヨタブランド車との差別化ができていないのは痛い部分ですよね。
レクサス LM300h(中国仕様) インテリア
そのためモデルライフ終盤となっているアルファード/ヴェルファイアのモデルチェンジに合わせて、プラットフォームを共有しながらも大幅にレクサス化を進めた新モデルに移行してから、日本に堂々凱旋することが予想されます。
国内レクサス販売店としても、現在のラインナップでは多人数乗車が可能な車はLXかRXロングのみとSUVに限られ、アルファード/ヴェルファイアのような安定した販売が見込めるミニバンは、喉から手が出るほど欲しい車に違いありません。
そのため、より先鋭化が進んだ次期型LMでの日本導入が期待されます。アルファードは2021年のモデルチェンジが噂されており、次期型LMもそれ以降での登場となることでしょう。
無論、より装備内容もしっかりレクサス化が進むものと思われ、LSやLC、LXと同じく、トップモデルでは1,000万円を軽くオーバーするような新車価格が付けられる可能性も高そう。もはや庶民には関わりのない、天上のミニバンとなるかもしれませんね。
まとめ
レクサス LM300h(中国仕様)
今やアルファード/ヴェルファイアはどこに行っても見かける定番ミニバンと化してしまい、オーナーとしても歯がゆい思いをされている方も多いのでは。
アル/ヴェルの使い勝手そのままに、高級感と稀少性まで兼ね備えたLMは、ある意味完璧なファミリーカーとも思えるのですが、日本にこのまま導入される可能性は低そうです。
どうしてもLMが欲しい!と思われた方は、海外から逆輸入車を販売しているショップもあるとのことですので、日本生産ののちに海外輸出されたミニバンを再び日本に輸入して乗るという、酔狂極まりない趣味人の車選びをしてみても楽しそうですね。