アテンザってどんなクルマ?どうしてマツダ6に車名が変わったの?
《撮影 瓜生洋明》マツダ・アテンザ セダン
■マツダ・アテンザ時代
3代目マツダ・アテンザは、マツダのフラグシップモデルとして、2012年11月20日に発売されました。ボディタイプは、セダンとワゴンを揃え、クリーンディーゼルエンジンの「SKYACTIV-D 2.2」の搭載やマニュアルミッションモデルを設定するなど、クルマ好きなユーザーを強く意識したモデルとなっていました。
3代目アテンザの特徴は、マツダの新世代テクノロジーである「スカイアクティブ・テクノロジー」を全面採用したモデルであるという点です。そのため、ボディ・トランスミッション・エンジン等の主要コンポーネンツが、全て新規に開発されました。
自動車は新型車の開発に莫大な費用がかかるため、通常のモデルチェンジでは先代モデルから何らかのコンポーネンツを流用する事が多いのが現実です。しかし、マツダは、より高いレベルのクルマを目指すために、「スカイアクティブ・テクノロジー」と呼ばれる従来のクルマづくりを一新する全社的な運動に取り組み、ほとんど全てのコンポーネンツを一から新規開発しました。
その成果は、3代目アテンザの高い完成度と言う形で発揮され、2代目アテンザとは明確にレベルの違うクルマとなっていました。
クルマとしてのレベルのアップはボディサイズにも明確に現れていて、セダンは全長:4,865mm、全幅:1,840mmという、メルセデス・ベンツEクラスやBMW・5シリーズのようなヨーロッパのプレミアムセダンに迫るサイズにまでに大型化されました。ボディサイズの拡大分は、主に流麗なスタイリングの追求と、リアシートのスペース拡大に費やされました。
《撮影 瓜生洋明》マツダ・アテンザ セダン
マツダの新世代デザインコンセプトである「魂動デザイン」を全面的に採用したスタイリングは、長い全長を活かした伸びやかなクーペスタイルに、こちらも1,840mmの全幅を活かした、サイドパネルに抑揚のあるキャラクターラインを配した肉感的なデザインとなっていました。さらに、2012年当時では世界的にも珍しかった大径の19インチホイールを採用し、デザインの躍動感を一層高めていまいた。
また、セダンでは、マツダのフラグシップサルーンに相応しいリアシートスペースを確保するため、ボディの全長の拡大と共にホイールベースも延長されました。そのため、3代目アテンザは、セダンとワゴンでホイールベースが異なる、という珍しいクルマとなっています。
メカニズム的な最大のトピックは、クリーンディーゼルエンジンの「SKYACTIV-D 2.2」を搭載した事。SKYACTIV-D 2.2は、2.2L 直列4気筒ターボのディーゼルエンジンですが、ディーゼルエンジンとしては画期的な圧縮比14.0という低圧縮比を達成しています。
低圧縮比は、SKYACTIV-D に何をもたらしたのでしょうか?それは、シリンダー内での軽油の燃焼が促進され、燃焼温度も下がる事で、従来のディーゼルエンジンには必須だった窒素酸化物(NOx)の浄化装置が不要となった、と言う事になります。
NOxの浄化装置は極めて高価で、ディーゼルエンジンのコストを押し上げる大きな原因になっていましたが、それが不要なSKYACTIV-Dは、低コストで、かつ高性能なディーゼルエンジンとなりました。
実際、デビュー当時の販売実績では、大多数のユーザーがSKYACTIV-Dを選択し、ディーゼル人気の高さを証明しました。2012年の発売当時、SKYACTIV-Dは最高出力こそ175PSと控えめだったものの、最大トルクは420Nをわずか2,000回転で発生するというマッシブなもので、強力な発進加速がドライバーを虜にしました。
一方、燃費走行に徹すれば、高速巡航では20km/Lに達する低燃費と、ガソリンよりも安い軽油がお財布にも優しいという、ハイパフォーマンスでありながら経済車でもある、という二面性が人気を博しました。
《撮影 瓜生洋明》マツダ・アテンザ セダン 2012年型インテリア
この頃からマツダは、クルマのアップデートを短期間で何度も行うようになり、モデルライフの途中でも、最新の技術を躊躇なく投入するようになりました。なかでも、3代目アテンザは、発売からわずか2年という短期間で、インテリアのデザインを大幅に変更するという珍しいアップデートを実施しました。
実は、アテンザの開発に取り組んでいた時期のマツダは、リーマンショックによる世界的な不況で業績が非常に厳しく、しかも、スカイアクティブ・テクノロジーというクルマのコンポーネンツを一から開発し直す、というとにかくお金のかかるプロジェクトに取り組んでいました。
そのため、アテンザの開発でもエンジンやシャシーにお金をつぎ込んだため、どうしてもインテリアまでは目標とするクオリティにまで手が届かなかったようです。実際にアテンザが発売されると、輸入車のベンツ・CクラスやBMW・3シリーズと比較検討する顧客が予想外に多く、それらの顧客からは、クルマの出来栄えには満足しつつも「インテリアが安っぽい」という指摘が多く出されたようです。
そこで、マツダは大急ぎで新しいデザインのダッシュボードを開発し、2015年モデルでインテリアを大幅にアップデート。質感は劇的に向上して、輸入車にも見劣りしないものになりました。一方で、初期型を買ったユーザーには、その余りの変わりぶりが羨ましくも、妬ましくもあったようです。
《撮影 太宰吉崇》マツダ アテンザ セダン 2015年型 インテリア
その後も、マツダはのアテンザのアップデートを怠る事はなく、4WDモデルの追加や、精密なクルマの制御を実現する「G-ベクタリングコントロール」の採用、ディーゼルエンジンを静粛化する「ナチュラルサウンドスムーザー」の採用等、着実な改良を実施続けました。
そして、2018年モデルでは、再度、インテリアデザインをアップデートすると言う、他の日本車メーカーでは考えられない頻度と規模で改良を繰り返しています。
この事実は、マツダがアテンザを自社のフラグシップモデルとして非常に大切に育てている事を物語っています。アテンザは、2012年のデビューから長い時間が経過していますが、着実なアップデートを施される事で、ユーザーに確かな価値を提供し続けてきました。
一方で、年式によってインテリアも違えば、装備も高度運転支援システムの性能も違う、という状況になっていますので、中古車を買う場合には年式をしっかり確かめて、どのような装備が装着されているのかをじっくり調べる必要があるクルマでもあります。
《写真提供:response》マツダ アテンザ セダン 2018年型 インテリア
■マツダ6時代
《写真提供:response》 MAZDA6 セダン
2019年7月、アテンザは「MAZDA 6」に車名をしました。これは、マツダがグローバルブランドを目指すにあたって、同一車種の車名を国内と海外で統一させるマーケティング戦略を実施した事によります。従来から、アテンザは海外市場では「MAZDA 6」という車名で販売されていたので、国内でもそれに合わせる事になりました。
車名が変更されても、スタイリングやインテリアの変更は殆どありませんが、大きなトピックとして、新しいエンジンの追加がありました。新たに投入されたエンジンは、2.5L直列4気筒ガソリンターボエンジンで、230PS/420Nを発揮。ハイパフォーマンスを求める顧客のニーズに対応できるエンジンとなっています。また、ディーゼルエンジンは出力が190PS/450Nにまで強化されました。
ターボエンジンの投入で、MAZDA6は「2Lガソリン」「2.5Lガソリン」「2.5Lガソリンターボ」「2.2Lディーゼルターボ」という、4つのエンジンタイプを持つ珍しいクルマとなっています。
MAZDA6、車名は変わりましたが、2.5Lガソリンターボエンジンの追加以外に、アテンザ時代からのメカニズム的な大きな変更点はありません。
アテンザ=マツダ6のボディタイプは?
■セダン
《写真撮影 中野英幸》マツダ6 セダン(ブラックトーンエディション)
MAZDA6のセダンは、全長:4,865×全幅:1,840×全高:1,480mm、ホイールベース:2,830mmという、かなり大柄なボディを持っています。車名変更のアテンザのデビューから8年以上が経過していますが、ボディデザインには古さを感じさせません。
日本市場では、国産の大型セダンのラインナップが年々縮小している事から、大型のセダンが欲しいと考える人にとっては、MAZDA6は貴重な選択肢と言えます。
《写真撮影 中野英幸》マツダ6 セダン(ブラックトーンエディション)
マツダの社長車としても使われるクルマですから、大柄なボディは室内空間の拡大に費やされています。そのため、リアシートのレッグスペースには非常に余裕があります。
リアシートに人を乗せる機会の多い方にとっては、セダンボディの広い室内空間は魅力的では無いでしょうか。
《撮影 島崎七生人》マツダ アテンザ セダン 改良新型(25S L Package)
また、トランクルームもVDA方式で474Lという大容量を確保しているので、かなりの量の荷物を詰め込む事ができます。
さらに、リアシートはトランクスルー機能をもっているので、リアシートをたためば、更に大量の荷物を詰めます。セダンボディの構造上、背の高い荷物は積むことは出来ませんが、積載性という点でも、MAZDA6セダンはかなり優秀です。
■ワゴン
《写真提供:response》マツダ6 ワゴン ブラックトーンエディション
MAZDA6は、セダンとワゴンでホイールベースが違う珍しいクルマである事は既にご紹介させていただきましたが、具体的には、セダンに比べ、ホイールベースで80mm、全長で60mm短くなっています。
ボディサイズとしては、全長4,805×全幅1,840×全高1,480mm、ホイールベースは2,750mmという値。ホイールベースが短くなった影響は、室内長に現れていて、セダンの室内長1,960に比べ、ワゴンは1,930mmとなっています。
そのため、ワゴンのリアシートはセダンに比べて足元のスペースに若干の窮屈さを感じる事にはなります。ただ、絶対的に大きなクルマではあるので、リアシートが狭いかと言われれば、そこまで狭くは無いという評価になります。
《写真提供:response》マツダ6 ワゴン ブラックトーンエディション
中村孝仁マツダ アテンザワゴン 改良新型(XD Lパッケージ)
ワゴンにとっての生命線であるラゲッジルームは、リアシートを立てた状態でVDA方式で506Lという大容量をしっかりと確保しています。また、リアシートの背もたれをたためば、VDA方式で最大1,648Lという広大な空間を作り出す事ができます。
さらに、「カラクリトノカバー」と呼ばれるトノカバーも装備しており、ラゲッジルームのプライバシーを確保しています。
中村孝仁マツダ アテンザワゴン 改良新型(XD Lパッケージ)
おすすめのボディタイプは?
結論から申し上げると、リアシートに人を乗せる事が多い人はセダン、沢山の荷物を積む事が多い人はワゴン、と言う事になります。
セダンは、大柄なボディを活かした広いリアシートが最大の特徴となります。リアシートに人を乗せる事が多いのであれば、セダンを選んだほうがいいでしょう。また、フォーマルな用途に使う機会が多い人も、セダンが有力な選択肢になると考えられます。
ただし、セダンは全長が4,865mmと非常に長く、そのおかげで流麗なクーペスタイルを実現できているというメリットもありますが、日本の街中での取り回しには神経を使う事があるかもしれません。最小回転半径も5.6mと、それほど小回りが利くクルマではありませんので、その点は注意が必要です。
ただし、都市部に多いタワーパーキングには入庫する事ができます。
ワゴンは、かさばる荷物を積む事が多い人にとっては、非常に便利なクルマとなるでしょう。また、セダンに比べ、全長が60mm短いので、街中での取り回しは若干容易かもしれません。最小回転半径も、セダンより-0.1mの5.5mとなっています。リアシートは、セダンよりも若干狭いですが十分実用的です。
ワゴンも、タワーパーキングに入庫する事が出来ます。
まとめ
《写真提供:response》マツダ・ビジョンクーペ
猫も杓子もSUV!という最近の自動車業界のなかで、MAZDA6はセダンとステーションワゴンが選べる、非常に貴重な存在です。都市部のユーザーであれば、タワーパーキングに駐車できるメリットは非常に大きいのではないでしょうか。
MAZDA6は、ディーゼルエンジン+AWDという組み合わせが可能です。燃費性能に優れたディーゼルと、走破性の高いAWDでどこにでも、どこまでも走っていける、という使い方も出来ます。
MAZDA6は、来年モデルチェンジするとの予想が有力です。直列6気筒エンジンの搭載と、駆動方式のFR化が確実視されています。2017年の東京モーターショーで発表されたコンセプトカー「マツダ・ビジョンクーペ」をモチーフとする、セダンボディの登場は間違いありませんが、ワゴンボディが発売されるかどうかは微妙です。
MAZDA6は、ワゴンでもセダンでも、オーナーを十分満足させてくれるクルマである事は間違いありません。ご検討、いかがですか?