マツダのスカイアクティブとは?
スカイアクティブとは、マツダが掲げている新技術の総称のことです。2010年10月にマツダの新世代技術として発表されています。スカイアクティブには、エンジンだけではなくトランスミッションやボディ、さらにはシャシーなどの技術も含まれています。
従来の自動車開発では、それぞれが主要コンポーネントを設計するので、個々の理想的な構造を追求するのが難しいのが難点でした。しかしスカイアクティブテクノロジーで、自動車を構成する要素を包括的に開発することで、車両全体が良くなるという利点があります。
特にスカイアクティブエンジンは、ガソリン、ディーゼル、さらには次世代ガソリンエンジンに分かれており、内燃機関の効率向上を図っています。
マツダのスカイアクティブエンジンの種類一覧
■スカイアクティブ G
スカイアクティブ Gのエンジンは、従来のマツダのガソリンエンジンとは設計から大きく異なっています。従来のエンジンと比較をすると、15%ほど燃費とトルクが向上しているのが特徴。
出力が向上しているのも、ガソリンエンジンでは最大の14.0という圧縮比を採用していることにあります。これほどの圧縮比は、他のメーカーでは実現できなかったレベルです。なぜ圧縮比が高くできないかというのには理由があります。それはノッキングという問題です。
ガソリンエンジンの場合には、圧縮比を上げすぎると異常燃焼であるノッキングが起きます。レシプロエンジンでは、熱効率を上げるには、圧縮比を上げることが効果的です。しかしガソリンエンジンでは、高い圧縮で高い温度になると、自己発火によって異常な振動や部品の破損を引き起こすのです。
従来のエンジンでは、圧縮比として10.0ほどが限界とされていましたが、マツダはそれを大きく上回る14.0の圧縮比を実現しています。新しいスカイアクティブ Gは、ノッキングという問題を直噴技術の向上と、排気システムの効率化によって解決。
多くのメーカーでは、低燃費を実現するためにハイブリッド技術を開発しています。しかしマツダは、エンジンの効率を向上させることで、対抗しようとしているのです。スカイアクティブ Gというエンジンは、まさにエンジン屋としてのマツダの技術の塊とも言えます。
■スカイアクティブ D
スカイアクティブ Dというのは、マツダが開発した乗用車用のディーゼルエンジンの事です。日本では、ディーゼルエンジンというと黒い排気ガスというイメージが定着していることもあり、ディーゼルエンジンの乗用車は数が少なかった背景があります。90年代に排気ガスが社会問題として取り上げられるようになると、ディーゼルエンジンはさらに無くなりました。
しかし欧州では、ディーゼルエンジンは燃費が良く、CO2の排気量が少ないエンジンとして、販売台数の半分がディーゼルエンジンほどの人気です。排気ガスの問題は、技術の進歩によって解決されているので、黒煙の問題はほとんどなくなっています。
しかし欧州では一般的なディーゼルエンジンも、日本では環境に悪いというイメージが抜けずにいました。ハイブリッドカーこそがエコカーというイメージが定着します。しかしマツダは、ディーゼルエンジンもエコカーエンジンと位置づけにおき、独自で開発を進めていました。
スカイアクティブ Dでは、特に排気ガス浄化技術が向上しており、窒素酸化物の処理を低コストで行えるようになりました。窒素酸化物の処理には、高価な触媒が必要なのですが、スカイアクティブ Dでは圧縮比を下げることで窒素酸化物を抑えます。処理の方法ではなく、問題になる窒素酸化物の発生を抑えるという方法を取っているのです。
さらに圧縮比を下げると、粒状黒鉛が増えるのですが、浄化技術を向上させることで、エンジン全体のコストを下げています。
■スカイアクティブ X
スカイアクティブ Xというのは、マツダが2019年に量産車に搭載する新しいエンジンです。世界の自動車メーカーが開発していたのですが、量産化までには至らなかったHCCIという技術を世界で初めて量産するエンジンです。
スカイアクティブ Xは、ガソリンエンジンなのですが、点火機構がディーゼルエンジンと同じものになっています。ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの良い点をまとめているエンジンです。
ガソリンエンジンでディーゼルエンジン並みの18.0という圧縮比ができれば、熱効率が非常によくなります。しかしガソリンエンジンで、高い圧縮比はノッキングという問題を併発します。そこでノッキングを完全に制御する方法を考える必要がありました。
マツダはノッキングを制御するために、スパークプラグを一時的に使用する方法を取ります。完全なHCCIは自然着火なのですが、スカイアクティブ Xでは完全なHCCIではなくスパークプラグの併用が必要です。しかし爆発の際に、ディーゼルエンジンの様に混合気が爆発するという面で、ガソリンエンジンとは異なります。
ガソリンを燃料にしながらも、ディーゼルエンジンのメリットが活かされるのがスカイアクティブ Xの特徴なのです。
スカイアクティブエンジンのメリット・デメリット
スカイアクティブエンジンには、メリットとデメリットがあります。それほどデメリットは多くないとはいっても、完全なエンジンなどは存在しないので考えておくべき点もあるのです。メリット・デメリットはエンジンの種類によって異なりますので、主な点を紹介しましょう。
■メリットとは?
・スカイアクティブ G
スカイアクティブ Gの場合には、低燃費ということが大きなメリットです。同じガソリンエンジンで、排気量も変わらないのですが、スカイアクティブ Gのエンジンを搭載しているデミオはハイブリッドカー並みの低燃費です。
ハイブリッド技術を使わずしてガソリンエンジンの効率を高め、可能性を広げたという点で、スカイアクティブ Gは非常に良いエンジンです。出力も高くなっているのも、運転を楽しむという点でメリットになるでしょう。
・スカイアクティブ D
乗用車にディーゼルエンジンを搭載するメリットを広く知らせたエンジンです。日本では、ディーゼルエンジンに良い印象を持つ人が少なかったのですが、乗用車にディーゼルエンジンを搭載する良さを一般化させたエンジン。
ディーゼルの燃費の良さとトルクフルな走りが魅力です。ディーゼルの乗用車の中でも、窒素酸化物が非常に少ないというのも、環境の事を考えるとメリットと言えます。コンパクトカーでもディーゼルエンジンを搭載しているのは少ないです。コンパクトカーでもディーゼルエンジンの走りを楽しめるのも長所でしょう。
・スカイアクティブ X
ディーゼルエンジンとガソリンエンジンのメリットを組み合わせた、次世代のエンジンです。ガソリンエンジンの吹けの良さを活かしつつも、ディーゼルエンジンの低燃費とトルクが高い走りを実現できます。
■デメリットは?
・スカイアクティブ G
ガソリンエンジンであるスカイアクティブ Gのデメリットは、ほとんどないでしょう。不具合が報告されることも少なく、完成度が高いエンジンです。
・スカイアクティブ D
ディーゼルエンジンなので、DPFを再生するために、負荷をかけて回す必要があります。街乗りでしか乗らないという場合には、負荷が高い走りをしなくても良いのに、DPF再生のためにエンジンを回転させるのが手間になる可能性があります。高負荷の走りを定期的にする方以外には、少し不便だと感じさせる部分もあるのがデメリットです。
・スカイアクティブ X
ガソリンエンジンとディーゼルエンジンのメリットが合わさっているので、デメリットはほとんどありません。少し車体価格が高くなるので、ガソリンエンジンとの価格差を埋めるには、距離を走る必要がある点くらいでしょう。この点は、ハイブリッドも同じですので、さほど大きなデメリットとは言えません。
スカイアクティブ搭載車
スカイアクティブエンジンを搭載しているモデルの数が増えていますので、その中でも主になるような車種を紹介します。
■デミオ
マツダの量販コンパクトカーで、欧州でも人気の車種です。搭載されているスカイアクティブエンジンは、ガソリンとディーゼルの二つです。燃費が良くてシステムが少し複雑になるスカイアクティブ Dは高価になります。しかしスカイアクティブ Gはベーシックモデルになります。
1.3リッターエンジンの他にも、1.5リッターエンジンのモデルも設定されており、パワーある走りが楽しめるのが特徴です。スカイアクティブを搭載したモデルでも廉価ですので、気軽にマツダの技術を楽しめる車です。
■アテンザ
中型セダンの大きさですが、マツダでは最大クラスの車となります。ガソリンエンジンとディーゼルエンジンが搭載されています。
スカイアクティブ Gは2.0リッターと2.5リッター、スカイアクティブ Dは2.2リッターと大きめの排気量です。出力も排気量以上のものになっています。カタログ値では、標準クラスの燃費ですが、実燃費では低燃費なのが特徴です。
スカイアクティブは乗って初めて感じることができる!
スカイアクティブは、マツダが開発した新しい技術です。それぞれのパワーユニットには、メリットがたくさんあります。マツダらしく環境対策や効率向上を目指して開発したスカイアクティブという技術は、ドライバーを楽しませてくれることでしょう。
よりパワフルで、環境にも優しいマツダのスカイアクティブエンジン。実際に運転をすることで、マツダの技術を感じてみてください。ガソリンエンジンの常識を超える低燃費で、高性能なエンジンになっていることでしょう。