アジアンタイヤとは?
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アジアンタイヤは、韓国・台湾・中国・東南アジアなどアジアのメーカーが製造・販売するタイヤの通称で、日本のタイヤ販売の現場で使われている言葉です。国産メーカーのタイヤも海外工場で作られるものがありますが、こちらはアジアンタイヤとは呼びません。
世界のタイヤ売上ランキングを見ると、アジアンタイヤの企業規模が分かります。Tire Business誌の「Global Tire Report」2025年版(2024年の売上実績)では、上位10社がミシュラン、ブリヂストン、グッドイヤー、コンチネンタル、ピレリ、住友ゴム、ハンコック、横浜ゴム、中策ゴム(ZC Rubber)、賽輪(Sailun)の順で、韓国のハンコックが7位、中国の中策ゴムと賽輪が9位と10位に入っています。
ハンコックは日本の住友ゴム(ダンロップ)・横浜ゴムと並ぶ売上規模で、2026年8月に公開された2026年版(2025年の売上実績)でも、上位10社に新たに入った企業はなく、顔ぶれは変わっていません。
一方で、通販で「アジアンタイヤ」として並ぶブランドには、ドバイのZEETEXやベルギーのMINERVAのように本社がアジアにないものも混ざっています。産地で判断するより、次で紹介する3つの公開情報で比べるのがよいでしょう。
「やばい」と言われる理由と、選ぶときに確認したい3つの情報
アジアンタイヤが「やばい」と言われる理由は、価格の安さから「品質を削っているのでは」と推測されることと、ブランドの情報が少なく比べようがないことの2つです。
後者は、公開されている3つの情報を確認すると、メーカーを比べる材料を増やせます。3つは意味が違うので、それぞれ何を示すかを分けて押さえてください。
■1. JATMAのラベリング制度に参画しているか(銘柄の性能を比べる材料)
JATMAのラベリング制度は、乗用車用タイヤの「転がり抵抗性能」をAAA〜Cの5等級、「ウェットグリップ性能」をa〜dの4等級で表示する業界自主基準で、2010年1月から運用されています。
消費者への情報提供が目的で安全性を認証する制度ではなく、ラベルを表示するには根拠データをタイヤ公正取引協議会に届け出る必要があり、虚偽表示は法令で罰せられることがあります。参画しているのはブリヂストン、住友ゴム、横浜ゴム、TOYO TIRE、ミシュラン、グッドイヤー、ハンコック、クムホ、ナンカン、オートバックス、ピレリ、ネクセン、マキシス、ノキアン、コンチネンタルの15社です。
注意したいのは、メーカーが参画していても、等級を比べられるのは制度の対象で届出のある銘柄に限られる点です。
対象は市販用の乗用車用・小型商用車用タイヤで、スタッドレスタイヤとして販売されるタイヤは対象外、転がり抵抗係数やウェットグリップ性能が一定値に届かないタイヤも対象外になります。
等級は製品ラベル、カタログ、メーカーのWebサイトなどに表示され、届出のある銘柄はタイヤ公正取引協議会の「低燃費タイヤ等のラベリング検索」で銘柄・サイズごとに調べられます。
つまり、ハンコック・クムホ・ネクセン・ナンカン・マキシスの届出銘柄は、国産の届出銘柄と同じ等級でウェットグリップ性能を比べられます。
■2. 自動車メーカーの新車装着タイヤに採用されているか(メーカーの実績を示す材料)
新車装着(OE)タイヤは、自動車メーカーが求める性能に合わせて開発され、その要求性能を満たした特定の仕様が採用された実績で、そのメーカーの全銘柄の性能を保証するものではありませんが、メーカーの技術力を測る手がかりになり、クムホは2007年にメルセデス・ベンツAクラス、2013年にGクラス、2014年にBMW 3シリーズへの新車装着供給を始め、2014年には横浜ゴムと技術提携契約を結んでいます。
ネクセンは2018年にN'FERA RU1がポルシェ・マカンの新車装着タイヤに採用され、2024年には改良新型カイエンにも採用されました。
ハンコックは公式サイトで世界の主要自動車ブランドへの新車用タイヤ供給を掲げています。
■3. 世界売上ランキングの上位にいるか(企業規模を示す材料)
売上順位は企業規模を見る参考にはなりますが、個々のタイヤの安全性能を直接示す指標ではありません。前章のとおり、ハンコックは世界7位で、韓国・中国のメーカー3社が上位10社に入っています。ハンコックは年間1億本の生産能力、8つの生産工場、5つのR&Dセンターを持ち、160か国で販売しています。
国産と同じサイズでいくら違うか
同じサイズ・同じ用途の銘柄で、通販の実売価格を比べた結果が次の表です。オートウェイとTIREHOODの1本あたり税込価格で、2026年9月調査時点のものです。
| 155/65R14(軽自動車) | ブリヂストン NEWNO 5,790円 | ナンカン NA-1 4,890円 | MAXTREK MAXIMUS M2 3,240円/ZEETEX ZT6000 ECO 3,390円 |
| 195/65R15(ミニバン・セダン) | ブリヂストン ECOPIA EP300 10,810円/ダンロップ ENASAVE EC204 11,710円/ヨコハマ BluEarth-ES ES32 12,150円 | ナンカン NA-1 6,590円/クムホ ECOWING ES31 8,360円/ハンコック Laufenn G FIT AS-01 7,040円 | ZEETEX ZT6000 ECO 4,580円/HIFLY HF201 5,270円 |
| 215/45R17(スポーツ・低偏平) | ダンロップ DIREZZA DZ102 10,930円/ブリヂストン TECHNO SPORTS 15,090円 | ナンカン NS-2 8,480円 | MAXTREK MAXIMUS M2 6,030円/HIFLY HF820 7,480円 |
195/65R15で見ると、国産の低燃費タイヤ3銘柄が1本10,810〜12,150円なのに対し、ナンカンNA-1は6,590円で、1本あたり4,220〜5,560円、4本で16,880〜22,240円の差です。
クムホECOWING ES31は8,360円で、国産との差は4本で9,800〜15,160円、低価格ブランドのZEETEXなら4本で24,920〜30,280円の差になります。
なおLaufenn(ラウフェン)はハンコックの第2ブランドで、ハンコック本体のKinergyシリーズとは別の位置づけです。
JATMAラベリング制度に参画しているアジアンタイヤメーカー5社
ラベリング制度に参画し、公式サイトで企業情報を確認できる5社を紹介します。いずれも日本法人または国内の販売窓口があり、日本向けに複数の乗用車用タイヤを展開しています。
■ハンコック(HANKOOK・韓国)
《画像提供:Response》ハンコック(HANKOOK・韓国)
世界売上7位で、年間1億本の生産能力を持つ韓国最大手です。乗用車用はKinergy(街乗り・低燃費)、Ventus(スポーツ)、Dynapro(SUV)、iON(EV用)、Weatherflex(オールシーズン)と用途別にそろい、第2ブランドとしてLaufennを展開しています。国産の主力銘柄と同じ土俵で選びやすい、アジアンタイヤの代表格です。
■クムホ(KUMHO・韓国)
《画像提供:Response》〈写真撮影:小林岳夫〉クムホ(KUMHO・韓国)
1960年設立、1977年に日本法人を設立した老舗で、日本での販売歴は40年を超えます。メルセデス・ベンツやBMWへの新車装着供給、横浜ゴムとの技術提携(2014年)を公式の沿革に記載しており、年産6,500万本の規模です。ECOWING(低燃費)、SOLUS(コンフォート)、ECSTA(スポーツ)が主力で、第2ブランドのMARSHALもあります。
■ネクセン(NEXEN・韓国)
《画像提供:Response》ネクセン(NEXEN・韓国)
ポルシェ・マカン、カイエンへの新車装着採用が公式ニュースで確認できるメーカーで、日本法人はネクセンタイヤジャパンです。N'FERA(スポーツ・SUV)、N blue(低燃費)、N blue 4Season(オールシーズン)が主力で、新車装着の実績を根拠に選びたい人に向くメーカーです。
■ナンカン(NANKANG・台湾)
1959年創業の台湾で最も歴史のあるタイヤメーカーで、創業初期に横浜ゴムと技術提供契約を結んだ経緯があります。世界180か国に供給し、日本ではオートウェイがパートナーとして輸入販売しています。NA-1(コンフォート)、AS-2+(プレミアム)、NS-2(スポーツ)、AW-1(スタッドレス)とラインアップが広く、通販での価格と入手性が強みです。
■マキシス(MAXXIS・台湾)
台湾の正新ゴム工業のブランドで、日本法人は2005年設立のマキシスインターナショナルジャパン(神奈川県伊勢原市)です。乗用車用のほか二輪・自転車用でも知られるブランドで、JATMAラベリング制度にも参画しています。
通販で選べる低価格ブランド
オートウェイが扱うブランドには、NANKANG・FEDERAL・FINALIST(台湾)、OTANI(タイ)、CEAT(インド)、HIFLY・MAXTREK(中国)のほか、ZEETEX(ドバイ)、RADAR(シンガポール)、MINERVA(ベルギー)、DAVANTI・ENVOY(英国)、MOMO(イタリア)があります。このうちJATMAラベリング制度に参画しているのはナンカンだけで、ほかのブランドは参画していません。
これらのブランドは、JATMAの等級で国産や参画5社の銘柄と比べられない代わりに、国産より大幅に安い銘柄が多く、今回比べた195/65R15では半額以下になる例もあり、その分の判断材料は自分で集める必要があります。
メーカーが公表している性能値や試験データ、輸入元が示す認証の有無を確認し、それでも足りなければ等級で比べられる銘柄を候補に戻す、という順番で考えるのが良いでしょう。
アジアンタイヤを選ぶときの3条件
ラベリングの等級を見る
JATMA参画メーカーのうち、届出のある銘柄なら、ウェットグリップ性能の等級(a〜d)を製品ラベルやメーカーWeb、タイヤ公正取引協議会の検索で確認できます。
用途で絞る
通勤の街乗りが中心か、高速道路を頻繁に使うか、雪が降る地域かで必要な性能が違います。スタッドレスやオールシーズンが必要な地域では、夏タイヤの安さだけで決めないでください。
車両メーカーが指定するサイズと負荷能力を満たす
保安基準は、タイヤに加わる荷重がそのタイヤの負荷能力以下であることを求めており、これは国産でもアジアンでも変わりません。
交換の実務では、車両メーカーが指定するサイズを基本に、ロードインデックスや速度記号を変える場合は数値だけで判断せず、車両メーカーやタイヤメーカーの適合情報を確認してください。XL(エクストラロード)規格の銘柄は必要な空気圧も変わります。
アジアンタイヤの寿命は短い?
タイヤの寿命は銘柄と使い方で決まり、判断基準は国産もアジアンも同じで、残り溝(法律上の使用限度は1.6mm、ブリヂストンなどメーカーが勧める交換の目安は4mm)、年数(JATMAは使用開始後5年以上で販売店の点検、製造後10年を目安に交換を推奨)、外観(ひび割れ・ふくらみ・偏摩耗)の3つで判断します。
摩耗の速さは銘柄によって違うため、安い銘柄を選ぶなら残り溝を定期的に測る習慣とセットで考えてください。判断の手順はこちらの記事にまとめています。
よくある質問
■ハンコックとナンカンはどちらが上ですか?
企業規模ではハンコックが世界7位で、ナンカンは通販での価格と入手性に強みがあります。どちらもJATMAラベリング制度に参画しているので、自分のサイズで候補になる届出銘柄同士を、ウェットグリップ性能の等級と価格で比べるのが確実です。
■高速道路でも大丈夫ですか?
アジアンタイヤだからという理由だけで高速道路を走れなくなることはありません。ただし、速度記号だけで適合を判断することはできず、車両メーカー指定のサイズと必要な負荷能力を満たし、ホイールや車体との適合も確認したうえで選んでください。雨天の高速走行を重視するなら、ウェットグリップ性能の等級が確認できる届出銘柄を選び、残り溝4mmを目安に早めに交換するのが安全です。
■スタッドレスもアジアンタイヤでいいですか?
ナンカンAW-1やハンコックWinter i*ceptなど、アジアンメーカーにもスタッドレスタイヤはあります。ただし、JATMAの低燃費タイヤ等ラベリング制度はスタッドレスタイヤを対象外としているため、本記事で使った等級では比べられません。氷上・雪上性能は銘柄ごとの試験データを確認して選ぶ必要があり、比較の考え方はこちらの記事で整理しています。
■車検に通りますか?
アジアンタイヤであることだけを理由に車検で不合格になることはありません。保安基準はタイヤの産地を問わず、タイヤに加わる荷重が負荷能力以下であること、溝の深さ1.6mm以上、著しい亀裂やコード露出がないこと、空気圧が適正であることなどを求めており、国産と同じ条件で確認されます。
■中古車についているアジアンタイヤは替えるべきですか?
銘柄だけで交換を決める必要はありません。残り溝、製造年週、ひび割れやふくらみ、偏摩耗、空気圧を確認してください。年数や残り溝だけで継続使用できるとは断定できないため、状態が分からない場合や使用開始から5年以上経っている場合は、タイヤ販売店で点検を受けるのが確実です。
■ラベリングがないブランドは危険ですか?
危険と断定はできません。ラベリングは情報提供のための業界自主基準で、参画していないことは性能が低いことを意味しませんが、国産や参画メーカーの銘柄と同じ等級で比べる手段がないことは事実です。メーカーの公表値や試験データを確認し、装着後は残り溝と空気圧をこまめに点検して使ってください。
まとめ
《画像提供:Response》〈photo by BMW〉ハンコックの高性能タイヤを装着するBMW M5
アジアンタイヤは、JATMAラベリング制度への参画、自動車メーカーの新車装着採用、世界売上ランキングという3つの公開情報で比べられます。
ハンコック・クムホ・ネクセン・ナンカン・マキシスの5社は制度に参画しており、届出のある銘柄は国産と同じ等級で比べられ、195/65R15の実売価格ではナンカンNA-1が国産の低燃費タイヤ3銘柄より1本約4,000〜5,000円ほど安く、4本で約16,000〜20,000円の差でした。
どのメーカーを選んでも、車両メーカー指定のサイズと負荷能力を満たすこと、残り溝を測る習慣を持つことは変わりません。これらを確認すれば、価格だけでなく適合やタイヤの状態も踏まえて比べやすくなります。


