タイヤメーカーの性能ランキング、結論から
タイヤメーカーの性能を比較するとき、「どこが一番良いか」という単純な1位は存在しません。タイヤの性能には、低燃費性能(転がり抵抗)・ウェットグリップ性能・静粛性・寿命(耐摩耗性)など複数の軸があり、しかも一部の軸は背反関係(片方を良くするともう片方が悪化する)にあるためです。
幸い、低燃費性能とウェットグリップ性能については、日本自動車タイヤ協会(JATMA)が定める「低燃費タイヤ等のラベリング制度」という統一の等級表示があり、メーカーやブランドをまたいで数値ベースで比較できます。この記事では、このJATMAラベリング制度を軸に、静粛性・寿命の見方もあわせて、性能で選ぶタイヤメーカーの比較方法を解説します。タイヤ選びで「なんとなく有名だから」「価格が安いから」で決めてしまう前に、まずはラベルに書かれている等級の意味を知ることが、性能面で失敗しないための一番の近道です。
JATMAラベリング制度とは?性能を数値で比較できる公的な物差し
「低燃費タイヤ等のラベリング制度」は、日本自動車タイヤ協会(JATMA)が2010年1月から運用している業界の自主基準です。タイヤの「転がり抵抗性能」と「ウェットグリップ性能」をそれぞれ等級化し、タイヤラベルに表示する仕組みで、メーカーやブランドが違っても同じ基準で性能を比較できるのが特徴です。
転がり抵抗性能は、走行中にタイヤが失うエネルギーの少なさを表し、燃費の良さに直結します。ウェットグリップ性能は、路面が濡れた状態でのグリップ力(制動性能)を表します。カタログやタイヤ販売店の製品ラベルに記載されている「AAA」「a」といった記号は、このJATMA制度に基づく等級です。
この制度には、転がり抵抗性能を示すマーク、ウェットグリップ性能を示すマークに加えて、両方の基準を満たしたタイヤにだけ表示できる「低燃費タイヤ統一マーク」の3種類のマークが用意されています。統一マークが付いているかどうかを見るだけでも、そのタイヤが低燃費タイヤの基準を満たしているかを簡単に判断できます。
転がり抵抗性能等級(低燃費性能)の見方
転がり抵抗性能は、乗用車用タイヤの場合、転がり抵抗係数(RRC)の数値によって5段階に等級分けされます。JATMAの基準は次の通りです。
・AAA:RRCが6.5以下(最も低燃費)
・AA:RRCが6.6〜7.7
・A:RRCが7.8〜9.0
・B:RRCが9.1〜10.5
・C:RRCが10.6〜12.0(この中では最も燃費が劣る)
AAAに近いほど転がり抵抗が小さく、燃費に貢献するタイヤということになります。JATMAの解説によれば、タイヤの転がり抵抗が自動車の燃費に与える寄与率は、一般市街地走行で7〜10%、法定のモード燃費試験で10〜20%、高速道路のような一定速度走行では20〜25%にのぼるとされています。仮に燃費への寄与率を10%と見積もった場合、転がり抵抗を20%低減できれば、燃費は約2%向上する計算になります。
この等級は、各タイヤメーカーの商品ページやオンライン販売サイトの商品仕様欄にも「転がり抵抗性能」の項目として記載されていることが一般的です。同じサイズ・同じ価格帯のタイヤを比較する際は、この等級の違いだけで年間の燃費に差が出る可能性があることを覚えておくと、比較の視点が増えます。
ウェットグリップ性能等級の見方
ウェットグリップ性能は、基準タイヤと比較したウェットグリップ指数をもとに、乗用車用タイヤで4段階に等級分けされます。
・a:ウェットグリップ指数が155以上(最も高いグリップ性能)
・b:140〜154
・c:125〜139
・d:110〜124(この中では最もグリップ性能が控えめ)
aに近いほど、雨の日にブレーキを踏んだときのグリップ力が高いタイヤということになります。なお、JATMAの定義では「転がり抵抗性能がA等級以上、かつウェットグリップ性能がa〜dのいずれか」に該当するタイヤが「低燃費タイヤ」と呼ばれます。ウェットグリップの等級そのものには最低ラインが設けられていない点は、タイヤを選ぶ際に見落としやすいポイントです。
雨の日の運転が多い地域や、通勤・送迎で毎日車を使う人にとっては、燃費以上にウェットグリップ性能が安全性に直結します。カタログ上の等級を比較する際は、転がり抵抗性能等級だけを見て「低燃費だから良いタイヤ」と判断せず、ウェットグリップ性能等級もあわせて確認する習慣をつけましょう。
低燃費性能とウェット性能は背反(トレードオフ)の関係にある
「低燃費性能もウェット性能も両方AAA・a等級のタイヤが一番良いのでは」と考えたくなりますが、JATMAはこの2つの性能について「転がり抵抗を低減(改善)すれば、濡れた路面での制動距離は伸び(悪化)る、つまり背反の傾向にある」と説明しています。転がり抵抗を減らすためにゴムを硬くしたり接地の仕方を変えたりすると、路面をつかむグリップ力とはトレードオフになりやすいためです。
このため、各タイヤメーカーは特殊なゴム配合やトレッドパターンの工夫によって、この背反関係をできるだけ小さくする技術開発を競っています。タイヤメーカーごとの「性能の強さ」の違いは、この背反関係をどこまで高いレベルで両立できているか、という技術力の差でもあります。ランキングを見るときは、転がり抵抗性能等級とウェットグリップ性能等級を必ずセットで確認し、片方だけで判断しないことが重要です。
静粛性(ロードノイズ)はどう比較する?
静粛性については、転がり抵抗やウェットグリップのようなJATMAの等級制度はありません。近いものとして、JATMAは2023年1月から「低車外音タイヤのラベリング制度」を運用しています。これは、UNECEが定める車外騒音の基準値(UN R117-02)を満たした乗用車用・小型トラック用・トラック/バス用タイヤ(夏冬の市販用)に対して、「低車外音タイヤ」という呼称と専用アイコンの表示を認める制度です。応急用スペアタイヤなど一部のタイヤは対象外とされています。等級で優劣をつけるものではなく、基準を満たしているかどうかを示す認証という位置づけです。
また、この制度が対象とするのはタイヤが車の外に出す騒音(車外音)であり、車内で感じる静粛性(ロードノイズ・パターンノイズ)とは評価の視点が異なります。車内の静粛性は、各メーカーが独自技術で訴求している分野です。たとえばブリヂストンは、上級ブランド「REGNO」を「静粛性、乗り心地、運動性能を高次元でバランスさせたタイヤ」と位置づけています。ダンロップは「サイレントコア(特殊吸音スポンジ)」という独自技術をLE MANSシリーズなどに採用し、タイヤ内部の空気振動である「空洞共鳴音」をスポンジで吸収することで、ロードノイズの低減に寄与するとしています。
このように、静粛性は数値等級での横並び比較ができない性能軸です。カタログスペックだけで判断せず、上級・コンフォート系グレードの技術説明を読み比べたうえで、可能であれば店頭での試乗・試聴によって体感差を確認するのが確実です。静粛性を重視する場合は、こうした各メーカーの上級・コンフォート系グレードから選ぶのが基本になります。
タイヤ寿命(耐摩耗性・経年劣化)の見方
タイヤの寿命は、「溝の摩耗」と「ゴムの経年劣化」の2つの側面から判断します。
JATMAによれば、タイヤの使用限度は残り溝1.6mmで、これを下回ってスリップサインが露出した状態での走行は保安基準違反にあたります。また経年劣化については、使用開始から5年以上経過したタイヤは販売店などでの点検を、製造から10年経過したタイヤ(スペアタイヤを含む)は、外観上問題がなく見えても新品への交換をJATMAは推奨しています。
各メーカーは、摩耗が進んでも性能が落ちにくい「ライフ性能」を訴求したタイヤをラインアップしています。寿命を重視する場合は、カタログの摩耗ライフに関する表記や、製造から日が浅い個体(サイドウォールに刻印された製造年週で確認可能)を選ぶことが基本になります。
溝の深さと経年劣化は、それぞれ別のリスクである点にも注意が必要です。溝が十分に残っていても、製造から年数が経ったタイヤはゴムの硬化によってグリップ力や耐久性が低下することがあります。逆に、購入してから走行距離が少なくても、保管年数が長ければ交換を検討すべき場合があるため、走行距離だけでなく製造年週も定期的に確認しておくと安心です。
性能軸ごとに見る、タイヤメーカー比較の考え方
ここまでの内容を踏まえると、「タイヤメーカーの性能ランキング」は、次のように軸ごとに整理して考えるのが実用的です。
・低燃費性能を最優先したい場合:転がり抵抗性能等級がAAA・AAのグレードを、各メーカーのラインアップから探す
・雨天時の安全性を最優先したい場合:ウェットグリップ性能等級がa・bのグレードを優先し、転がり抵抗等級とのバランスも確認する
・車内の静粛性を最優先したい場合:REGNO(ブリヂストン)やLE MANS(ダンロップ)のような、各メーカーの上級・コンフォート系グレードを比較する
・タイヤ寿命を最優先したい場合:摩耗ライフを訴求したグレードと、製造年週が新しい個体を選ぶ
ブリヂストン・ミシュラン・ダンロップ・ヨコハマタイヤ・トーヨータイヤ・グッドイヤー・コンチネンタル・ピレリ・クムホ・ファルケン・NITTOなど、国産・海外を問わず各メーカーが得意分野を持つブランドを展開しています。メーカー単位で「どこが一番」と決めるより、タイヤラベルに記載された転がり抵抗性能等級・ウェットグリップ性能等級を製品単位で見比べたうえで、静粛性や寿命など自分が重視する軸を1つ決めて絞り込む方が、実際の使用感に近い選び方になります。
また、同じメーカーでも、ブランド・グレードによって等級は大きく異なります。同じメーカーの中でも、低燃費特化グレードと、ウェットグリップ・静粛性を重視したプレミアムグレードでは、狙っている性能バランスがそもそも違うため、「このメーカーは低燃費寄り」「あのメーカーはウェット性能寄り」と単純化しすぎず、購入前に個別の商品ラベルを確認することが結局は一番確実です。
タイヤラベルの見方・確認方法
実際にタイヤを選ぶときは、次の手順でラベルを確認すると、性能の比較がしやすくなります。
1. 商品ページやカタログに記載された転がり抵抗性能等級(AAA〜C)を確認する
2. 同じ商品のウェットグリップ性能等級(a〜d)を確認する
3. 転がり抵抗A等級以上・ウェットグリップいずれかの等級を満たしていれば「低燃費タイヤ」に該当する
4. 静粛性を重視する場合は、上級・コンフォート系のグレード名(REGNO、LE MANSなど)や公式サイトの説明もあわせて確認する
5. 寿命を重視する場合は、摩耗ライフの表記とサイドウォールの製造年週を確認する
この5つを押さえておけば、メーカー名や価格帯だけでなんとなく選ぶよりも、性能の根拠を持ってタイヤを比較できます。
タイヤ交換・買い替えを検討するなら
転がり抵抗性能等級やウェットグリップ性能等級を踏まえて交換するタイヤを決めたら、タイヤ通販の「CARTUNEタイヤ」でメーカー・サイズから商品を探す方法があります。
レスポンス・カーナリズムと同じイードが運営するCARTUNEタイヤは、1本からの購入に対応しており、購入したタイヤを取付店へ直送することもできます。4本まとめてではなく、摩耗やひび割れが目立つ1〜2本だけを優先して交換したい場合にも使いやすい仕組みです。
まとめ
タイヤメーカーの性能は、単純な1位ではなく、低燃費性能(転がり抵抗)・ウェットグリップ性能・静粛性・寿命という複数の軸で見比べるのが実用的です。低燃費性能とウェットグリップ性能は、JATMAの「低燃費タイヤ等のラベリング制度」によって、AAA〜Cの転がり抵抗性能等級と、a〜dのウェットグリップ性能等級という共通の物差しで比較できます。ただしこの2つは背反関係にあるため、片方だけでなく両方の等級をセットで確認することが大切です。
静粛性にはJATMAの等級制度はなく、車外音の合否を示す「低車外音タイヤ」の認証と、各メーカー独自の静粛性技術(REGNOやLE MANSなど)をあわせて確認します。寿命については、残り溝1.6mmという使用限度と、5年点検・10年交換というJATMAの目安を基準に、摩耗ライフ表記や製造年週もチェックしましょう。
「タイヤメーカーの性能ランキング」を探している場合でも、最終的にチェックすべきはメーカー名そのものより、商品ごとのタイヤラベルに書かれた等級です。自分が最も重視する性能軸を1つ決めたうえで、転がり抵抗性能等級・ウェットグリップ性能等級を製品単位で比較するのが、後悔しないタイヤメーカー選びの近道です。
タイヤメーカーの性能ランキングに関するFAQ
タイヤメーカーで性能が一番良いのはどこですか?
性能には低燃費性能・ウェットグリップ性能・静粛性・寿命など複数の軸があり、単純な1位はありません。JATMAの転がり抵抗性能等級(AAA〜C)とウェットグリップ性能等級(a〜d)を製品単位で確認し、自分が重視する軸で比較するのが実用的です。
低燃費タイヤの基準は何ですか?
JATMAの定義では、転がり抵抗性能等級がA等級以上(AAA・AA・Aのいずれか)で、かつウェットグリップ性能等級がa〜dの範囲内にあるタイヤが「低燃費タイヤ」に該当します。
転がり抵抗性能等級とウェットグリップ性能等級は両方AAA・aが良いタイヤですか?
JATMAによれば、転がり抵抗を低減すると濡れた路面での制動距離は伸びる傾向があり、2つの性能は背反関係にあります。両方を高いレベルで両立できているかどうかが、メーカー・製品ごとの技術力の差になります。
タイヤの静粛性はどうやって比較すればいいですか?
静粛性にはJATMAの等級制度がありません。JATMAは2023年1月から、車外騒音の基準を満たした「低車外音タイヤ」の認証制度を運用していますが、これは合否のみで等級はありません。車内の静粛性は、REGNO(ブリヂストン)やLE MANS(ダンロップ)など、各メーカーの上級・コンフォート系グレードの技術説明を比較するのが基本です。
タイヤの寿命はどのくらいですか?
JATMAは、使用限度を残り溝1.6mmとしたうえで、使用開始から5年以上経過したタイヤは点検を、製造から10年経過したタイヤ(スペアタイヤを含む)は外観上問題がなくても交換を推奨しています。
タイヤのラベルに書かれている「AAA」「a」は何を意味していますか?
「AAA」は転がり抵抗性能等級(低燃費性能)で、AAA・AA・A・B・Cの5段階のうち最も転がり抵抗が小さい(燃費が良い)等級です。「a」はウェットグリップ性能等級で、a・b・c・dの4段階のうち最もウェットグリップ性能が高い等級です。いずれもJATMAの「低燃費タイヤ等のラベリング制度」に基づく表示です。


