ついに登場したe-POWER
2017年にフルモデルチェンジされた「セレナ」が、クラストップの販売台数トップの座をトヨタの「ヴォクシー」から奪取する大ヒットとなった要因は、高速道路単一車線自動運転システムの「プロパイロット」の設定でした。
そして今回、満を期して登場したのが、「e-POWER」搭載モデルです。
2017年に「e-POWER」を搭載した「ノート」は発売以来大ヒットを続け、2018年2月度にも「プリウス」を抑え、登録乗用車販売台数№1の座を奪取しています。
「セレナ 」もこの勢いをかりて、一度は記録した「ノート」との1.2位独占を狙っているのです。
シリーズ方式vsパラレル方式、ハイブリッドシステムの違い
ステップワゴンスパーダハイブリッド
「セレナe-POWER 」も「ステップワゴンスパーダハイブリッド」の違いはそのシステムにあります。
「ステップワゴンスパーダハイブリッド」に採用される「SPORT HYBRID i-MMD」は、パラレル方式(並列方式)と呼ばれ、エンジンとモーターの両方を車両の駆動に使用する方式です。
トヨタを始め、一般的にハイブリッド車と呼ばれる車種にはこの方式が用いられています。
それに対して、「セレナe-POWER 」に持ち入れられているのが、シリーズ方式(直列方式)と呼ばれ、エンジンを発電のみに使用し、モーターを車軸の駆動と回生のみに使用します。そのため走行ではEVと変わらず、日産では、充電を必要としない新しい EVだとしています。
では、もう少し詳し2車のシステムの仕組みと、そのメリットデメリットを比較してみましょう。
■100%電動で走る「e-POWER」
セレナe-POWER電制シフト
セレナe-POWER
通常の発進や走行時には、エンジンが停止したまま電力だけで静かに発進し、バッテリーの残量や車速に応じてエンジンを始動、エンジン音が気にならない回転数に制御しながら充電を行ないます。
また、急加速や登坂時などには、バッテリーからの電力に加え、エンジンで発電した電力も直接駆動モーターによって、加速します。
さらに、減速時にはエンジンを停止し、回生発電した電力を高電圧バッテリーに充電することで、 EVのように外部電力からの充電は不要になり、ガソリンエンジン車やハイブリッド車と同様、ガソリンの給油のみで走行することが可能です。
■マナーモードとチャージモードでよりEVらしさを
また、新感覚の走行モード「e-POWER Drive」により、アクセルペダルの踏み戻しだけで、加速から減速までを楽に行なえ、ワンペダル感覚の運転を楽しむことが可能です。
新たに、バッテリー単独での走行を行う「マナーモード」と、バッテリー単独走行時に事前に充電を行う「チャージモード」が追加設定されました。
なお、シリーズ方式ハイブリッドの苦手とするストップ・アンド・ゴーが少なくエネルギーの回生が少ない場面や、エンジンの直接駆動方式が得意とする高速巡航では、通常のハイブリッドシステムやクリーンディーゼル車に比べ、燃費面で不利になりやすいという弱点があります。
セレナe-POWER
(走行用モーター)
最高出力 100kW[ 136PS ]
最大トルク 320N・m[ 32.6kgf・m ]
(発電用エンジン)
最高出力 62kW[84PS ]/6,000rpm
最大トルク 103N・m[10.5kgf・m ] / 3200-5200rpm
JC08モード燃費率:26.2㎞/L
強力なパワーと低燃費の「SPORT HYBRID i-MMD」
2.0Lの直列4気筒アトキンソンサイクルエンジンに、2基のモーターを組み合わせ、モーターの間に設置されたクラッチを高速巡航時のみに繋いでモーターでの駆動をアシストするというシステム。
モーターがエンジンのサポートをするハイブリッドとは逆のスタイルとなっています。特にエンジンでの駆動を高速巡航時のみに限定した結果、複雑な多段トランスミッションは不要となり、シリーズ型とパラレル型の良い所を兼ね備えた低燃費ハイブリッドシステムとなっていて、e-POWER が苦手な高速巡航時の燃費も、WLTCモードを見ると、市街地走行と比べて、落ち込みが少ないないのがわかります。
ステップワゴンスパーダハイブリッド
(走行用モーター)
最高出力 135kW[ 184PS ]/ 5,000 - 6,000 rpm
最大トルク 315N・m[ 32.1kgf・m ] / 0-2,000 rpm
(エンジン)
最高出力 107kW[ 145PS ] / 6,200 rpm
最大トルク 175N・m[ 17.8kgf・m ]/ 4,000rpm
JC08モード燃費率:25.0㎞/L
WLTCモード燃費率:20.0㎞/L
市街地モード:18.8㎞/L
郊外モード:21.7㎞/L
高速道路モード:19.5㎞/L
まとめ
実は、今回の執筆にあたっては、話題性の大きい「セレナe-POWER 」が登場したため、価格帯の近い「ステップワゴンスパーダハイブリッド」と比較して、e-POWERのメリットを盛り上げてみようという魂胆でしたが、改めて「SPORT HYBRID i-MMD」を検証すると、市街地走行ではe-POWER以上のモーターパワーでEV走行が可能で、高速走行ではエンジンがモーターをアシストしてさらなるパワーを与え、しかも燃費でもe-POWERに僅差まで迫るなど、「SPORT HYBRID i-MMD」を搭載した「ステップワゴンスパーダハイブリッド」の良さを再認識してしまいました。
パワーで圧倒する「ステップワゴンスパーダハイブリッド」に対抗するには、わずかな燃費の差と、だれもが初体験のワンペダル感覚の運転ですが、コンパクトハッチの「ノートe-POWER 」のような過敏な改正ブレーキや加速感はあえて押さえているため、どれだけのメリットを感じられるかが問題となりそうです。