自動運転で起きた死亡事故
海外では2018年に入ってUber社の自動運転車による初めての対人死亡事故が発生しました。
今後、自動運転が普及するにつれて気になるのが自動運転車での事故の責任の所在はどこにあるのかという点です。
本記事では、自動運転で起きた死亡事故の事例と、政府が進める自動運転の事故に対する検討事項をご紹介します。
【レベル2:部分運転支援】2017年5月 テスラ「モデルS」トレーラーに衝突しドライバー死亡
まず初めに、2016年5月7日 アメリカ・フロリダ州でテスラ「モデルS」が部分的運転支援レベル2にあたる「オートパイロット」を使用中、トレーラーに衝突しドライバーが死亡する事故が起きました。
この際ドライバーは前を見ていなかったということが明らかになり、事故の責任はドライバーにあると結論付けられる結果となりました。
【自動運転の実験中】2018年3月 Uberの自動運転車が歩行者をはねる
2018年3月19日(現地時間)アメリカ・アリゾナ州テンピで、走行実験をしていたUberの自動運転車が自転車を押して歩いていた歩行者をはねて死亡させてしまう事故が発生。
事故当時の映像から、自動運転車に乗っていたドライバーがハンドルから手を離し前を見ていなかったということが分かっています。
しかし、システムが死亡した被害者を認識すべき状況だったにも関わらず速度を落とさなかったため、Uber社が遺族に和解金を支払うことで和解となりました。
米ウーバー自動運転車初の死亡事故の波紋、トヨタも米公道試験を中断[新聞ウォッチ] | レスポンス(Response.jp)
https://response.jp/article/2018/03/22/307495.html米ライドシェアサービス大手のウーバー・テクノロジーズの自動運転車が、米アリゾナ州フェニックス近郊で試験運転中に起こした死亡事故の波紋が広がっている。
【レベル2:部分運転支援】2018年3月 テスラ「モデルX」中央分離帯に衝突しドライバー死亡
2018年3月23日(現地時間) カリフォルニア州マウンテンビューで、テスラ「モデルX」の部分的運転支援レベル2「オートパイロット」を使用中、中央分離帯に衝突し、ドライバーが死亡した事故です。事故原因については現在も調査中となっています。
自動運転で事故を起こしたら責任は誰にある?
自動運転による走行中に事故を起こしてしまった場合、責任は誰にあるのでしょうか?
現在の日本では、まだ自動運転で事故を起こした場合の責任については法律の整備が整っていない状況です。
下記では、現在検討中である法整備の元になる自動運転制度整備大綱についてご紹介します。
※情報は2018年4月現在の情報です。
■自動運転制度整備大綱に記載された内容とは?
日本では2018年3月30日に政策会議の1つである日本未来投資会議にて自動運転の実現に向けた「制度整備大綱」がまとめられました。
制度整備大綱は、「自動運転に係る制度整備大綱」「自動運転制度整備大綱」とも呼ばれ、今後の自動運転に関わる法整備はこの制度整備大綱を元にまとめられていく見込みです。
制度整備大綱は前提として、2020年〜2025年にかけてレベル3自動運転と従来の車が同じ道路を走る過渡期を前提としてまとめられています。
下記にて制度整備大綱の内容をご紹介します。
1.【民事責任】自動運転の事故は自賠責保険の対象
自動運転による走行中に事故が起きた場合は民事上の責任は、現行の自賠法と同じく自動車の所有者(運行供用者)にあり、故意・過失に関わらず損害賠償の責任を負います。
制度大綱には、自動運転車によって事故が起きた場合は、従来の自動車と同じく自動車賠償責任保険(自賠責保険)によって事故の被害者を救済が行うことができるようにと記されています。
2. 車両がハッキングされた場合は政府が補償
また、車両がハッキングされた状態で事故に遭い、ドライバーに賠償責任がないと判断された場合は政府補償事業が、補償を行うことが記されました。
従来の車の盗難車に対する政府補償と同様に、ドライバーが車に鍵をかけていなかった等のセキュリティが問題である場合はドライバーの責任となる見込みです。
3. システムに明確な欠陥がある場合はメーカーの責任
制度大綱システムに明確な欠陥があると考えられる場合は、メーカーの責任になると記されています。
■今後検討されていく課題
政府は今後下記のような課題を検討していく予定です。
【刑事責任】自動運転の事故に関しては検討中
自動運転の車で死亡事故などが起きた場合の刑事責任も検討予定です。
2020年まで 事故分析用のデータ記録装置の設置義務の要否を検討
制度大綱は2020年までに、自動運転車に事故分析用のデータ記録装置を設置する義務をもたせるか否かを検討することを盛り込んでいます。
飛行機でも採用されている「ブラックボックス」は詳細な走行記録などを残すことで事故の原因が人的またはシステムによるものかを判断する手がかりになります。
2018年夏までに安全性のガイドラインを作成
また、政府は夏までに自動運転の安全性に関わるガイドラインをまとめる予定です。ガイドラインには、車のハッキングに対する耐性などが含まれる予定です。
まとめ
自動運転に関する責任の所在をどうするかは、法整備までにまだまだ時間がかかりそうです。
今後、具体的な法律が公布された場合は随時更新しご紹介していきます。