そもそもタイミングベルトとは?役割を説明。
タイミングベルトの説明の前に、まず4ストロークエンジンについて説明したいと思います。
4ストロークエンジン(4サイクル)とは、4回のストローク(行程)で1つの運動が終了するエンジンの事を指します。
エンジンを真横から見てピストンが上死点(一番上)から下に向いて動いて下死点まで移動すると1行程です。そして、また下死点から上死点まで移動すると2行程です。つまり、2往復して4行程という事ですね。
4ストロークエンジン以外には、2ストロークエンジンもありますが、現在では殆ど見かけなくなりました。ハイブリッドエンジンにも勿論4ストロークエンジンが採用されています。おそらく2ストロークエンジンの車を探す方が難しいといったくらい希少な存在です。
どうしても2ストロークの車を見てみたいといった方は、街で年式が古そうなジムニーを見掛けたら、窓を開けてエンジン音を確認してみて下さい。稀に2ストロークエンジンを搭載しているジムニーを発見する事ができます。
特徴はズバリ音で、「パランパンパンパン」という聞きなれない乾いた音を響かせていたら、それが2ストロークエンジンの音です。贅沢なオモチャとして所有してみたいものです。
すみません興奮して少し話が脱線してしまいましたが、4ストロークの特徴は気密性を上げて燃焼効率を上げる為にバルブの開閉を機械的に行っているんです。そしてこのバルブの開閉の「タイミング」を合わせる為に必要なものこそが「タイミングベルト」という訳です。
では実際に4行程の中でどのようなタイミングで開閉しているのか、解説します。
・1ストローク/吸入
インレットバルブがひらいている状態(空気を取り込んでいる)
・2ストローク/圧縮
両方のバルブが閉じている状態
・3ストローク/爆発
両方のバルブが閉じている状態
・4ストローク/排気
エキゾーストバルブがひらいている状態(ガスを排出している)
これらの動きをピストンの動きに合わせて絶妙なタイミングに調整して保持する為の部品がタイミングベルトという事です。
■タイミングベルトの規格について
タイミングベルト伝動は1945年米国ユニロイヤル社によって発明されて以来、JIS(日本工業規格)、ISO(国際標準化機構)などで制定され広く使われています。一般的にMXL,XL,L,Hなどが使われています。
タイミングベルト 交換時期と寿命の目安は?
一般的にタイミングベルトの交換は10万キロと言われていますが、実際の仕様条件や経年劣化なども考慮して交換時期を見極める必要性があります。
なぜならタイミングベルトが切れて修理に出される車の走行距離の中には、10万キロ以内でも切れてしまい修理となるケースもあります。Vベルトなどと比べるとエンジンの深部に装着されており、外気にさらされる事が無い為寿命は長いのですが、様々な要因によって推奨交換目安を大きく下回る事もあります。
タイミングベルトはゴムでできている為、経年劣化しやすいので例え走行距離が少なくとも、切れてしまう事があります。
それ以外の要因として、急発進などの高い負荷を与えている頻度が多い場合でも、ベルトへのダメージは蓄積されます。エンジンの出力を上げてカスタムしている車なども、早めに交換しておいた方が良いでしょう。
タイミングベルトの交換方法
では実際にタイミングベルトの交換までの手順を簡単に説明したいと思います。
1:まず作業を開始する前に、交換に必要な部品を揃えておく必要があります。
交換用のタイミングベルト、テンショナーをはじめ、各所シール類などは事前に用意しておきましょう。整備書などを取り寄せれる場合は取り寄せておくと、必要工具なども分かるので万全です。部品をディーラーで注文して整備書のコピーを貰えるように頼んでみるのも良いですね。
2:部品が揃ったら作業にかかります。まずバッテリーのマイナス端子を外します。
3:タイミングベルトに到達する為に、邪魔になるもの(サーペンタインベルトなど)を外す。
4:タイミングベルトのカバーを外して、タイミングベルが見えるようになったら、タイミングベルトにオイルや水が漏れて付着していないかを点検します。
5:漏れが確認できた場合は、漏れを止めてから6に進みます。(タイミングベルトが切れてしまった場合は※6,※7に進む)。
6:カムプーリーとクランクプーリーの位置をギア1コマの狂いもなく、タイミングベルトを交換する必要があるので、それぞれのプーリーとベルトにマーキングします。
7:ベルトを外して、新しいベルトにも同じ位置にマーキングしてから取り付けて終了です。
※6 バルブの損傷がないか、ピストンの損傷がないかを点検します。損傷がある場合は交換をしますが、ピストンまで損傷がある場合は、リビルトエンジン載せ替えや、廃車も視野にいれましょう。
※7クランクシャフトとカムシャフトを調整して、一番ピストンを圧縮上死点に持ってきます。その状態で、ベルトを組み付けてから手で4、5回ほど手で回転してみて、干渉がないかを確認して異常が無ければ終了です。
以上車種により作業が異なるので、おおまかな流れになりますが、必ず整備書やサービスマニュアルなどを参考にしながら作業をする事をオススメします。
■店舗で交換してもらう場合
万が一失敗した時のリスク(失敗は許されない作業です)を考えると、割高になってしまっても安全をとるにはお店で交換してもらうのがベターでしょう。
交換に必要な部品の洗い出しも慣れていないと業者に問い合わせする必要があるので、その手間も省けます。
自分で交換する場合との違いは、部品がすべて純正部品になるので、割高になる点にプラス工賃が上乗せされる事です。
しかしその分確実に修理されて戻ってきますので、自信での整備経験がない方や、安全を取るならプロに任せるべきでしょう。
■自分で交換する場合
自分で交換する場合は、必要部品の洗い出しをして注文も自分でする必要があり、且つ作業もする訳ですから手間は非常にかかります。ただし、必要部品は外品などの選択肢もある事で部品代そのものを下げる事もでき、工賃も自身で行うので価格的には半分以下に抑える事も難しくありません。
デメリットとしては、作業の手間がかかる事と、万が一失敗しても自己責任である事です。時間・手間・失敗した時のリスクはありますが、価格は半分以上抑える事も可能でしょう。
タイミングベルトの交換費用・工賃
タイミングベルトそのものは数千円と安価ですが、タイミングベルトの交換が必要な時期がきているという事は、当然その周辺機器にも交換時期が近づいている場合もあります。
安くすませるのであれば、30,000円~50,000円程で交換はできるでしょう。
しかし、折角分解作業をしているのですから、ついでにウォーターポンプやサーモスタットなど、交換しておいた方が良さそうな部品は交換しておく事をオススメします。
タイミングベルトを交換した後にまた別の修理が必要になるリスクは極力避けたいですよね。乗り続ける為に交換する訳ですから、現実的な金額としては、交換時期がきているものも、ついでに交換するとして60,000円~100,000円程はみておくべきでしょう。
ただし、タイミングベルトが切れた事による修理ではこの限りではなありません。
タイミングベルトが切れると、ピストンとバルブのタイミングがズレてバルブを突き上げてしまったりと被害はかなり大きくなります。そのような場合は80,000円~400,000円と文字通り蓋を開けてみないと分からない状態となっています。
タイミングベルトから異音がする場合
タイミングベルトは歯車にかみ合うようにギザギザになっているベルトなので、異音がする事はそう多くはありません。切れる前にも前兆がなく突然切れてしまいエンジンがストップしてしまう事の方が多いでしょう。
もし音がなっている場合は、本当にタイミングベルトなのかどうか慎重に見極めましょう。必要であればベルトの鳴き止めスプレーなどをサーペンタインベルトの音では無い事を確認してみるのもいいでしょう。
原則異音がする事象が少ない箇所なので、消去法で原因箇所を探していく方向が良いでしょう。
まとめ
タイミングベルトについて色々お話しましたが、いかがでしたでしょうか。もし、ご自分で交換される場合は、失敗が許されない作業なので覚悟が必要です。
整備書を取り寄せたり、必要工具等を購入して、準備万端でトライしてみるのも楽しいですよね。
ただ、失敗するとエンジンが使い物にならなくなる場合もあるので、経験・自信が無い場合は絶対に無理をせずにプロに頼みましょう。