アンダーステアとオーバーステアの違いは
まず、アンダーステアとオーバーステアという言葉についてですが、これらはコーナーを曲がる際のステアリング特性を表す言葉になります。
ステアリングを切ってコーナーを曲がっている最中に、速度が上昇するに従って車が内側の方へ切れ込んでいってしまう現象をオーバーステア、逆に外側の方へ膨らんでいってしまう現象をアンダーステアと言います。この説明だけではまだ良くお分かりいただけませんよね?それぞれの詳しい説明を次項で見ていきましょう。
アンダーステアとは
■アンダーステアとは
それではアンダーステアの方からご説明致します。アンダーステアとは、コーナーを曲がっている最中にハンドルを切る量を一定の状態にし、加速をしながら曲がっていった時に走行しているラインから外側へ膨らんでいってしまうことを指します。ピンと来ない方のために日常の例として、自分が運転中コーナーに差し掛かったとします。
ハンドルを切りながら曲がっている最中に徐々に外側へ膨らんでいき、カーブ侵入時のハンドルを切る角度では足りず慌ててハンドルを切り込んだ経験はございませんか?これがアンダーステアです。聞きなれない言葉だった方もいらっしゃるかもしれませんが、実は読者の皆さんは既に経験していらっしゃいます。
アンダーステアはハンドルの切る角度を調整せずそのまま走行すると、どんどん外側へ膨らんでいきますので最悪の場合曲がりきれずに衝突事故になってしまいます。補足としましてFF車は特性上アンダーステアが起きやすい車両となっています。車両の特性につきましては後ほどご説明致しますのでそちらをご覧下さい。
■オーバーステアとは
対してオーバーステアは単純にアンダーステアの逆で、加速すればするほど走行ラインが内側に切れ込んでいく状態の事を指します。車両の後方が外側へ膨らんでいく感覚と思っていただいた方が分かりやすいかもしれません。
オーバーステアに関しては私も含め、なかなか日常の中で経験されている読者の方は少ないと思います。これは、車両の特性上FR車で起こりやすい現象です。こちらも後ほど説明しておりますのでそちらをご覧下さい。
一度オーバーステア状態になってしまうと立て直すのはとても難しく、適切なハンドル操作をしないと最悪の場合スピン状態となってしまうので、注意が必要です。
アンダーステアの対策は?
説明を読んで、アンダーステアの対策方法は無いの?と思った読者の方の為にここからはアンダーステアの対策をみていきたいと思います。
未然にアンダーステアによる事故を防いでいただく為にも、こちらをしっかり読んでいただき安全なカーライフの為にぜひ参考にしていって下さい。コーナー進入時と脱出時、それぞれに対策がありますので順番に見ていきましょう。
■ コーナー進入時は?
まずアンダーステアが起きる要因として「しっかり減速ができていない」、「タイヤのグリップ力が得られていない」ということが上げられます。それらを解消する為には、スポーツ走行の基本である「スローインファストアウト」を心がける事です。スローインファストアウトとは、ゆっくりとコーナーに進入(スローイン)し、コーナー出口に向かって加速しながら高い速度でコーナーを脱出(ファストアウト)するというテクニックです。一般道走行時にはファストアウトの部分は必要ありません。ここで重要なのは、しっかりと減速しスローインするという事です。これにより2つのメリットが得られます。1つ目として、まずはしっかりと減速した状態を作ることができます。適切な速度でコーナーを曲がることがアンダーステアを出さない為には必要不可欠です。そして2つ目は、しっかりとフロントタイヤのグリップ力を使うことができます。しっかりとブレーキングをすることで車両の重心がフロント側に移動(フロント荷重)し、タイヤにその荷重を残すことによって路面にしっかりグリップする状態になり、理想的なコーナー進入を可能にします。
■ コーナー脱出時は
続いてコーナー脱出時のアンダーステア対策ですが、進入時と異なり「アクセルを踏み込むのが早すぎる」というこの1点だけが主な原因となります。車体がコーナーの出口に向かっていない状態でアクセルを踏み込むと、アンダーステアとなってしまうのです。アンダーステアの状態となっても曲がってくれる時点までは我慢をし、そこからゆっくりとアクセルを踏み込んでいくのが重要となります。加速を始める段階で急にアクセルを踏み込みと、せっかくフロントに移した荷重がリアに逃げてしまいタイヤのグリップ力が無くなってしまいます。なので加速する際には、徐々に加速していくことが重要です。以上がコーナー進入時と脱出時の対策となります。しっかりと減速をしフロントタイヤに荷重を乗せること、コーナーの出口に向かい始めたところから徐々にアクセルを踏みこんでいく事を意識していただければ、アンダーステアをが起きる確率はグッと低くなると思います。ぜひ、試してみてください。
FF車とは?
ホンダ シビックはFF車
さて、アンダーステアとオーバーステアの説明のところでFR車とFF車というワードが出てきました。ここからは車両特性の説明をしていきたいと思います。
まずFF車ですが、「FF」の意味からご説明致します。FFは駆動方式を表しており「フロントエンジン・フロントドライブ」で、前輪駆動を意味します。その名の通りエンジンが車両のフロント側に取り付けられ、駆動も前輪で行うということになります。現在市販されている車両のうち多くが、このFF車となります。ではなぜFF車が多く市販されるようになったのでしょう。メリット、デメリットから考えてみましょう。
■メリット・デメリットは
FF車のメリットです。大きなメリットとしてはFF車は駆動装置などの主要なパーツ全て(エンジンやトランスミッション、操舵装置)がフロント部分に収められている為、室内区間を広く設計できるということです。また少ないパーツから構成している為軽量化ができ、車両価格を抑えることができるなどのメリットがあります。
デメリットとしまして、構造上の問題でデザインに制限があること、大排気量のエンジンを搭載することができないということです。そして、アンダーステアの説明のところでも軽く触れましたが、全ての主要パーツがフロント部分に集約されてある為重心がフロント側へ集まり過ぎてしまいってしまいアンダーステアが出やすい傾向になっています。
ですのでパワーや操作性などの走行面に問題があるのです。このようなことから、車両価格や燃費を気にされる方や車内が広い車に乗りたい方、街乗り重視の方におすすめです。
■FR車とは?
日産 スカイラインはFR車
FR車ですが、こちらは「フロントエンジン・リアドライブ」で、後輪駆動を意味します。エンジンはFF車と同じくフロントに搭載していますが、駆動は後輪で行う方式になります。大排気量のスポーツカーや高級セダンなどをメインに多く採用されています。それではメリットとデメリットについてみていきましょう。
■メリット・デメリットは
FR車のメリットは、構造上の部分ではFF車とは反対に大排気量のエンジンを搭載することが可能であるということです。大排気量のエンジンは出力も高い為、高速走行時には非常に高いポテンシャルを発揮します。また駆動が後輪の為、ハンドル操作がスムーズに前輪に伝達されます。なので操作性が高く、運転をしていても疲れにくいという利点もあります。
デメリットはプロペラシャフトがあるという構造上、車内の足元部分が狭くなってしまいます。また、大排気量のエンジンを搭載している為エンジンルームやボンネットの面積が大きくなり、前方が見えにくく運転しづらいといった部分もあります。そして雨や雪、砂利道などの悪路を走行する際にはオーバーステアが出やすくスピンしやすい特性を持っています。このようなことから走りの楽しさを求める方、大排気量、高出力の車に乗りたい方、長距離ドライブをする方におすすめです。
駆動式別で違いはあるの?
FF車、FR車について説明しました。では続いて、駆動識別する上で違いがあるのかということについて説明します。
FR車はFF車に比べ、前輪より前にはみ出た部分(フロントオーバーハング)が短く、長めのボンネットになっています。そして乗車空間(キャビン)が後方よりとなっています。FR車の構造上、エンジンを車体の前後の方向に平行(縦置き)にする為、自然とフロント部分が長くなり、結果としてこのような見た目となってしまうのです。これがFR車の最大の特徴であり、FF車との違いを見極める上で一番のポイントとなります。ぜひこちらを参考に街で見かけた車で試してみてください。
RR車とは
ポルシェ 911はRR車
実は駆動方式には説明したFF車、FR車以外にもあります。
まずは、RR車です。こちらは「リアエンジン・リアドライブ」を意味しエンジンは車両リア側に搭載し、駆動も後輪で行うというものです。FF車の逆になったものと考えて頂いていいと思います。こちらの駆動方式は、加速性能に優れ、小回りが効くなどの走行性能についてのメリットが非常に多い駆動方式です。デメリットは全てを後輪側に頼っている為、オーバーステア傾向が非常に強くなっているという部分です。採用されている車両はポルシェなどのごく一部の車両に限られています。
4WDとは
ランドクルーザー プラド TX は4WD車
続いては4WD車です。最近ではAWDと呼ばれたりしています。「4ホイール・ドライブ」を意味しエンジンをフロントに搭載し、前輪後輪全てで駆動します。
また4WD車にはフルタイム、パートタイム、スタンバイ式、複合式などスイッチで切り替える方式や、コンピューターが路面に合わせ切り替える方式などいくつかの種類があるところも魅力の1つです。4WD車は急勾配の峠道やオフロード、雪道などのような悪路でその力を最も発揮します。4輪に効率良くエンジンの動力を伝え悪路を走破する性能こそが最大のメリットとなります。一方デメリットとしては構造上車両重量が重くなる、生産コストが高い、燃費が悪い、アンダーステアが出やすいなどがあります。
こちら4WDに関してはカーナリズム内にも特集記事がありますので、詳しく知りたい方はぜひそちらも合わせてお読みください。
まとめ
アンダーステアについてお分かりいただけましたでしょうか?駆動方式の特性上の問題もありますが、まずはこちらの記事を参考にしていただきご自分の運転について思うところがあれば、ぜひ「スローインファストアウト」を意識して運転してみて下さい。
必ずアンダーステアの改善に役立つと思います。また駆動方式の違いも理解していただければ、運転だけではなく車選びの際にも活用いただけると思います。これからも安全運転を意識していただき楽しいカーライフを過ごしていただければと思います。