AWDと4WDは何が違うのか
| AWDの意味 | All Wheel Drive=全輪駆動。乗用車では走行状況に応じて4輪すべてを駆動できる仕組みで、4WDと同じものを指す |
| 4WDと呼び分ける理由 | メーカーの表記の違い。スバルは常時全輪駆動であることを示すため2003年から国内表記をAWDに統一し、トヨタはE-Fourやダイナミックトルクコントロール4WD、ホンダはリアルタイムAWD、日産はe-4ORCE、マツダはi-ACTIV AWDと商品名で呼ぶ |
| 方式の種類 | 手動で切り替えるセレクティブ(パートタイム)、前輪が滑ると後輪に伝えるビスカス式、電子制御で先に配分するトルクスプリット式、センターデフで常時配分する方式、モーターで後輪や4輪を回す電気式 |
| 2WDと比べたメリット | 滑りやすい路面や登坂発進で駆動力が路面に伝わりやすく、コーナーでの安定性が高い。JAFの圧雪路テストでは勾配20%の坂を4WDだけが上りきった |
| 2WDと比べたデメリット | 価格が高く、燃費が落ち、重くなる。ヤリス クロスGのハイブリッドは2WDよりE-Fourが247,500円高く、WLTCモード燃費は30.2km/Lから28.1km/Lに下がる。制動距離は短くならない |
| 選ぶべき人 | 降雪地や坂道の多い地域で使う人、雨天の高速走行が多い人。舗装路中心の都市部では2WDで足りる場面が多い |
AWDか4WDかは言葉の違いで、選ぶときに見るべきなのは「どの方式で、いつ後輪に力を伝えるか」と「2WDとの価格差・燃費差に見合う使い方をするか」の2点です。
AWDという言葉の意味と、4WDと呼び分ける理由
《画像提供:Response》
AWDはAll Wheel Driveの頭文字で、車輪のすべてを駆動するという意味です。4WDは4 Wheel Driveで、4つの車輪を駆動するという意味なので、4輪の乗用車では両方とも同じ仕組みを指します。
海外ではAWD表記が一般的で、日本では四輪駆動・4WDと呼ばれることが多いという表記の違いがあるだけで、AWDだから4WDより高度、という区別はありません。
日本でAWDという言葉が広まった背景にはスバルの表記統一があります。スバルは1990年代以降、海外ではAWDと表記しており、国内では2003年の4代目レガシィ発売を機にAWDへ統一しました。
当初は、必要なときだけ4輪を駆動するパートタイム4WDと区別する意図があり、2015年以降のカタログでは「AWD(常時全輪駆動)」と記載し、常に全輪に駆動力を配分している特徴を明確にした表記です。
他のメーカーの呼び方は、仕組みごとの商品名です。
トヨタはハイブリッド車の電気式4WDを「E-Four」、エンジン車の電子制御4WDを車種に応じて「Dynamic Torque Vectoring AWD」や「ダイナミックトルクコントロール4WD」、ホンダは「リアルタイムAWD」、日産は電動駆動4輪制御技術を「e-4ORCE」、マツダは「i-ACTIV AWD」と名付けており、グレード表の駆動方式欄はトヨタが「2WD/4WD/E-Four」、マツダが「2WD/4WD」という表記です。
名称はそれぞれ違っても、4輪を駆動する仕組みという点は共通で、違いは次の章で説明する「方式」にあります。
AWD(4WD)の方式は何種類あるか|スバルの5方式で整理
AWDの方式は、前後輪への駆動力の作り方と配分の仕方、配分を変えるタイミングで分かれます。
スバルのAWD(4WD)は、ビスカス式フルタイム4WD、セレクティブ4WD、アクティブトルクスプリットAWD(ACT-4)、VTD-AWD(不等&可変トルク配分電子制御AWD)、前後独立モーター駆動式AWDの5つです。
| セレクティブ(手動切替) | 通常は2WDで走り、雪道や悪路でボタンやレバーで4WDに切り替える | 構造が単純。切り替えを運転者が判断する |
| ビスカス式フルタイム | 前輪が滑ったときにビスカスカップリングを介して後輪へ駆動トルクを伝える | 軽量コンパクトで、コンパクトカーやミニバンに多い。前輪が滑ってから後輪に伝わる |
| 電子制御トルクスプリット | センサーの情報から前後の配分を電子制御で変える。基本配分(例:前60:後40)を持ち、加速・登坂・旋回で配分を変える | 車両の情報を使い、前輪が滑る前から配分を変える方式もある |
| センターデフ式 | センターデフで前後に常時トルクを配分し、不等配分(例:前45:後55)や可変制御を組み合わせる | 常時4輪に力がかかる。スバルのVTD-AWDは後輪に大きく配分してスポーティな走りに向ける |
| 電気式・モーター駆動式 | エンジンと機械的につながらない後輪をモーターで回す(トヨタE-Four)、または前後独立のモーターで4輪を駆動する(BEV) | プロペラシャフトが不要。前後の配分範囲は車種ごとに異なり、RAV4のE-Fourは100:0〜20:80、ヤリス クロスのE-Fourは100:0〜40:60 |
方式の違いが表れやすいポイントの一つが「後輪に力が伝わるタイミング」で、このほかに前後の基本配分、左右輪のトルク制御、ブレーキとの協調制御によっても走りの特性が変わります。
ビスカス式は前輪が滑ってから後輪に伝わるのに対し、電子制御式や電気式はハンドル角やアクセル開度から先に配分を変えるため、雪道の坂道発進のように前輪が空転しやすい場面で差が出ます。
Hondaの技術解説では、前輪が滑ってから後輪に伝える方式は動き出しまでにタイムラグがあり、予測制御ならアクセルを踏み込んだ瞬間から前後に配分されるという違いが、この差の説明になります。
各社のAWDは何をしているのか
各社の名称は違っても、公式の説明を読むと「基本の配分をどう決め、どの場面で後輪を増やすか」が見えてきます。ここでは優劣ではなく仕組みの違いを整理します。
■スバル:アクティブトルクスプリットAWDとVTD-AWD
アクティブトルクスプリットAWD(ACT-4)は前60:後40の配分を基本に、加速・登坂・旋回に合わせてリアルタイムに配分を変え、前輪のスリップを検知すると後輪へのトルクを増やす安定性重視の方式で、VTD-AWDはセンターデフで前45:後55に不等配分し、後輪に大きなトルクを分けてコーナーでのハンドリングを高めた方式で、レヴォーグやWRX S4に使われています。
BEVのソルテラとトレイルシーカーは前後独立モーター駆動式AWDです。クロストレックのe-BOXER(ストロングハイブリッド)は、燃費を高めるため一定の条件で前輪駆動に切り替えるクラッチ開放制御を採用しており、常時全輪駆動をうたうスバルでも燃費との両立が進んでいます。
■トヨタ:E-Fourとエンジン車の電子制御4WD
ハイブリッド車のE-Fourは、後輪をモーターで駆動する電気式4WDで、機械式4WDとは機構が異なります。走行状態に応じて前輪駆動から4WDまで自動で制御し、前後のトルク配分の範囲は車種ごとに異なり、RAV4は100:0〜20:80、ヤリス クロスは100:0〜40:60(70km/h以上では前輪駆動になり後輪のアシストなし)という設定です。
エンジン車の4WDも1種類ではなく、ヤリス クロスのガソリン車はダイナミックトルクコントロール4WDで、前輪駆動と4WDの間を100:0〜50:50の範囲で電子制御する仕組みです。
RAV4などに使われるDynamic Torque Vectoring AWDは、後輪のトルクを左右独立で制御するトルクベクタリング機構と、4WDが不要なときに後輪へ動力を伝える駆動系の回転を止めて損失を減らすディスコネクト機構を備えた方式で、同じ2018年2月の発表ではハイブリッド用の新型E-Fourが後輪の全体トルクを従来型の1.3倍にしています。
■ホンダ:リアルタイムAWD
2018年2月に発表された新型リアルタイムAWDは、四輪駆動を基本に、ステアリング舵角やヨーレートなどのセンサー情報から先手を打つように前後の配分を調節します。
後輪には油圧ピストンでクラッチを押し付けて駆動力を伝え、アクセルを戻した瞬間には後輪への配分をやめて二輪駆動にすることで、コーナー進入で向きを変えやすくする考え方です。上り勾配ではGセンサーの情報から、荷重が移って駆動力を伝えやすい後輪への配分を発進時から高める制御で、前輪駆動ベースの車の場合、平坦路の発進時の前後配分は6:4程度が相場という位置づけです。
■日産:e-4ORCE
e-4ORCEは2020年1月に命名された電動駆動4輪制御技術で、前後のモーターの駆動力とブレーキを細かく制御して4輪にトルクを伝えます。
GT-RのATTESA E-TSとパトロールのインテリジェント4x4の開発実績から生まれたもので、リアモーターの回生ブレーキも使って減速時などの車体の揺れを抑える点もe-4ORCEの特徴です。現行モデルではアリアのほか、エクストレイルやセレナのe-POWER車に搭載されています。
■マツダ:i-ACTIV AWD
マツダの4WDはi-ACTIV AWDの名称で、2026年5月に発売された新型CX-5では4WD車の標準装備として、路面状況と運転意図に合わせて4輪への駆動力を制御し、G-ベクタリングコントロールとの協調制御で曲がりやすさと安定性を両立する仕組みです。
2WDと比べたメリット・デメリット
メリットは、駆動力を4輪に分けられることです。前輪だけで駆動する車は、雪道の上り坂で発進するときに荷重が後ろへ移って前輪が空転しやすくなりますが、後輪にも駆動力を配分できれば発進しやすくなり、コーナーでは後輪にも駆動力を配分することで前輪の負担が減り、曲がる能力に余裕が生まれます。
JAFが2018年2月14日に圧雪路で行ったテストでも、勾配9%の坂は2WD・4WDの4台すべてが上りきったのに対し、勾配20%の坂は4WDの2台が安定して上りきり、2WDの2台は新品のスタッドレスタイヤを装着していても途中でスリップして上れませんでした。
スバルの公式FAQでは、常時全輪駆動の特長は「走行環境を問わない高い安定性」、前輪駆動の特長は「軽量かつ駆動ロスの少なさがもたらす軽快なハンドリング」です。
デメリットは、価格・燃費・重量です。同じグレードで2WDと4WD(E-Four)を選べる車のグレード表を見ると、差がそのまま数字で分かります。
| トヨタ ヤリス クロス G(ハイブリッド) | 2,712,600円・WLTC 30.2km/L | 2,960,100円・WLTC 28.1km/L | +247,500円・−2.1km/L |
| トヨタ ヤリス クロス G(ガソリン) | 2,341,900円・WLTC 18.8km/L | 2,589,400円・WLTC 17.6km/L | +247,500円・−1.2km/L |
| トヨタ ヤリス クロス X(ハイブリッド) | 2,510,200円・WLTC 30.8km/L | 2,757,700円・WLTC 28.6km/L | +247,500円・−2.2km/L |
| マツダ CX-5 S | 3,300,000円 | 3,536,500円 | +236,500円 |
ヤリス クロスでは、駆動方式の違いによる価格差がハイブリッドでもガソリンでも247,500円で、燃費差はハイブリッドの方が大きく出ています。CX-5のWLTC燃費は今回確認したグレード比較ページに駆動方式別の表示がなかったため、価格差のみ載せています。
もう一つ、AWDにしても短くならないのが「止まる」距離で、AWDの主なメリットは発進・加速・登坂と走行安定性にあり、AWDにしただけで制動距離が短くなるわけではなく、制動距離はタイヤと路面、速度、車両重量など複数の条件に左右されます。
JAFの同じ圧雪路テストで時速40kmから急ブレーキをかけた結果は、平坦路では2WD・4WDとも20〜22mで大きな差がなく、勾配9%の下り坂では2WDの約29〜33mに対して4WDは約35〜40mと長くなっています。
車両重量が最も重かった4WDのランドクルーザープラドは、下り坂の制動距離が平坦路の約2倍という結果で、雪道ではAWDであっても、スタッドレスタイヤやチェーンなどタイヤ側の備えが前提になります。
AWDを選ぶべき人・2WDで足りる人
| 降雪地に住んでいる、または冬にスキー場など雪道へ行く機会が多い | 舗装路中心の都市部で、雪道は年に数回以下(走るときは冬用タイヤが前提) |
| 自宅や職場までに坂道が多く、雨や凍結時の坂道発進が不安 | 平坦な地域で、坂道発進に不安がない |
| 雨天の高速走行やワインディングで安定性を優先したい | AWDの走破性を必要とせず、価格や燃費を優先したい |
| 約25万円の価格差と、WLTCで1〜2km/L程度の燃費差(ヤリス クロスの例)を許容できる | 差額を安全装備や上位グレードに回したい |
判断の目安になるのは、価格差と燃費差が「年に何回の雪道・坂道のためか」という点です。
雪道を走るなら2WDでもAWDでも冬用タイヤは前提で、その上で雪道や急坂を走る頻度が低ければ、ヤリス クロスの例で247,500円の追加費用に見合うかという判断になり、逆に、毎日坂道を走り、冬に凍結路を走る機会が多い地域では、発進と登坂でAWDのメリットを得やすくなります。
トヨタのディスコネクト機構やスバルのFWD切替制御など、4WDが不要な場面で駆動損失を抑え、燃費との両立を図る制御も採用されています。
AWDに関するよくある質問
■AWDと4WDは同じ意味ですか
乗用車では同じ意味で、4輪すべてを駆動する仕組みを指します。海外ではAWD表記が一般的で、日本では4WDと呼ばれることが多く、スバルは常時全輪駆動であることを示すために2003年からAWD表記に統一しました。
■AWDは常に4輪を駆動していますか
方式によって違います。センターデフ式やスバルのアクティブトルクスプリットAWDは常時前後に配分し、ビスカス式は前輪が滑ったときに後輪へ伝え、トヨタのE-Fourは車種ごとに決まった範囲(RAV4は前後100:0〜20:80、ヤリス クロスは100:0〜40:60)で前輪駆動状態から4WD状態まで自動で変わります。ホンダのリアルタイムAWDはアクセルを戻すと二輪駆動になります。
■AWDなら雪道で滑らないのですか
滑りにくくなるのは発進と加速で、AWDだから制動距離が短くなるわけではありません。JAFの圧雪路テストでは、下り坂の制動距離は車重の重い4WDの方が長くなっています。雪道ではスタッドレスタイヤなどタイヤ側の備えが前提で、AWDはその上で発進や登坂を助ける仕組みです。
■AWDにすると燃費はどれくらい落ちますか
車種によりますが、ヤリス クロスの例ではWLTCモードでハイブリッドが30.2km/Lから28.1km/L、ガソリンが18.8km/Lから17.6km/Lに下がります。トヨタのディスコネクト機構やスバルのFWD切替制御のように、4WDが不要なときの損失を減らす仕組みも採用されています。
■AWDの車は2WDよりいくら高いですか
ヤリス クロスは2WDと4WD(E-Four)を選べるグレードでいずれも247,500円、CX-5のSグレードは236,500円の差です(いずれも2026年9月24日時点のメーカー希望小売価格、税込)。車種ごとにグレード表で確認する必要があります。
■E-FourとAWDは違うものですか
E-Fourはトヨタのハイブリッド車が採用する電気式4WDの名称で、後輪をモーターで駆動します。AWDという言葉が指す「4輪を駆動する仕組み」の一種で、機械式の4WDとは機構が異なります。
まとめ
AWDは全輪駆動の意味で、乗用車では4WDと同じ仕組みを指し、違いは呼び方と各社の方式にあるため、代表例として、手動切替、ビスカス式、電子制御トルクスプリット、センターデフ式、電気式・モーター駆動式に分け、方式による違いは後輪へ駆動力を配分するタイミングだけでなく、前後・左右のトルク配分やブレーキとの協調制御にも表れる点を見てきました。
2WDと比べると滑りやすい路面や坂道発進で有利ですが、ヤリス クロスで247,500円、CX-5で236,500円の価格差があり、ヤリス クロスの例ではWLTCモード燃費に1.2〜2.2km/Lの差が出ています。
AWDにしただけで制動距離が短くなるわけではなく、雪道では駆動方式にかかわらず冬用タイヤが必要になるので、雪道や坂道を走る頻度と差額を天秤にかけて選んでください。


