車名は「XV」からグローバルで使用している「クロストレック」に
《画像提供:Response》〈写真撮影:雪岡直樹〉スバル クロストレック
2022年9月15日、スバル XVがフルモデルチェンジをおこない、車名をグローバルで使用しているクロストレックに統一しました。依然として不明な点はありますが、旧型XVやレヴォーグなどから受け継いだ機構を採用し、スバルならではの車になっていることが予想されます。
現在、日本ではセダンやハッチバック車の市場が急減速し、SUV市場が伸びています。トヨタ クラウンが「クラウンクロスオーバー」として登場したことからも、「オフロードを走行しない、イメージとしてのクロスオーバーモデル」が流行りつつあることが分かります。
そんな舗装路用クロスオーバーモデルが増える中、クロストレックは二世代にわたって販売されつづけた「XV」を発展させて登場しました。今回は、クロスオーバーの元祖的存在のクロストレックと、各車各様の特徴を持ったライバル車を紹介いたします。
ボディ骨格を強化して登場!
《画像提供:Response》〈写真撮影:雪岡直樹〉スバル クロストレック
クロストレックはXVの後継車種と書きましたが、初代インプレッサに一時設定された「グラベルEX」を事実上の祖先としています。
グラベルEXは、インプレッサスポーツワゴンの地上高を上げ、ラジエーターグリルガードを装着、スペアタイヤをバックドアに装着して、RV(リクリエーショナルビークル)風の意匠をまとったモデル。当時はアウトドアレジャーがブームとなっており、それに伴ってレジャーを感じさせる三菱 パジェロやスバル レガシィツーリングワゴンが人気でした。
インプレッサグラベルEXは、その後フォレスターへと発展的にモデルチェンジされますが、2010年にはインプレッサのバリエーションである「XV」として復活しました。XVも、概ねグラベルEXと同じコンセプトをもっており、当時も話題になり始めていたクロスオーバーに分類される車となりました。
インプレッサとほぼ同じ車高ながら無塗装樹脂のフェンダーモールを装着し、SUV風のスタイルを得た車でした。その後もインプレッサシリーズの基幹車種として順調な経過を遂げ、2013年にはスバルオリジナルのハイブリッドシステムを搭載しました。現在の、「e-boxer」と同等の機構です。
今回登場したクロストレックは、現在も継続生産中であるインプレッサシリーズから独立した車種です。
パワートレインは、旧型でも採用されていた2.0リッター水平対向自然吸気4気筒ガソリンエンジンにCVTが組み合わされ、これを電気モーターでアシストするe-boxerを継続搭載。AWDは、スバル伝統のアクティブトルクスプリット方式を採用する模様です。
この方式は、前輪60%:後輪40%から、前輪50%:後輪50%まで路面状況に合わせて電子制御で配分比率を変える方式で、常にAWDで走行することから、現代の一般的な乗用車タイプの4WD車が採用する、「前輪が滑ってから後輪を駆動する4WD」方式と比較して、悪路走破性や走行安定性が高いとされています。
スタイルは、XVで確立された、「インプレッサの5ドアハッチバックモデルの地上高を上げて、ホイールアーチモールやルーフレールを装着するクロスオーバースタイル」を継承しています。
モデルチェンジの要は、「フルインナーフレームボディ構造」の採用です。この構造は、ボディ床面の強化はもとより、車体の骨格部分で構造を成立させてボディ外側の鉄板部分を後から装着する方式です。ボディ骨格の強化は、高い操縦安定性や硬質でしっかりとした乗り心地を実現します。
「クロストレック」のライバル車もチェック
■トヨタ カローラ クロス
カローラシリーズの1台!でも他のカローラと共通点は少ない?
《画像提供:Response》〈写真撮影:中村孝仁〉トヨタ カローラクロス Z
トヨタ カローラクロスは、2019年にカローラのバリエーションの一つとして登場しました。1バリエーションではあるもののクロストレックとは成り立ちが異なり、その他のカローラシリーズとの共通性は少なく、特にスタイルは、5ドアハッチバックのカローラスポーツやステーションワゴンのツーリングとも異なるもので、実質的にはカローラから独立しています。
スタイルはカローラシリーズの「エッジが効いたシャープなもの」とは異なり、日産の3代目エクストレイルを思わせる柔らかなものです。バックドアの角度も垂直に近く、荷物室の容積は大きくなっていますが、古き良き「オフロードRV」に近いスタイルであると言えます。
エンジンは1.8リッターガソリンエンジンにCVTが組み合わされたものと、1.8リッターガソリンエンジン+電気モーターのハイブリッドから選択が可能。共にカローラシリーズにも搭載されており、ハイブリッドの方式はプリウスなどでもおなじみのシステムです。燃費の良さでは十分な実績があるシステムで、滑らかでスムーズな走行が可能です。
■スズキ エスクード
本格的な4WD性能を持ち合わせる
《画像提供:Response》〈写真撮影:雪岡直樹〉スズキ エスクード
エスクードは、かつてはスズキのRVモデルでした。紆余曲折あり「エスクード クロス」として登場したのが2015年、いったんモデルが終了となったのですが、今年になってスズキオリジナルのハイブリッドシステムを搭載する、4WDのクロスオーバーモデルとして復活を遂げました。なお、復活してもスタイルはほぼそのままです。
エスクードは、1.5リッターのガソリンエンジンを搭載し、電気モーターでアシストする方式のハイブリッドシステムを採用しています。エンジンの回転を6速オートギヤシステムという自動ギヤ切り替え式のトランスミッションで変速し、モーターはエンジンの補助をする方式です。そのため、従来の自動車が行っていたような変速が行われており、「変速のキレ感」と「エンジン回転が車輪に直接伝わるかのようなダイレクト感豊かな運転」を味わえることがこの車の特徴です。
4WD性能も本格的で、運転席左側のモード切り替えスイッチで切り替えられる他、「前輪と後輪を直結に近い状態で結合する、滑りやすい道を走行するための本格的なモード」も搭載しているほどです。
半面、登場から時間が経過しているために、スタイルの上では古さを感じさせることは否めません。また、ダイレクト感豊かなハイブリッドシステムは、走りの楽しさをもたらす一方で燃費をあきらめなければならず、走りと燃費を天秤にかけなければなりません。しかし、走りが好きな方にはぜひ試乗してほしいモデルです。
■マツダ CX-30
都会的な雰囲気を感じさせるSUV
《画像提供:Response》〈写真撮影:中村孝仁〉マツダ CX-30 XD Lパッケージ
CX-30は、CX-5とCX-3の間を埋める形で登場した車です。CX-5とCX-3がやや地上高が高いRV的なスタイルをとる一方で、CX-30はマツダ3の地上高をそのまま上げたようなスタイルです。この点では、クロストレックに近い性格かもしれません。
しかし、クロストレックが土を感じさせるイメージを演出しているのに対して、CX-30はマツダ3と同様に比較的流麗さを感じさせるボディスタイルです。クロストレック同様の全高が低いクロスオーバーモデルながら、都会的な雰囲気を感じさせます。
CX-30は、マツダ自慢のスカイアクティブD(1.8リッターディーゼルターボエンジン)、新しい燃焼技術を採用したスカイアクティブX(2.0リッターガソリンエンジン)、先日登場したスカイアクティブG(2リッターガソリンエンジンにモーターによるアシストを加えたマイルドハイブリッドモデル)の3種類を搭載。いずれも特徴あるエンジンであり、中でも力強いディーゼルエンジンを搭載していることは、他車との大きな違いです。
スタイルは、マツダ統一のフロントマスクやボディラインを持ち、流麗さは実現できているといえますが、他のマツダ車にもよく似ている上に、アテンザ(現、マツダ6)登場時に採用したデザインで、そろそろ10年が経過しているため、目新しさと言う点では不利になってきています。
流麗でクラシカル、都会的な雰囲気を好む方に向いた車と言えます。
唯一無二なクロストレック!でも比較検討することも大事
《画像提供:Response》〈写真撮影:雪岡直樹〉スバル クロストレック
クロストレックの特徴は、水平対向エンジンの個性とスバル伝統の4WDシステム、クロスオーバーならではの最低地上高の高さと全高の低さです。
水平対向エンジンは、かつてのドロドロとした排気音こそなくなっていますが、今でも独特なエンジン音がほのかに残っています。
また、エンジン重心の低さからくる、コーナーリング性能の高さもポイント。「SUVやクロスオーバーは気になっているけれども、セダンやハッチバックの操縦性の良さも捨てがたい」という、欲張りな方に向いているといえます。
そして、土の香りのイメージや、シャープな折り目のスタイルは無骨ですが、「そこがまたスバル車らしい」と思える方には、もしかしたら他車の存在は目に入らないかもしれません。とはいえ、今回ご紹介した他車にも良い点がたくさんあります。ぜひ、各車を試乗して車選びを楽しんでください。