マイルドハイブリッドはいつからあるの?ハイブリッド車の歴史について
■マイルドハイブリッドとは
マイルドハイブリッドは一般的に認識されているハイブリッド(ストロングハイブリッド)と違い、高電圧モーターによる駆動アシストを行っていません。構造は簡単で、低コストが利点です。12V制御の補助モーターは発電と動力アシストを行っていますが、一般的に言うオルターネーターの仕組みを発展させたものと言えます。
また実用に関する歴史も決して長くは無く、2010年頃に国産メーカー(スズキや日産)で発表され順次市販モデルに搭載されていった程度です。そして、2018年頃より輸入車でも48V制御によるマイルドハイブリッドが普及し始めました。
このマイルドハイブリッドが多くの自動車に活用されるには、フルハイブリッドの発展無くしては、生まれてこなかったと言っても過言ではありません。したがって、まずはハイブリッドの歴史についておさらいしてみたいと思います。
そもそもハイブリッドシステムが急速に発達した背景には自動車産業に課せられた二酸化炭素排出量の低減です。これは、乗用車製造メーカーからスポーツカー製造メーカーまで例外なくです。2019年現在において様々なメーカーの、様々な車種でハイブリッドモデルが展開されていますが、日本国内初の量産ハイブリッドカーはご存知トヨタ プリウスです。
■ハイブリッドといえばこの車?ご存知プリウス
キャッチコピーは「21世紀に間に合いました」
1997年10月に販売開始された初代プリウスはエクステリア・デザインこそまあまあですが、システムに関しては斬新で、業界関係者から自動車ユーザーまで衝撃を受けたことでしょう。
また燃費28km/Lは乗用車の平均燃費12.4km/Lの倍以上であるため、紛れもなく超エコカーと言っても過言では無いでしょう。
プリウスはハイブリッド車の成功モデルですが、他メーカーも黙ってはいませんでした。ホンダではインサイトを販売開始し、トヨタとは違ったシステムでその技術力をアピールしました。それ以外のメーカーも自社開発や提携開発の下、ハイブリッド車を販売しています。
エコカーでハイブリッドを無視することは出来ないのが現状です。
ではハイブリッドの歴史はまだ20年程度の歴史なのかというと、実はもっと昔に遡ります。ハイブリッドシステムの概念としては、記録に残っている最古は1896年のフェルディナント・ポルシェ博士が開発したローナーポルシェとされています。
スポーツカーブランド ポルシェがまだブランドを発足する前に作った車がハイブリッドとは驚きですね。
それ以後、欧米で研究開発が進みましたが、実際に市販モデルへとこぎ着けたのがトヨタなのです。
ハイブリッドシステムの種類について
一言でハイブリッドと言っても、一般的には3つの制御方式に分けられます。これはエンジンと電動モーターの関係性による分類と言っても良いでしょう。では、簡単にそれらの方式について確認してみましょう。
■シリーズ方式
エンジンは発電用として活用し、その電力を使用して電動モーターの力で駆動・走る方式です。
仮にエンジンの燃料が尽きても、ハイブリッドバッテリーの蓄電によりモーター・ドライブを行うことが出来ます。
近頃レンジエクステンダーと呼ばれる方式をとる電気自動車が存在しますが、構造で似通っている点がありますが、別物とされます。レンジエクステンダーは外部電源による充電が可能で、搭載されるエンジンは小型で、あくまでも電気の不足を補う程度とされています。
■スプリット方式
プリウスにも搭載されているのがこのスプリット方式。
エンジンの動力が、発電用・そして駆動用にスプリット、つまり分割される方式を言います。このエンジンの駆動力とモーターの駆動力を合わせて走ります。
このため、エンジンの動力はハイブリッドバッテリーを充電しながらもモーターアシストを受けることが可能です。
また、動力の分配方法によって、エンジンを停止させてモーター・ドライブを行うこともできれば、エンジンの動力を充電に回しながら、モーター・ドライブを行うことも可能なのです。
■パラレル方式
エンジン一機に対してモーター兼ジェネレーター一機の構造がパラレル(並列)方式です。
3つの方式の中で一番単純な構造です。マイルドハイブリッドもこの方式に含まれており、必ずしもエンジンとモーターが同一軸にあるとは限りません。モーターの出力や、動力連結装置次第で、モーターのみの走行も可能です。
また、モーターとジェネレーターが1つのモーターで成り立っているため、走行中にエンジンや回生で充電する際はモーターアシストが出来ない特徴となります。
マイルドハイブリッドの仕組みとは
マイルドハイブリッドは、通常走行時のエンジンの補助動力です。すなわち始動後、エンジンは基本的に回転しており、発進時など、トルクの弱い回転域において、モーターの強いトルクでアシストする仕組みです。
フルハイブリッドでは200V以上の電圧で制御されるモーターが搭載されているため、高電圧バッテリーも必ず車両に備わっています。一方、マイルドハイブリッドは12Vもしくは48V制御であり、基本的にモーターのみの走行が出来ないので、大容量の高電圧バッテリーは必要ありません。したがって、車両の重量を抑えることも可能であると共に、車内のスペースを犠牲にすることもありません。
モーターは、オルターネーター(発電機)の出力を上げて補助動力として耐久性を持たせたものが一般的で、エンジンとはベルトで連結されています。車の大きさやモーターの出力次第で、数秒間だけモーターによる発進ができる車種も出てきています。
マイルドハイブリッドの燃費について
カタログ表示燃費の計算において、同モデルのノンハイブリッド仕様との比較を行いますと、おおよそ10~15%マイルドハイブリッドの方で燃費が良くなる傾向にあります。
燃費としてはわずかですが、発進時のトルクの余裕など、モーターアシストのメリットは実感できるところがあるでしょう。ちょうどフルハイブリッドとノンハイブリッドの中間的選択肢と言った感覚になります。
取り扱いの危険性について
マイルドハイブリッドに関しては、フルハイブリッドのような高電圧バッテリーが搭載されていないため、基本的にはノンハイブリッド車と同様の取り扱いとなります。したがって取り扱いの危険性については従来車と同様の注意を払えば問題ないと考えます。
ただし、48V制御のマイルドハイブリッド車の場合、低電圧とは言えリチウムイオンバッテリーを搭載されていますので、バッテリーへの直接的な強い衝撃やショートには気をつけましょう。もちろん12Vバッテリーであっても同様に気をつけないと危険なのですが、電圧が高い分危険度が上がります。
・決して分解をしない
・強い衝撃を与えない
・高温にさらさない
・ショートさせない
・過充電させない
要点をまとめますと上記の通りとなります。もちろん、この注意点はどんな電池も共通です。ただし、電圧が高ければ高いほど危険度が上がるため、改めて意識し直して頂くと良いでしょう。
マイルドハイブリッドシステムを採用する車種のご紹介
マイルドハイブリッド搭載車の一例をご紹介いたします。
・トヨタ
クラウン(11代目:2001年8月から)3.0Lロイヤルサルーンにおいてマイルドハイブリッド搭載車が設定される
・スズキ
ソリオ(3代目)とソリオバンディット(2代目)
スイフト(4代目)
・日産
セレナ(4代目から)
あくまでも一例のご紹介ですので、他にも多数メーカー、車種が存在します。もちろん輸入車にも搭載車が存在します。
いずれもノンハイブリッド車と比較して、10~15%燃費が良いため、フルハイブリッド車が高価で予算に合わない場合の選択肢として考えることができるでしょう。
マイルドハイブリッドの将来性とは
マイルドハイブリッドはまだまだ発展途上であると考えます。
と言うのは、以前は12V制御のマイルドハイブリッド車が当たり前でしたが、輸入車を中心として48V制御のものが出始めています。また48V制御はハイブリッドシステムのみならず、電動パワーステアリングや、サスペンションマネージメントシステムなど、自動車の様々な機能へも応用され始めています。
このメリットは高い電圧制御によりアクチュエーターの応答性が良くなるためです。効率が良くなると、無駄が省けて燃費の向上にもつながります。すなわち、マイルドハイブリッドのアシストにも高効率が期待できるのです。