車のボディタイプ、知ってる?
星の数ほどある車。そんな多くの車を分けるため、様々な分類の仕方があります。FFや4WDなどの駆動方式で分類したり、乗用車と商用車で区別したりと、その分類する箇所によって様々な分類の仕方があります。
本記事では、その中でもボディタイプによる区別の仕方についてお話したいと思います。
ボディタイプとは文字通りボディ(車体)のタイプ(型)という事です。ミニバン、セダンといったものがボディタイプです。
車の種類・ボディタイプ一覧
■SUV(クロスカントリー・クロスオーバー)
《画像提供:Response》ロールスロイス・カリナン
現在、大人気のSUV。最近は、上記画像のロールス・ロイス カリナンのように、ロールス・ロイスやベントレーといった超高級車メーカーでもSUVを発売するほど、大人気のボディタイプとなっています。しかし、SUVほど曖昧な定義のボディタイプもありません。
SUVの始まりとは?
《画像提供:Response》嶽宮 三郎1976年 フォード アーリーブロンコ
歴史的にみると、SUVは1960年代のアメリカで、ピックアップトラックの荷台にシェルと呼ばれる屋根を被せたものが発祥といわれています。画像のように、フォード ブロンコのようなピックアップトラックにシェルを被せ、リアシートを取り付けたようなクルマが、徐々にSUVと呼ばれるようになりました。
このようなクルマに乗る人は、サーフィンやスキー、キャンプ等のアウトドアスポーツ好きが多く、荷物がたくさん積めるピックアップトラックは大変便利でした。さらに、アウトドアに行く際には、舗装していない道路を走ることも多く、車高が高いピックアップトラックが好まれたのです。
そのうち、このようなクルマは、SUV(Sport Utility Vehicle=スポーツに便利に使えるクルマ)と呼ばれるようになりました。
《画像提供:Response》《写真撮影 島崎七生人》ハイラックス・サーフ(初代)
SUVの歴史には、実はトヨタが大きく関係しています。1980年代の初頭に発売した、日本名「ハイラックス サーフ」、アメリカ名「4Runner」が北米市場で大ヒットしました。映画「バック トゥ ザ フューチャー」で、主人公のマーティが両親からプレゼントされたのが、この「4Runner」です。
比較的小型で、かつ安価だった4Runnerは、たちまちアメリカの若者の心をつかみ、「4Runner」でサーフィンやスキーに行くのが1980年代の新しいライフスタイルになったのです。
クロスオーバーSUVとは?
《画像提供:Response》《photo by Toyota》初代トヨタRAV4(北米仕様)
そのトヨタが4Runnerに続いて1994年に発売したのが「RAV4」です。RAV4が画期的だったのは、SUVでありながらラダーフレームを持たなかったこと。乗用車と同じモノコックフレームを採用したため、乗用車と同じ生産ラインで生産できました。このRAV4が世界的に大ヒットしたことで、ラダーフレームを作る生産ラインを持たなかった他の自動車メーカーもSUVに目覚め、多くのフォロワーを生み出しました。
同時期に発売されたホンダ CR-Vもモノコックボディを持つSUVでしたが、CR-Vも世界的にヒットしたことで、乗用車ベースのSUVは完全に市民権を得て、徐々に「クロスオーバー」と呼ばれるジャンルに成長していきます。現在では、乗用車ベースのモノコックボディをもったSUVは、「クロスオーバー」と呼ばれることが多くなりました。
《写真提供 トヨタ自動車》トヨタ RAV4 アドベンチャー オフロードパッケージII(ハイブリッド車)(アティチュードブラックマイカ×アーバンカーキ)
RAV4は、現在でも代表的なクロスオーバーSUVで、最近ではアメリカ市場で年間40万台を販売し、2022年に初代から通算26年で生産台数1,000万台を達成するなど、世界中で売れまくっています。
クロスカントリーSUVとは?
《画像提供:Response》《写真提供 トヨタ自動車》トヨタ・ランドクルーザー新型
SUVには「クロスカントリー」といわれるジャンルがあります。クロスカントリーとは、本格的なラダーフレームを持ったヘビーデューティーな4WDのことで、トヨタ ランドクルーザーや、メルセデス・ベンツ Gクラス等が代表的なクロスカントリービークルです。
クロスカントリーの特徴はとにかくタフなこと。砂漠や荒地など道なき道を走破するために、副変速機付の本格的な4WDシステムを備え、ラダーフレームによる強固なシャシーを持ちます。メルセデス・ベンツGクラスや、ジープ ラングラー等、軍用車をベースに持つモデルが多いのも特徴です。
一方で、ランドローバー ディフェンダーのように、ラダーフレームを排し、アルミ製のモノコックボディを持つクロスカントリービークルも最近登場しています。
■セダン
《画像提供:Response》《photo by Bentley》ベントレー・フライングスパー・ハイブリッド の「オデッセイエディション」
セダンは、最もフォーマルかつベーシックなボディタイプといわれ、その特徴は、エンジンコンパートメント・キャビン・トランクがそれぞれ独立していることで、3BOXともいわれます。
セダンのメリットは、それぞれの目的を持つセクションが、独立して存在すること。キャビンとトランクの間に隔壁を作れるので、ボディ剛性の確保で有利です。また、キャビンとトランクが独立していることにより、静粛性の確保でも有利になります。
そのため、セダンボディはラグジュアリーな高級車に採用されることが多く、ロールス・ロイスやベントレーなどの超高級車もセダンボディを中心としたラインアップとなっています。
《画像提供:Response》《写真提供 トヨタ自動車》トヨタ・クラウン・クロスオーバー
ただ、ボディタイプとしてのセダンは、最近大人気のSUVに押され気味。ヨーロッパ車は、ラグジュアリーブランドが多いため、まだセダンが多くラインアップされていますが、日本車では年々モデル数を減らしています。
日本を代表するセダンであったクラウンが、モデルチェンジで「クラウン クロスオーバー」となったのは、今後セダンボディも販売するといわれているとはいえ、「セダンの凋落」を象徴するニュースでした。
■ステーションワゴン
《画像提供:Response》《photo by Mercedes-Benz》メルセデスベンツ Cクラス・エステート (ステーションワゴン)新型
ステーションワゴンは、セダンボディのトランク部分まで屋根を伸ばしたボディ形状で、セダンに比べ荷物をたくさん積むことができます。室内は、キャビン部分とトランクが一体となっており、後端には大きなテールゲートがついています。
ハッチバックとよく似ていますが、違いを強いて挙げるとすれば、ステーションワゴンはリアドアもついている5ドアが多く、全長もセダンと同じくらいの長さ、ハッチバックはリアドアがない3ドアも多く、全長が短いものが多い、という所でしょうか。
《画像提供:Response》《photo by Mercedes-Benz》メルセデスベンツ Cクラス・オールテレーン
ステーションワゴンは、今やSUV人気に押されて絶滅危惧種となっています。
SUVは、特に乗用車ベースのクロスオーバーの場合、どちらも5ドアが多いので、ステーションワゴンと非常によく似ています。そのため、ステーションワゴンの車高を上げ、4WD化するとクロスオーバーSUVになってしまいます。
実際、上記画像のメルセデス・ベンツ Cクラス ステーションワゴンも、派生車種としてクロスオーバーSUVの「オールテレーン」を発売しています。車高を40mm上げて4MATIC(4WD)化し、樹脂製の黒のホイールアーチを追加というモデファイで、ステーションワゴンはSUVになってしまうのです。自動車のボディタイプも、だんだん境界が曖昧になっていますね。
■クーペ
《画像提供:Response》《Photo by Ferrari》フェラーリ・ローマ
クーペの基本形は、セダンと同じ3BOXボディでドアが2枚というスタイルです。セダンに比べ、スタイリングが優先されることが多く、流麗なデザインが多いのが特徴です。
スポーツカーは基本的にこのクーペボディが多く、画像のフェラーリ ローマもフェラーリの最新型クーペで、デザインが超カッコいいですよね!
クーペにはリアシートがある場合が多いですが、リアシートの居住性に関しては、そのクルマによりけりです。メルセデス・ベンツ CクラスやEクラスのクーペのように、セダン並みの居住性を備えたリアシートもあれば、大人が座れないほどの狭いリアシートもあります。
《画像提供:Response》《photo by Mercedes-Benz》メルセデスAMG GLE 53 4MATIC+ クーペ
クーペも例にもれず、ボディジャンルの曖昧化が進んでいます。4ドアのクーペや、SUVなのにクーペを名乗るクルマもあります。SUVのクーペは、画像のGLEクーペのように、通常のステーションワゴンボディのルーフを切り取って、なだらかなルーフラインにしたモデルです。実用性よりもスタイリングを優先したクルマをクーペと呼ぶのが、最近の傾向です。
■ハッチバック
《画像提供:Response》《写真提供 マツダ》マツダ3 100周年記念車
ハッチバックは、エンジンとキャビンのみで構成されたボディタイプで、2BOXとも呼ばれます。ステーションワゴンやSUVと同じく、ボディの後端には大きなテールゲートが付いています。
ハッチバックは比較的コンパクトなクルマへの採用が多く、日本の軽自動車も大半がこの形式です。ハッチバック車の多くは駆動方式でFFを採用しており、エンジンを横置きにして最大限のスペースを追及しています。
《画像提供:Response》《写真提供 本田技研工業》ホンダ シビック タイプR
かつては、FFでは大馬力のエンジンを搭載できないとされていました。しかし、近年ではシャシー技術やタイヤが進歩し、最新のシビック タイプRでは、FFのハッチバックボディながら、320psを発揮するなど、かなりのハイパワーを受け止められるようになっています。
《画像提供:Response》《写真提供 トヨタ自動車》トヨタ GRカローラ(北米仕様、プロトタイプ)
また、FFベースの4WDハッチバックも数多くラインアップされていて、その多くは、雪国で暮らす人たちのための「生活四駆」と呼ばれるクルマです。しかし、一部の車種はハイパフォーマンス志向で、トヨタ GRカローラのように、304psのパワーを未舗装路に伝えられるモデルも登場しています。
世界的に見ても、多くのモデルはハッチバック形式を採用しており、もっとも一般的なボディタイプといっていいでしょう。
■ミニバン
《画像提供:Response》《photo by Chrysler》クライスラー・ボイジャー
現在、日本で確固たるジャンルを築いているミニバンですが、車種としては比較的歴史の浅い車種です。1983年に北米市場で登場したダッジ(クライスラー) キャラバンは、乗用車ベースのFFの駆動レイアウトを持ち、全長4.5mほどのボディサイズながら7人が十分乗れるスペースを実現していました。
従来、アメリカ市場で多人数乗車ができるバンは、5m×2mのような巨大なボディサイズでしたが、それに対してダッジ(クライスラー) キャラバンはかなり小型のため、「ミニバン」と呼ばれるようになりました。ボディタイプとしては巨大な2BOXとなり、エンジンコンパートメントと、キャビンと荷室を共用したレイアウトとなっています。
《画像提供:Response》《写真提供 ホンダ》ホンダ・ステップワゴンSPADA
日本では、ミニバンはファミリーカーとして不動の人気を得ています。各メーカーも、ボリュームゾーンであるミニバンに次々と新型車を投入しています。2022年は、ホンダ ステップワゴン、トヨタ ノア/ヴォクシー、日産 セレナの三大ミニバンがフルモデルチェンジを果たすという記憶に残る年となりました。
各社、大人が7~8人リラックスして過ごせるスペース効率を追及し、しかもボディサイズは5ナンバー付近を実現。現在、ミニバンの売れ筋はハイブリッドモデルで、トヨタ ノア/ヴォクシーはトヨタ ハイブリッドシステム、ホンダ ステップワゴンはe:HEV、日産 セレナはe-Powerと、それぞれ最新のハイブリッドシステムを投入しています。
《画像提供:Response》《写真 トヨタ自動車》トヨタ・アルファード
近年の日本では、高級ミニバンの代名詞であるトヨタ アルファードが県知事や市長、政治家の公用車や、経営者の社用車として使われるようになり、次第にフォーマルカーとしての性格も持つようになっています。
■ワンボックス
《画像提供:Response》《写真提供 トヨタ自動車》トヨタ ハイエース 現行モデル
ワンボックスは、スペース効率が売りのボディタイプです。日本では、ワンボックスといえばハイエース、ハイエースといえばワンボックスというくらい圧倒的な人気を誇ります。ハイエースの標準ボディは全長4,695mmという5ナンバーサイズながら、荷室長は3,000mmという圧倒的な長さを実現しています。全長に対する荷室長を長く取れるのが、ワンボックスの最大のメリットです。
《画像提供:Response》トヨタ ハイエース
ミニバンとワンボックスの違いについてですが、結論からいうと、多くのミニバンは2BOXで、エンジンコンパートメントにエンジンを搭載し、隔壁で仕切ってキャビンを置いています。つまり、ドライバーから見れば、エンジンは自分の前に位置します。
一方、多くのワンボックスは、キャブオーバーといって、エンジンの配置はドライバーのお尻の下です。キャブオーバーは、エンジンを収納するエンジンコンパートメントが無いので、全長に対して荷室長を長くとれる、という理屈です。
ワンボックスのボディタイプは非常にスペース効率が高く、ビジネスカーだけでなくキャンピンクカーのベース車としても大変好評です。一方で、「エンジンコンパートメントが無い=衝突事故の際のクラッシャブルゾーンが無い」ということで、衝突安全の面では2BOXボに比べて劣ります。
■ロードスター・コンバーチブル・カブリオレ
《画像提供:Response》《写真提供 マツダ》マツダ ロードスター 990S
ロードスターの特徴は「屋根がない」ことです。かつ、ロードスターの多くは2シーターで、スポーティな走りを特徴とします。画像のマツダ ロードスターのように、ロードスターボディ専用のクルマもあれば、クーペとロードスターの両方をラインアップしているクルマもあります。
《画像提供:Response》《photo by Mercedes-Benz》メルセデスAMG SL
もちろん、上記画像のメルセデス AMG SLのように4シーターのロードスターもありますが、リアシートに座る人の身長制限が150cmに設定されていたりと、リアシートに大人が乗ってフルに使えるイメージではありません。
《画像提供:Response》撮影 中村孝仁MINI クーパーS コンバーチブル
コンバーチブルやカブリオレといわれるボディタイプは、ロードスターと同じオープンカーではありますが、4~5人乗りの乗用車の屋根を開けられるようにしたものを指す場合が多いのが特徴です。そのため、オープンカーになってもベースとなった乗用車と同じく、大人4人が乗れるモデルが多数あります。
クルマのパワーユニットでの種類分けも
■HV(ハイブリッド)
《画像提供:Response》《写真提供:トヨタ自動車》トヨタ プリウス 2.0L PHEV プロトタイプ(マスタード)
ハイブリッド車は、エンジンとモーターを組み合わせたパワーユニットを持つクルマをいいます。世界初の量産ハイブリッド車は、1997年に発売されたトヨタ プリウスです。
ハイブリッド車の目的は主に燃費の向上。低回転から大きなトルクを発生するモーターと、回転を上げないと馬力が出ないエンジンのいいとこ取りをして、それぞれを効率のいい回転数で動かし、燃費を向上させます。
ハイブリッド車の燃費は、実際の路上を走った実用燃費でも30km/Lを超えるモデルもあり、ガソリン車の2~3倍の燃費を実現しています。
■PHV(プラグインハイブリッド)
《画像提供:Response》《写真提供:三菱自動車工業》三菱 アウトランダーPHEV
PHV=プラグインハイブリッドは、ハイブリッド車のひとつのジャンルです。PHVと通常のハイブリッド車の違いは、PHVはバッテリーのみで走行できる距離が長く、そのために大容量のバッテリーを搭載しており、外部からの充電に対応しているという点にあります。
ハイブリッド車であれば、モーターのみで走行するEV走行モードがついていたとしても、数キロでバッテリーを使い切って、エンジンとのハイブリッド走行に移行しますが、PHVは数十キロレベルでEV走行が可能です。
画像のアウトランダーPHEVでは、EV走行でWLTCモード87kmの航続距離なので、87km以下のドライブであれば、ガソリンを使わずにモーターのみで走行可能ということになります。
一方、大容量のバッテリーを搭載するために車重が重くなる傾向があり、アウトランダーPHEVでも車重は2トンを超えています。
■EV(電気自動車)
《画像提供:Response》《photo by Tesla》テスラ モデル3
EV=電気自動車は、エンジンを搭載せず、モーターのみで走行するクルマを指します。そのため、大容量のバッテリーを搭載しているのが一般的です。画像のテスラ モデル3は、最大で689kmの航続距離を有していると、メーカーであるテスラは主張しています。
EVのメリットは、騒音源であるエンジンを持たないために静粛性が高いこと。一方、デメリットとしては、大量のバッテリーを搭載するために車重が重くなりがちなことと、現時点では電気自動車用の充電インフラが十分に整備されていないために、充電環境に気を使うことが挙げられます。
また、急速充電でも、充電には30~1時間かかるため、ガソリン車のようにサッとガソリンスタンドで給油してまた走り出す、という訳にはいかないのもデメリットです。
■FCV(燃料電池自動車)
《画像提供:Response》《写真提供 トヨタ自動車》トヨタ MIRAI 新型
FCV(Fuel Cell Vehicle)は、水素を燃料とする燃料電池自動車です。FCVは水素と酸素の酸化還元反応によって発電し、反応後に生成されるのは水のみのため、究極のエコカーともいわれています。
《画像提供:Response》《写真提供 トヨタ自動車》トヨタ MIRAI 新型
上記画像のように、燃料電池自動車であるトヨタ ミライは、巨大な水素タンク(黄色部分)を2つ搭載しています。水素は気体で水素ステーションより供給されるため、どうしても体積が大きくなってしまいます。ミライは一回の水素補給で750kmの航続距離を有し、水素補給にかかる時間は約3分とガソリン車並みです。
水素補給に時間がかからない点は、電池自動車に対する大きなアドバンテージですが、肝心の水素ステーションが全国160箇所ほどしかないのがネックです。一方、ガソリンスタンドは、近年減少傾向とはいえ全国で約29,000箇所あり、燃料補給の容易さという点ではガソリン車に大差をつけられています。
まとめ
自動車のボディタイプや、パワーユニットによる分類、いかがだったでしょうか。
最近の自動車は、ボディタイプの融合が進み複雑になる一方ですが、皆様の理解の一助になれば幸いです。
今後も、様々なボディタイプの自動車が発売され、ボディタイプによるジャンル分けはますます困難になっていく事が予想されますが、それは自動車の進歩としてポジティブに受け止めたいものですね。
また、パワートレインの進化も今後ますます進んでいくでしょう。クルマの未来って、本当に楽しみですね!