ターボの仕組みや特徴
まずは、ターボの仕組みについて詳しく解説していきます。
■別名「過給機」
ターボチャージャー
ターボとはターボチャージャーの略称です。過給機とも呼ばれています。現代の様々な自動車で採用されている部品の1つです。
ターボが採用されている自動車はターボ車と呼ばれています。それに対して、ターボが装着されていない自動車はノンターボ車と呼ばれるほか、ターボが搭載されていないエンジンをNAエンジンと呼んでいます。
NAエンジンの「NA」とは「Natural Aspiration」や「Normal Aspiration」の頭文字を取ったもので、訳すと「自然吸気」という意味になります。ガソリンエンジンとディーゼルエンジンのNAエンジンでは多少の違いがあることを考慮しても、現代の主流である4ストロークガソリンエンジンの仕組みを理解するはターボを知るうえでも知っておきたい構造です。
■4ストロークガソリンエンジンの工程
4ストロークガソリンエンジンはシリンダーという筒やピストンと呼ばれる円筒形のパーツなどの動きに合わせて「吸気・圧縮・燃焼/膨張・排気」という4つの工程を経て力を生み出します。正確には2往復(ピストンが4回移動する)。各工程をまとめると下記のとおりです。
①吸気:シリンダー内部のピストンが上がりきったところで吸気バルブと呼ばれる弁が開く。ピストンが下がり始めて圧力が下がることで燃料と共に空気が吸い込まれる。
②圧縮:下がっていたピストンが上昇を始めて吸気した空気と燃料の混合気を圧縮する。
③燃焼/膨張:圧縮された混合気を点火プラグで点火すると燃焼ガスが膨張(圧力膨張)してピストンを押し下げる
④排気:ピストンが下がりきったところで排気バルブが開いて燃焼ガス(排気ガス)が排気ポートから出ていく。そして再び①の工程へ。
この中で注目したいのが吸気工程で、吸気の際に入ってくる空気の圧力は大気圧のままです。これが自然吸気と呼ばれる理由になります。つまりターボエンジンとNAエンジンの違いは吸気時の空気(酸素)の量にあるのです。
■排気ガスを使って空気を圧縮
吸気の際により多くの空気を取り込むことでNAエンジンよりも大きい燃焼エネルギーを生み出す(パワーを出す)ことが可能となります。ここで気になるのが、空気を圧縮する方法です。
空気の圧縮工程は排気ポートから排出される排気ガスを起点に始まりになります。まずこの排気ガスがタービンハウジングにあるタービンホイールを回転させます。
タービンホイールが取り付けられているシャフト(回転軸)にはコンプレッサーハウジングにあるコンプレッサー(圧縮)ホイールも装着されていて、これが回転すると空気を圧縮するのです。
圧縮された空気は高温となっているので温度を下げるために一度インタークーラーを経由させます。こうして冷却された空気がエンジンに送られるというわけです。
■過給圧の制御も求められる
ターボを搭載しているからといって無限にたくさんの空気を送ることができるわけではありません。そのため、ターボには過給圧を制御する機構も用意されています。
その基本となっているのがウェイストゲートバルブやアクチュエーター、バルブ並びにバイパス経路を用いた制御方法です。
タービンホイールに向かって排気ガスが流れる経路とは別に用意されているのがバイパス経路になります。バイパス経路の入口にあたる部分にはウェイストゲートバルブが設置されていて、過給圧制御がかかるまで閉じた状態です。
しかし、過給圧が高まって事前に設定された数値を超えると、このバルブが開いて過給圧向上を抑制するのです。アクチュエータはこのバルブを実際に開閉する機構の1つとして機能しています。
スーパーチャージャーとは何が違う?
日産自動車・HR12DDR型エンジン
ターボと似たような機能を持ったパーツとして知られているのがスーパーチャージャーです。ターボと比較されるのは正式には機械式過給機と呼ばれるものになります。
ターボと同様に過給を行うためのパーツであり、「空気を圧縮してエンジンにたくさん送る」という意味では同じ役割を果たしています。
しかし、細かくみると明確な違いがあります。ここでは主な違いを2つ見てみましょう。
1つ目の違いは、過給機を駆動させる方法になります。
ターボでは排気ガスを使って過給を行っていましたが、機械式過給機ではクランクシャフトの回転や電動モーターを利用してコンプレッサーを駆動します。
2つ目の違いは、パワーがかかり始めるタイミングです。
ターボでは高回転時に過給しパワーを発揮しますが、ターボが効き始めるまでにターボラグと呼ばれるタイムラグが発生します。
その点、機械式過給機ではクランクシャフトの回転を利用して過給を行うため低・中回転域から過給を行うことができるのです。
このようにメリット満載に見える機械式過給機ですが、騒音が大きい・部品サイズが大きい/重たい・高回転域でターボほどパワーを発揮しない、といったデメリットもあります。
ターボ車のメリット・デメリット
1.2リットル直噴ターボエンジン(8NR-FTS)
ターボのメリットの1つは小排気量エンジンでありながら大排気量NAエンジン並みの出力・トルクを発揮することができる点です。
小排気量になればエンジンのサイズ自体も小さくなるので軽量化につながりますし、なおかつ排気量が小さくなれば自動車税が安くなります。
それに加えてよりエンジンパワーを生み出すことができるとなれば、一石二鳥です。
デメリットを挙げるとすると、ターボ搭載にあたって部品点数の増加という点が挙げられます。部品点数が増えればそれだけ故障のリスクが発生しますので、こればかりは致し方ないでしょう。
また、ターボを使うことで燃費の悪化に繋がる点も挙げられます。一般道であればターボがよく効く高回転域で走るということはよほどのことがない限り無いと思いますが、覚えておきましょう。
昨今のターボ車事情
スズキ ハスラー
高出力・高トルクを狙ってターボを装着する自動車もある中、最近主流となっているのはダウンサイジングターボという概念です。これはエンジンの総排気量を小さくして失われたパワーをターボで補おうという考えに基づいています。
総排気量が小さくなれば燃費向上や自動車税額の減少などのメリットなどのメリットがあるからです。環境問題や金銭的な面など、現代的側面を感じます。
とはいっても、日産 GT-Rやホンダ NSXにトヨタ スープラのようなメーカーを代表する高出力スポーツカーにはターボが装着されていますし、モデルによってはターボを2つ装着するツインターボが採用されていたりと、高出力・高トルクを目的としたモデルもいまだ健在です。
このような背景を理解すると、従来までNAエンジンを採用していた自動車がターボ車となる理由にも納得ができます。
スズキ スイフトスポーツの現行モデルにあたるZC33型がターボ化されたことは記憶に新しいです。先代モデルまでは自然吸気エンジンが搭載されていましたが、ZC33型では1.4L直列4気筒直噴ターボエンジンに変更されています。
現行車では排気量が1.4Lとなったので先代モデル(1.6LのNAエンジン)よりも自動車税が安いです。
現行のターボ車ラインアップ
では、現行のターボ車をご紹介します。
■国産車
ホンダ N-ONE
N-ONE
2020年3月に一旦生産終了となり、今秋に新型モデルが登場するとアナウンスされているホンダ N-ONE。3月まで発売されていたモデルは、NAエンジンを搭載するクルマとターボを搭載するクルマの特徴を理解するのにわかりやすい車種となっています。
NAエンジンを搭載するPremiumとターボを搭載するPremium Tourerという2つのグレードに注目してエンジンスペックを比較すると、
Premium:最高出力43kW(58PS)/7,300rpm、最大トルク65N・m(6.6kgf・m)/4,700rpm
Premium Tourer:最高出力47kW(64PS)/6,000rpm、最大トルク104N・m(10.6kgf・m)/2,600rpm
となっています。このように、同じエンジンでもターボの有無で最高出力と最大トルクが大きく変化するのです。
スズキ アルトワークスやホンダ S660、そしてダイハツ コペンのような現行の軽スポーツカーではターボが必ず搭載されています。
スズキ スイフトスポーツ
スイフトスポーツ
上記でも紹介したZC33型スズキ スイフトスポーツ。
最高出力103kW(140PS)/5,500rpmに最大トルク230N・m(23.4kg・m)/2,500-3,500rpmのスペックを備えています。
トヨタ 86やスバル BRZよりも最大トルクの高いクルマに、ヴィッツやフィットと同じ自動車税で乗ることができるというのは、大きな魅力と言えるでしょう。
トヨタ スープラ
後輪駆動スポーツカーとしてBMWのZ4と並行して開発されたトヨタ スープラ。3.0L直列6気筒エンジンを搭載するRZと、2.0L直列4気筒エンジンを搭載するSZ-RにSZの3種類がラインアップされています。
3.0L直6エンジンは最もハイスペックなものとなっていますが、SZ-RとSZは同じエンジンでありながらもSZ-Rのほうがハイスペックとなっているのが興味深いです。
搭載されているターボはツインスクロールターボチャージャーと呼ばれるもので、通常のターボよりも低回転域におけるレスポンスおよびパワーが向上しています。
■輸入車
フォルクスワーゲン ゴルフ
ドイツの自動車メーカー フォルクスワーゲンの現行モデルにラインアップし、国内でもよく見かける定番モデルの1つである5ドアハッチバックのゴルフ。
グレードによって排気量は異なりますが、直列4気筒DOHCインタークーラ付ターボエンジンが搭載されています。
ルノー メガーヌR.S.
メガーヌ R.S. トロフィー
フランスの自動車メーカー ルノーが製造・販売するメガーヌR.S.はスポーティーな5ドアハッチバックです。
エンジンは、1.8L直列4気筒DOHC16バルブ ターボチャージャー付きエンジンで、最高出力205kW(279PS)/6,000rpmに最大トルク390N・m(39.8kg・m)/2,400rpmとなっています。
このエンジン排気量でこのスペックは、ターボがあってこそです。ベースグレードのR.S. に加えて外装デザインやエンジンスペックが強化されたトロフィーグレードもあります。
ターボ車はこういう人におすすめ
これまでに紹介したターボの特徴を踏まえると、下記に該当する方にはターボ車がおすすめです。
・よりエンジンパワーを求める方
・パワーは欲しいけど排気量の小さいエンジンを希望する方
・維持費の安い軽自動車に乗りたいけどある程度の力強さが欲しい方
まとめ
ターボ車の構造を知ることは、自分に合った自動車に出会うために大切なことです。
自分のクルマがターボ車なのかどうかわからない方は、まず自分の自動車がターボ車なのか、それともNAエンジンを搭載しているのかを確認しましょう。