日産 フィガロとは?
《撮影 雪岡直樹》1991年式 フィガロ(FK10)
フィガロとは、日産が1991年~1992年に販売していた「Be-1」「パオ」に続く、第3弾のパイクカーシリーズとなります。
日産パイクカーシリーズの集大成とも言えるフィガロは、ノスタルジック・モダンな2ドアスモールコンバーチブルモデルとして人気を集めました。パイクカーとは、デザイン性にエッジの利いたクルマやレトロ調、独特なスタイルのクルマのことを言い、スタイリングが評価された過去のクルマを思い出させるものなども含まれます。
フィガロという車名はモーツァルトの作曲されたオペラ「フィガロの結婚」に登場する主人公に由来しています。一見ルーフはハードトップのように見えオープンカーには見えませんが、実は4座オープン方式になっており手動で開閉が可能となっています。
コンパクトなボディに多くの魅力が詰め込まれ、スペックや装備もかなり充実した車種となります。
1年限りで生産終了、幻のフィガロ

日産フィガロ 離れた丸目で味わい尽きぬ カエル顔のパイクカー
フィガロは日本国内で限定2万台で生産終了となった1代限りのクルマとなります。パイクカーの人気と2万台限定ということもあり抽選応募が殺到しました。
フィガロは日本国内だけではなく、特に欧州とりわけ日本と同じ右ハンドルの英国では、好評となり3000台ほどが輸出・中古車販売されており、現在でも求める人が多いと言われています。
それほどの人気があれば、あらゆる技術を更に詰め込んで2代目が誕生してもおかしくないフィガロなのですが、販売は初代で終了となっています。
■何故1年限りの販売だったのか?

日産フィガロ 離れた丸目で味わい尽きぬ カエル顔のパイクカー
パイクカーはバブル期で経済的にも余裕があったからからこそ実現できたプロジェクトであり、遊び心から生まれたクルマといえるでしょう。そのためバブル崩壊と共にパイクカーであるフィガロの販売は1年限りとなり、幻の車種となっていきました。
バブル期が続けば2代目の販売も有り得たかもしれませんし、新たなパイクカーが誕生していたかもしれません。
このように時代の流れに何が起こるか分からないため、自動車業界もその波を上下に走り続けています。人気があるからこそ販売継続ということもいかず、厳しい状況となれば販売終了となってしまいます。
フィガロ、当時のライバル車は?
《写真提供:response》パオ
フィガロのライバル車として一番大きな存在は、日産の同じくパイクカーとして販売されていたパオでしょう。共にパイクカーとして生産されたクルマなので双方ともに個性的となっています。
大きな違いとしては、フィガロにはターボエンジンが搭載されていた点やオープントップになる手動開閉式トップを備えていた点、乗車人数がパオは5名に対してフィガロは4名という点が挙げられます。
共に丸みをイメージしたデザインはどこか懐かしさを覚えます。
パオは3ドアハッチバックとして人気を博し、フィガロは2ドアオープンカーとして人気を博しました。これはライバルというよりも良い形での共存関係にあったと言えるのかもしれません。
日産 フィガロってどんな車?
■日産 フィガロの性能

日産フィガロ 離れた丸目で味わい尽きぬ カエル顔のパイクカー
フィガロの全長は3,740mm・全幅1,630mm・全高1,365mmとなっており、1L直列4気筒のターボチャージャー付きで、排気量は987cc(76PS/10.8kgm)で5ナンバーに分類されます。
フロントエンジン・フロントドライブ(FF方式)を採用していました。
■日産 フィガロのエクステリア

日産フィガロ 離れた丸目で味わい尽きぬ カエル顔のパイクカー
エクステリアとしてはやはりレトロ調で丸い局面が帯びた形状構成がされたボディパネル・円や半円・楕円などをモチーフに、現在では見られない芸術エクステリアと独特のインパクトを持ちます。
コンパクトな2ドアにルーフ・ショルダーラインとボディでツートンカラーを採用、円形ヘッドライト、リアライトとなっており、メッキモール装飾され、50~60年ほどのヨーロッパの雰囲気を醸し出し、愛想らしいエクステリアとなります。
■日産 フィガロのインテリア

日産フィガロ 離れた丸目で味わい尽きぬ カエル顔のパイクカー【愛車 File.15】
インテリアはエクステリア同様クラシカルに仕上げられており、水平基調ダッシュボードに埋め込まれたメーターパネルはメッキモールが施され、字盤書体へのこだわりやメーターの目盛りや針が細く繊細になっているなど特徴的なイメージがあります。
ホワイトをベースに本革シート採用され、3本スポークステアリング、ウインドウスイッチ等には綺麗な花蕾をモチーフに細部まで入念な造り込みがされており、統一感あるノスタルジーに溢れた仕上がりとなっています。
日産 フィガロの中古車価格

日産フィガロ 離れた丸目で味わい尽きぬ カエル顔のパイクカー
グレードは1つしかなく、価格帯は90万円台~590万円台とかなり幅広くなっています。
フィガロ 1.0 | 約90万円台~590万円台 |
※情報は車情報サイトresponse中古車価格より(2021年4月現在)
※表示価格は車両本体価格です。
未だに人気のフィガロ
《写真提供:response》《撮影 中込健太郎》新車時には大変な人気で、瞬く間にプレミアがついたほど。
フィガロは販売から30年も経ち、街中で走る姿を見掛ける事は少なくなりました。しかし、コアなファンからはいまだに愛されているクルマとなっています。
日本国内のみならずヨーロッパ特に英国に多くのファンがおり、2009年にはオーナーズクラブも発足するほどとなっています。年間を通してレース・交流会を行い、フィガロのファン同士でイベントを開催して楽しんでいます。
■日産 フィガロの評価

日産フィガロ 離れた丸目で味わい尽きぬ カエル顔のパイクカー
フィガロは何と言ってもファッション性・デザインが特徴とされており、外車に思われてしまうほどの形状とボディカラーになっており、現在にはあまり存在しない贅沢な遊び心が盛り込まれたクルマとして好評を得ています。
オープンカーということもあり走行時の風波を直接体感出来るため、ドライビングへの楽しみもかなり満喫できる事が魅力となっています。フィガロは昔のクルマなので多少不便な部分もありますが、それを上回るだけの魅力にあふれています。
後継車はでないのか?

日産フィガロ 離れた丸目で味わい尽きぬ カエル顔のパイクカー
フィガロの後継車は生まれるのか気になるところですが、その可能性は低いと考えていいでしょう。理由としては、日産がパイクカーを儲かるビジネスプランとして見いだしていないことが挙げられます。
フィガロ販売時代は安全基準が現在より緩かったため、ボディの内外装も自由度が高く、レトロ調のシンプルなデザインの内装には、現在は必須となっている安全装備エアバッグすら装着されていませんでした。
外装も側面・前面衝突対策への基準が低かったため、ドアやボディは薄く造られていました。それを現在の安全基準まで高め製造すると、かなりコストが掛かってしまいます。
仮にフィガロの後継車を製造販売したとしても、バブル経済のような追い風がなければ大ヒットにまでは至らないのが現状とみられています。
まとめ

人生初の愛車として手に入れた「日産フィガロ」
フィガロ(パイクカー)を復活させるには、自動車業界の「チャレンジ」が必要でしょう。ユーザーが待ち望んでいるクルマは「自動運転、コネクティッド、電動化」だけではないはずです。
パイクカーのような魅力的なクルマが現れると、一気に目線が変わってしまうことがあるかもしれません。それほどフィガロのようなパイクカーは魅力にあふれていて、愛される力を持っているといえます。